リンク・ザ・スタート   作:ヤギザ

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かなり遅くなりました。
言い訳は致しません。
すみません。





RIDE 11 第五層地下ダンジョン

 

「よし! 」

 

 

櫂は喜びを隠しきれない笑みを浮かべ、柄にもなく声まで漏らした。

 

それは目の前に現れれているアイテムを入手したという表示ウインドゥの内容を確認したからである。

表示されているのは二種類の固有名詞。

一つはS級のネックレス型のアクセサリーアイテム。

この段階でS級アイテムを手に入れるのは宝くじに当たるくらいの幸運だが、櫂が喜んだのはこのアイテムを手に入れたからではない。

 

もう一つの方を手に入れたからである。

 

 

クラン、グランブルー。

 

櫂は三つ目のクランを櫂が手に入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アインクラッド第五層は遺跡とそこに現れるゴーストがテーマの階層だ。

特徴的なのは主街区カルルインが真下にある遺跡エリアと一部同化しているということだ。しかも安全圏内と圏外の区切りに目印がないから、油断しているといきなり圏外に出ていることがあるから気を付けなくてはならない。

五層の特徴はもう一つあり、こちらが最大の特徴だ。

遺跡の中にはアイテムが至る所に落ちており、それをプレイヤーは拾うことができる。その落ちているアイテムを遺物と呼ぶ。遺物アイテムはレア度の低い順にゲームの中の通貨コルに変わる硬貨が数種類、宝石、マジック効果付きの指輪やネックレスとなり、レアリティが高いほど見つけづらい。

 

 

そして主街区真下の遺跡、地下三階で櫂は奇跡的にグランブルーの宿ったS級のネックレスを手に入れた。

 

 

 

櫂は他のプレイヤーからの情報を一切得ようとしないので遺物の存在は知らない。だから意識して遺物を探していたわけではない。が、クランが宿っているものから特殊な光が見える櫂はその光を頼りに最高のレアリティのアイテムを見つけることができた。

 

 

櫂はグランブルーの能力を確認する為にクラン専用のスキルスロットにグランブルーをセットしてみる。

 

「これは…」

 

確認したグランブルーの能力に櫂は僅かに眉を歪ませる。

とにかく櫂はグランブルーのスキルを確認する為に遺跡の探索とまだ処理していないクエストをこなすついでにモンスターを探す為に移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

十二月二十七日に攻略組が第四層のフロアボスを倒してから櫂はすぐさま五層に上がり、今までほぼ休みなく五層の探索とクエストをこなしていった。

五層の探索を始めた当初はあまりの暗さに《暗視》のスキルを取ろうかと悩んだが、四層の《水泳》の時と同じでカバーできるシステムがあるかもしれないと思い、保留にした。

《水泳》よりはかなり使える機会があるスキルだし、探索の為に近い内に取っておこうと考えていたが、今まで上げてきたスキルを0にするのは勿体ないという気持ちが勝った結果だが、何より今の櫂のレベルは15。次レベルが上がればスキルスロットが増えるので、その時獲得すればいいと思い至った。だが今ではその気持ちも薄くなっている。

《暗視》のスキルがない状態でのやり辛い探索の中でグランブルーのクランの光ははっきりと見えたことで、《暗視》はクラン発見の為に必須ではないと分かったからだ。極端な話、真っ暗闇の中でもクランの居場所は視認できる。

だったら使い所が限られる《暗視》より移動速度が上がり移動効率を稼げる《疾走》か、今ではかなり厄介になっているモンスターの不意打ちを免れるために《索敵》がいいかもしれない。

 

そんなことを考えつつ、五層で早々にクランを発見できたことで久しぶりに高揚した気持ちの櫂は順調に手早く五層の探索を進めていった。

 

 

 

 

 

そして特に何事も問題なく五層解放から三日目にして地上の遺跡エリアフィールドと地下墓地ダンジョンの探索を一通り終え、今エリアボスの部屋らしきものの扉に櫂はいる。

 

櫂が扉に近づいてみると、間違いなくエリアボス部屋に通じている扉だった。

だが櫂が気になったのはボス部屋の扉ではなく、その少し手前にあった扉だ。

ボス部屋と思われる部屋から中途半端な位置にあったその扉は何か怪しさを感じたので櫂はすぐに見えたボス部屋周辺を先に探索した。そして何もないことを確認して、改めて怪しい扉の前に立ち、そのノブを回す。

難なく開いた扉をゆっくり開け、警戒しながら慎重に部屋に入った。

見たところ変わった様子は見当たらない。

ふと、視界の隅に安全エリア内にいることを告げる文字が現れ、ここがボス手前の休憩ポイントだということを櫂は理解した。

張っていた気を解き、ここで少し休憩をしてからボス部屋内を探索するかと思った瞬間、視界の隅で『何か』が動いた。

 

「っ!? 」

 

一瞬、驚いて声が出るところだったが、持ち前のポーカーフェイスにより驚く仕草ともども表に出ることはなかった。

そもそも動いた『何か』は櫂にとって危険なものではないということはすぐにわかった。

『何か』は櫂が気づいていることに気付いていないのか、忍び足で櫂の背後に回る。

 

(何がしたいんだこいつは? )

 

身長が低く、特徴的な灰色のマントの『何か』のイタズラを仕掛けようとする子供のような行動に櫂は呆れた思いとバカバカしさにその場に立ち尽くす。

 

後ろに回った『何か』は背伸びをして両の手をそれぞれ櫂の目を覆うとする…

 

「…何をしている? 」

 

が、櫂はその手を掴み、振り返り、『何か』に睨みつけるような目で見る。

 

「いッ!? 」

 

『何か』改め、鼠と呼ばれる情報屋は不意に手を掴まれたことと仕掛けようとしていたイタズラがバレたことに驚くが、すぐに開き直った笑顔になる。

 

「あはははッ、いや~目隠して、だ~れダ? ってやろうとしただけだゾ? 」

 

その悪びれもしない予想通りの答えに櫂は呆れたため息を吐きながら手を放す。

 

「しかし、オイラの《隠蔽》を見破るとはかなり高い『看破』だナ」

 

鼠の言う通り、櫂の《看破》スキルの熟練度は現状ではトップクラスに高い。何故なら櫂は《看破》を最初からセットできるスキルの内の一つとして熟練度を上げ続けていたからだ。

《看破》は隠れているもの、隠してあるものを見破るスキルである。

櫂が最初に優先にしたことは勿論クランを発見することだ。数あるスキルの中で《看破》は櫂にとって迷うまでもなく一番必要なスキルだった。

そうなれば優先して熟練度を上げる。そうなれば鼠が優先して上げている《隠蔽》に対抗できる熟練度になっているのは当然だった。

 

「ちッキー坊には成功したのニ、次は絶対にやってやル」

 

(懲りていないのか)

 

「ところで一人でこんな所まで来たってことはボスに挑むのカ? 」

 

「ああ」

 

「やっぱりナ。ボス部屋に早く着いては一人で挑むイケメンの大剣士いるっていう噂は聞いているからナ。あっ情報源はオイラだかラ」

 

鼠の質問には素直に答えるが冗談を聞き流すスタンスをとることにした櫂は安全部屋の良さげな所に寝っ転がる。

ここで休んでさっさとボスに挑みたい櫂は鼠のことを気にするでもなく、神経と精神を休めることにした。まあこんな態度をとれば鼠もどこかに行くだろう、と安易な予測もあった。が、事態は意外な方向へいくことになる。

 

「やれやレ…先客はオイラの方なんだけどナ」

 

こんどは鼠の方が呆れたようにため息を吐いた。

先客、という言葉に櫂も少し気が咎めたがそんなに長居しないからいいか、と自分を納得させるが、鼠の次の言葉に櫂は体を起き上がらせることになる。

 

「オイラと組んで挑まないカ? 」

 

突然の申し出に櫂も少し驚くが、答えは当然決まっている。

 

「断「ここのボスは一人じゃどうにもならないゾ」

 

櫂の断りの言葉を遮る鼠の目は真剣だった。

 

「オイラもボスの偵察の為にここを拠点にしてボスに挑んでるんダ。理由としては最初に発見して様子見にボス部屋を覗いたらボスが…βテストとの時とは全く違っていたから少しでも情報を手に入れるためダ。何度か挑んでわかったことはボスの防御耐性が異常に高いこととボス部屋のギミックを使って弱らせるこト、ギミックを使うためにはパズルを解かなくちゃならない行程があル。本攻略の前にそのパズルをできれば全て解いておきたイ。一人だとどうしても時間が掛かるから手伝ってほしイ」

 

鼠の声から他のプレイヤーを思う気持ちが櫂は感じた気がした。

 

「わかった。協力しよう」

 

「ホントカ!? 断られるかと思っタ」

 

「俺もだ」

 

「なんだそレ? 」

 

「何でもない。で、俺はパズルとやらが解けるまでボスを引き付けておけばいいのか? 」

 

「あア。話が速くて助かル」

 

「だったらさっさと行くぞ」

 

「あっ待てっテ! パーティは組んどいた方がいいだロ! 申請するから受けてくレ! あとボスの知ってる限りの情報を話ス! 」

 

 

ソードアート・オンラインに入って二度目となるパーティを組み。鼠から櫂はボスの情報を聞いた。

ボスは巨大ゾンビで攻撃パターン、行動パターンは単純な方だが先ほど鼠が言っていた防御耐性が高いので殆どダメージを与えられないようだ。

 

櫂と鼠はボス部屋に入ると王冠のような物を被った巨大ゾンビが現れた。

すぐさま櫂はボスの注意を引き付ける為、ボスに向かって攻撃を開始する。

鼠はボス部屋の至る所にあるレバーを駆使して、天井にあるパズルを解いていく。

天井のパズルを解くと窓が開き、その窓から日の光が入ってきてボスゾンビが弱っていくのがわかった。そうしてボスを弱らせながら倒すわけだ。

 

櫂はダメージがまともに与えられないながらも少しづつダメージを与えていく。動きはそんなに複雑ではないので相手の攻撃を避けるのは難しくはなかった。部屋の様子を見てクランの光らしきものを探すくらいの余裕があったほどだ。

完全に鼠がパズルを解いた後も部屋にクランらしき光はなかった。

残るはボスのHPゲージを赤にしてボスに宿っていないかを調べるだけだ。

パズルを解いた後、鼠の撤退の指示を無視して櫂は攻撃を続けた。ボスゾンビは最弱体化している為、櫂の攻撃で簡単にダメージを与えることができた。

ボスのHPがレッドゾーン入った瞬間、ボスが凶暴化したような動きと鼠の「おいおイ! このまま勝てちゃいそうな勢いなんだけド!! 」と言う声が同時だった。その瞬間ボスの身や部屋にはクランの光のようなものは現れなかった。

ようやく櫂は鼠の撤退の指示を受け入れ、ボス部屋から二人は飛び出した。

 

 

「お前何考えてるんだヨ? 」

 

ボス部屋から出てきてすぐに櫂は鼠に文句のようないい方で訊かれた。

 

「いけそうだったから試しただけだ」

 

「そうかイ、なら探しものは見つかったかイ? 」

 

鼠の問いに適当なことを言って誤魔化すが、鼠の不意の質問に櫂は目を見開き凝視してしまう。

その櫂の表情を見て、鼠はからかう様な笑みをする。

 

「図星を突かれると正直な反応するんだナ」

 

「っ!? 」

 

櫂は鼠から顔を背ける。櫂にとって触れられたくないところを触れられてしまった。その思いが隠すことができずに表に出てしまった。

 

「とにかくありがとうナ。おかげ助かっタ」

 

その言葉の後に鼠からパーティを解除された通知が櫂の目の前に現れる。

 

「だいぶ遅くなったガ、これで五層の前半部の攻略本が出せル。じゃあまたナ」

 

顔を背けたままの櫂は鼠が離れていく足跡を聞きながら微動だに出来なかった。

 

櫂はまたしても罪悪感に押しつぶされそうになっていた。

他のプレイヤーの為に行動する鼠に協力することで少しでも罪悪感から逃れようと無意識の内に考えていた自分を恥じた。

 

それから数分、何とか気持ちを切り替え、一度街に戻って休もうと体を動かす。

今、櫂の足が重いのは精神的だけでなく、神経的にも疲れていた。

やはりボス戦でレッドゾーンまで削るのはかなり集中力を使った。

その疲労が完全に櫂のアバターの動きを悪くしていた。

 

ノロノロと暗い遺跡の中を歩きながら櫂は自分のソードアート・オンラインでの在り方について考えていた。

櫂の目的はこのソードアート・オンラインの中に散らばっているクランをすべて見つけ出し、自分の世界から消えてしまったヴァンガードと仲間の記憶と思い出を取り戻す事。その為に何が何でも見つけなければならない。

だがソードアート・オンラインただのゲームではなく、ゲーム内で死んでしまったら現実でも本当に死んでしまうデスゲーム。しかし、櫂は旧友の伊吹コウジお陰でその範囲にはいない。だがそれは命懸けで戦っている他のプレイヤー達にとって堪ったものではないだろう。

一人だけ遊びのままなのか?

そんなことはない!

何よりも大切なものを取り戻すために戦っている!

だがそれは他のプレイヤーは知ったことではないだろう。

だから不干渉を貫くべきだろうか…

 

(俺はどうすればいいんだろうか…いや、どうしたいのか…)

 

 

答えはもうすぐそこにある…だが今の櫂には辿り着けないでいる…

 

今の櫂トシキに足りないものそれは…

 

 

 

 

 

 

 

 

思考に没頭していた櫂は足を止める。

暗い五層ダンジョン地下三階の真只中。

水たまりが点々としている洞窟の中、それはあった。

『暗視』のスキルのない櫂でも見つけることができたそれは隅に蹲るように丸まっている。

 

見覚えのある赤いマントの女性プレイヤー…アスナが両膝を抱えて座り込んでいた。

 

 

一目でいつものアスナの様子と違うことは櫂にもわかった。

 

いつもの凛とした覇気がない。噂で聞き、何度か見た現在のアインクラッドでは最強の細剣も腰には無かった。

なによりいつも隣にいるキリトの姿が無かった。

 

 

アスナが何が起こってどんな経緯で今の状態にあるのか櫂にはわからない。

 

様子からして恐らくキリトとはぐれ、連絡が取れない状態であり、メイン武器を失ってしまったのだろう。

不幸が重なって凹んでいるのか、別の理由なのかはわからないが明らかに精神的に弱っているのがわかった。

もしかしたら涙さえながしているのかもしれない。

顔を伏せているせいかもしれないが、櫂のことに気付かず、動こうとしないほど参っているのは危険だ。

 

最前線のダンジョンの中。メイン武器の無い状態。

そんな時にモンスターと遭遇したらいくらレベルがトップクラスでもやられてしまうのは目に見えている。

 

 

だが櫂はすぐにそんな考えは自分の憶測だと、思考の端に寄せる。

 

もしかしたらすぐにキリトが来ることになっているのかもしれない。連絡はとれてただ待っているだけかもしれない。

 

櫂はアスナを横切ろうと足を動かす。

 

もし自分が今のアスナと同じ状況なら、落ち込んでいるところを誰かには見られたくない。プライドの高いアスナなら尚のことだろう。

とゆうか、今の櫂もまさに弱さによる迷いに落ち込んでいたのだ。

 

見なかったことにして関わらない方がお互いの為だ…

 

 

 

 

う~ん…難しく考え過ぎなんじゃないですか?

 

 

 

櫂の足が止まる。

数日前のクリスマスの日に出会った鍛冶屋の女の子の声が頭に響く。

そして嘗ての同じことを言われた時、前に進んだ時の気持ちが思い出される。

 

大切なのはどうした方が良いのかではなく、自分がどうしたいか。

 

アスナを見る。相変わらず動こうとしない。

 

 

 

(今…俺がどうしたいのか…)

 

 

 

 

 

櫂の足は自然とアスナの方に向かう。

 

「あなた…」

 

櫂はアスナの隣に背を壁に預けて立った。流石にアスナも気づき隣に立った櫂の顔を確認する。

 

「もう一人はどうした? 」

 

櫂はアスナの顔を見ずに尋ねる。

 

「…たぶんアルゴさんを探しに行ってる…」

 

明らかに沈んでいるが、櫂の問いに淡々とアスナは応えた。

 

(たぶん? )

 

言い回しが気になったが、とりあえず質問を櫂は続ける。

 

「何故だ? 」

 

「アルゴさんの攻略本が…未だに出回ってないから…ダンジョンに潜っているかもしれないから…そこで何かあったんじゃないかって…」

 

「お前はこんな所でで待っているのか? 」

 

ぶんぶんと大きく首を横に振りアスナは否定する。

 

「…私に黙って、キリト君一人で行っちゃいったから、追いかけたけど追いつかなくて…そしたらダンジョンの上の方で、トラップに引っかかっちゃって…ここまで落ちてきたの…」

 

僅かだがアスナの声の暗さが増す。

 

「落ちた、時に…剣を落とし、ちゃって…っ… 落とした剣…をモンスターに…っ、奪われちゃって…追いかけ、たんだけど…」

 

段々と涙声になっていくアスナ。だがそれを必死に抑えようとしている。しかし、言葉が詰まってしまい、これ以上はこの話は話せそうになかった。

追いかけた結果は続きを聞くまでもなかった。

 

「メッセージは飛ばしたのか? 」

 

櫂の記憶が正しければフレンド登録をしたプレイヤー間ではメッセージを送りあうことが出来たはずだ。

 

「キリト君と、フレンド登録してない…」

 

それを聞いた時櫂は、あれだけ一緒にいて何故だ? と思ったが流石にそれは当人同士と問題だとすぐに頭からけした。

フレンド登録をしていなくても送れるが、相手が安全圏内にいる時でないと送ることが出来ない。

 

「「………」」

 

それから櫂とアスナはしばらく黙ったままその場にいた。

 

アスナは顔を伏せて膝を抱えたまま、動かない。

 

一方の櫂はアスナの剣を奪ったモンスターのことを考えていた。

ソードアート・オンラインはデスゲームだ。しかし、櫂が感じる限りゲームをクリアしていくには難しくはあっても無理なレベルではないことはわかる。

良くも悪くも公平性は保たれているはずだ。

つまりメイン武器などをアクシデントなどで落とす状況になるトラップがあってそれを奪うモンスターがいる。そして奪われたらそれでおしまい…そうとは考えられなかった。もしそうなら運営に炎上にしてしまうほどの抗議のメールがプレイヤーから送られまくられても文句の言えないクソ仕様だ。

だとするならば…

 

「情報屋《鼠》なら無事だ…」

 

「えっ? 」

 

櫂の一言にアスナは顔を上げる。

 

「ここのエリアボスがβテストの時と全く違っていたから、偵察で挑んでみたところ。ボス部屋にパズルの仕掛けがあって、そのパズルの解く手順が攻略に必要だから粘っていただけだ。さっきその手順を把握して街に戻っていった。暫くしたら攻略本も配布されるだろう」

 

櫂は鼠が無事なことを話しながらアスナから離れていく。

 

「どうして、あなたが…」

 

「最後の方は俺も手伝ったからだ」

 

アスナから10mほど離れてメニュー画面を開き、アイテムをオブジェクト化させる。

グランブルーに宿っていたS級ネックレスだ。

櫂はその場にネックレスを落とす。

 

「一体…何をしてるの…? 」

 

櫂の行動に疑問を持ったアスナの質問に櫂は唇に人差し指を当てることで応えた。

静かに、と…

 

櫂は一歩、ニ歩とネックレスから離れていく。

 

アスナは次第に櫂のやろうとしていることを理解し始めた。それと同時にキリトが前にβテストの時に今のアスナの様に五層でモンスターにアイテムを奪われたことある、と話していたことを思い出した。

 

ペタペタ

 

足音が近づいてくる。

 

アスナはそれを息を呑み、見守っている。

しかし、近づいてきた足音は途中で止まってしまった。

 

(もうちょっと、もうちょっとだけ近づいてっ…! )

 

心の中で強く念じるアスナだったが、少し経ってもその願いが通じることはなかった。

凝視しているアスナとは打って変わって櫂はネックレスに背を向け、目を閉じ。

櫂のその様子を見てアスナは意図を理解し、顔を伏せる。

 

ペタペタペタ

 

すると、足音が更に近づいてくる。

 

ペタペタペタ、キュィン!

 

アスナは聞き慣れたソードスキルが発動する音がした瞬間、顔を勢いよく上げた。

 

アスナの視界に入ってきたのは櫂の両手剣のソードスキルによって貫かれているアスナの剣を奪ったモンスターと同じ種類のモンスターの姿だった。

 

モンスターがポリゴンとなり、消滅してから櫂の目の前にリザルト画面が現れたのを見て、アスナは今の自分に姿に悔しさを感じた。

 

「…ありがとう。あとは自分でするから…」

 

アスナは立ち上がり、櫂に近づいていく。

一連の櫂の行動は明らかに自惚れでもなく、アスナの為に剣を奪ったモンスターを誘き寄せようとしていることはアスナにはわかった。

正直、櫂が現れた時キリトではないことにガッカリしたし、誰かに見られたくない姿を晒してしまった。それでも知り合いに会えたことを喜んだし、櫂が何思ってかはアスナにわからないが傍にいてくれた。剣を取り戻そうと動いてくれたことにも無意識の内に頼った。

でもアスナはそれではダメだと思った。

 

アスナが自分で決めた当面の目標…キリトと同じレベルになって堂々とフレンド申請を行う。

 

その目標を自分が納得する形で行うには誰かに甘えてはダメだ。

 

そう自分を奮起させ、さっきまでの泣きそうになっていた自分をチャラにするためには奪われた剣を自分で取り戻す。

 

「得物はあるのか? 」

 

櫂の問いにアスナはストレージを開き、その中に入っている唯一の武器を装備する。

 

「アイアン・レイピアか…」

 

アスナの武器は一層のNPCショップの武器だった。見たところ強化もメンテナンスもしていない。

 

「…いくらお前でもその武器ではここでは心持たないだろう」

 

「平気よ…」

 

明らかにアスナは強がっている。実際にはアイアン・レイピアでどうにかなるかどうかはわからないが、気持ち的には強がりだ。

櫂も自分が同じ立場だったら、一人でやろうとしていただろう。しかし、ここで引くわけにはいかなかった。

これから先、前に進むために…

 

「お前はいつか俺に言ったな? 俺は『誰かの為に戦いたいと思っている』と…今まさにそうなんだと思う…」

 

櫂はアスナの目をしっかりと見る。

 

「手伝わせてくれ」

 

櫂とアスナの目を合わせること数秒…

 

「ありがとう…」

 

それから櫂とアスナは二人でモンスターの狩りをはじめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらく手分けしてモンスターを何匹か狩った後、少し休憩の為、お互いの得たアイテムを確認した。当然、アスナの剣は取り返していない。

 

「はぁ…尻尾とキノコしか落とさないわね」

 

「こちらもだ」

 

ため息を吐くアスナはうんざりした顔で肩を落とす。

 

「しかもこっちは『丸めた紙くず』なんて物を落とすのもいたし…バカにされている気分だわ…」

 

いくらか怒気を含んだ声と表情は少しづつだがいつものアスナに戻っていることを伺わせていた。

その様子を見て櫂は少し安心する。

 

ふと、櫂は違和感を感じた。

 

(丸めた紙くず? )

 

「その『丸めた紙くず』とやらを見せてくれ」

 

「え? いいわよ」

 

櫂は僅かに感じた違和感を確認する為にアスナに『丸めた紙くず』をオブジェクト化してもらい、受け取る。

『丸めた紙くず』を広げてみると日時と階と座標のようなものが書かれていた。

アスナも櫂の横から覗き込んでくる。

 

「何それ手書き? 」

 

「そのようだ。誰かとの待ち合わせの為に書かれた物のようだ」

 

「メッセージ飛ばせるじゃない。なんでそんな面倒なことを? 」

 

櫂の『丸めた紙くず』に感じた違和感はどうやら当たっていた。少々モンスターが持ち合わせているにしては特殊に感じた櫂はもしかしたらプレイヤーが落としたまたは捨てた物を拾ったのではないかと。

 

「理由はわからないが、この座標ははここから近そうだ。しかも日時は今日で今から15分後、場所は今俺達がいる階だ」

 

「正確な座標は…ここから50mも離れていないみたい」

 

「どうするんだ? ハッキリ言うが俺達の目的とは関係ないぞ? 」

 

櫂の言葉にアスナは思案する。

 

「…とりあえずモンスター狩りは中断してそこに行ってみましょう。あと15分後だし、メッセージを使わずに紙に書いたことも気になるし」

 

と、アスナは自分の剣を取り戻すために櫂が手伝ってくれていることを思い出した。

 

「付き合ってくれるかしら…? 」

 

「ああ…」

 

櫂の答えにアスナは僅かに笑みをこぼす。

それがここでのはじめてのアスナの笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

櫂とアスナが紙くずの座標を目指して進んでいくと、湧き水で小さな湖が作っている天然にできた洞窟の小部屋を見つけた。

座標はその小部屋の位置を示していた。

 

「どうする? 」

 

「隠れて時間まで様子を見ましょう」

 

「わかった」

 

「まあこれで恋人たちの密会だったら、完全に覗き魔よね私たち」

 

アスナは苦笑しながら、丁度良さそうな窪みにその体を納め、一見ではわからないように隠れる。

 

櫂も隠れられそうな場所を探す。

アスナよりも背も体格も良い櫂が隠れられそうな場所はすぐには見つけられなかったが、運よく覗き込まないとはわからない岩陰を見つけた。

 

二人はそれぞれ離れた場所で隠れて時間を待った。

紙くずの指定時間の三分前。

明らかなプレイヤーのものである足音が聞こえてきた。その足音は小部屋に入っていったのは明らかだった。

 

櫂とアスナは少し顔を出し、小部屋の中を確認する。

 

小部屋に入ってきたプレイヤーは言葉通りに全身を覆ったフード付きのマントをしていた。

マントのシルエットから細身であることと武器は小型の物である可能性が考えられた。

 

数秒後、別のプレイヤーが小部屋にやってきた。こちらもフード付きのマントをしているが腰には片手剣が下がっている。

 

小部屋にやってきた二人のプレイヤーは手で何かしらの合図を送りあっている。あからさまに怪しい。

 

「どもどもぉー、今日は早いですねぇー。お待たせしちゃいましたかぁー? 」

 

後から来た二人目のプレイヤーが軽薄な声で喋り出す。

変な緊張感があった中でのいきなりの軽い声にアスナがズッコケそうになった。そんなアスナを櫂は見ていたが、櫂はアスナとは別の印象を受けた。

言いしれない不気味さを…

 

「たいして待っちゃいねーけど、ここまで来るのメンドイよ」

 

二人目の軽薄な言葉に対して最初に来た一人目のプレイヤーが甲高い声で応える。

声からして二人とも男だろう。

それから、メモは面倒だがメッセージでは履歴が残るから仕方ないだの、尾行されていないだろうな、など話していく。

そして、話は本題に入っていく。その内容は櫂にとって恐るべきものだった。

 

話からして一人目のプレイヤーはドラゴンナイツ・ブリケードかアインクラッド解放隊のどちらかに所属していて、その二ギルドが明後日の大晦日に新年のイベントを計画しているが、どちらかのギルドがもう一方を出し抜き、五層を攻略しようとしているらしい。しかも一人目のプレイヤーの誘導によって…

そして小部屋にいる二人の他に、二人に指示している第三のプレイヤーの存在までいるようなことを話していた。

 

小部屋の二人は明らかにプレイヤー間の殺し合いに発展するように動いている。

何故そんなことをするのか櫂には理解できなかったが、そういう人種が混ざっていることは理解できた。

具体的な案はないが、やはり無意識に止める方法がないものかと考えてしまう櫂だったが、ここにはかなり直情的な人間が存在していた。

 

アスナだ。

 

アスナは今すぐ飛び出して小部屋の二人を問い詰めたい衝動に駆られるが、勿論弱い武器しか持っていない状態でプレイヤー間の殺し合いを促そうとしている奴らだ。秘密の密会を見られたことを知ったら、何をされるかわからない。

 

しかし、アスナのアバターは僅かに理性より感情に反応してしまった。

 

前のめりになったアスナの体はバランスを少し崩してしまい、足元の小石を蹴ってしまった。

小石の転がる音はここらの洞窟内は勿論、小部屋にも響いた。

 

「…………いま、何か聞こえましたー? 」

 

当然小部屋の二人にも聞こえた。

 

不審がった二人目がこちらに向かってくる。

櫂は背中の大剣に手をかける。頭の中で二人目に不意打ちをしてアスナと逃げるルートをイメージする。アスナはともかく櫂自身は身軽そうなあの二人から逃げきれそうにない。自分がどう足止めをするか…

 

しかし、櫂は思考していく中で、視線の端でアスナが《丸めた紙くず》を地面に落とすのは見た。

その瞬間アスナの狙いがわかった。大剣から手を放し、《丸めた紙くず》から目を逸らし、目を瞑る。

 

ぺたぺたぺた

 

プレイヤーとは別の足音が近づいてくる。

 

「おわっ! なんだコイツ! 」

 

二人目とモンスターが出くわす。驚いた二人目を横切り、モンスターは小部屋の中に入っていく。

その後騒ぎの中、怪しい二人はモンスターを倒した。

さっきの足音もモンスターのものと結論付けた様子を見て櫂とアスナは安堵する。

 

しかし、その後二人目の背筋の凍るような発言をする。

 

βテスターであるような発言をする二人目はβテストの時もここの落としたアイテムを拾って奪うモンスターが厄介であることを話す。だが他のプレイヤーが落とした物を持っていてたまにレア物が手に入ると…

そして今も何かしらドロップしたと…

 

「おおっ、マジかよ! バリレアっぽいレイピアじゃん! 」

 

最悪の偶然が起こった、と櫂は心の中で舌打ちをする。

櫂はアスナの細剣がどの様なものかは知らないし、今二人目が手に入れたレイピアがここからでは見えない。

しかし、簡単に連想が出来た。

アスナが窮地を脱するために誘き寄せたモンスターが運が悪いことにアスナの細剣を奪った個体だった。

 

思わぬレアアイテムにテンションが上がる一人目は二人目からレイピアを強請り、譲渡してもらっていた。

会話の中でレイピアの名前が出た。

シバルリック・レイピア。しかも強化が+5までされているとも言っている。

 

櫂はアスナの方を見ると絶望的な表情をしている。それだけでシバルリック・レイピアがアスナの物であることが確信できた。

 

(どうする…? )

 

櫂は必死に考えてシバルリック・レイピアを奪う方法を考えるが、解は出そうにない。

 

ふと櫂がアスナの方を見ると、明らかに出ていこうとしていた。

もしかしたら返してくれ、もしくは売ってくれと小部屋の二人に懇願するつもりなのかもしれない。

しかし、それはあまりにも危険すぎる。殺されるかもしれない。

櫂はアスナを止める為、もしくは先に出てアスナだけでも見つからないようにするために足を一歩出そうとする。

 

が、ここで状況に変化が起こった。

 

「おあ? 」

 

小部屋に三人目のプレイヤーが現れたのだ。

 

その姿は櫂も見覚えのある黒衣…

 

キリトだった。

 

「……こーれはこれは……」

 

突如として現れたキリトにフードマントの二人は警戒する。

 

「相変わらず、あなたとはおかしなところで遭いますねえ」

 

二人目の冷たく敵意を込めた声がキリトに向けられる。

 

「たったいまだよ。あんたらのお喋りが聞こえたんでな」

 

二人目の声と二人分の敵意をものともせずにキリトは太々しく応える。

 

キリトの登場で飛び出さずに済んだ櫂はこれからどうするか考えながらアスナの方を見る。

アスナもキリトの登場で飛び出すような軽率な行動をとらずに済んだようだ。

 

キリトと二人目は一触即発の中、会話をしていく。

恐らくいざとなったらアスナはキリトに加勢する為に飛び出していくだろう。そうなったら、自分はどうするべきだろうか、と櫂は考える。

キリトとアスナに加勢するべきか、しかしそうなれば、プレイヤー同士の殺し合いになる。

そう、本当の殺し合いだ…

そんなことが出来るのか? キリトにも…アスナにも…櫂自身にも…

 

この時間のない中、あれこれ考えそうになった櫂はある一点だけを考えることにした。

当初の目的、アスナの剣を取り戻すことだ。

これからどうなるかわからないが、どんな状況にってもアスナの剣は取り戻さないとアスナの命が危険だ。

とにかくそれだけを考えた。

 

そしてプランは立った。

ぶっつけ本番だ。

だがやるしかない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリトと二人目がお互いの名前を呼び合ったところで場の空気が重くなった瞬間、一人目がキリトに警戒する中、違和感を覚えた。

 

右手が重い。

正確には右手で持っているシバルリック・レイピアが重い。

しかしその重さは重量が単純に上がった感じではなく、何かに引っかかっている感じだ。

 

いや、引っ張られている?

 

一人目が違和感の正体を確かめる為キリトを経過しながら少しだけシバルリック・レイピアの方を見る…

 

地面から生えていた白骨の手がシバルリック・レイピアを強く握りしめ、そして

骸骨か一人目の顔を凝視していた。

 

 

「うわああっ! 」

 

ホラー映画もかくやという状況に一人目は大声を上げてしまった。

一人目は別に心霊現象のようなものが苦手であるわけではないが、やはり不意に不気味なものが現れれば常人なら驚いてしまうのは仕方ないだろう。

 

その大声の隙を逃がさんとばかりに骸骨は地面からかなりの速さで這い出てくる。

そして今度は抱き着くように両手でシバルリック・レイピアを握る骸骨。

 

咄嗟のことに体勢を崩しながら右手を振り回し、骸骨を振り振りほどこうする一人目。

 

「なっなんだコイツっ!? 」

 

「ち、ちょっと! 」

 

一人目が体勢を崩した時、近くにいた二人目…キリトにモルテと呼ばれた男にぶつかる。

そしてシバルリック・レイピアにしがみついていた骸骨は一人目からそれを奪おうとするかのように、一人目を蹴りぬく。

そのせいでシバルリック・レイピアを骸骨に奪われた一人目は尻餅をついてしまう。

 

そして骸骨は明後日の方向にシバルリック・レイピアを放り投げた。

 

あまりの出来事に巻き込まれたモルテは勿論、キリト、そしてアスナは動くことが出来なかった。

何が起きているのか意識が追いついてこなかった。

 

そんな中、櫂だけが駆け出していた。

背中の大剣を抜き、ソードスキルのモーションに入る。

 

骸骨が放り投げたシバルリック・レイピアをすかさず拾うものがいた。

そうあの落としたアイテムを拾うモンスターだ。

 

そしてそのモンスターはシバルリック・レイピアを拾った瞬間、櫂の突進系のソードスキルをくらい、ポリゴンとなって霧散した。

櫂のソードスキルのモーション速度は軽量級武器のソードスキルを凌駕するほど速い。

 

ソードスキルのライトエフェクトと共にいきなり現れた櫂に驚くモルテと一人目そしてキリト。

 

櫂はその場の三人に目もくれず、メニュー画面を開き、操作していく。

 

 

洞窟の窪みに隠れていたアスナは混乱する中、急に目の前に現れた通知画面に僅かに驚く。

そしてそこに書かれていた物を見て、状況を理解する。理解して装備メニューを開いた。

 

 

 

メニュー画面の操作を終えた櫂は大剣を両手で握り、モルテと一人目に対して構える。

 

「オマエどっから出てきやがった!? 」

 

「どっちかっていうと、いつからって聞きたいですねぇ」

 

起き上がった一人目と崩れた体制を整えるモルテが櫂に対して警戒心を顕わにする。

一人目とモルテは二対二になったと思って警戒心を増すが、何が起こっているのか全く理解できないキリトは表情には出さずに混乱していた。

 

(何であいつがここに? )

 

四層のエリアボス戦で櫂が見せた謎のスキルの一件以来、キリトは櫂に対して少なからずの疑念を持っていた。

櫂が敵なのか味方なのかわからずどうしていいかキリトは三人に対して警戒をしなくてはならなかった。

 

誰も動かない状態から数秒、ここでまた状況の変化が起こった。

ここで第五の人物であるアスナが姿を現した。

その右手には櫂から譲渡されたシバルリック・レイピア+5が握られている。

そして現状プレイヤー達が持っている中で間違いなく最強の細剣を一人目をモルテに向ける。

 

このアスナの登場とシバルリック・レイピアを見てでキリトは櫂とアスナが協力体制であることを予想し、櫂を警戒から外した。

 

「引くぞっ! 」

 

アスナが現れてさらに数秒経った時、櫂がアスナとキリトに向けてそう言うと、この場から離れるために駆け出す。

 

櫂の思いもよらない発言と行動に、他の四人は呆気をとられ、二秒ほど動けなかった。

 

「…って! 逃がすかよっ!! 」

 

二対三なって完全に不利になった状況からどう対処しようか考えていた時の敵の思いがけない撤退に一人目が叫んだのと、アスナとキリトが迷いながらも櫂の後を追いだしたのは同時だった。

 

一人目とモルテからしてみれば、どこまで自分たちの話を聞かれたのか、そして聞かれていたら逃がすわけにはいかないという思いから当然三人を追いかけようとするが、思いっきり体を転倒させた。

 

「なんだよっ! くそっ! 」

 

一人目が足元を見るとまたもや地面から生えてきた白骨の手が自分たちの足を握っていた。

 

「またかよっ!! 」

 

「あははっ…今日はリアル厄日ですねぇ」

 

転倒してから起き上がるにはゲームシステム的に時間が掛かる。

一人目とモルテが起き上がっている間に櫂とアスナとキリトは完全に離れていった。

 

走りながらキリトは先ほどの骸骨に対して思いを巡らせていた。

 

(五層であんなモンスター出てきたっけ? しかもまるで俺達を助けるみたいな行動をとったし、そもそもなんであいつからシバルリック・レイピアを奪ったんだ? )

 

いろいろ疑問を感じながらキリトはあの骸骨に奇妙な印象を受けた。

あの骸骨は古い遺跡の中の幽霊ではなく…

 

幽霊船に出てきそうな奴だと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

櫂とアスナとキリトは三人で走ること数分、地下三階から二階まで上がり、モンスターが現れないであろう所で立ち止まる。

今の自分たちの体は実際の体ではないゲームのアバターなので息が切れることはないが、先ほどまでの緊迫感から三人はそれぞれ疲労を感じていた。

本当は一気に主街区まで戻りたかったが、疲れがそれを許してくれなかった。まあここまで来ればモルテ達も追ってこれないだろうという憶測もある。

 

「おい、一体どうい…っアスナ? 」

 

しばらくして落ち着いた三人の内、キリトが事情を聴くために櫂に問い詰めようとしたところ、キリトの裾を握ってきたアスナがその場にしゃがみ込んでしまった。

 

アスナの体は震え、今にも泣きそうな顔になっていた。

 

その姿を見たキリトはここまでどれだけアスナが辛い思いをしていたのかがわかった。そしてそれを押し殺して必死になって頑張ってきたことも…

 

「大丈夫…大丈夫だから…」

 

しゃがみ込んだアスナをキリトは抱きしめる。

アスナが自分で立ち上がれるようになるまで…

 

 

それからしばらくしてアスナが立ち上がり、改めて事情を聴こうと周囲を見渡した時には櫂はいなくなっていた。

その後、アスナから経緯を聞き、櫂からアルゴが無事なことを聞いたこともアルゴに協力していたことも聞いた。

 

だが、キリトは櫂に一度ちゃんと話をしなくてはならないという思いは消えることはなかった。

 

そしてその機会は訪れる…

 

二日後の大晦日に…

 

 

 

 




日光をホテ…遺跡内へ。ボスが苦しむ姿は写真のフィル…日の光を浴びた吸血…これもダメか、まあとにかく真っ黒に感…うっ頭が。


五層なんかでステータス上昇系のS級アイテムが手に入るはずがないとかツッコまれても仕方ないとは思いますが、ここのオリ設定&主人公補正ってことで納得していただけないでしょうか?

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