お菓子のお家   作:深緑の古龍

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前回の続きです。
今回は、前に送ったものの子ども視点となります。


八章 絶望

「お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・」

トルテはそう呟きながら、泣きじゃくる。

ガレットは、そんなトルテの背中を優しく擦り、なんとか泣き止ませようと試みている。

「泣かないで、トルテさん。ポルなら、きっと大丈夫よ。だから、一緒に出口を探しましょ?」

優しく言い聞かせるガレットだが、トルテはいっこうに泣き止む気配を見せない。

ぐずぐずと泣き続けているトルテに、今まで黙ってみていたスコーンが、痺れを切らせて声をかける。

「あんた、俺達より年上だろ?しっかりしてくれよな。。・・・はあ。出口もみつかんねーし、どうしろって言うんだよ……」

呆れたように、スコーンは深い溜め息を付いた。

・・・ポルがこの場にいてくれたなら。。

つい、そんなことを考えてしまう。

ポルがいれば、きっと何かしらのアドバイスをしてくれたはずだ。

それに、このメンバーももう少しはまとまっていただろう。現に、ポルが抜けるまでは皆仲が良かった。

ポルは、皆の不安を取り除くために、色々と気を使ってくれていたのだと、スコーンは改めて感じた。

その彼がいなくなった今、全員バラバラ状態だ。

ポルがいなくなってしまったというだけで、ここまでまとまりがなくなってしまうとは思っていなかったスコーンは、頭を悩ませる。

「はぁ・・・・・・」

スコーンは、また大きな溜め息を付いた。

ティラミスは意気消沈していて、動こうとしない。

レイに至っては、ポルがいなくなって不安がぶり返したせいだろうか。ガレットの背中に張り付いたまま、離れようとしない。

誰も歩きだそうとはせず、スコーンは諦めたように首を振った。

すると。

『早く、早く来て!!』

ガナッシュが、三度スコーン達の前に姿を現した。

スコーンは、少し眉を潜めながらガナッシュを見つめる。

『早く!!・・・ポルが、死んじゃう!!!』

「?!ポルが!?どういうことだよ!!」

ポルが死ぬ。

その言葉に驚き、スコーンが尋ねる。

ガナッシュは彼の問いには答えず、『こっち!!』と言って走り出す。

「なっおい待てって!!」

スコーンが走り出すと、泣き続けていたトルテやガレット達も、あとを追いかけた。

 

・・・辿り着いたその場所は、ポルと別れた十字路だった。

「ポル!!」

五人の目に飛び込んできたのは、ぐったりとして動かないポルと、そんな彼を今まさに貪り喰おうとしている魔女の姿。

・・・真っ先に動いたのは、またしてもスコーンだった。

スコーンは鋭く尖った岩を拾い上げると、魔女のもとへと駆け寄った。

そして、その岩を魔女の首筋に向かって、力一杯振り落とした。

「ポルに、近づくな!!!」

振り下ろされた岩は、確かに魔女の首に深く突き刺さった。

さすがの魔女もこれには堪えたのか、ポルからふらふらと離れた。

スコーンは魔女を気にしつつも、ポルの隣にしゃがみこむ。

トルテが駆け寄ってきて、ポルの体を軽く揺する。

「お兄ちゃん、お兄ちゃん!!死なないで、お兄ちゃん!!!」

だんだん揺する力を強くするトルテを、スコーンは慌てて止める。

「やめろ!んなことしたら、死ぬだろ!!俺が診るから、あんたらは魔女のこと見張っとけ!!」

スコーンにそう言われたトルテは少し顔をしかめたが、ガレットが「スコーンは、お医者さんの息子なの」と言うと、納得したようで素直に従った。

魔女の見張りをトルテ達に任せ、スコーンはポルの傷を診る。

ブシュウッと、折角止まっていた血が勢いよく噴き出す。

その量の多さに、さすがのスコーンも恐怖の色を羽化ぺた。

「あ・・・」

出血の量が、多すぎる。

医者の息子とはいえ、スコーンもまだまだ子どもだ。

傷口を塗ったり、塞いだりといった手当てのしかたなど、彼はまだ知らない。

とにかく、これ以上出血させてはいけないと思ったスコーンは、慌ててハンカチを取り出してポルの傷口に当てると、体重をかけて止血しようと試みる。

ぐっと両手で傷口を押さえて血を止めようとしたが、まったく止まる気配はない。

ポルの顔から、だんだん血の気が引いていく。

触れている肌から温もりが消えていくのを感じ取ったスコーンは、ポルに向かって叫んだ。

「死ぬな!ポル!!あんた、やっと妹に逢えたんだぞ!?妹ほっておいて、死ぬつもりかよ!?あんたがいなくなったら、独りぼっちになるんだぞ!!だから、死ぬなポル!!」

スコーンが、必死に訴えかけ続ける。

その時、ポルの瞼がピクッと動いた。

うっすらと目を開き、ポルは声を絞り出す。

「お、れは・・もう、と、てを・・一人に、しな、い・・・」

ポルの声が聞こえたのか、トルテがポルとスコーンのもとに駆け寄ってくる。

トルテはポルの右手をぎゅっと握り締めた。

「お兄ちゃん・・・」

そっと声をかけてくるトルテに、ポルはほんの少しだけ口元を緩めた。

トルテがスコーンを見ると、スコーンは「もう大丈夫だ」と言うように頷いた。

それを見たトルテは、ほっとしたのかまた泣き崩れてしまった。

スコーンはそんな彼女の背中を、ポルの代わりに撫でてやった。

 

「スコーン!!魔女が……!!」

そんなガレットの声で、スコーン達ははっとして魔女の方を見た。

魔女は、いつのまにか立ち上がっていた。

その手には、どこから飛び出したのか、大きな肉切り包丁が握りしめられている。

・・・まずい。

その場にいた全員が、そう感じた。

子どもや女性の力では、魔女を倒すことも、殺すこともできない。

唯一魔女を倒せる可能性があるポルも、もう動くことができない。

もう、駄目だ。。

ガレット達の脳裏に、絶望と言う言葉がよぎる。

反撃する力もなければ、逃げることもできない。

ガレット達は、すべてを諦めてギュッと目を瞑った・・・

 

 

ー・・・この子達に、手出しはさせません。

魔女・ザッハトルテ……ー




戻ってきたスコーンのおかげて、なんとか命をとりとめたポル。
しかし、彼らに迫る魔女。。
諦めかけたその時、聞こえてきたなぞの声。。
その声の主とは……?
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