side?
まさか、10001人目が女の子だったとは。
この距離だとカーソルが出ない。困ったものだな。ここはもう少しレベルを上げて《索敵》スキルの範囲を拡張するしかないだろうか。
せめてもう少し近づければ……。
sideトウヤ
なんかこっちの様子見てる奴がいる気がするんだよなぁ。そう言えばキリトがSAOは女性の比率が少ないって言ってたな……そのせいか?いや、でもごめんよ?悲しいけど俺、男なのよね!
別に悲しくはないか。
俺は《アニール・ブレード》をとりあえず10本集め終わったので、《トールバーナ》に移動してきていた。
移動した翌日から迷宮区の探索にのりだし、つい昨日ボス部屋を発見したところである。
ちなみに一人で挑んでみたのだが、フロアボスの《イルファング・ザ・コボルトロード》のHPバーを半分削ったところで俺のHPがイエローになったので引き上げてきた。
あれから《近接戦》スキルの使い方にも慣れてきたし、レベル結構上がっていた。
ちなみに、コートの経験値上昇効果はパーティーメンバーにも発動する事がわかった。そのおかげでキリトのレベルもかなり上がっている。
現在の俺のレベルは18。
キリトが16だ。
「久しぶりだナ、トウヤ」
今日はとりあえずダラダラ過ごそうと決め、《トールバーナ》の街中をうろついていると、顔にネズミの髭のようなペイントをした、フードを被った少女に話しかけられた。
もちろん知らない子である。
「誰?」
とはいえ、コイツは今俺のことをトウヤと呼んだ。つまり少なくとも向こうは俺のことを知っているようだ。
「オイラはアルゴだよアルゴ」
アルゴ……ああ!デスゲームが始まる前にそう言えば会っていたなぁ。
「お前なんで外見変わってるのに俺がトウヤってわかったんだよ?」
「キリトに聞いた」
ああ、成る程ね。今アイツ迷宮区かな?昨日俺にも来るように頼んできたけど。まあ俺がついてけば獲得経験値3倍だからなぁ。
「ふぅん。で?何か用かな?」
「一層のボス部屋が発見されたのは知ってるカ?」
「まあ、発見したの俺だしね?」
「え?ディアベルって奴だったはずだけどド」
ふぅん?知らないなぁ。つまりそいつも見つけたという事だろうか。
「それで明日ボス攻略会議をこの町で開くらしいゾ」
ボス攻略会議かぁ……。開く意味あるの?というか何人で挑む気なの?あれ取り巻き4体居たけど俺一人でもボスのHP四本中二本削れたしなぁ。ちゃんと作戦立てれば俺とキリトとあと一人くらいいればなんとかなる気がするけどなぁ。
「お、オイトウヤ。お前あれに一人で挑んだのかヨ!?」
「ゴメンなアルゴ、その説明については冒頭で終わってるからさ?」
「唐突にメタ発言!?」
それにしても……デスゲーム開始から今日でだいたい2ヶ月かぁ……このままだとあと何年かかるんだろうねぇ?
「それで、トウヤは攻略会議出るのカ?」
出ておいた方がいいのだろうか?
「出るんだったら時間と場所教えてやろうカ?」
「ん?ああ、知ってるのか?」
まあ、どうせキリトは出ると言い出すんだろうから俺も出ておきますかねぇ~その会議。
というわけで、俺はアルゴに明日の攻略会議の場所と時間を教えてもらい、またしばらく《トールバーナ》の街中を散策した。
「トウヤ、明日一層の攻略会議が開かれるって話聞いたか?」
やはり、攻略会議の事はキリトも知っていたようで、当然俺も行くことになった。
そう言えばキリトが、俺が攻略会議の情報アルゴに教えて貰ったってきいたら、「いくら取られた?」って聞いてきたけどなんの話だ?
翌日の昼過ぎ、俺とキリトは早めにフィールドでの戦闘を切り上げ、攻略会議の会場へと来ていた。
会場の広場にはすでにかなりの人が揃っている。ざっと数えたところ40人位である。
俺とキリトは適当に中央から遠い席についた。
少しすると、青い髪の人物が中央に立って話始めた。
恐らく、あれがディアベルだろう。
「40人くらいか……少し少ないな」
案の定ディアベルだった人物の話を聞いていると、キリトがそんなことを呟いた。
その言葉に、むしろ多すぎだろと感じていた俺は適当に返しておく。
「昨日俺たちのパーティーが一層のボス部屋を発見した!」
ディアベルの言葉に会場全体がざわざわとするが、俺は内心で、「見つけただけかよ」とツッコんでいた。
「トウヤは半分まで一人で削ったよな?」
似たような事を思ったのか、キリトがそんな事を言ってきた。
まぁ、俺はある意味チート使ってるようなものだからねぇ~。
それから、ディアベルが6人一組でパーティーを汲めと言ってきた。
「俺とトウヤは決定だよな?」
実はパーティー組むのに心配してたのか、不安そうに聞いてくるキリトに俺は苦笑しながら頷く。
というか俺もキリト以外に知り合い居ないし。
「あそこにいる赤いフードのも誘って良いか?」
キリトの指す方を見ると、一人でぽつりと座った赤いフードの人物が居た。
「一応知り合いだから」とキリトが言うので、いつ知り合ったのか疑問に思いながらも了承した。
俺から離れ赤フードに話しかけに行くキリトを見送っていると、不意に俺の肩がトントンと叩かれる。
「ん?」
そちらを向くと、赤いバンダナをつけた黒い髪の小柄な少女が居た。
「どうかしたのかい?」
「あ、僕まだ誰とも組んでなくて、もし邪魔じゃなければパーティーに入れてほしいんだけど…」
そう言って、チラリとキリトの方を見る少女。
「ああ、俺はかまわないよ、後はアイツがなんて言うかだけど…まぁ大丈夫だろうな」
一度赤いフードの人物に話しかけているキリトを一瞥してから少女に視線を戻すと、少女はキョトンとした顔をしていた。
「ん、何かな?」
「あえ、や、お姉さんが自分のこと俺って言ったから…」
あ、また女の子だと勘違いされてるパターンか。白とか赤系の服止めようかなぁ。
まあ、原因は服よりもここが圏内であるために、まゆのリボンが装備出来ず纏められていない髪のせいなんだけどね~。
「いや、こんな見た目だけど俺、男だぜ?」
そう告げると、しばらく少女は目を点にしていた。
それから、ハッと我に帰って。
「またまたご冗談を…………え?ホントに?」
と、全く信じられません。というかのようなリアクションである。
「ホントに」
そう答えながら手で髪を纏めるのだが、少女は「う~ん?まぁ男の子にも見えなくは無いかなぁ」と微妙な反応を示す。
女だという先入観が強すぎたんだろうね。第一印象大事!
そんなやりとりをしていると、キリトが赤いフードの人物を連れて帰ってくる。
それから黒い髪の少女もパーティーに入れて良いか確認を取った。
赤フードの方がアスナ。黒髪の少女はユウキというらしい。
とりあえずこの4人で決定かな?と考えていると、二十代半ばくらいの鉄灰色の髪の男がこちらに歩いてきた。
盾持ちの片手剣使いのようだ。
その人物は俺の前で立ち止まると。
「すまないが、まだ組んでいなくてね、空きが有るなら入れてもらえないだろうか?」
俺たちのパーティーは今4人なので、別に人数的には問題ない。
構わないかと視線で問うと、アスナ以外は頷いてくれた。
雰囲気的に俺が相手しなくてはならないようなので、頷いてパーティー申請を送る。
「ヒースクリフ……ね」
相手に聞こえないように名前を呟いていると、ディアベルがそろそろ良いかな、と中央で声を上げた。
まとめにさしかかったところで、「ちょー待ってんか!」と声がかかる。
あー、なんて言うんだっけコレ?関西弁?ヤバい涼宮ハルヒの憂鬱の世界以来使う奴なんてほとんど知らないから新鮮に感じる。
と、どうでも良いことを考えていると、声を上げた人物が中央の台の上に上がる。
「「モヤットボール!?」」
何故か、俺とヒースクリフが声を上げ、キリトが「オイ、聞こえたらどうすんだよ!」と小声でそれを窘める。
大丈夫。聞こえてても何ら問題はない。あんな髪型してるあいつが悪い。『僕は悪くない』。
「わいはキバオウって者や」
キバオウと名乗ったモヤットボールは、この攻略会議に参加している者の中に、死んでいった2000人に詫びを入れる必要があるものが居るはずだと言った。
言うまでもなく、SAOのベータ版テストプレイヤー。ベータテスターと呼ばれる者達だ。
その言葉に、キリトが少し顔を歪めた。まぁ、俺に言わせれば全ての元凶はかや…………かやなんとかさんであって、ベータテスターだって被害者だと思うのだが、どうやらキバオウはそうは思っていないらしい。
まあ、要するにこのキバオウという男、ベータテスターに八つ当たりしているも同然なのである。
とはいえ、俺がベータテスターを擁護する必要はない。全てのベータテスターがビギナーを見捨てた訳では無いにせよ、見捨てたテスターだって居たからだ。
「ベータテスターという言葉一つで1000人を一纏めにして、個々の差異には目も向けない。いやぁ……単純極まりない」
「トウヤ君?」
「ああ、何でもねーよ、どの世にもああいう奴は居るんだなって事さ」
不思議そうに俺を見てくるヒースクリフに適当に返し、俺は続く言葉を聞く。
どうやら、ベータテスター達は金やアイテムを差し出せと言いたいようである。
「トウヤ…」
「わかってる」
俺とキリトのレベルははっきり言って異常だ。その上、アイテムの確認などした日には、俺のアイテムストレージにあるチート装備がバレてしまう。
ここは一つあのキバオウが表立って発言できないように叩き潰して(立場的)おくべきだろう。
「そういうアンタ自身はどうなんだい?」
立ち上がって、俺が発言すると、周りから注目が集まる。
コレが、他の奴らだったりしたら、何言ってんだアイツ?という視線が目立つのだろうが、ここは俺の容姿がプラスに働いた。中には、「おっ、可愛いじゃん」とかいう発言をする奴までいる。
おいおい男だって言いだし辛くなったじゃねぇか。
「そりゃあ、普通皆考えつかないよね?表立ってベータテスターを糾弾する張本人がベータテスターだなんてさ?……流石ですねキバオウさん?アイテムやコルを他のベータテスターから巻き上げるために、随分と悪知恵を働かせたみたいだ」
俺のその発言に、ざわざわと会場が騒がしくなる。
つーか、女言葉を避けつつも分かりやすく男っぽい口調を使わないのって疲れるよぉ。
「なっ!?何いうとんねんねーちゃん!!わいはベータテスターとちゃうわ!!」
真っ赤になってキバオウが言うも、周りからは「嘘付け!」「証拠はあんのかよ」などという発言が目立つ。
「ベータテスターじゃないってあなたが口で言うのは簡単さ。けど今の状況だとあなたがベータテスターでその上アイテム巻き上げようとしたってほうが説得力あるよ?」
まあ、そうは言っている俺自身の超六感によるとコイツは100%ベータテスターじゃあ無いのだが。
「ぐっ!」
呻いて、周りを見回しているキバオウを放置して、俺はディアベルに視線を向けた。
「ディアベルさん!」
「え?俺?な、何かな?」
急に話を振られて驚いている所悪いが、これから先ベータテスター云々の会話が出ないようにしてもらいたいので役に立ってもらうとしよう。
「これから先の層でも言えることだけど……ボス戦に参加するのにベータテスターであるかどうかは関係あるのかな?」
その言葉に、ディアベルがハッとした顔になる。この顔はまるでチャンス!と言わんばかりの顔だが……?まさかディアベルもベータテスターなのか?
「いや、ボス戦参加にあたってベータテスターであるかは全く関係ない。ベータテスターは貴重な戦力だし、ベータテスターもビギナーもこのゲームに捕らわれた同じ被害者だと思うんだ。皆はどうだ?」
うん、ディアベルぐっじょぶ!
ディアベルの発言に、同意する意見が目立ち、キバオウの立場は完全になくなる。
さらに、ディアベルがそれでもどうしてもベータテスターと協戦出来ないという者は抜けてくれという発言に加え、エギルとかいう人物がベータテスターが無料で配った攻略本の事を持ち出し、完封した。
え?キリト……お前有料で買ったの?アルゴから?
コルは自動均等割り、アイテムはゲットした人の物となり、俺達は5人だったこともあり取り巻きの相手をする事に決まり会議はお開きとなった。
「トウヤ君」
俺達のパーティーは、一応明日のことを打ち合わせしておこうと話が纏まり、適当な店に全員で向かうことになった。
その途中、ヒースクリフが話しかけてきたのである。
「あ、ハイ?なんすか?」
返事をすると、神妙な顔で、俺の肩に手を置いてヒースクリフは言った。
「君、もう少し女の子らしく話した方が他の人から印象が良くなるぞ?」
…………パーティーメンバーの誤解くらいは解いておいた方が良いだろうか?
「いや、ヒースクリフさん。俺は男ですよ?」
「ハッハッハッ面白い冗談を……え?ホントに?」
うわぁ、このやりとりデジャヴ…。これから何度このやりとりをする事になるんだか。
と、視線を感じてそちらを見ると、赤いフードの…アスナがポカーンと口を開けてこちらを見ていた。
「オイ、アンタもかよぉ…」
「あ、ごめんなさい。えっと…人は見かけによらないんだね」
「いや、トウヤって名前からわかってもらえるかなぁって思ったんだけど?」
「…名前なんてわかる訳ないじゃない」
「パーティーメンバーの分は自分のHPバーの下に出てるよ、確認してみ?」
それから、店について話す内に、アスナとユウキがスイッチというものについても知らなかった事が判明し、俺がユウキにキリトがアスナにそれぞれレクチャーする事になった。
明日の14時からは、いよいよ第一層のボス戦が始まる。
sideヒースクリフ
ふう、なんとか自然にトウヤ君のカーソルに触れられたよ。しかしまさか男の子だったとは。キバオウ君が「ねーちゃん」と言ったとき否定しなかったからてっきり女の子で間違いないと思ったのだが、まあ、あのタイミングで男だとカミングアウトしたらややこしい事になっていただろうな。
それにしても…ボス戦に参加する事になってしまうとは。不死属性がついている上に、今は《神聖剣》も無いから明日は気をつけないといけないな。
とは言え…これでエクストラゲームは終わり、トウヤ君の実力をこの目で確かめるチャンスでもある。
ん?メッセージ?adolenakuからだと!?
なになに…?「新しいエクストラクエスト用意したけどやる?」
や る わ け 無 い だ ろ う ?
いやいや、別に一層でヒースクリフさんの正体が割れるフラグとかじゃあ断じてありませんよ?(^-^;
しかし、一層のボス戦にヒースクリフが参加する展開はSAOの小説では初だと思う!だから何ってわけでも無いですが…
キャラの口調とか変だったらご指摘下さい。感想お待ちしています!