2人目の男性IS操縦者として騒がれていた葵だけど、最終的にはIS実習指導教員という形でIS学園に配属された。
なんだかんだで面倒見のいい優しいお兄ちゃんーークラスメイト情報ーーと言うポジションを獲得していた葵が今までと異なり毎日会えるとわかった時、それはそれはクラスどころか学園全体が歓喜に包まれ半ばお祭り騒ぎ状態になっていたのはいい思い出。
もちろん正体不明の人物というのは葵の性格の前では無視された。
曰く、過去がどうであろうと、優しいのには変わりないからとのこと。
まぁ1番喜んでいたのはセシリアだったっけ。口ではそっけなく言っていたけど、鈴と箒曰くあれは照れ隠しだとのこと。
そんなこんなで熱が冷めやらぬまま数日がたったある日のホームルームのこと。
「今日はですね、転校生を紹介します!しかも2人です!」
「「「...............え?えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!??」」」
山田先生の、噂や話題が三度のメシと言い張る女子の情報網をかいくぐって知らされたとんでも情報にクラス中が一瞬で喧騒に包まれた。ちなみに千冬姉は教室にいないので止める人は誰もいない。
けんそうっぷりを見ているとそりゃそうだとも思う。
なんせこの時期に転校生と言うのが少しばかりおかしいというか微妙な時期というかーー鈴と言う前例があるけど気にしないーーとにかく普通ではない、らしい。というのも隣に座っている娘が教えてくれたから。
それに加えて同じクラスに2人も入れるのも普通じゃない。これは単純に俺の考えだが。
と言うわけで喧騒に包まれたといわけである。
俺もその一人だけど。
「それじゃあ入って来てください!」
そういう山田先生の言葉に続いて教室のドアが開き、転校生が2人入ってくる。
「初めましてシャルロット・デュノアです。フランスから来ました。不慣れなこともあるかもしれませんが、日本の事が好きなので来れてよかったと思っています。みなさんよろしくお願いします」
クラス中からおぉー!という声が漏れる。
長く伸ばされた金髪を首元あたりで丁寧にまとめ、嫌味のない葵と同じような笑みを浮かべているその姿はなんというか気軽に仲良くなれそうな感じがする。
すごい温厚そうだし、人当たりも良さそう。弾的に言えばすげー美少女って感じ。
それに対して、別にバカにしているわけじゃないが、もう一人の方はやけにちっこいやつだった。そう鈴みたいに。
...............なんだか隣のクラスからの殺気がやばいので体型の事でこれ以上いうのはやめておこう。
まぁ、そのちっこいのはシャルロットさんの金髪とは対照的に銀髪ということで、金銀揃ったわけだ。うん、ポケットなモンスターを思い出すな。
それはいいとして、ちっこいやつは穏やかそうなシャルロットさんに比べ妙にキリッ!としているというかなんというか、簡単に言えばこいつ普通じゃねぇなと。
立ち方といい目つきといい雰囲気とはいい、何かしらの武術に長けているように思える。
「お前が織斑十夏だな?」
「ん?あぁ、そうだけど」
いつの間にやら俺の目の前に立っていたちっこいやつ。
どうやら敵意みたいなのは感じられないけど、自己紹介の前に何やりたいんだこいつ?
「取り敢えず私はラウラ・ボーデヴィッヒだ。まぁ、そんな事はどうでもいいので置いといて」
「いや、どうでもよくねぇだろ」
「どうせ名前などいつでも知れるだろう?わざわざかしこまって言うような事じゃないと思うが?」
「...............あぁ、そうかよ」
キョトンと何言ってんのこいつ?見たいな顔で言われるとこっちが間違ったようにしか思えなくなるからやめてほしいのだが。
まぁ、出会い頭にぶっ叩かれるとか、認めないみたいな事言われるよりは全然いいけども。
「お前、私の家族になれ!」
「「「は?はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」
クラス中がまた葵がISを動かせると知った時みたいに爆音と言う名の絶叫が響き渡った。
「待て待て待て待て待て待てぇ!!お前いきなり何を言い出す!?家族になれってどういう事だよ!?」
「...............?そこまで驚く事じゃないだろう?ん、あぁそうか、私が妹になるのが不満なのだな?なんなら姉でもいいぞ?もしくは母親でも」
「そういう問題じゃないわ!つか姉は一人で充分だっ!」
「ふむ。ただ単に私はお前と仲良くなりたかっただけだから、そこまで言われると流石に凹むぞ?日本の男子は義理の妹や姉、それが母親がとても好きだと聞いたのだが、お前は違うのか?」
「...............誰が言った?」
「え?クラリッサ」
「クラリッサてめぇぇぇぇぇぇ!!!」
とにかくその元凶というやつに対して叫ばないと気が済まなかった。
いや、本当にクラリッサとか誰だか知らないけど、テメェの知識はぜったい間違ってる。
100パーだとぜったいに断言出来るね。ラノベとかエロゲーか!
「あ、それなら僕も少し知ってるよ。日本では気に入った人のことを嫁っていうんだよね?反論も意義も認めないってところまでがデフォルトだって」
「「「ちがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁう!!!」」」
クラスに在籍する日本人の心からのツッコミ。
確かにそういうのはあるけれどあくまでアニメや漫画の中だけだからな!
現実ではぜったいありえないからな!
ジャパニーズサムライはどことか聞かれるけど、もういねぇから!
と言いたいところだけど絶対こいつら信じてなさそうだ。
あぁ、前途多難で結局ぶっ飛んだ娘たちだわ。
...............まともな奴はもうこの世界に残っていないのだろうか。
このクラスの奴らは俺含めてまともじゃないということだろうか。
もしくはここに来るとまともじゃなくなるでも可。
「あ、ちなみに私がお前の妹か姉か母親になるのは決定事項だぞ?」
「は?なんで!?」
「教官から許可をもらった」
「千冬姉何してんの!?...............なぁ俺がそれ拒否したらどうなる?」
「そんなの一撃必殺おしおき破壊天使ラウラちゃん砲の射撃訓練の的になってもらうが?」
「ら、ラウラちゃん砲?てかやけにネーミングセンスないな」
「やかましい。超長距離多目的後方支援砲撃戦用560㎜2連装砲で徹甲弾から榴弾などありとあらゆる砲弾を射撃可能だぞ。これでとんな奴でもイチコロだっ。はぁと」
「...............お仕置きする気ねぇだろそれ」
わからない方は戦艦大和、主砲で調べるといい。
これそれより10センチも口径でかいから。
ふざけた名前に反して性能はガチだった。
「みなさん、改めまして円谷葵です。今日からお嬢様の執事としてではなく、IS学園実技指導を担当することになりましたので、よろしくおねがいします」
朝のホームルームの騒動は終わり今は実技の時間で、なおかつ葵が初めて担当してくれる時間だ。
みんなの気合の入りようも、千冬姉の時とは違う意味で高い。
そんなわけで葵は普段見慣れた執事服ではなく黒ジャージなのだが、ぶっちゃけイケメンってなに着ても似合うんだなーと思う。
あの日の試合といい今といいメガネを取った素顔は男の俺から見てもイケメンだろう。
決して俺はホモでもゲイでもないけどな。
「あ、葵さん!」
「「「...............ニヤニヤ」」」
しかし、そんな気合の入っている中でも、なぜか葵はセシリアをからかうのをやめない。わざわざ執事としてではなくなんていうあたりは。
いつものようにセシリアは真っ赤になって反論するんだけど、まぁ葵には意味ない。
その姿は俺たち外野からすれば微笑ましい気分になるのでもっとやれと思う。
俺公認ではなく学年、むしろ学園公認というあたり凄まじい。
「なぁ、十夏よ。葵という人はいつもあのような感じなのか?」
「ん?まぁ、そんなもんだ。みんなのお兄ちゃんって感じで慕われてるぞ」
「まぁ、なんとなく慕われるのは分かる気がするな。教官とはまた違う形でというのか」
「分かる分かる。カリスマ性で好かれる千冬姉に比べて、物腰が柔らかいっていうか接しやすいって感じだな」
「まさしくそれだ。だが、それでいて圧倒的な実力を誇るあたり教官と通ずるものがあるな」
「確かに似たり寄ったりって感じだからな。じゃあラウラそろそろ話すのは終わりにしよう。怒られちまう」
「うむ。十夏が言うならそうしよう」
...............とまぁラウラにはかなり懐かれた。
結局ラウラが俺の家族になると言って聞かず、なんて呼ぶかで大口論になったんだけど結局時間がなくなり保留となった。
もちろんラウラちゃん砲の餌食にはなりたくなかったというのもある。
だけど、仲良くなりたいと言っているのを無下にすることもできないから、まぁいいかと思う。
一応ラウラは軍人だよな?とか言うツッコミは無しの方向で。
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!??と、止まってぇぇぇぇ!!」
キィィィィィィィン。
空気をつん裂くような上空から聞こえた。
その音の在り処に全員が目を向ける前に。
「ふびゃっ!?」
ズドォォォォンと地面に大きな穴を盛大に開けながら何かが墜落した。
「あ、痛たた...............」
今まさに墜落した何かとは、ラファールリヴァイヴを身にまとった山田先生だった。
みんなもぽかーんと口を開けたまま反応できていない。
だよな。いきなり墜落したのが見慣れた先生だって知ったらどんな反応すればいいのか困るよな。
「えっと、山田先生大丈夫ですか...............」
「え?あ、はい。先生は全然平気ですよ?ちょっとだけやらかしちゃっただけで」
ちょっとだけじゃないだろ!?
生徒全員の心のツッコミが心なしか聞こえた気がする。
うん、確かにちょっとだけじゃないような。
「...............あの教師は大丈夫なのだろうか?」
「...............ま、まぁ、座学に関してはすごいわかりやすく説明してくれる人だからさ」
ラウラがそういうのも無理はないとは思うが、山田先生だから仕方ないと思う俺もいる。
理由なんざ気にしないが。
「はい、今日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を始めるということします。それではお手本として戦闘を実演してもらいましょうか。そうですね、凰さんとお嬢様前に出てください」
「「はい」」
葵の指名を受けて鈴とセシリアが前に出る。
おう様ではなく凰さんであるあたり仕事をしっかりとこなすつもりなんだろうけど、セシリアの呼び方は変わっていない。
ていうか葵自身が変える気がなさそうだ。まぁ、学園公認だからしょうがない。
そこを除けば公私はきっちり分ける人ではあるから心配する必要はなさそうだけど。
「お相手は鈴さんですか?」
「別にアタシは構わないけどさ、どんな感じにすればいいわけ?」
「そうですね。シールドエネルギーが半分を切るくらいで終わりにしましょうか。それにあなた方の相手は山田先生ですよ」
「...............?あぁ、だから山田先生がISまとって出てきたのね」
「2対1。本来でしたらわたくしたちの方が有利なんでしょうが、生憎つい先日痛い目を見たばかりですものね。油断は禁物ですわよ」
「分かってるって。アタシはそこまで馬鹿じゃないわよ」
気合十分の2人。
前衛と後衛だし、2人のコンビネーションは中々だからバッチリだろう。
お互いの専用機を展開して離れた位置へと飛んでいく。
「では、始めてください」
「さぁてやってやるわよ!
「今回は負けられませんわね」
「行きますっ!」
葵の合図とともに開始される試合は最初から全力らしい。
ちょっとばかりお手本とは程遠い気もするけど、まぁ、これはこれでいい目標になるのかもしれないな。
「イギリス候補生、オルコットと言ったか。ビットの制御と偏向射撃をしながらもなお、自分自身は問題なく行動できるとは。見事としか言いようがないな」
「あれでいて努力家ってんだから流石だよな」
どうやらセシリアの技術は軍で実力を培ってきたラウラでも唸らせるほどだったらしい。千冬姉も認めていたあたりセシリアは候補生の中で一番強いんじゃなかろうかと思う。
「そろそろ、終わりですかね」
葵の言葉で意識を実演に向けると鈴がちょうど半分エネルギーを切っところだった。
斬り込んだときにショットガンで体勢を崩されそこに放られた大量のグレネードの爆発で撃沈したらしい。なかなかの展開をみせていただけあって惜しいと言うべきだな。
残るセシリアも一歩山田先生に及ばずというのかビットを全部落とされ撃沈だった。
「はい、そこまで。流石元日本代表候補生なだけありますね。国家代表予備人員にまでなっただけあります」
「い、いえ。結局候補生どまりで代表にはなれませんでしたし」
と、過小評価気味に言うものの代表候補生、それも国家代表予備人員だったとすればあの実力も納得がいく。なんせ当時国家代表だった千冬姉の代わりとして戦えるくらいだったと言えことだ。
そうでなければ国家代表予備人員には到底なれない。
だけどね山田先生?
両脇にスナイパーライフルを抱えて、ろくにスコープも覗かずにブッパしてしかも百発百中とかあなた何もんだよ?
みんな絶句ものだって。
「はい、皆さんも見ていた通り、山田先生はここまでの実力を誇ります。他の先生方もそれ相応の実力を持っているので敬意を持って接してください。あぁ、私には今まで通りでかまいませんからね?」
「「「はい!」」」
「あ、ついうっかりー」
専用機持ちそれぞれに分けられた班で飛行などをしていると、背後からやけに白々しい声が。
「...............何がついうっかりーだよ。あからさまじゃん」
「え?私にはさっぱりー」
「こいつめ」
「あははははー」
気が付いたときには既に遅く、量産機の打鉄は立ったままコックピットが固定されていた。
これじゃ次の人が乗れないじゃん。
量産機は専用機と違って量子化できないから、このように立ったまま降りてしまうと次乗るときに大変な目にあってしまう。
「せんせーどうすればいいですかー?」
「そうですね。織斑さんが抱き上げて乗せてあげればいいのでは?安全の面から見てもいいと思いますが」
その葵の言葉にこの場にいた誰もがハッとする。
羨ましいという人もいれば、計画通りという人も..........っておい。
何が計画通りじゃ。何がついうっかりだよ。
つか葵。いい加減なこと言わないでくれよ。
班の娘たちがまだかまだかと餌を待つ雛のようにしているんだけど。
「おりむーだっこ〜」
「...............あぁ、はいはい」
ぴょんぴょんと両手を伸ばしてせがむのほほんさんの姿はなんだか微笑ましく見えた。
父親にだっこをせがむ娘のような。
っていっても俺は父親でもないしのほほんさんと血のつながりはないんだけど。
ちなみにのほほんさんというのはこの娘のあだ名で、いつものほほんとしてるからのほほんさんらしい。
まんまやんというのはさておき、おりむーというのはのほほんさんがつけたあだ名だ。
おりむらだからおりむー。
...............なんかうりボーみたいだな。
「おぉ!高いねぇ」
嵐式を部分展開しひょいっとお姫様抱っこの容量で抱きかかえる。
「それにしてもおりむーは鍛えてるね、中々の抱かれごごちだよ〜」
「抱かれごごちってなんだそれ?そんな言葉初めて聞いたんだけど」
「いいのいいの〜。細かいこといちいち気にしてたら禿げちゃうぞ〜?」
「そうそう最近薄くなってきたなーって禿げるか!なんかそう言わないといけない雰囲気になったから言っちまったけど薄くなってねぇなかな!...............全くのほほんさんは何言うんだか。ほらちゃっちゃと終わらせるから早く乗ろうか」
「あいあいさー!お勤めご苦労様です〜」
やけに警察官ぽい言葉だなおい。
なーんて俺の心の声はどうやら届かなかったらしく、のほほんさんは文字通りのほほんと飛行をこなしていく。
そして気を抜いたそのとき。
「ごめんおりむー。やっちゃった〜」
えへへへ〜と笑うのほほんさんの方を向いてみれば立ったままで固定された打鉄が。
「のほほんさん何やってんの」
「えっとねー。自分だけ美味しい思いしてんじゃねーっ!っていう目で見られたら断れないよ〜」
こういうときに限って軍隊ばりのチームワークを発揮する娘たちには脱帽ものだった。
残りの娘たちは後8人。
...............マジかぁ。