長い……ですかね?(^-^;長かったら言ってください、もう少し区切ります。
あと未だにユウキ出すか(SAOに)決め兼ねてます。意見ありましたらお願いします。
一応投稿前に読み返してはいますが、誤字などあるかも知れないので、見つけましたら知らせてくださいm(._.)m
sideトウヤ
俺はキリトに片手直剣のソードスキル《スラント》を見せてもらった後は、時々ポップしてくるフレンジーボアを狩り続けていた。
キリト曰く、ソードスキルの使い方や動き方も完璧で、アドバイス出来ることは特にないとか。まあ、動き方については、現実世界と特に変わらないので、そこはいままで様々な世界で戦い続けた経験がそのまま生きているのだろう。ソードスキルについては、発動の仕方さえ分かってしまえば特に問題はないだろう。
とはいえ、その発動の仕方がわからない奴が今俺の目の前で四苦八苦している。
「んー!アレ?ぜんぜん出来ねーなぁ……こうか?せぃやぁっ!!」
おう、前見ろよ?クライン君?
ソードスキルが発動しないと騒いでいるうちに、クラインはフレンジーボアに突進され吹っ飛ばされた。
「ぁ…がぁ!股ぐら!!」
「イヤイヤ、このゲーム痛覚は無いはずだろ」
「あ、そうだった」
仕方ねぇなぁ、少しアドバイスしてやるか。
「あのな、クライン。重要なのは構えだよ、そんで後はタイミング良く技を発動させるだけ。発動までやれば後はシステムのアシストに従ってお前の体が勝手に技を使ってくれる」
「へぇ…構えが重要ねぇ…なるほど」
俺の説明を聞いて、再びこちらに向かってくるフレンジーボアに、クラインは向き直る。
「トウヤ、説明するのうまいな」
フレンジーボアに集中しだしたクラインに代わって、キリトが話しかけてきた。
ちなみにキリトも一応クラインに説明したのだが、彼の説明では今のところうまく行っていない。
「うん?まぁ……物わかりの悪い奴と長いこと一緒に居たからね」
まあ、物わかりの悪やつに限らず、色々とキャラの濃い人物達と俺は関わってきたが。
「?……ふぅん、そうなのか?」
お互いにリアルの事など分からないためか、キリトの返事は曖昧だった。
そんな曖昧な返事を聞きつつ、俺は視線をフレンジーボアと対峙するクラインに向け続けている。
さて、今度はうまく行くだろうか?
まっすぐに突撃してくるフレンジーボアに対して、クラインが曲刀を構える。すると、刀身がピンクに光だし、クラインがタイミング良く《リーパー》を放った。
「お疲れさん」
フレンジーボアを倒して子供のようにはしゃぐクラインに労いの言葉をかけてやる。
「まあ、いまの敵スライムクラスだけどな」
隣でキリトがそう言う。あー、それで体の色が青いのかあのイノシシ。関係ないか。
「マジ!?オレァてっきり中ボスくらいかと……」
「フィールドに中ボスがうろついてるとかどんなクソゲーだよ?」
「そうだぜ、そんなわけ無いって」
俺のツッコミにキリトも合わせる。
「で?どうすんだ?もう何回かやってモノにした方がいいんじゃねぇの?」
さっきのまぐれかもしれないしね?
「まぐれじゃねぇって!…ああ…まだ続けたいところなんだが、俺5:30にピザ予約しててよ」
そうクラインが言うので、時間を確認してみると、5:17分。成る程、確かにそろそろログアウトしておいた方が良い時間かもしれない。
「だったらフレンド登録だけでもしておこうぜ?…トウヤも」
「ん?ああ別に構わないよん」
というわけで、この場の三人がそれぞれをフレンドに登録してクラインがログアウトする事になった。
「トウヤはどうする?もう落ちるのか?」
「いや、いまのうちにホルンカとかいう次の村にでも向かおうかねぇ……って思ってるんだが…」
「……そうか、だったらちょうど良いし俺も……」
「アレ?ログアウトボタンがねぇぞ?」
キリトと話していると、クラインのそんな声が聞こえたので、俺もキリトもそちらを向き、ログアウトコマンドの位置を教えてやる。
「あ、いや、そこにも無いんだって」
俺とキリトは一瞬そんなバカなと顔を見合わせ、それからすぐにメインメニューを操作する。
「およ、確かに無いねぇ?」
「だろう?」
「ホントだ……」
事前に説明書を見た場所にはログアウトコマンドのメニューは存在しない。一応と他の場所もくまなく探してみたが、やはり見あたらなかった。
「まあ、サービス初日だかんな、今頃GMコールが殺到して運営は半泣きだろうよ」
ふぅん?と考えつつ、とりあえずクラインにこれだけは言っておいてやることにする。
「余裕ぶっこいてるところ悪いけどよ?お前ピザは良いのかい?」
するとなにやら嘆くように騒ぎ出したクラインを意識の外にやりつつ、俺はふと考える。
ここは、物語の世界の中なのだと。
つまり、ドラマチックで劇的な何かが怒ることは確定しているも同然。ならばコレが何らかの始まりで有る可能性は高い。
他に方法は無いのか?いや無いよ。というような会話を聞きつつ、俺は呟いた。
「こりゃあ、何かイヤな予感がするねぇ…」
「トウヤ?」
その呟きを聞いたのか、キリトが不思議そうな顔で俺を見る。
「それにしても……なんかおかしいなぁ」
少なくとも、これから始まるのはあまり笑えるものでは無い気がする。
「ああ、確かにそうだな」
キリトが俺の言葉に同意する。
「おかしいって……バグなんだから、そりゃそうだろ?」
クラインはよく分からないようでそんな言葉を返してきた。
「そうじゃなくて、おかしいのは対応の仕方だよ、クライン。ログアウト出来ないってのは結構致命的なバグだろう?特にこの手の…VRゲームでは」
「ああ、これからの運営に関わる大問題だ。お前のピザみたいにリアルで金銭的な損害を被った奴だって、お前以外にもいるだろうし」
そう、ログアウト出来なくて困るのはどちらかというと運営よりプレイヤーである俺たちだ。
キリトの言葉に俺はさらに続けた。
「今のこの状況、俺だったらまず全員強制ログアウトさせて、あとは公式サイトにお詫び載せるなり、別のにナウンスをするなり。とにかくそういう対応を取るぜ?」
「ああ、それが妥当だよな。それなのに……俺達がこのバグに気づいて15分は経ってるはずなのに、いまだに運営からアナウンスすら無いのは奇妙すぎる。……もしかしてトウヤのイヤな予感ってソレのこと言ってたのか?」
「……んー……ログアウト出来ない……で済めば良いけどねぇ?」
超六感を信じるならもっと面倒事になりそうなのだが。
「おいおい、この状況で洒落にならねーこと言わないでくれよ。ていうか、ピザどうしよう……」
いや、それは時間過ぎてるし諦めるしか無いだろう?
「外の人にナーヴギアを取り外して貰うとかが現実的だけど……こっちからじゃ現実世界に連絡取りようがないもんな」
「その手があったか!……あ、でも俺ぁ一人暮らしなんだよなぁ……」
「俺もだな。キリトはご家族はいるのかい?」
「うん、まあ妹とかいるけど……多分この時間じゃまだナーヴギアを外しに来たりはしないだろうな」
今のところ全員ログアウトは望み薄か。
俺は転生者な上に身体能力なども異常だ。ロードラの世界では17年寝たきりでも身体能力は一切衰えなかったほどだ。数日ログアウト出来ない程度気にすることはない。が、長引けばクラインの方は危ないだろう。人間なんて数日飲まず食わずになれば衰弱するものだ。
そんな事を考えていると、《始まりの街》の方角から鐘の鳴る音が聞こえてくる。
「なんというか、不気味に聞こえるぜ」
そんな俺の言葉に、考えすぎだろ、と苦笑しながら二人が返そうとした瞬間に、俺達全員の身体を青い光が包み込んだ。
「この光……《転移》?」
キリトの呟きと同時に、俺の立つ場所が草原から石造りの地面に変わる。
ここは……。
「《始まりの街》か?」
周りにはかなりの人数が居る、下手をすればこのゲームにログインしている全員が集められているのかもしれない。
そんな中、俺はふと頭上から視線と死線と気配を感じ、ゆらりと空を見上げた。
sideキリト
青い光に包まれて俺達がやってきたのはこのゲーム、ソードアート・オンラインのスタート地《始まりの街》だった。
クラインとトウヤもすぐ近くに転移している。そのことに少し安堵しつつも、俺は周りを見回した。
かなりの人数のプレイヤー、おそらくログインしている全員がこの《始まりの街》の広場に集められているのだろう。
だが……何故?何故自分達はここに集められたのだろうか?
「おい、どうなってんだよ!?」
「早くしてくれよ!」
「GM出てこい!!」
など、様々な怒号が広場を飛び交う。
「運営からなんかアナウンスでも有るのか?」
キョロキョロと辺りを見回しながら、俺に話しかけてきたクラインに、どうだろうな、なんて言葉を返しながら、ふと、先程から一言も喋らないもう一人、トウヤの事が気になって彼が居るはずの後ろを振り返る。
振り向いた先に居たその金髪の少年は、その青黒い瞳で、訝しむような視線をジッと上空に向けていた。
上に何かあるのか?と、俺もトウヤの視線につられ上を見上げる。
見上げた先に浮かんで居たのは、《warning》《System Announcement》の表示がある赤い模様だ。
「へぇ……」
と、トウヤの発した声に俺は彼の方を再び見る。
「これは……面白い事になってきたなぁ」
そう言って、楽しげ、と表現するに相応しい笑みをトウヤは浮かべる。
だが、その口元の楽しげな表情の一方でさらに細められ、鋭くなったその目つきはいささかも笑ってはいなかった。
何故?何故トウヤはこんな表情をしている?
いまだに、この状況を飲み込めていない俺やクライン、ほぼ全員のプレイヤーと違い、トウヤのその目は、眼は、何かを確信したかのように、焔のごとく紅く揺らめく。
これから、運営からのアナウンスがあるだけだろう?そう言ってやりたいのに、言えない。いや、言わせない何かを確かに俺は感じていた。
「あっ…………上を見ろ!」
誰かのその言葉に、ほぼ全員のプレイヤーが上を見上げた気配がし、続いて、トウヤが。
「お出ましか」
と、呟く。
何が?と思いながら、先程の赤い模様がある位置を俺が見上げると、ちょうど赤い模様が第二層の底を染め上げるように広がり、その中央から血液のような何かがドロリと垂れてくるところだった。
その何かは、ぐにゃりと蠢き一つの形を保って上空で静止する。
出現したソレは、全高20メートルは有るであろう、真っ赤なロープを纏った巨人だった。
もっとも、巨人と言っても、フードの中には顔もなくローブの袖から、白い手袋にかけては腕が見あたらない。
つまり中身は空っぽなのだ。
「あれで杖を持ってたら、アルプトラウムにそっくりだな」
誰だよ?アルプトラウム?
トウヤの言葉に内心で疑問を投げかけつつ、俺は出現した赤ローブを見据える。
やがて、低く、落ち着いた、それでいてよく通る声が広場に響く。
『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』
その言葉に、俺は首を傾げる。「私の世界」、あの赤ローブがGMなら、確かにアレはこのソードアート・オンラインの世界を自由に操作する権限を持つ……言わば神の如き存在であろう。
が、今それを宣言することに何の意味があるというのだろうか?
はっきり言ってユーザーの反感を買うだけだ。
『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』
「なっ…………!?」
続いた赤ローブの言葉に、俺は絶句していた。恐らく周りの全員がそうだろ…「誰だよ?茅場晶彦?」
…………マジですかトウヤさん。まさかこのSAOの開発ディレクター&ナーヴギアの基礎設計者の名前を知らないとは、どんだけ情弱なんだ!?
その割にSAOのゲームシステムはちゃんと下調べしてるのに!!
『プレイヤー諸君は、すでにメイメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う。しかしこれはゲームの不具合ではない。繰り返す』
《これは不具合ではなく、ソードアート・オンライン本来の、仕様、である》
その一言がやけに頭に響く。
「し………、仕様…だと?」
クラインが呆然と呟いたのを俺はどこか遠くの事のように聞いていた。
コイツは何を言っている?
疑問に答える事無く滑らかなアナウンスは機械的に続く。
『諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることはできない』
城?城なんてどこに?そんな俺の疑問は、後ろで黙って話を聞いていたトウヤの呟きが解決してくれた。
「アインクラッド…?」
「あ…!」
成る程、城というのは、アインクラッド、つまりソードアート・オンラインの舞台そのものということか。
しかし、このアインクラッドは100層もあるのだが……?
俺の戸惑いは、しかし茅場晶彦の続く言葉に吹き飛ばされた。
『…………また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除も有り得ない。もしそれが試みられたれ場合……ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる』
俺は思わずクラインと呆けた顔を見合わせた。
脳そのものが、今の言葉の意味の理解を拒んでいるかのようだ。
そういえばトウヤは?と見てみると、案外金髪の少年は落ち着いた風で、顎に手をやり何かを考えているようだった。
なんでこんなに落ち着いてるんだよ?いや、多分トウヤもこの状況を受け止めきれていないのだろう。
だが……赤ローブの言葉を意味通りに取るなら、それはつまり「殺す」と言っているのだと理解し、俺は急に膝が震えるのを感じた。
「はは……何言ってんだよアイツ、おかしいんじゃねぇのか。んなことできるわけねぇ、ナーヴギアはただのゲーム機じゃねぇか。脳を破壊するなんて…そんなことできるわけがねぇんだ!」
「イヤ、出来るよ」
クラインの掠れた叫び声に、後ろからゾッとするほどつめたい声がかかる。
え?と、俺やクラインを含めた数人の周りの人間が、今の声の主……トウヤに視線を向けた。
当の本人、視線を向けられたトウヤは、やはりじっと赤ローブを睨み据えたままで言葉の続きを言う。
「難しい言葉に騙されるな、今奴が言ったのを誰にでも分かるように要約するなら……人間の脳をナーヴギアがチンするって言ったんだよ」
チンする……その言葉を聞いた者が思い浮かべたのは同じだったはずだ。
「チンって……トウヤ、お前……電子レンジじゃねぇんだからよぉ……」
「仕組みは確かに、電子レンジだ……原理的には……出来る?」
でも……。
「でも、ハッタリだ、だっていきなりナーヴギアの電源を引っこ抜けば、とてもそんな高出力の電磁波は発生されないはずだ……」
「…ん?ああ……言われてみればそれもそうか、でも、俺とクラインは一人暮らしだし、どっちにしてもログアウトにはまだ時間が掛かるだろうぜ……」
納得したようなトウヤの口調に、俺が安心したのも束の間、クラインの言葉がその安心を打ち砕く。
「いや、お前ら、電源を引っこ抜いても無理だ……ナーヴギアには内蔵バッテリーがある。ギアの三割はバッテリセルだって聞いた」
「あ……!?」
クラインの言葉に、聞き耳を立てていた数人も絶句する。
「マジかよ……やけに重いと思ったらそういう事か……」
「でも……無茶苦茶だろそんなの!瞬間停電でもあったらどうすんだよ!?」
ほとんど悲鳴に近いクラインの声を聞いていたかのように、上空から茅場の声でアナウンスが再開された。
『より具体的には、十分間の外部電源切断、二時間のネットワーク回線切断、ナーヴギア本体のロック解除または破壊の試み……以上のいずれかの条件によって脳破壊シークエンスが実行される。この条件は、すでに外部世界では当局およびマスコミを通じて告知されている。ちなみに現時点で、プレイヤーの家族友人等が警告を無視してナーヴギアの強制除装を試みた例が少なからずあり、その結果…』
一度、そこで言葉を一瞬区切る赤ローブ。次の瞬間には、どこかのメディアのニュースの映像などがいくつも赤ローブの周りに出現する。
LIVEと表記されたそのニュース映像からは、これが現実にリアルタイムで起きていることを予想するのは容易い。
『残念ながら、すでに213名のプレイヤーが、アインクラッドおよび現実世界からも永久退場している』
永久退場……つまり《死》。
「多すぎるな」
吐き捨てるように、トウヤが言った。
確かに…と思う。すでに200人以上が死んでいると奴は今奴言ったのだ。
「信じねぇ……信じねぇぞオレは」
座りこんだクラインが嗄れた声でそう言う。
「ただの脅しだろ。できるわけねぇそんなこと。くだらねぇことぐだぐだ言ってねぇで、とっとと出しやがれってんだ。いつまでもこんなイベントに付き合ってられるほどヒマじゃねえんだ。そうだよ……イベントだろう全部。オープニングの演出なんだろ。そうだろ」
そう思いたい、そんな願いを込めて俺が見上げた赤ローブはしかし、あくまで実務的なアナウンスを続行する。
『諸君が、向こう側に置いてきた肉体の心配をする必要はない。現在、あらゆるテレビ、ラジオ、ネットメディアはこの状況を、多数の死者が出ていることを含め、繰り返し報道している。諸君のナーヴギアが強引に除装される棄権はすでに低くなっていると言ってよかろう。今後、諸君の現実の身体は、ナーヴギアを装着したまま二時間の回線切断猶予時間のうちに病院その他の施設へと搬送され、厳重な介護態勢のもとに置かれるはずだ。諸君には、安心してゲーム攻略に励んでほしい』
「な…………」
信じられない。
「何を言っているんだ!ゲーム攻略だと!?ログアウト不能の状況で、呑気に遊べというのか!?……こんなもの、もうゲームでも何でもないだろうが!!」
またも、まるで俺の声が聞こえていたかのように、赤ローブが告げる。
『しかし、充分に留意してもらいたい。諸君にとって、《ソードアート・オンライン》はすでにただのゲームではなく、もう一つの現実とでも言うべき存在だ。今後、ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。』
「ん?」
トウヤが、後ろでまゆを顰める。
『ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、同時に…………諸君等の脳は、ナーヴギアによって破壊される』
シンと、広場全体が静まり返る。全員が息を止めたかのように立ち尽くしていた。
いや、正確には一人だけ違った。
「アバターの残存HP=現実の命の残量…………俺は死ぬのかねぇ?」
茅場の言葉を確かめるように、トウヤが呟く。このとき、後半の言葉は、トウヤが死に恐怖したが故の台詞だと俺は思ったが、実はそれは違っていた。
もっとも、この時俺はそんな事は分からないので、俺はこう言った。
「馬鹿馬鹿しい、そんなことあるはずがない」
今の話を、ゲーム内でHPが無くなったら現実でも死ぬという話を聞いて、フィールドに出る馬鹿など居ないはずだ。
全員安全な街区圏内に引きこもり続けるに決まっている。
が、赤ローブはそんな俺の思考を読んでいるかのように、次なる言葉を発した。
『諸君がこのゲームから解放される条件は、たった一つ。先に述べたとおり、アインクラッド最上部、つまり第百層までたどり着き、そこで待つ最終ボスを倒してゲームをクリアすればよい。その瞬間、生き残ったプレイヤー全員が安全にログアウトされることを保証しよう』
「クリア…………第百層だとぉ!?んなもん無理に決まってるだろ!!ベータじゃろくに上がれなかったって聞いたぞ!!」
クラインが立ち上がり言ったとおり、千人のベータテスターが参加したベータ版では、二ヶ月の期間中にクリアされたのはわずか六層までたったのだ。
いくらプレイヤーの人数が違うとは言え、デスゲームと化したこの状況では、クリアまでに何年かかるかわかったものでは無い。
が、赤ローブはそんな言葉に構うことなく。
『それでは、最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれ給え』
と、締めくくりとばかりに言った。
その言葉を聞いて、ほぼ全員が機械的にアイテムストレージを開いた。
所持品リストの一番上に、その《プレゼント》はあった。
手鏡。
そのアイテムを警戒しながらオブジェクト化させ手に取るが、特に何かが起こる気配はない。首を傾げ、クラインとトウヤの方を見ると、クラインとは手鏡を手に呆然としており、トウヤはこちらを見て首を振った。
と、突然広場に居た全員のアバターを白い光が包み込んだ。
例外なく、俺も光に呑まれ視界がホワイトアウトする。
ほんの数秒で晴れた視界の先に映ったのは知らない人物だった。
いや、装備は先程のクラインと同じ、つまり。
「お前、クラインか?」
「ん!?おめぇがキリトか?」
成る程、どうやら俺の顔もリアルのものになっているようだと、手紙を覗き確認して、俺とクラインはほぼ同時にトウヤの方を見た。
そこに居たのは、先ほどまでの金髪の少年とは打って変わって……まるで少女のような人物。
「トウヤ、おめぇ……女の子だったのかよ!?」
クラインの驚く声にうんざりしたようにため息をついた少女は、自分の髪を確認してもう一度ため息をついた。
「なんで髪纏めてるところまで再現してくれないのかねぇ?……ちなみにクライン、こんな見た目でも俺は男だよ」
そう言って、少女……おっと違った。トウヤは一瞬だけ左手で髪を纏めて見せた。
なるほど、そうやって髪を後ろで纏めると確かに少年に見えなくもない。
だが、すぐに纏めるのを止めた、背中の半ばまで伸びた艶やかな黒髪。
色白で、その上整った顔。焔の如く紅い両目。
ハッキリ言って、今の姿だと男だと言ってもあまり説得力は無い。
声が高めなのもトウヤが少女に見える原因に拍車をかけている。
「えぇ……ホントかよぉ?」
まあ、クラインが信じられずに疑うように言うのも無理はない。俺だっていまだに信じられない。
「そんなことよりもお前よぉ……気になることは他にねぇのかよ?」
「なんかその姿と声でそんな風に言われると、口の悪い女の子に罵られてるみたいな気分になるな」
うわぁ、と……クラインの発言に俺は一歩クラインから距離をとる。
トウヤは、おもいきり「うわぁ……気持ち悪いわぁ」と口にしながら、その紅い瞳でクラインに路傍のゴミを見るような視線を向けた。
うん、緊張感の全くないやり取りだ。
「ところで、トウヤ気になることってのは?」
俺の言葉に、クラインから死線をはずしたトウヤは、急に真面目な表情になり、赤ローブを視線で指した。
「アイツが、茅場さんとやらがこんな事をした理由さ」
確かに、目的はなんだ?と、俺たちは上空に浮かぶ赤ローブ。茅場晶彦に視線を投げた。
アルプトラウムとは、ロードラのユニットの一人です。
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