俺は炎の中にいた。
最初に見えたのは夜闇の世界の中、激しく揺れている炎。
次に炎によって焼け崩れている多くの建物。
その建物たちには統一性はなく、西洋、東洋、古代から現代まで古今東西あらゆる様式のものがごった煮状態だだった。
その次は倒れている生物たち。
倒れている生物たちも千差万別だった。
人間、動物、そして現実では見ることのない姿をしたものたち。
いや、二次元や創造の世界でのみ見ることのできる幻想の存在たちだ。
耳の尖った人や角と翼が両方生えている動物、鋭い牙や爪を持つ竜などがいる。
中には人外でありながら鎧を着て、武器を持っている者もいる。
屍のように倒れている生物たちのその先で巨大な赤い竜が咆哮を上げている。
その赤い竜は二足歩行で立ち、翼が生えており、右手に鍔の無い剣を持っている。
その赤い竜に対峙する人影が見えた。
その人影は顔が見えないほどにフードを被った赤いローブの人物だった。
赤い竜はローブの人物に向かって持っている剣を振るい、口から激しい深紅の炎を吐く。
しかし、ローブの人物は手にしている剣らしきもので降りかかる刃を弾き、迫り来る炎を切り裂く。
ローブの人物の刃が赤い竜からの猛攻の中、少しづつ赤い竜を傷つけはじめる。
次第にローブの人物と赤い竜の攻守が変わっていく。
ローブの人物の刃は時折光を放つ。
その度に赤い竜の体に大きな傷を受ける。
そして赤い竜はローブの人物に圧倒されはじめる。
赤い竜は炎を吐く余裕がなくなり、手にしている剣も身を守るために使うのがやっとのことになっていった。
ローブの人物の刃が今までと比べものにならないほどの発し、渾身の一撃が放れる。
そして遂に赤い竜は倒れる。
それを見た瞬間、胸の奥が痛んだ。
倒れた赤い竜の傍らに、いつの間にか別の人影が立っていた。
白い鎧に身を包み、剣を持った、剣士…
赤いローブの人物と白い、否、光の剣士が相対する。
よく覚えている…あの剣士こそが…俺の…
両者は互いに剣を構え、一斉に駆け出し
俺たちの…俺たちみんなの絆の証…
そして…
目が覚めた。
奇妙な夢を見た。
しかし、戸惑いは無かった。
あのような夢を見るのははじめてではない。
その経験から何かよくないことが起きる予感がした。
だが完全に覚醒していないからなのか、自分でもわかるくらいボーっとしている。
ふと、あることに気づく。
「…涙? 」
自分の頬に触れ、手が濡れた。
心が追いつかないまま、櫂トシキはいつもの朝を迎えた。