今回はガルド戦の前まで進みます
お気づきだとは思いますがサブタイトルが3話目とかぶってしまいましたので3話目のサブタイトルを変えました
では本編をどうぞ
サウザンドアイズから出た一行は ノーネーム本拠の門前に到着した
「この中が我々のコミュニティでございます しかしこの近辺はまだ戦いの名残がありますので……」
「戦いの名残? 噂の魔王って素敵ネーミングな奴との戦いか」
「ちょうどいいわ 箱庭最悪の天災が残した傷跡 見せてもらおうかしら」
黒ウサギは躊躇いながらも門を開ける そこにあったのは――見渡す限りの廃虚だった
「っ これは…」
「…おい黒ウサギ 魔王とのゲームがあったのは今から何百年前の話だ?」
「……僅か三年前でございます」
「…ハッ そりゃ面白いな この風化しきった街並みが三年前だと?」
無理もない 十六夜がそう言うほどに街は朽ち果てていた
「……断言するぜ どんな力がぶつかってもこんな壊れ方はあり得ない」
「ベランダのティーセットがそのまま出ているわ これじゃまるで生活していた人間がふっと消えたみたいじゃない」
「……生き物の気配も全くしない 整備されなくなった人家なのに獣がよって来ないなんて…」
「話には聞いていたが……破壊と言うより退廃だな」
黒ウサギは廃墟を歩きながら話し出す
「…魔王とのゲームはそれほどに未知の戦いだったのでございます 彼らは力を持つ人間が現れると遊び心でゲームを挑み 二度と逆らえないよう屈服させます 僅かに残った仲間達もみんな心をおられ…去っていきました」
悲しみを滲ませながら話す黒ウサギ それに対する十六夜の反応は真逆だった
「魔王……か ハッ いいぜいいぜいいなオイ 想像以上に面白そうじゃねえか――!」
「おい 十六夜」
「何だ鋼夜?」
「黒ウサギの仲間は魔王に殺されたんだ 少し位言葉を選べ」
十六夜がたじろぐ程の殺気を出し鋼夜が言い放った
「ワリィ黒ウサギ進めてくれ」
「……はっ はい‼では行きましょう」
鋼夜の殺気に驚いていた黒ウサギだったが言われた通り足を進めた
5人は居住区を通り抜け 貯水池にやってきた 十六夜が手に入れた水樹の苗を設置するために訪れたのだ
「あ 皆さん!水路と貯水池の準備は整ってますよ!」
貯水池には先客がおり ジンとコミュニティの子供達が清掃道具を持って水路の掃除をしていた
「随分と先客がいるな あれでノーネームは全部か?」
「いえ あれで1/6位ございます ご苦労さまですジン坊っちゃん♪皆も掃除を手伝っていましたか?」
「黒ウサのねーちゃんお帰り!」
「眠たいけどお掃除手伝ったよ!」
ワイワイと騒ぎながら黒ウサギの元に駆け寄ってくる子供達
「ねえねえ 新しい人達って誰!?」
「強いの!?カッコいい!?」
「YES♪とても強くて可愛い人達ですよ!皆に紹介するから一列に並んでくださいね」
黒ウサギが指を鳴らす するとさっきまで黒ウサギに群がっていた子供達はテキパキと移動して横一列に並んだ
それを見て
「(マジでガキばっかだな 半分は人間以外のガキか?)」
「(じ 実際に目の当たりにすると多いわね これで六分の一ですって?)」
「(…私子供苦手なのに大丈夫かな…)」
「(皆子供ながらの純粋さだな 俺とは大違いだ)」
様々な感想を抱いていた
「右から逆廻十六夜さん 久遠飛鳥さん 春日部耀さん 九頭竜鋼夜さんです 皆も知っての通りコミュニティーを支えるのは力のあるギフトプレイヤーです 皆はギフトプレイヤーの生活を支え 身を粉にして尽くさねばなりません」
「あら 別にそんなのは必要無いわよ?もっとフランクにしてくれても」
「駄目です 子供の内から甘やかせばこの子達の将来のためになりません」
「言い方の問題かもしれないが 俺達も彼らがいるから生活できるんだもうちょっと優しくしてやっても良いんじゃないか?」
「鋼夜さんの言うことも一理有ります しかしコミュニティはプレイヤー達がギフトゲームに参加し 彼らのもたらす恩恵で初めて生活が成り立つのでございます これは箱庭の世界で生きていく以上 避ける事が出来ない掟 こればかりは黒ウサギも譲れません」
三年間もの間 ノーネームを支えてきた黒ウサギの言葉には コミュニティーを継続させていく上で重要なことを理解している彼女だから言える重さがあった
その後水路に水を引くことになり
「それでは水樹を植えましょう! 黒ウサギが台座に根を張らせるので十六夜さんのギフトカードから出してくれますか?」
「はいよ」
黒ウサギに言われたとおりにする十六夜
「それでは苗の紐を解いて根を張ります! 十六夜さんは屋敷への水門をあけてください!」
言われたとおりにする十六夜 すると水が一気に激流となって貯水池を埋めていった
そして水門にいた十六夜は
「ちょ 少しはマテやゴラァ!! 流石に今日はこれ以上濡れたくねえぞオイ!!」
本日三度目の水難にあった
「凄い!これなら生活以外にも水が使えるかも…!」
水門を勢い良く潜った激流は一直線に屋敷への水路を通り満たしていく 水樹から溢れ出た水の量は想像以上であり かつてのように並々と満ちていく水源を見てジンは感動的に呟いた
「なんだ 農作業でもするのか?」
「近いです たとえば水仙卵華などの花のギフトを繁殖させればギフトゲームに参加できずともコミュニティの収益になります これならみんなにもできるし……」
「ふぅん で 水仙卵華ってなんだ御チビ?」
ジンは何の前触れもなく『御チビ』という尊敬と嘲笑の交わった愛称で呼ばれたことに驚いた
「水仙卵華とは別名・アクアフランと呼ばれ、浄水効能のある亜麻色の花の事です 薬湯に使われることもありますし観賞用にも取引されています 確か噴水広場にもあったはずです」
「あぁ あの卵っぽい蕾のことか?そんな高級品なら一個ぐらいとっとけばよかったな」
「な 何を言い出すのですか十六夜さん!水仙卵華は南区画や北区画でもギフトゲームのチップとしても使われるものですから 採ってしまえば犯罪です!」
「冗談だよ冗談 お前も間に受けんなよな御チビ」
「なっ!?僕は‥‥」
ジンは癪に障ったようで言い返そうとする
「悪いが 俺は俺が認めない限りは"リーダー"なんて呼ばないぜ?この水樹だって気が向いたからもらってきただけだ コミュニティの為なんてつもりはさらさらない」
十六夜は真剣な顔と凄味のある声でそれを遮り そう続けた
「‥‥え?」
「黒ウサギにも言ったが 召喚された分の義理は返してやる だがもし 義理を果たした時にこのコミュニティがつまらねえことになっていたら……どうなるかわかるな?」
ジンは十六夜を召喚したコミュニティのリーダーなのだ たとえ11歳の子供であろうとリーダーならばその覚悟と自覚を持たなければならない 今はまだ経験不足で周りに支えられるのは仕方がいずれはその責を果たすことができるようにならねばならない それが果たせないということは コミュニティの崩壊と同じことなのだから
「・・・・・僕たちは"打倒魔王"を掲げたコミュニティです いつまでも黒ウサギに頼りっきりでいるつもりはありません 次のギフトゲームで・・・・それを証明します」
ジンはそう言うと黒ウサギ達のもとへ踵を返した
「お前ホントは優しい奴なんだな十六夜」
「ハハッそうでもねぇよ そんなお前はどうなんだ鋼夜」
「傷ついた人を見たくないだけの自己満足だよ俺は」
「そうか」
「十六夜さん!鋼夜さん!本拠に行きましょう~」
「すぐ行くよ黒ウサギ」
黒ウサギに呼ばれ二人はノーネーム本拠地へ向かった
「ここが今日から皆さんが生活するノーネーム本拠地です」
黒ウサギが指さした先にはレンガ造りの建物があった
「皆様はご自由な部屋を使っていただいて結構でございますよ」
「そう そこにある別館は使っていいの?」
飛鳥が脇にある建物を指差して尋ねる
「あれは子供達の館です 一二〇人の子供と一緒でよければ」
「……遠慮しておくわ」
そんなやり取りもあったが無事部屋も決まり 女性陣は黒ウサギが掃除した浴場で風呂に浸かっていた
黒ウサギたちが風呂に入った数分後鋼夜は子供たちが暮らす屋敷の玄関前にいた
「夜分遅くに何してんだ鋼夜」
「お前も気付いていたのか十六夜」
「こんなあからさまなら尚更な」
十六夜がそう言いながら茂みに向かって小石を投げると大きな爆音があたり一面に響き渡り 茂みに潜んでいたいくつもの人影が吹き飛んだ
「相変わらずでたらめな力だな」
「ど どうしたんですか!?」
「お客さんみたいだぜ御チビ」
音を聞きつけたのか別館から慌てて出てきたジンに向かって十六夜が言う
「な なんというでたらめな力だ……これならあの蛇神を倒したというのもうなずける」
「あぁ‥‥これならガルドの奴とのゲームに勝てる」
落ちてきた侵入者たちは何をすると怒るどころか賞賛の言葉を投げかける
「おぉ?何だお前ら 人間じゃねのか?」
十六夜が侵入者たちに歩み寄って興味深そうな目を向けて声をかけた 犬の耳を持つ者 長い爪を持つ者 爬虫類の瞳を持つものといったように様々だ
「我々は人をベースに"獣"のギフトを持つ者だ しかしギフトの格が低いためにこのような半端な変幻しかできなくてな」
つまり獣人ってわけだ
「それはそうと 話が在って来たんだろ言えよ」
十六夜が話すように促す
「恥を忍んで頼む!"フォレス・ガロ"を完膚無きまでに叩きのめしていただけないでしょうか!」
侵入者たちは全員鋼夜達に頭を下げて頼み込んだ
「断る」
だが鋼夜はその頼みを断る
「ど どうして?」
「お前らガルドに人質を取られてるんだろ?そんで命令されてガキを拉致しに来た違うか?」
鋼夜は表情を変えることなく侵入者たちに言う
「はい まさかそこまでお見通しだとは……知らずとはいえ失礼な真似をして申し訳ありません 我々も人質を取られている故ガルドには逆らえず‥‥」
「その人質もうガルドに殺されているぞ」
鋼夜は隠そうともせず残酷な事実を告げた
「なっ!?」
「鋼夜さん!!」
ジンが慌てて割って入る
「隠す必要なんて無いだろ どうせ俺らが明日のギフトゲームで勝てば全部知れ渡る」
鋼夜は感情のこもってない声で返す
「殺された人質を連れ去ったのは他でもないお前らだ そんな奴らにかける温情は持ち合わせていない」
「ほ 本当に人質たちはもう……」
侵入者の内一人が恐る恐る聞いてきた
「……はい ガルドはさらったその日に人質たちをその手にかけ……殺したそうです」
ジンは言いにくそうに侵入者たちにそう告げた
「そんな……」
侵入者たちは悲しみに包まれ 同時にガルドに対する憎しみに満ち始めた
「お前たちガルドが憎いか?」
鋼夜が侵入者に聞く
「人質が殺されたんだぞ憎いに決まっているだろ」
「ならば明日ガルドのゲームに来い 俺がこの悪夢を終わらせてやる」
皆さん如何だったでしょうか?
最後に主人公が何か企んだような発言をしていますが
それは次回のお楽しみということで
最後まで読んで下さってありがとうございました