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それに答えたい。
そんな思いです。
更新も遅いですがどうかよろしくお願いします。
今すぐにIS学園に入学するのが羨ましいと言った親友をぶん殴りたい気分だった。
この世界のパワーバランスを担っているのはIS、通称インフィニットストラトスと呼ばれるパワードスーツなのだがそれには広い目で見れば致命的な欠点があった。
女にしか動かせないのである。
正確に言うと女にしか反応しない。
そんな訳で世界の男女のパワーバランスが崩れてしまい、このご時世は男に対して風当たりがよろしくないのだ。
席を譲らなかっただけで逮捕待った無し。
痴漢だと言われたら弁解待った無しで例え冤罪でも有罪決定なんてザラだ。
男は住みづらいというレベルを超えてくるせして、ISが既存の兵器を旧世代と言わせしめるほどの凄まじい性能を誇っていて、1機で小国と渡り合えるほどだから余計にタチが悪い。
その分パイロットの質が重要という面もある。
そのため質の良いパイロットを育成するために作られたのがここIS学園という訳。
卒業生全員がパイロットになる訳ではなく技術者になることも多いが、元々がパイロット育成なので建前上は共学だがぶっちゃけ女子校となんら変わりない。
そのため、男であるはずなのにISを動かした俺は(死にたくなければIS学園入れという半ば脅迫まがいを受け)入学することになったのだが。
正直もう少しましな方法はなかったものか。
もし、俺がそういう野郎で片っ端から手を出して孕ませたりなんかしたらどうするつもりなのだろうか?
...............そんなことしたら千冬姉に殺されるのは目に見えているので、死んでもやらないけども。
命は大事に。
と、軽く現実から目を背けていたのは良いのものの、最後は現実を見なければならない訳で。
「みなさん入学おめでとう。私は副担任の山田麻耶です」
「...............」
無言。
「あ、えっ?あ、今日から皆さんはIS学園の生徒です。この学園は全寮制、学校も放課後も一緒です。仲良く助け合って楽しい三年間にしましょうね?」
「...............」
やっぱり無言。
「え?あ、えっと、その...............ぐすん」
あ、先生を泣かした。いーけないんだいけないんだ。
なーんてジョークの一つや二つ飛ばしたいものだが、現実はそううまくいかなかった。
ほぼクラス全員、40人近くの目線が背中へ突き刺さっているのに話せるわけがない。
きっと目線に質量があるなら俺はとっくに蜂の巣になっていることだろう。
それくらいに凄まじかった。
本当なら眼福です、ごちそうさま。
などとほざけてもみたいのだけども、そんなこと考えていられるほど余裕もないのだが。
なんで教室最前列ど真ん中というわけわからん席にしたのか不思議でならない。
これ名前の順とか関係ないんですけど?普通最初は名前の順ってのが通じゃあないのかね。
正直なこと言ってしまうとこの時点でうまくやっていける気がしない。
一つでも選択を間違えたらそれで即バッドエンドルート直行とかいう無理ゲーのようなもんだ。
今まで女子との交流が全くと言って良いほどなかった俺にとっては、ここでの普通すら厳しいというのに。
全くどうすれば良いーーー
「お前は返事の一つすら満足に帰せんのか?」
バシンと、何かに頭を叩かれた衝撃で意識を思考の渦から戻ることとなった。
俯いたままの視線を上げるとそこには。
「...............千冬姉。どうしてここに?」
「馬鹿者。ここでは織斑先生、だ」
またバシンと頭を叩かれた。
どうやらさっきのも出席簿でやられたものらしい。
...............出席簿ってそういう風に使うもんじゃないだろ。
それになんでここに千冬姉が?
「言いたいことは多いだろうな。だが今は自己紹介で、お前の番だ。話は後でいくらでも聞いてやる」
視線を千冬姉の後ろに向けると、涙目になりつつあった山田先生と目があう。
声をかけられていたのに気づかなかったのだろう。
悪いことしたという罪悪感を感じた俺は、素直に立ち上がり後ろを向く。
「...............」
そして一気に突き刺さる総勢39名の視線が、さっきよりも強く好奇の目が視界に映る。
なんか目が輝いてすら見えるので正直逃げ出したい気分、なのだが。
一生モルモットにされて2度とお日様を拝むことなく人とすら扱われない人生送りたくなかったらIS学園入りやがれ(意訳俺)と言われてここにきたので、逃げた瞬間俺の人生バッドエンドであるので、諦めるしかないのである。
なんだろ、この取り返しのつかないところでセーブをしてしまったようなこの気分。
例えるなら某ポケットなモンスターのDPで一撃でディアルガぶっ殺したのにセーブしてしまったような。
「あー、まぁ、ニュースとかで知ってるかもしれないけど一応。織斑十夏です。あんまりっていうかISの知識は素人に毛が生えた程度だからあんまり期待しないでくれると有難い。不慣れなこととか多いかもしれないけどさ、同じクラスになったんだからそれなりに仲良くしたいと思ってる。まぁ、無難だとは思うけどよろしく」
パチパチパチと、ごく普通な自己紹介に相応の拍手が控えめに返してくれた。
正直そういうことはどうでもよく、これだけ?という意見がなかっただけましだと思いたい。
「あぁそうだ、一つだけ言わせてくれ。みんな高校生になったから化粧とかに興味を持つのはわかるし、別にわるいことじゃないとおもうんだけどさ?」
「い、いきなりどうしたの織斑くん?」
「...............頼むから香水だけは止めてくれると有難い。俺、そういう匂いはホント昔から無理で無理で今すぐにでも吐きそうなくらい辛い。というわけで先生死にそうなのでトイレ行ってくる!」
「え!あ、はい!体調悪いなら断りいれなくても大丈夫ですからね?」
「ど、どもです」
口元を押さえ、喉元で物とやらをリバースしないように必死になって食い止める。
「...............“無理はしすぎるな”、よ?」
「...............別に。無理はしてない」
「ふん、なら良いがな。早く行け、ここで吐かれても困るからな」
「どーも」
教室を出る直前、不意にかけられた千冬姉の言葉が何時までも頭の中から消えることはなかった。
「...............?織斑くん、急に言うほど苦しそうに見えなくなっちゃいましたけど、どうしてなんでしょうか?」
「気にするな。あいつのある意味持病みたいなものさ」
月に片手で足りるほどしか帰ってこないはずの姉にすら見破られるなんて、まだま未熟者なのだろう。
千冬姉にすら気付かれないようにしなければ、きっと何時かボロが出てばれる。
それだけは決して避けなければならない。
そんなことを知られれば誰からも中傷の標的になってしまう。
逃げるようにしてトイレに駆け込みながらそんなことを思う。
「...............」
無駄に流し続ける水道水で手を冷やす。
確かに香水は昔から苦手だったし、あんなもののどこが良いのか今でもさっぱり理解できない。
ただ、吐くほどなんて嘘も良いところだ。
とにかくあの場所から逃げ出したいというだけでついたもの。
ホントに情けない。
目の前の鏡に映る俺の顔はげっそりとしていた。
クラスメイトたちに向けた笑顔の面影なんてどこにもない。
「...............」
笑顔を作ろうとしても出来ず、手を使って無理やり作ってみればそれはそれで無様なものだ。
ーーーー“無理はしすぎるな”、よ?
千冬姉の言葉が頭をよぎる。
「...............分ってんだよ。それくらい、俺にだって」
心の、誰にも見せたくはなかったその内側を無理やりこじ開けられたような、嫌な気分が俺を満たす。
そのら嫌な思いを忘れるかのように俺は頭から水を被った。