とりあえずどうぞ!
あれから数日が経った。
未だに頬の感覚が忘れられない。
結衣はあんまり話してくれないし、隼人も表面上は普通に接してくるが、なんかいつもと違う。おかしい。俺の高校生活は、こんなんじゃなかったはずだ。スクールカースト最上位、ちなみに今まで言ってこなかったが、顔もかなりいい方だ(実際と自分で思っている)そんな俺が、こんなハブられ寸前みたいなことになってる。
それもこれも”あいつ”が悪い…
比企谷八幡。スクールカースト最底辺で、相模曰く「うちのことをいじめたサイテー野郎」らしい。それは相模以外からも、例えばゆっこや遥からも聞く。
でも…と、この間のことを思い出す。ー”あいつ”を守るのにあんなに真剣になっていた2人の少女。親友だと思っていた男の、自分への冷たい目ー
何が本当で、何が本当じゃないのか。どれが本物のー比企谷八幡なのかー
「ちょっと、色々聞いて回ってみるかな」
この間、退場させられたので確信は持てないが、おそらく戸部は修学旅行で姫奈に告白するつもりだろう。ってことは、そこで攻めるわけだ。そしてその時の助けとして、比企谷八幡を選んだのだ。班決めで俺は大和と大岡と一緒だ。ってことは隼人と戸部そして比企谷八幡は一緒なのだ。クソッ、ちょっと悔しいじゃねぇか。でも、告白なんて大事なことを成功させるために戸部は比企谷八幡に依頼した。葉山隼人は戸部を比企谷八幡の元に導いた。もしかしたら、今までの仲良しグループが終わっちまうかもしれないのに。そして、由比ヶ浜結衣と雪ノ下雪乃は、比企谷八幡のために俺をはたいた。
「ぼく、気になります!」
独り言をつぶやき、ちょっと顔を赤らめながら職員室へ向かった。
職員室に入ると、その人は優雅にスモーキングタイムだった
「先生!ちょっといいですか?」
「なんだ〜?横須賀か。お前から訪ねてくるとは、珍しいな。何かあったか?」
あれ?この人俺が来るのわかってたのかな…って勘違いするくらい珍しいって思ってなさそうだけど…まぁいい
「先生は奉仕部の顧問なんですよね?奉仕部ってなにするところなんですか?」
「ん〜説明は難しいが、簡単に言えば人の手助け、ようはお手伝いをする部活だ」
「なんかあんまよくわからないですね…まぁそこはいいや。比企谷八幡ってどんな奴なんですか?」
「ほ〜う。君からそんなことを聞くとは意外だな。君は、彼と接点があったのかね?」
だからこの先生…顔がもう接点あったんだろ?って言っちゃってるよ…この間のこと、やっぱ知ってんのか…
「いやまぁ、あれです。興味をもったんですよ。はい。比企谷君って、あんまり目立たない感じなのに…」
そこまで言って俺は言うのをやめた。これを言ってしまえば、俺は完全敗北だ。”あいつ”に
そんな俺を見ながら、平塚先生は熱を帯びた目で俺を見ながら口を開いた。
「…色々言われてるのは知っている。教師としてな。それが全て間違いだとは言わない。実際、あいつのやったことは間違っていた面もある。でも…」
視線を一度落とし、トントンと灰皿に灰を落としながら先生は
「比企谷は…優しい男だよ。理解している人間は少数だがな。あいつは臆病だしな。でも、それでも理解してくれる人がいる。これは大事なことだ。人が一番欲するものは、根源的にそれだからな」
だから…と先生は言葉を続ける”あいつ”のことを話す先生は、ハッとするくらい美しい。なんでこれで結婚できないのか?世の男性陣、見る目ないぞ!
「だから、横須賀。お前にもそのような人ができるよう、願っているぞ。教師としてな。私から話せるのは以上だ。あとは自分でもがき、苦しみ考えることだ。それがお前の成長につながるはずだからな」
「ありがとうございました。こんなに生徒想いな先生だと思わなかったですよ…ぼく」
「嬉しいこと言ってくれるなぁ。君は」
「だから早く結婚できるといいですね」
時が止まった。職員室全体の。となりの数学教師はガタガタ震えている。あれ?俺なんか変なこと言ったか?と思ってると
「抹殺の〜ラストブリットおおおおお!!!!!」
先生と話したのち、放課後になった。俺は帰宅部なので、なにもなければさっさと帰る主義なのだが、今日は違う。それにしても腹が痛すぎる。内面的な腹痛じゃなくて、外的要因で。みぞおちにパンチ食らうと腹痛くなるの法則、あるよね!?
「戸塚くん、ちょっといいかな?」
と一見すれば女の子にしか見えないれっきとした男の子に声をかける。
「え?ぼく?横須賀くんが話しかけてくるなんて珍しいね。どうしたの?」
「ちょっと聞きたいことあるんだ。時間取れない?」
「うーん。いいよ。僕も君に、聞きたいことあるからね」
あれ?天使が笑ってないよ。むしろ怒ってるよ。堕天使になってるよ。あっれー戸塚くんは”あいつ”とよく話してるから、何か聞けると思ったけど、地雷だったかなーーー
ところ変わって駅前のサイゼ。やっぱ高校生はサイゼでしょ。ちなみに、俺がいつも頼むのは若鶏のグリル(ディアボラ風)ね。行くたびに二つづつ頼んでるわ俺。でも今日はドリンクバーのみ。なんせそんな雰囲気じゃないからね!⭐️
「で、話って何?横須賀くん?」
戸塚彩加が聞いてくる。ちなみに、普段は見せないその鋭い視線も効いてきます。主にハートに。
「いやぁ、戸塚くんはさ、比企谷と仲いいでしょ?彼ってあんまり喋らないからどんな人なのか聞いてみたいなーってさ」
「横須賀くんは八幡のことどう思ってるの?」
痛いとこ突いてくるなー。可愛い顔して。
「いやだから俺はわからないんだよ〜だから聞いてるんじゃないか〜」
焦りながら答える。やべっ、なんの答えにもなってねーわこの回答
「ふーん…あんなに酷いこと八幡に言ったのにね…まぁいいや。八幡のこと話してあげるよ。話したら、もう関わらないであげてね」
辛辣な言葉を浴びせてくるな。この男の娘。ぐっとこらえながら俺は彼の言葉を待つ。
「八幡はさ、例えて言うなら赤鬼と青鬼に出てくる青鬼にだね。あのお話の中では、赤鬼が友達だから青鬼には自分を犠牲にしたけど、八幡は違う。友達じゃなくても助けちゃうんだ。自分と引き換えにね。それが、どれくらい辛いことかわかる?横須賀くんに。自分の立ち位置を気にしてーいいや、それしか気にしない君にー自分を諦めることが出来る?出来ないよね?ぼくにも出来ないよ。でも、八幡はやっちゃうんだ。だからひとを助けられる。でもー彼の周りの気づいてる人はーそれを見てるのが辛いんだよね」
戸塚くんは真剣に話す。今まで見たことないくらい真剣に。それほどまでに、”あいつ”は戸塚くんに、いや、平塚先生にも、そしてあの2人の女の子にも、好かれているのか。正直、戸塚くんの話していることは抽象的でよくわからない。でも、彼が真剣に”あいつ”を見ようとしている。クラスの誰も気にかけていないと俺が思っていた”あいつ”を、実は見ていた人がいたのだ。もう、この場に居たくない…そう思った俺は、お金だけ置いて、走り去っていた。
横須賀海斗は人生で一番の、大きなうねりの時期を迎えていた。しかし、彼はまだそれをわからない。むしろ、逃げてしまった。
横須賀海斗は逃げまどう。比企谷八幡からそして、自分から。
いかがでしたでしょうか?横須賀海斗、逃げてしまいました。
ご批評などいただけたら嬉しいです。