なってしまった駄菓子です。
...............解せぬ。
ということで8話です
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悪い予感ほどよく当たるとはよく言ったものだ。突如としてアリーナ内で起きた爆発。
一連のプログラムが終わり、安堵が広がっていた管制室内が一瞬で緊張状態に移行する。
それを確認した私はすぐさま凰に回線を繋ぐ。
「凰、私が通信をつないだ意味がわかるな?」
“事前に説明されていれば、そりゃ分かりますって。それにしてもなーんで予想が当たるんですかね?試合は終わったんだから休みの一つくらい欲しいですよ”
「ふっ。私も同じことを考えていた所だ。とにかく教員部隊をそちらに向かわせる」
待機させておいた部隊を。
そう私は前回の件があったために今回のトーナメントは何があっても良いよう、教員部隊を待機させ、凰にも事前に説明しておいたのだ。
今すぐに動ける専用機持ちは1学年では凰のみ。
他学年の専用機持ちはそれぞれに待機させている以上こちらに回すことは出来ない。
だがあのIS操縦者が来たならば、専用機持ちの実力ではなす術もなく倒されてしまうだろう。
しかし今回は教員の中でも特に実力のある者をかき集め、学園の全訓練機に搭乗させてある。
候補生上位クラスの山田先生も含めた数十名規模であれば、撃墜は不可能でも撃退であれば可能なはず。
どれだけ強大であろうとも、単機であれば戦力を集中することはできる。
防衛戦である以上これくらいしかできないが、今の私たちにできることはこれだけだ。
“...............どうやら前回のISじゃなさそうです。識別信号が違いますね。最悪なことに反応は3つも”
「何?」
言われるままにモニターに目を向けると確かにISの反応は3つあった。
しかし、それを気にせずにいられない情報がモニターに映し出されていた。
ーーー生体反応なし、と。
あり得るはずがない。
ISは人間、それも適性のある女が搭乗することがない限り、動くことは決してない。
それは10年の世界各国の研究成果、束が無人機は作れないと言う言葉が裏付ける。
だが、無人機は存在するとしか言えないデータが、そこには映し出されている。
「凰、そのIS機は無人機だ」
“え!?何言っているんですか、ISは女しか動かせない、機械も例外じゃないっていうのが常識じゃ!そんなのあり得ないですよ!”
「私だって同じ考えだよ。しかしそれを証明する事実は確かに存在する。だが、私たちがやることは一つだ。分かるな?」
“...............不確定であるものの、襲撃してきた機体を撃退するってことですよね?まぁ、あれも予想とは違いますけど襲撃してきたのには変わりませんからね”
「そういうことだ。当初の予定通り凰は襲撃機に対して時間を稼ぎ、その間に教員部隊を向かわせる。10分、いや5分だ。その間頼む」
“りょーかいです。んじゃ1秒でも遅れたら許しませんからね”
「そうだな。もしそうなったら“鈴”お前が食べたいものを好きなだけ食わせてやる」
回線越しに鈴の笑い声が聞こえてくる。
冗談で言ったつもりはなかったんだがな。
“全くー。"千冬さん"の中ではアタシは食い意地の張ったやつな訳?ひどいったらありゃしないわよ?”
「さぁな。少なくとも今までの鈴はそれで満足していただろう?流石にもう意味ないか?」
“流石にそうですって。ていうか、年頃の女の子に食べ物で釣ろうとする?”
「ふっ。お前が年頃の女の子?私の目からはそうは見えないんだが?」
“帰ったら覚えときなさいよ。年上だからって容赦なんてしてやらないから”
「帰ってきたら、な。...............死ぬな」
“...............分かってるわよ。十夏にグーパン叩き込んで弾たちと馬鹿騒ぎするまでは絶対死ねないから。んじゃ早くよこしてよね?5分きっかりね”
それを機にお互いの回線を切る。
正直なことを言えば妹分の鈴とはもう少し話していたいが、それは無人機を撃退してからでいいだろう。
戦えない私がしなければいけないことはもう分かりきっている。
「諸君!我々がやることを理解しているな!候補生とはいえ生徒を当てにしていることを肝に銘じろ!誰一人として負傷者を出すな!」
「「「ハイッ!!」」」
元々乗り気じゃなかったのはこういうことに備えてだったからなんだけど、こうも当たるっていうとこの学園呪われてるのかしらね?
まぁ、今は全部どうでもいいのだけど。
「はあっ!」
無人機から放たれた超高出力のビームをスラスター全開で避ける。
もうアタシの神龍は限界に近い。
こいつらは確実にアタシを殺しに来ている。
いくらISのシールドが強固だからって言ってもエネルギーがなくなれば何の意味もなくなるし、かすったただけでもかなりのダメージを受けるビームを生身で受ければどうなるかなんて考えなくてもわかる。
「ぐっ!?」
完全に死角だった場所から、スラスターを吹かした完全に無防備な時に放たれたビームを避けることは叶わず直撃してしまう。
弾け飛ぶ小型スラスターに加えて、絶対防御が発動しごっそりとエネルギーを持っていかれる。
ーーー具現維持限界までわずかです。
回避してください。
「避けれるんだったらとっくにしてるわよ!」
思わずISの警告にイラつき、怒りのままに衝撃砲を一番近い機体にお見舞いする。
でも、距離があるせいで拡散型にしている衝撃砲は対した有効打にはなっていない。
ていうかダメージにすらなったいるようすもない。
元々安定性と燃費に優れていた甲龍を完全近接タイプにカスタマイズしたのが神龍だけど、今この瞬間だけはあの時のアタシを許せそうにもない。
全くの経験がない対多数戦闘に近接機っていうのは相当分が悪いのを身を以て感じる。
近接機である以上1機に集中せざるを得ず、残りの2機が疎かになってしまう。
千冬さんだったらどうにかできるんだろうけど、アタシの実力じゃ厳しい。
刻々一刻と近づいてくる死への時間と、教員部隊という強力な増援。
だけどこのままじゃ到着する前にアタシが死にそう。
あと2分というのがもどかしい。
「...............あぁ、ムカつく」
口の悪さとは裏腹に煮えきっていた感情が冷えていくのがよくわかる。
なんでかなぁ、昔からアタシはそうだったわねぇ。
こうやって追い込まれれば追い込まれるほど、アタシの感情は落ち着いていく。
昔は普段に出せればいいのにと思っていたけど、今じゃ好都合かもしれない。
数は圧倒的に不利。
エネルギーも限界に近い。
でも、これは、この状態はアタシの一番得意な場面。
狙ってやったわけじゃない。
だけどやっとなってくれた。
アタシ凰鈴音は追い込まれれば追い込まれるほど、実力を発揮するのだから。
「さて、と。アタシの反撃の時間ね。あと1分しかないのが残念だわ」
相変わらず正確無慈悲に放たれる一撃必殺のビームもあくまで機械がブログラムに沿っているだけに過ぎない。
なんでこんなことに気づかなかったんだろう。
それさえわかってしまえばこっちのもの。
「よっと。どうしたのよ?さっきから当たらないじゃないの」
避けるなんて造作もないのだから。
機械は人間のようにありとあらゆる「もしも」を考えない。
あくまでこのまま変化がない場合の未来を計算で導きだす。
FCSなどが良い例。
じゃあ、そこに不確定要素、変化を起こしてしまえばどうなるか?
もちろん計算が狂うのは避けられなくなり、それはアタシにビームを当てることはできないということ。
死角からの攻撃だってそのことさえ分かってしまえば何一つ強くなんてない。
だって機械が計算に組み込まない変化、変則軌道を取っていればまず当たらないし、視界ないから撃たれても弾速はあまり速いわけじゃなく、充分ISの補助がなくても見える。
余裕じゃないけれど避けれないことはない。
今のアタシだったらいける。
そんな自身が湧き上がってきた。
あと少しでも食らえば死はまぬがれないけど、逆にその緊張感がアタシを極限なまでに冷静にさせていく。
「機械ごときがね」
エネルギー消費を最小限にスラスターを吹かして、ーーーPICの慣性停止を最小限に抑えるよう設定し直しーーー慣性を上手く使いながら最高速を維持し無人機の懐に潜り込む。
無人機がビームを放つために腕をあげる、がアタシの方が早い。
腕を上げ切るまでの0.1秒。
ロックオンにかかる0.5秒。
そしてロックオンと同時に行われるエネルギーチャージに1秒。
幾ら弾速が遅いといってもこの距離じゃ避けるのはほぼ無理。
それでも懐に入ったアタシにとって1秒弱でも時間を与えてしまった無人機は敗北したのと同定義。
エネルギーチャージが終わらないうちに、拡散衝撃砲を連射し大きく体制を崩させる。
「アタシに喧嘩売ったのが間違いなのよ」
その隙を逃さず双天牙月を思いっきり振り抜いた。
無人機の首元に食い込んだそれ越しに確かな手応えを感じる。
「凰鈴音を!アタシを!舐めんなぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
雄叫びと共にISの補助を全力に受けて力を込める。
「うらぁ!!」
そして無人機は首から先を飛ばされ、その機能を永久に失われた。
そしてそのまま壊れた人形のように崩れ落ちる。
あと2機。
時間にしてあと1分。
だけどアタシはそこまで。
無いに等しかったエネルギーを酷使したせいで、神龍は警告していた具現維持限界を迎えた。
光る粒子と共に神龍の展開が解かれる。
エネルギーをチャージする独特の音がする方を向けば、無人機がアタシに照準を向けていた。
完全に丸腰な生身のアタシに。
(ここまでか)
教員部隊が到着するのは絶対に間に合わない。
無人機のエネルギーチャージはとっくに終わっていつ放ってもおかしくない。
その時間が長く感じるのは何故なのか分からないけど、長くはない時間のあとにビームがアタシを襲うだろう。
そうなればアタシは確実に死ぬ。
なんだか実感が湧かず、あまりにもあっけない最後だけど今のアタシにどうにかするほどの時間も武器も何もない。
脳裏に映るのは中学時代の十夏や弾、数馬に蘭との思い出。
ピンポンダッシュして怒鳴られた事。
放課後食べ歩きしていたのをばれて、必死に教師から逃げた事。
夏に海の家でバイトした事。
体育祭のクライマックス、団対抗リレーで十夏がビリ出回ってきたバトンをダントツの一位でゴールしたとき、喉が枯れるくらい声出した事。
修学旅行で女子風呂を覗きにきた十夏達を半殺しにした事。
数え切れないくらいの思い出がよみがえってくる。
走馬灯ってこんな事な感じなんだって、なんとなく思う。
「...............もう一度だけでいいから、馬鹿したかったなぁ」
(千冬さんごめん。約束守れそうに無いや...............)
アタシは現実を見る事を止めて、ぎゅっと目を閉じた。