今回は、前に送ったものの子ども視点となります。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・」
トルテはそう呟きながら、泣きじゃくる。
ガレットは、そんなトルテの背中を優しく擦り、なんとか泣き止ませようと試みている。
「泣かないで、トルテさん。ポルなら、きっと大丈夫よ。だから、一緒に出口を探しましょ?」
優しく言い聞かせるガレットだが、トルテはいっこうに泣き止む気配を見せない。
ぐずぐずと泣き続けているトルテに、今まで黙ってみていたスコーンが、痺れを切らせて声をかける。
「あんた、俺達より年上だろ?しっかりしてくれよな。。・・・はあ。出口もみつかんねーし、どうしろって言うんだよ……」
呆れたように、スコーンは深い溜め息を付いた。
・・・ポルがこの場にいてくれたなら。。
つい、そんなことを考えてしまう。
ポルがいれば、きっと何かしらのアドバイスをしてくれたはずだ。
それに、このメンバーももう少しはまとまっていただろう。現に、ポルが抜けるまでは皆仲が良かった。
ポルは、皆の不安を取り除くために、色々と気を使ってくれていたのだと、スコーンは改めて感じた。
その彼がいなくなった今、全員バラバラ状態だ。
ポルがいなくなってしまったというだけで、ここまでまとまりがなくなってしまうとは思っていなかったスコーンは、頭を悩ませる。
「はぁ・・・・・・」
スコーンは、また大きな溜め息を付いた。
ティラミスは意気消沈していて、動こうとしない。
レイに至っては、ポルがいなくなって不安がぶり返したせいだろうか。ガレットの背中に張り付いたまま、離れようとしない。
誰も歩きだそうとはせず、スコーンは諦めたように首を振った。
すると。
『早く、早く来て!!』
ガナッシュが、三度スコーン達の前に姿を現した。
スコーンは、少し眉を潜めながらガナッシュを見つめる。
『早く!!・・・ポルが、死んじゃう!!!』
「?!ポルが!?どういうことだよ!!」
ポルが死ぬ。
その言葉に驚き、スコーンが尋ねる。
ガナッシュは彼の問いには答えず、『こっち!!』と言って走り出す。
「なっおい待てって!!」
スコーンが走り出すと、泣き続けていたトルテやガレット達も、あとを追いかけた。
・・・辿り着いたその場所は、ポルと別れた十字路だった。
「ポル!!」
五人の目に飛び込んできたのは、ぐったりとして動かないポルと、そんな彼を今まさに貪り喰おうとしている魔女の姿。
・・・真っ先に動いたのは、またしてもスコーンだった。
スコーンは鋭く尖った岩を拾い上げると、魔女のもとへと駆け寄った。
そして、その岩を魔女の首筋に向かって、力一杯振り落とした。
「ポルに、近づくな!!!」
振り下ろされた岩は、確かに魔女の首に深く突き刺さった。
さすがの魔女もこれには堪えたのか、ポルからふらふらと離れた。
スコーンは魔女を気にしつつも、ポルの隣にしゃがみこむ。
トルテが駆け寄ってきて、ポルの体を軽く揺する。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん!!死なないで、お兄ちゃん!!!」
だんだん揺する力を強くするトルテを、スコーンは慌てて止める。
「やめろ!んなことしたら、死ぬだろ!!俺が診るから、あんたらは魔女のこと見張っとけ!!」
スコーンにそう言われたトルテは少し顔をしかめたが、ガレットが「スコーンは、お医者さんの息子なの」と言うと、納得したようで素直に従った。
魔女の見張りをトルテ達に任せ、スコーンはポルの傷を診る。
ブシュウッと、折角止まっていた血が勢いよく噴き出す。
その量の多さに、さすがのスコーンも恐怖の色を羽化ぺた。
「あ・・・」
出血の量が、多すぎる。
医者の息子とはいえ、スコーンもまだまだ子どもだ。
傷口を塗ったり、塞いだりといった手当てのしかたなど、彼はまだ知らない。
とにかく、これ以上出血させてはいけないと思ったスコーンは、慌ててハンカチを取り出してポルの傷口に当てると、体重をかけて止血しようと試みる。
ぐっと両手で傷口を押さえて血を止めようとしたが、まったく止まる気配はない。
ポルの顔から、だんだん血の気が引いていく。
触れている肌から温もりが消えていくのを感じ取ったスコーンは、ポルに向かって叫んだ。
「死ぬな!ポル!!あんた、やっと妹に逢えたんだぞ!?妹ほっておいて、死ぬつもりかよ!?あんたがいなくなったら、独りぼっちになるんだぞ!!だから、死ぬなポル!!」
スコーンが、必死に訴えかけ続ける。
その時、ポルの瞼がピクッと動いた。
うっすらと目を開き、ポルは声を絞り出す。
「お、れは・・もう、と、てを・・一人に、しな、い・・・」
ポルの声が聞こえたのか、トルテがポルとスコーンのもとに駆け寄ってくる。
トルテはポルの右手をぎゅっと握り締めた。
「お兄ちゃん・・・」
そっと声をかけてくるトルテに、ポルはほんの少しだけ口元を緩めた。
トルテがスコーンを見ると、スコーンは「もう大丈夫だ」と言うように頷いた。
それを見たトルテは、ほっとしたのかまた泣き崩れてしまった。
スコーンはそんな彼女の背中を、ポルの代わりに撫でてやった。
「スコーン!!魔女が……!!」
そんなガレットの声で、スコーン達ははっとして魔女の方を見た。
魔女は、いつのまにか立ち上がっていた。
その手には、どこから飛び出したのか、大きな肉切り包丁が握りしめられている。
・・・まずい。
その場にいた全員が、そう感じた。
子どもや女性の力では、魔女を倒すことも、殺すこともできない。
唯一魔女を倒せる可能性があるポルも、もう動くことができない。
もう、駄目だ。。
ガレット達の脳裏に、絶望と言う言葉がよぎる。
反撃する力もなければ、逃げることもできない。
ガレット達は、すべてを諦めてギュッと目を瞑った・・・
ー・・・この子達に、手出しはさせません。
魔女・ザッハトルテ……ー
戻ってきたスコーンのおかげて、なんとか命をとりとめたポル。
しかし、彼らに迫る魔女。。
諦めかけたその時、聞こえてきたなぞの声。。
その声の主とは……?