表面全体から白い煙を吹きだしている金属の筒。それがこの少女の最期のチャンスに飛び出てきた使い魔(仮)だ。
家柄だけはスクウェアで評判のヴァリエール家の三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは魔法が使えない。いや、正確に言えば魔法が望んだ形で出ないのだが、つまり使えないようなものだ。何かと爆発させる。
鬼気迫る表情で30サントも無さそうな杖を何度も振りながら時には地面を、時には空を、時にはマリコルヌを爆発させていたのだ。しかし、それでは全く目的と違っている。
彼女は、他のクラスメイトがそうしたように使い魔を召還したいのだ。しかし振れども唱えども出るのは爆発のみ。次第に「へ」と「ひ」だけで構成された笑い声のようなものを口から漏らしながら、詠唱も無しに爆発を繰り返している。
とうとう抉れる地面も無くなったかという頃合いで飛び出てきたのがこの外周3メイル、高さ2メイルはあろうかという、そこそこに大きい鉄の円筒という訳だ。憎らしいほど綺麗に直立している。
「お、おい、ルイズ? キミはいったい何を……いや、どうして……いや……その……」
このチャンスを逃すまいと、ルイズは目をドス鈍く輝かせ口から温度の低い煙を吐き出しつつコントラクト・サーヴァントに必要な“口”を探している。いつもはキザったらしく甘い台詞を撒き散らすギーシュの口は錆びた鉄扉のように動きが重い。
「クチィ……クチを出せェ……」
「タバサ、見ちゃダメ! 傷になるわよ!」
「痛い」
「グごォッ!?」
とうとう本当に目が形容しがたい色で光り始めたルイズを見せまいと、キュルケという赤髪長身の少女はタバサと呼ばれた背の低い少女の目を押さえるが、勢いが良すぎたのか目が痛かったタバサがキュルケの脇腹に肘を埋め込んだ。
「もしかしてコレって……サーヴァントじゃない……?」
目の光が失せつつあるルイズが呟いた。
「み、見たところ鉄か何かで出来た筒……残念ながらサーヴァントではなさそうですな……」
沈痛そうな面持ちで喋っているのはこの授業を担当している(少し髪が薄めの)火のメイジ、コルベール教諭だ。
「じゃあ何? サモン・サーヴァントで出てきた癖にサーヴァントじゃなければ何だって言うのよ! 私のサーヴァントはどこよ! その頭頂部以外の茂みにアンブッシュしてんのか! 全部毟り殺してやる!!!」
本気で逃げるコルベールを追い立てるルイズは、さながらおとぎ話のモンスターのようだったと後にクラスメイトは語る。
「落ち着いて」
「グボゥア! 何すんのよ、普段はおとなしいアンタが」
タバサはそのあまりに巨大すぎる杖の一番デカい部分でルイズの頭を力強く叩いた。おかげで正気を取り戻したルイズだが、その頭部からは止め処なく赤黒い小川が流れている。
「タバサ?」
「知ってる。あなたの使い魔は『シラナミ』」
タバサは、ルイズにだけ聞こえる極小さな声で囁いた。
「……へ?」
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