東方星海録   作:紅いボッチ

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前回の回で咲夜に恋フラグを立てましたとさ。
さてさて、八話目をどぞどぞ。



八話「悪魔の妹様」

咲夜の踵落とし事件から五日後、宙は妖精メイド達と館の掃除に励んでいた。

 

「こらそこー、おしゃべりする暇があるなら掃除しろー」

 

ぺちゃぺちゃと喋る妖精たちに軽く喝を入れ、掃除に戻らせる。

 

この妖精メイド達、昔は野良の妖精だったのを咲夜さんが雇い、一人で統率してきたのだという。

 

幾ら万能なメイド長とはいえ、流石にこの量のメイド達を統率するのは苦労がかかっただろう。

 

「頑張ってるじゃない。仕事にもようやく慣れたのね、安心したわ」

 

後ろを振り返ると、朝方に珍しく出てきたレミリアが日傘を差して立っていた。

 

「お嬢様、珍しいですね。朝早く起きてくるなんて」

 

「あら?最近は朝でも暇だから、起きて咲夜に紅茶を頼んでるわよ?」

 

「なら…私がそれを見ていなかった、という事ですね…」

 

掃除もあらかた終わっていたので、レミリアと軽く談笑していると、突然館に爆音が鳴り響いた。

 

「!?な、何事だ!!?」

 

「……あの子、パチェの魔方陣を壊したわね…」

 

あの子、という単語に首をかしげるが、すぐにその意味が分かった。

 

廊下の奥から現れたのは背中に不思議な宝石の羽を持つ、レミリアと目がよく似た少女だった。

 

「お姉さま?何で私をお外に出してくれないの?館の地下室はもう飽きたよ…?」

 

前言撤回。

 

その少女の目は狂気の渦でどす黒い赤色に染まっていた。

 

「外に出て、何をするつもりなのかしら?破壊?虐殺?まだ、貴女は獲物一匹すら取れないのに、そんな吸血鬼を外に出すわけにはいかないわね、フラン?」

 

その言葉を聞き、フランと呼ばれた少女はゆっくりと宙の方向に目を向けた。

 

「それじゃあ…………」

 

フランは口元をニイッと歪ませ、嬉しそうに言葉を吐き出す。

 

「こノニンゲンをたべテそと二でル!!」

 

その言葉を言い終わるかのうちに、フランはとてつもない速さで宙の首元に飛びつき、その首に己の牙を突き立てた。

 

「うぐ…あああああああああああ!!!?」

 

宙は絶叫した。

 

吸血の痛さではない。フランが掴む腕が物凄い勢いで捻じれていくのだ。

 

まるで、枝を無邪気に折る子供のようにみしみしと嫌な音が響く。

 

「フラン!宙から離れなさい!」

 

言葉は届かず、血を吸い続けるフラン。

 

「あ…がああ!!スペルカード!!紅明『レッドサンライト』!!」

 

土壇場で編み出したスペルカードだった。

 

紅い光がフランの体に直撃し、体を熱してゆく。

 

流石のフランも光には弱く、宙の体から離れた。

 

その隙を狙っていたのか、レミリア、パチュリー、咲夜がフランを押さえつけた。

 

「離して!離せ!!」

 

フランは抵抗するが、パチュリーの催眠魔法で深い眠りについた。

 

「宙!宙!!しっかり…」

 

声をかけた咲夜は息を呑んだ。

 

宙の両腕はまるで嵐の後の枝の如く、捻じれており、ところどころから骨が見え隠れしている。

 

フランに大量の血を吸われ、貧血状態にも陥っている。

 

「あ……宙…」

 

「ぼさっとしない!!さっさと運んで治療するわよ、咲夜!」

 

「ッつ…分かりましたお嬢様!!」

 

 

 

 

 

 

 

意識の中で宙は考えていた。

 

(これ軽く瀕死状態だよな…痛かったな…なんなんだろ、フラン…妹様の能力は…取り敢えずなんか、壊す感じのやつだな…ああ…それにしても死んだのか?俺)

 

死んでたまるかと、宙は目をこじ開けた。

 

そこは、パチュリーが貧血になった時に使われていた治療室であり、沢山の治療道具が宙の周りに置かれていた。

 

「…………」

 

宙の腕には包帯、身体中には増血剤を注射で打ったような痕が残っていた。

 

「あら?今日って何日だっけ?」

 

その一言で紅魔館の住民がばばっと姿を現した。

 

「宙!大丈夫!?気分は?ふらふらしない?手は痛くない?」

 

咲夜が泣きそうな顔で宙を揺する。

 

「ててて!咲夜さん痛い痛い!!」

 

「あ、ああ。ごめんなさい」

 

咲夜が離れた後にレミリアが申しわけなさそうな顔でこちらに近づいてきた。

 

「ごめんなさいね、私の妹が無礼な真似をして…」

 

「いえ、構いません…このざまですけどね…」

 

その後にパチュリーが少し心配そうな顔で話しかけてきた。

 

「貴方、体はだるい?もう、二週間も寝てたから…」

 

「二週間!?そんなにですか!?」

 

パチュリーの後ろから、美鈴と小悪魔が首を出しながら話す。

 

「ええ、もう随分と寝てらっしゃいましたよ!もう心配で心配で!」

 

「私も、宙さんの体の中の気を心臓に回そうとしましたが、中々上手くいかなくて、軽く焦りましたよ」

 

皆の話を聞きながら、宙は今まったく関係ないことを考えてた。

 

(ああ、いいなぁ。人に必要にされたり、人に心配されるのって……)

 

少し昔のことを考え、軽く目に涙が沁みる。

 

「どうしたの?痛いところでもあるの?」

 

レミリアがらしくない声で聞いてきたので、少しだけ嘘をついた。

 

「目にゴミが入りました…すみません」

 

こうして、また大けがを負った宙であった。

 

 

 

「ええ、そろそろ始めようと思うわ……」

 

レミリアが深刻そうな声でパチュリーと話す。

 

「そう…始めるのね?」

 

パチュリーの問いにレミリアはフッと笑いながら答える。

 

「ええ、この幻想郷を私の物にする異変を起こしましょう。名付けて、『紅霧異変』を……ね?」




はい、次回から紅霧異変の準備的な話になっていきます。
主人公傷ばっかりでかわいそす…
それでは、また次回にゃー…疲れてどうにかなったでござる。
え?元々?気にするな!!
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