IS【繰り返される世界から】   作:駄菓子

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オリキャラ登場、


第6話

「...............静かねぇ」

 

「全くだ。いつもの賑やかさはどこに行ったと言うのだろうな」

 

「やっぱ、あの事件が原因かしらね」

 

「間違いなくそうだろうな」

 

うーん、とアタシはラーメンをすすりながら唸る。

昼時の食堂。

普通だったら喧騒に包まれていて、席を確保するために軽く戦状態になりかけるはずなのに、皆の声のボリュームは控えめだ。

むしろほとんど会話していないっていう方がしっくりくるかもしれない。

それくらい静まり返っていた。

 

「むぅ。煩わしいと思ういつもの事も、なければないで寂しいものだな。心なしか食事も味気なく感じるな」

 

「わかるわよその気持ち。いつもと変わんないはずなのになんか味気ないっていうか」

 

「全学年が臨時休業になったのがでかいんだろう」

 

箒の言う通りだった。

あの事件で総勢8名ものIS操縦者がなすすべもなく落とされて、その中には現役国家代表と世界最強の千冬さんだっていた。

そんな事があれば臨時休業、できる限り寮内待機にされるのは当たり前だと思う。

 

「臨時休業で終わってくれれば良かったんだけどね」

 

「...............噂が広まってしまったからな」

 

噂は恐ろしいとはよく言ったものだなんて思う。

あの現場を少なくない生徒が目撃していたから無理もないとは思うけど、さすがに広まるのが早すぎる。

候補生が落とされ、十夏は左目に直撃する場面、そして千冬さんが落とされたときのことも。

できるだけ寮内待機とされていても、こうして少なからず他の生徒と触れ合う機会がある以上、完全に口封じは難しい。

 

「...............トラウマになってなきゃいいんだけどね」

 

「十夏のことか?」

 

箒の言葉に無言でうなづく。

 

「死んではいないなんてみんな知ってても、普通撃たれたら即死する場所だからね。アタシは話を聞いてるだけだからいいけど、箒や他の生徒はさ。大丈夫かなって」

 

「まぁ、な。あのときは生きた気がしなかった。だか、生きてくれているだけでもよかったよ」

 

「そうねぇ。死んじゃいましたっていうのと、生きていますじゃ全然違うもんね」

 

「全くだ。今のところはトラウマになったような生徒はいないそうだが、それなりにショックは受けているそうだがな」

 

「やっぱりか...............。ここの生徒達って戦闘慣れしてないもんね。ここにきて初めてISを動かしたっていう子達が殆どだし」

 

ちらりと箒に目線を向ける。

 

「それに比べれば箒はマシよね。余裕たっぷりって感じ」

 

「馬鹿言うな。そう見えるだけで内心はひどいザマだぞ?昔からの性分で感情が出ずらいものでな」

 

「ある意味IS乗る分にはいいかもね。相手に読まれにくいし。表情に出やすいアタシからすれば羨ましいわよ」

 

「ISでだけじゃないか。日常的に見れば不便だぞ?」

 

アタシ達の談笑は食堂全体が静かなせいでよく聞こえた。

...............全く、そんな落ち込んでると十夏は喜ばないっていうのにね。

あいつは自分が怪我しても、笑っていて欲しいってやつだから。

 

「あはは!なんかわかる気がするわ」

 

「...............笑うなよ。割と気にしているんだから」

 

だからアタシ達は笑って十夏が目を覚ますのを待つだけ。

それがアタシが決めたやり方。

まっ、いつ目を覚ますなんて分かんないんだけどね?

 

 

 

「お嬢様!ご無事ですか!?」

 

「「...............は?」」

 

「あ、葵さんっ!?」

 

次の日。

箒とセシリアのお見舞いに行っていた時のこと。

一目見てこいつは傲慢な奴だ!なんて決めつけたアタシだったけど、以外といい奴でなんだか拍子抜けしてしまった。

今までの間からすれば一番らしい思ったんだけど。

やっぱり人は見かけで判断しちゃだめってことかな。

というか、今はそんなことはどうでもよくて。

病室のドアを開けた、さらりと普通にしていればまず聞かないようなことをいう男にアタシたちの目線は釘付けだった。

 

「...............お、お嬢様?箒、あんたに執事っていたのね」

 

「...............その言葉をそっくり返させてもらうぞ。それに言わせてもらうと、私の家で使用人を雇うしきたりはない」

 

「何言ってんの?アタシに執事がいると思ってんの?私の実家は定食屋よ。執事雇う余裕なんてあるわけないじゃん」

 

「それじゃあ...............」

 

「...............セシリアの?」

 

消去法でいけばそうなるほかないのだけど。

くるりとアタシは鏡写しのように振り返る。

 

「んなななななななななななんでここにいるんですのぉぉ!?」

 

...............ビンゴ。

セシリアは耳まで茹でダコのように真っ赤っか。

やばい、顔がにやけるのが止まらない。

たとえるのなら、一番欲しがっていたおもちゃを買ってもらった子供のような。

アタシを表すならそんな感じだろう。

 

「鈴さんとやら、ゲスい顔をしていまっせ」

 

「お互い様でしょ?あんたに至っては口調が変よ」

 

「仕方ないだろう?こんなおもしろいネタがあるというのに放っておくなどバカのやることだ」

 

「同感」

 

にやーっと笑いあうアタシたちは他人からすれば頭のおかしい奴だと思われたに違いない。

けど安心して構わないのだ。

何せここには半錯乱状態のセシリアとその執事だけなんだもの。

だれにもゲスいこの顔をバラされることはない。

ささ、アタシたちはお構いなくと言わんばかりに場所を開ける。

 

「お嬢様!あぁ、こんなにお怪我を為されて...............!事件に巻き込まれたと聞いた時はとても気が気でなりませんでした!」

 

「べべべべ別に命に関わる怪我ではありませんしっ!」

 

「いえ、女神のような存在であるお嬢様に傷跡が残るのが悲しくてたまらないのです!私というものがありながら、一生の不覚です!」

 

「本国にいてどうするというのですか!というか私ばかりではなくて、鈴さんがたがあぜんとしていますわっ!」

 

いや、アタシたちはにやーっとしてるんだけどね?

どうやらやりとりを見られるのが恥ずかしいみたいで口実を無理やり作ったみたい。

...............いいねぇ。そんな顔されるともっと苛めたくなっちゃう。

取り敢えず愛されてんだなーって素直に感じる。

普通だったらそんなあそこまでは言わないでしょ。

 

「んんっ。お見苦しい姿を晒してしまい申し訳ございませんでした。ご紹介が遅れました、わたしはお嬢様の執事を務めさせていただいております、円谷葵と申します。以後お見知り置きを」

 

身長は高くすらっとしているけど、決してもやしみたいではなくて細マッチョって感じ。

執事服も異様に似合っている。

常に微笑を浮かべていそうな穏やかな顔つきだし、フレームの細い眼鏡が余計にそれを引き立てる。

多分初対面でも結婚してくれと言われたら10人中9人はハイと答えるかもしれない。

それくらいのイケメンであり、イケメンにありがちなナルシストっぽい雰囲気がないので余計に際立つ。

ちなみに残りの1人はレズだと思う勝手に決めつけただけ。

ほら、だって今時男嫌いだから女同士で結婚する人とかいるし?でも、そんな奴らの気持ちなんて考えたくもない。

アタシはいたってノーマルだもの。

...............今舌打ちした人、素直に挙手しなさい。

今なら龍砲を死なない程度に打ち込むだけで許すから。

 

「...............セシリアの夫か?」

 

「ぶっ!?」

 

「箒。もう少しオブラートに包もうか?」

 

ど真ん中どストライクコースを思っいっきり抉り取る箒のど天然発言に思わずセシリアが吹き出す。

淑女としてどうなのと思ったけど、箒のその発言には仕方ない。

いいぞ箒もっとやれ。

そしてそれと並行して吹き出しているセシリアの顔をぱしゃり、と。

...............オークションに出したらいくらで売れるかしらね。

 

「そそそそそそんなことはありませんわっ!まだ葵さんとはそんな!」

 

「へぇ?まだ、ねぇ?」

 

「あぅ...............」

 

「何せセシリアはどう考えても恋する乙女の表情にしか見えんしな」

 

「ふぶぅ!?」

 

箒のとんでも発言で再度セシリアが吹き出す。

うーん。箒って天然で言ってるのか、狙って行ってるのかよくわからないわね。

 

「申し訳ございません。そうしたくなる気持ちも十分わかりますが、これ以上やってしまうとお嬢様が限界を迎えてしまますので、どうかご遠慮頂けますでしょうか?」

 

いつの間にかセシリアは頭から煙を吹いて自爆していた。

ちょっとやりすぎたか。

 

「向かえそうってか、限界突破したみたいだけどね」

 

「...............あ」

 

「ま、セシリアは少しすれば復活するでしょ?てか、やめろって言わないのはどうしてよ?」

 

「鈴の言う通り貴方はは執事なんだろう?」

 

「いえ、自分がやっているので、あまり言えない立場のですよ」

 

そういう葵さんは苦笑い。

さん付けなのは幼い頃アタシと遊んでくれた一夏さんとの間にあった5歳差の壁というか、妙に落ち着いた雰囲気をもっていたから。

少なくとも同い年には思えない。

そしていつ感じたものだったか思い出せないし、どうしてそう感じるのか分からないけど。

確かに感じるこの懐かしさはなんなんだろ?

気がつけば箒もそんなことを考えていそうな顔をしていた。

 

「それにしてもお嬢様と仲良くしてくださってありがとうございます。」

 

「何?いきなりそんなこと言っちゃって」

 

「いえ、本国では殆どご友人を作ろうともしなかったので、ずっと不安だったのですが、どうやら杞憂だったようで安心しました。これからもよろしければ仲良くしていただいてもよろしいでしょうか?」

 

「別に構わないぞ。セシリアと一緒にいると楽しいからな」

 

「そうね。話してみると案外いい奴だしね。話題に尽きないっていうのかな」

 

「...............ありがとうごさいます。お二人がた」

 

心の底から安堵しているのかなと思うほど安心しきった顔。

やっぱりセシリアは大切にされているんだなーって思い、少しだけ羨ましく思う。

 

「別にそこまで感謝されることじゃないし」

 

そしてこの懐かしさもなんとなく理解できた。

一夏さんのように包み込んでくれるような優しさを思い出していたのだと。

葵さんは本当に一夏さんに似ていた。

年上の落ち着いたそれでいて優しい、けどどっかずれていそうなその性格が。

心の底から湧き出てくる感情。

それをぐっと押さえ込んだ。

もう、一夏さんはいないのだから。

あぁ、笑って十夏が目を覚ますのを待っているっていう決めたのに、これじゃあだめね。

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