リンク・ザ・スタート   作:ヤギザ

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今回はかなり長くなりました。
分割してもかなり中途半端になると判断した次第です。





RIDE 12 ギルドフラッグ

櫂がそのメッセージに気付いたのは偶然だった。

 

12月29日の夜、アスナとキリトと別れた櫂は主街区の宿で眠りについてそれから10時間くらいが経った頃、目を覚ました。それは30日の午前中に攻略組の選抜メンバーで難なくエリアボスを倒した頃とほぼ同時刻だった。

それから櫂はまだ未探索の第五層の中央にある『マナナレナ』という村を後回しにして、その村の先にある枯れ木の森、迷宮区に続く巨大迷宮、そして迷宮区であるタワーの探索を怒濤の勢いでこなしていった。

枯れ木の森を二時間、巨大迷宮を七時間、迷宮区タワーを六時間、計十五時間かけて探索とマッピングを完全に済ませた。

何故櫂が村の探索を後回しにして迷宮区やダンジョンの探索を優先させたのかというと、今の攻略組の攻略速度は櫂にとってあまりにも速すぎるからだ。

もしのんびり村の探索やいつでも受けられるクエストをやっている間に攻略組がボスを倒してしまって、そのボスにクランが宿っていたらそのクランがどうなるかわからない。だから櫂は探索よりもフロアボスにクランが宿っているか確認する為に、いち早く迷宮区にもぐったのだ。

そして慎重に慎重を重ねフロアボスに偵察戦を挑んだ。

結果としてはクランは宿っていなさそうだった、といったところだ。最初にボスを確認した時はクランが宿っている感覚はしなかったが、ダンジョンを一気に突破した後の、倒すことが目的ではないにせよ、フロアボス戦はやはり無理があった。フロアボスのライフを半分と少し削ったところで櫂の集中力と回復アイテムの方が限界をむかえてしまって、撤退を余儀なくされてしまった。

マナナレナに戻ったのは12月31日の午前四時だった。それから宿のベットに倒れ、眠りの底に沈んだ。

 

正直櫂もここから軽く十時間以上は目が覚めないなと思った。

 

だから偶然なのだ…

 

アスナからのインスタント・メッセージを早い段階で確認できたのは…

 

 

同日午後一時半頃、何故か自然と目を覚ました。日付と時間を確認して、櫂は案外早く目が覚めたな、と思った。その直ぐ後に視界の端に見慣れないアイコンのようなものが見えた。

 

それはインスタント・メッセージが送られてきている事を知らせるものだった。

 

初めて送られてきたメッセージに疑問を感じながら、メッセージを開くと宛先人はアスナだった。

 

メッセージの内容は、アインクラッド解放隊がドラゴンナイツ・ブリケードとの合同で行う新年のカウントダウン・イベントに参加せず、フロアボスに挑む事に対してアスナとキリトの他数人で先にフロアボスを先に倒してしおうとしているから手伝ってほしい、というものだった。

 

櫂としては二大ギルドの信用関係を壊さない方法があるのなら知っておきたいし、まだ完全に調べきれていないフロアボスを倒されてしまう事は困るなど、いろいろ気になるのでメッセージに書かれていた集合場所に向かうことにした。

 

 

櫂が集合場所であるマナナレナからそう遠くない森の中の空き地に到着すると、もはやトレードマークとなっている赤いフードマントのアスナと情報屋の鼠に殆どは見覚えのある数人のプレイヤーがいた。

ボス攻略時に何度か目にしている黒い肌の巨体にわかりやすいスキンヘッドの両手斧使いのエギルとそのパーティメンバー三人。

ドラゴンナイツ・ブリケードのサブリーダー的ポジションの両手剣使いのハフナーと幹部の盾持ち片手直剣の重戦士のシヴァタ。

アインクラッド解放隊のパーティリーダーを務めている薄い髭が印象的な中年手前の春バート使いで確かオコタンという名前のプレイヤー。

最後に盾込みで全身重量系の装備で固めた兜で顔のわからないロングメイス使いがいたが櫂は知らないプレイヤーだった。このプレイヤーについてわかることはタンクなのだろうということとマントや鎧の色がアインクラッド解放隊のカラーであることからアインクラッド解放隊所属である可能性が高いこと、そしてどうやったかは知らないが今の段階では質の良い全身鎧を手に入れていることだ。

その中で黒尽くめのキリトの姿が無い。まだ来ていないようだ。

 

「来てくれたのね? 」

 

櫂が来たことに気付いたアスナが駆け寄ってくる。

その後ろから鼠、エギルも近寄ってくる。

 

「なんだよ空気読め夫もいるのかよ…」

 

離れたところからハフナーが毒吐く。

第四層のエリアボス攻略会議の一件で攻略組は櫂に悪い印象を受けている。特にハフナーは性格的にかなり櫂を嫌っていた。

櫂もそれは当然だと思ってるし、櫂に非や落度がない場合だったとしても無視していただろうから気にはならない。

 

「とりあえず事情を訊きに来た。説明してもらおう」

 

櫂が呼び出した本人であるアスナにそう言うと、アスナは説明をはじめた。

 

アスナの話によると、どうやらアインクラッド解放隊がギルド単独でフロアボスに挑む一番の理由はボスドロップのレアアイテムがドラゴンナイツ・ブリケードの手に渡らせない為だということらしい。

そのレアアイテムは籏らしく、どうやらギルドメンバーに対して複数のバフ効果を与える物らしい。しかも制限がなく汎用性が高い。カテゴリーは武器だがその効果を使用するのは地面に刺すだけだから、破壊される心配は基本無い。

そのレアアイテムがドラゴンナイツ・ブリケードに渡ってしまうとパワーバランスやボス戦時の士気に大きく差が出来てしまう。そう考えたアインクラッド解放隊は先に手に入れてしまおうということらしい。

しかし、アインクラッド解放隊が手に入れてもドラゴンナイツ・ブリケードと立場がどちらかというだけで、結局のところ最前線の二大ギルドで戦力の差が生まれ、協力関係が修復不可能なくらい壊れてしまう。結局、レアアイテムがどちらかのギルドの手に渡った時点で協力関係が崩壊してしまう事に変わりがない。

 

これの防ぐ為ににキリトとアスナは二ギルドにどちらの手にも渡らないように自分たちだけでフロアボスを倒し、そのレアアイテムを先に入手してしまおうということらしい。

 

だがそれでは第三勢力が手に入れるだけで変わらないのではないのか、という懸念があった。

 

キリトは間違いなく今のプレイヤーの中でNO.1の実力だ。ギルドを立ち上げれば、二大ギルドに匹敵する力をつけるのにそう時間はかからないはずだ。

 

その櫂の心配をアスナに伝えると、それは大丈夫だ、そうだ。

 

どうやらキリトは第三層の時に二大ギルドの前で自分はギルドを作らない発言をしているらしい。

もしその発言を無視してギルドを作ってもいろんな意味で酷い目に遭うだけだろう、という。

それにそうならないよう監視の為という理由もあり、今回の協力者にアインクラッド解放隊とドラゴンナイツ・ブリケードの両方から協力者を得たらしい。

 

確かにこの攻略に参加するのはハフナーやシヴァタ、オコタンにとってギルドを裏切る行為だ。

まあ個人の考えは人それぞれだ。ハフナー達には何か考えがあってのことだろう。

 

最後にアスナの説明で気になったのは、二日前の怪しいマント男達の話が出なかったことだ。

櫂もアスナと一緒にフードの男達の話を聞き、今回の事を暗躍していることを知っている。

どうやら他のメンバーにはその話をしていないようだ。

 

まあ櫂には理由がだいたい察することが出来た。

無用に事を荒立てる必要はないと考えたのだろう。櫂自身そう考えたし、納得はすぐにいった。

 

「あなたも手伝ってくれるかしら? 」

 

説明を終えたアスナからの正式な協力要請。

 

櫂としてはこの話が来てくれたことは良いことだった。

もしこの話をしてもらえなかったら櫂の知らないうちにフロアボスを倒されていたかもしれない。

櫂はアスナの申し出を首を縦に振るということで応えた。

 

 

 

櫂がエギルに握手を求められたり、それを拒否したら鼠にからかわれたりしていると、キリトが見慣れた青年プレイヤーを連れて現れた。

青年プレイヤーは確か強化詐欺を行っていた元鍛治師だ。詐欺の被害にあったプレイヤー達から許しを得て、当時の装備をすべて譲渡して今はコツコツと仲間のプレイヤー達と真っ当にレベル上げや資金集めをしていたはずだ。キリトと一緒にいるということはこの青年プレイヤーもこの作戦に参加するということだ。

 

「遅くなって…あっ」

 

キリトは集合に一番最後に来たことを謝ろうとした時、櫂の存在に気付いた。

すると、何故ここに? と聞こえてきそうな顔で櫂を見た。

櫂はキリトのそんな表情にすぐに気付いた。それぐらいあからさまだった。

何故キリトが自分の事をそんな風に見るのかはわからなかったが、とりあえず気にしないことにした。

 

一方、キリトは櫂に何か言おうとした瞬間、ハフナーに絡まれ、この場にいる者の思惑をそれぞれ話す展開になった。

ハフナーはこのゲームをクリアすることが一番大切であり、その為には二大ギルドの両方が必要だと考え、参加したらしい。

オコタンも同じ考えらしい。

そしてキリトも同じ考えあるから、みんなに協力を要請したと明かした。

そのキリトの話に大なり小なりそれぞれ納得したようだ。

 

だが櫂はキリトの真意がそれだけでないことを何となく理解していた。

恐らくフード男達の思惑を潰す事も重要な動機なのだろう。

 

「…ブラッキーさんの考えはとりあえずわかった。でも個人的にもう一人しっかり理由を聞いておかなきゃならない奴がいる…」

 

ハフナーはそう言うと櫂の方を見る。

 

「空気読め夫、お前だよ…ボス戦前に空気悪くしてまでパーティに入らなかった奴が、どうしてこの攻略に乗ったんだよ? 」

 

「…俺も他の連中と同じだ。二ギルドの関係を悪化させるのは得策ではない」

 

「それだけで信じられるかよっ」

 

ハフナーの問いに素直に答えたつもりだった櫂だが、どうやらハフナーには納得できなかったようだ。

だが櫂としても本当の動機を話すわけにはいかないし、嘘を言っているわけではない。

だがやはり後ろめたさがある隠し事は苦しいものだった。

 

「ウソは言っていないと思うゾ」

 

櫂とハフナー、両者や周りの者達が誰も喋らない緊迫の中で鼠が櫂を擁護した。

 

「コイツは時々オイラの情報収集に協力してくれてるんだヨ。まあ不愛想だけド、悪いヤツじゃなイ。少なからずウソは言っていないヨ」

 

そう言った鼠をハフナーは黙って見る。まるで嘘を吐いていないか、見極めようとしているみたいに。

当の鼠はいつもの不適というかいやらしいというか、そんな笑みを浮かべている。

 

「…わかった。情報屋に免じて信じるよ」

 

納得したかどうかはわからないが、少なからず鼠は嘘を吐いていないとハフナーは一歩下がる。

 

「よ、よし。じゃあとりあえずアルゴが買ってきてくれたポーションを分配しよう」

 

キリトの何故か上ずった声での進行でフロアボス討伐とダンジョン踏破の準備が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし! それじゃ行くか! 」

 

装備が不安な者に強い装備を貸し出すなどの準備は滞りなく終わり、ハフナーの気合の入った声と共にメンバーが移動を開始しよう動き出した時…

 

「待て」

 

櫂はそれを止めた。

 

「なんだよ? 」

 

ハフナーが明らかに不快感を露わにして櫂に問いてくる。

 

「一番肝心なことを聞いていない」

 

「一番肝心な事って? 」

 

「わからないのか? 」

 

「バカにしてんのか!? だから何だよ肝心な事って!? 」

 

怒鳴ってくるハフナーをよそに櫂はキリトとアスナの方を見る。

櫂の視線に二人は何となくなんとな~くではあるが、お前達ならわかるだろ?、いう込められた思いを辛うじて理解し思案する。が、二人には心当たりもなく思いつくこともなかった。

 

「すまない。一番大切な事ってなんだ? 」

 

リーダーとしてキリトは櫂に聞いてくる。

櫂は小さくため息を吐き答える。

 

「ボスを倒した後、誰が目的のアイテムをドロップしたかを確認する方法だ」

 

「はっ? 」

 

「「「「あっ!? 」」」」

 

何言ってんだ? と言わんばかりのハフナーと深刻な問題を全く考えていなかったことに気付くキリト、アスナ、鼠、エギルの四人。

 

「そうか! しまった…考えてなかった」

 

キリトのその言葉にまた櫂はため息を吐いた。

 

「そんなもん自己申告で…あっ!? 」

 

ハフナーも遅れて気付いて声を上げた。

他のメンバーも櫂の言う『一番肝心な事』が何なのか完全に理解した。

 

もしボスを倒せた場合、βテスト時と変わらず籏のレアアイテムをボスがドロップしたら誰かの手に間違いなく渡る。しかし、もしβテスト時と違ってドロップしなかったら誰の手元にもいかない。ではそれを確認する方法は?

一つしかない。全員のストレージの中を確認するそれだけだ。

 

デスゲームと化し、ログアウトが出来なくなったプレイヤーにとってこのゲーム内が現実になっていると言っても過言ではない。

その中で家族でもない氏素性もわからない他人とやっていくのは至難を極める。

何もわからないならわからないなりにやりやすいというのもいるかもしれないが、ここでは性別と見た目は本人そのものだから全くわからないわけでもない。それは中途半端だからたちが悪いと言える。

つまりそんなよくわからない他人同士が一緒にやっていく場合、心のどこかで絶対的な線引きをしていない人間はやっていけないだろう。

そして今このソードアート・オンライン…アインクラッドでその線引きの最たるものの一つが個人のストレージなのだ。

それを無理に見ようとしようものなら、それは勝手に人の家に踏み込むのと同じだ。

それはギルドリーダーであっても強制的に見ることは許されない。

つまりたとえドロップしていたとしても、してないと言ってしまえばその真偽を確かめることが出来ないのだから、嘘を吐いても基本的にばれることはない。

だからここで誰も自分がドロップしていないと言った場合、その時の確認方法を明確にして置かなくてはならない。

 

 

 

誰も口を開かない。全員どうすればいいかわからないでいる。

この問題は後で決めればいいというわけにはいかない。

この攻略の意味そのものが問われる問題だからだ。

 

「何を迷っている? 」

 

全員黙っている中で、櫂が口を開く。

 

「全員のストレージを確認すればいいだろう」

 

「いや、それは…」

 

「事ここに至っては、この方法しかあるまい」

 

「そうだけどよ…」

 

「いや、それは無理だ」

 

ハフナーがはじめて櫂に対して言いよどんでいるとキリトが櫂の案に異を唱える。

 

「たとえ全員のストレージの中を確認できたとしても、ストレージ内の袋の中に隠される可能性がある。それだけならまだいいけど、さらにその袋の中に袋がある…マトリョーシカみたいな構造のして奥に隠されたら、何時間かけて探しても見落とすかも…」

 

「おいブッキーさん! オレたちがそんなことすると思ってたのかよ! 」

 

「あっ…」

 

キリトは自分の失言に顔を伏せる。

 

またしても沈黙が場を支配する。だがその沈黙は嫌なものだった。

この場のリーダーたるキリトが裏切り覚悟して参加したメンバーのことを信じていない発言をしてしまった。

今、この即席パーティ信用関係が崩れかかっている。

その中で口を開いたのはやはり櫂だった。

 

「だったらこの場でアイテムを入れられる物をストレージから全て出し、その上でボスを倒した後、ドロップ報告がなかったら全員のストレージを確認すればいい」

 

「だからそれは! 」

 

「出来ないのか? つまりさっきの覚悟があるような発言は嘘だったんだな? 」

 

「なんだとっ!? 」

 

ハフナーは櫂の胸倉を掴みかかる。

このまま櫂を殴りかかりそうなハフナーをアスナが止めようとするが、それはなされなかった。

何故なら櫂がハフナーの腕を逆に掴み払ったからだ。

 

「俺は出来る」

 

櫂は自分のストレージ開き、その中にある袋や木箱などのアイテムを収納できるアイテムを全てオブジェクト化し、その場に捨て去った。

 

「なっ…!? 」

 

櫂の行動に全員が絶句する。

 

「ハフナー。確かに俺は話せない思惑や考え、目的がある。だが今の最前線の二ギルドの完全分裂を阻止したいと本気で思っている」

 

櫂はストレージを開いたままハフナーを見据える。櫂の視線にハフナーはたじろぐ。

 

「だからその為ならストレージぐらいいくらでも見せられる…お前はどうなんだハフナー? 」

 

「~~~~っわぁったよっ!! 俺だって本気だ! ストレージぐらい見せてやるよっ! ほら見てくれっ」

 

ハフナーは何とも言えない表情になり金髪の頭をガシガシと掻き、観念したように怒鳴り、ストレージを開き、櫂と同じように袋や木箱などをオブジェクト化して捨てる。

 

ハフナーのその行動に櫂は本人も周りも気付かないほど僅かに笑った。

 

「他の者はどうだ? 」

 

 

櫂の言葉に直ぐには誰も動かなかった。

だが、直ぐにガチャッと金属の揺れる音と共にこの中では背の低い方である体が前に出た。

 

「私も…いいです」

 

ヴォイスチェンジャーで変えたような声で、しかし丁寧な印象を受ける言葉で紡ぐ全身鎧がストレージを開き、先の二人と同じことをするが、それを止める者がいた。

 

「ちょっと待ってくれ! 」

 

シヴァタだ。全身鎧の腕を掴む。

 

「いいのシバ。私は二つのギルドの関係を壊したくない…いえ、もっと良い関係になってほしいと思ってる。その気持ちが本気だって証明する証明する為にも、ストレージを公開します」

 

「リッちゃん…」

 

シヴァタは全身鎧の言葉を聞いて手を放すが、まだ渋い顔をしている。

全身鎧とシヴァタ…それぞれアインクラッド解放隊とドラゴンナイツ・ブリケードの別々のギルドメンバーなのに何故シヴァタが全身鎧を庇うのか櫂にはわからなかったが、彼等が恐らく大晦日のカウントダウン・イベントの運営をしていたのだろうと予想できた。

 

「…わかった」

 

シヴァタは少しの逡巡後、ストレージを開く。

 

「俺もリッちゃん同じ思いだ…アインクラッド解放隊とドラゴンナイツ・ブリケード、二つのギルドが確かな信頼を築ける関係になることを目指してる。だから…」

 

シヴァタの言葉に全身鎧はストレージの操作を再開する。シヴァタもストレージを操作していく。

 

「正直ここまでの事をしなくてはならなくなるとは思わなかったが、二ギルドのメンバーが覚悟を示したんだ。ここでやらきゃ男じゃないな」

 

この中で一番体格の良いエギルが不適に笑い、ストレージを操作を始める。そのエギルに続き、三人のエギルのパーティメンバーがストレージ開く。全員エギルと同じように影の無い笑顔をしている。

 

次々に袋や木箱の類のアイテムがオブジェクト化して捨てられていく中、残りのメンバーは動かず黙ったままだ。

アスナは真剣な表情をしているだけでその心の内は読めない。鼠もいつもの笑みはない。キリトはそんなアスナと鼠の様子を伺っている。キリトが連れてきた元鍛冶師はそんな三人の様子を見てオロオロしている。そしてアインクラッド解放隊のオコタンは無表情だ。

 

櫂達ががストレージの操作を終えると、キリト達まだこの方法に賛同していない者達に注目が集まる。

 

「…私もいいわ」

 

注目されて直ぐ動いたのはアスナだ。

アスナがストレージを開く事にキリトは手を出そうとしたが、直ぐに引っ込めた。

 

「しょうがないカ…」

 

鼠も観念した顔でストレージを開いていく。

 

「では僕も…」

 

それから少ししてから二人に続き、元鍛冶師もストレージを開いていく。彼はどうやらキリトのことが気になるらしく、チラチラと見る。

 

「…私もわかりました…」

 

オコタンもストレージを開き始める。

 

それから数分、四人の操作が終了し、ストレージを開いた状態になる。

 

そしてこの場でストレージを開いていないのはキリトだけになった。

 

キリト以外の者全員はキリトを見る。

 

「…ごめん」

 

注目を受けていたキリトは深々と頭を下げる。

 

キリトのその行動にみんな反応は違ったが、ショックを受けたのは同じだった。

 

「いや、俺もストレージを公開する…俺が謝ったのは別のことなんだ」

 

直ぐ後のキリトの言葉にみんな紛らわしいことをするなと思いつつも安堵した。

 

「俺が今回の計画の発案者なのにボス撃破後のドロップ確認の方法を考えていなかった。肝心な事なのに気付きもしなかった。そのせいでみんなに他のプレイヤーにストレージを見せるなんてキツいことをさせることになった。本当にごめん」

 

「…まあ別にいいよ。他に方法もないみたいだし。これくらいの覚悟がなくてここに来ちゃいねぇよ」

 

深く頭を下げて上げることのないキリトにハフナーがぶっきらぼうに言う。

 

「そうですよ」

 

「ああ」

 

「ギルドを裏切るようなマネをしているんです。今更です」

 

と、二ギルド組のプレイヤーがキリトを許す。というか気にしていないといった感じだ。

他のメンバーも同じだ。謝られても誰も気にしていないのだ。

勿論櫂も。

 

「ストレージを見せ合うのはボス戦前でいいだろう。その方が確実だし、ここから何度かモンスターと戦うんだ。その都度のドロップ品も込みで確認できる」

 

「わかった。とりあえずボスに向かおう」

 

櫂の言葉に頭を上げたキリトを中心に全員がフロアボス討伐の為、走り出した。

 

 

 

 

 

道中、何度かエンカウントしたモンスターとこのメンバーのコンビネーションを確認する為に時間をかけて戦い、迷宮区タワーの手前にある巨大迷宮の外周の端に辿り着く。

それから鼠がクエストで手に入れた鍵で壁に差し込むと壁に上に続く窪みが現れ、梯子の様になった。

それを全員で上り、近道と鼠から受け取った巨大迷宮のマップデータのお陰で最短距離で突破し、巨大迷宮と迷宮区タワーの接続部分で休憩を取ることになった。

 

櫂が一人で壁に寄りかかって休んでいるとアスナが声をかけてきた。

 

「貴方もどうぞ」

 

アスナの手からロールケーキが差し出されていた。

周りを見ると、食べ方はそれぞれ違うがアスナが差し出しているロールケーキと同じものをみんなが食べていた。

いや、一人だけ食べていない者がいた。キリトだ。

そんなキリトと櫂は目が合う。するとキリトはあからさまに目を逸らした。どうやらさっきから櫂の方を見ていたようだ。

 

「結構だ…」

 

「遠慮しなくてもいいのに」

 

「いらん」

 

「食べてくれないと余っちゃうんだけど」

 

「いらんと言っている」

 

「そう…」

 

アスナは差し入れを強く拒否する櫂に呆れた表情をして離れていく。去り際に「空気読め夫か…」と呟いたのを櫂は聞き逃さなかった。

 

「………それじゃみんな、編成を考えたから聞いてくれ」

 

ロールケーキをみんな食べ終わった頃、アスナと並んでいたキリトが前に出る。

 

「ここにいるメンバーは十三人だから四人のパーティ二つ、五人のパーティを一つで作りたいと思「ちょっと待て」

 

櫂はキリトが編成を言う前にそれを遮る。

 

「なんだ? 」

 

「俺は一人でいい」

 

「うへぇっ」

 

キリトが櫂に聞くと実質パーティは組みたくない発言。それにハフナーが変な声を出す。

 

「ホッッントっ空気読めねえな? お前そんなに場の空気を悪くして楽しいか? 」

 

「そういうわけではない。元々こいつはフルの二パーティを作る予定だったはずだ。そうだろ? 」

 

「そうなのか? 」

 

「あ、ああ…」

 

櫂の指摘をキリトはあっさり肯定した。

集合場所でキリトが櫂を見た時の驚きの表情から櫂はキリトは自分をこの攻略に参加させるつもりはなかったと、推測していた。それが確信できたのはその直後、キリトがアスナを見て、そのアスナが謝罪するような仕草をしていたのを見たからだった。

つまり櫂をこの攻略に誘ったのはアスナの独断である可能性が高いと櫂は考えていた。

 

「こいつは俺をこの作戦に誘うつもりはなかったんだろう」

 

「じゃなんでお前ここにいんだよ? 」

 

「…それは私が呼んだの」

 

アスナが一歩前に出る。

 

「最初キリト君から十二人で二パーティでって話だったんだけど、彼にも手伝ってもらった方がいいと思って勝手に誘ったの。ごめんなさい…」

 

と、キリトにアスナは頭を下げる。

 

「いいよ。今回の作戦は一人でも多いに超したことはないから、彼の実力はわかってるし」

 

アスナに頭を上げてもらってから、キリトは櫂に向き直る。

 

「だからパーティを組まないなんて危険な真似をさせられない。フルでなくてもパーティを組めばカバーはしやすいんだからな」

 

「いや、五層のフロアボスはパーティのあまり意味をなさない敵だ」

 

「えっ? 」

 

櫂の聞き捨てならない言葉にキリトのみならずメンバー全員が疑問符を浮かべる。

 

「…なんでお前がそんなこと知ってんだよ? 」

 

全員の代表としてハフナーが櫂に尋ねた。

 

「昨日の深夜にフロアボスに挑んだからだ」

 

「なっ…」

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「「「「なにぃぃぃぃぃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!!!! 」」」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

櫂以外の十二人の叫びが迷宮区タワーと巨大遺跡の外周に響き渡った。

 

 

「それマジで言ってんのかっ!? 」

 

「ああ、なんならマッピングデータを見せるか? 」

 

「マッピングまで終わってるのかっ!? 」

 

「そんなに驚くことはあるまい。鼠だって持っているだろう」

 

「いやいやいやいやいやいヤ持ってないかラ! オイラが持ってるのは巨大迷宮だけだかラ! 」

 

「そうなのか? 」

 

「一日もかけずにどうやって…」

 

「頑張ったからな…」

 

「それにしたって一日、二日でマッピングや探索が出来る規模じゃないぞ? 」

 

「ああ、正直言ってかなり大変だった」

 

「ははっ…ホントに誘って正解だったみたいね…」

 

ハフナーとシヴァタはとにかく驚き、何故か過大評価をされた鼠は全力否定、オコタンは驚きの周り唖然とし、キリトはとにかく信じられなく、アスナは自分の意外なファインプレーに苦笑い。

 

他の者達も反応は違えど、信じられないと驚いている。

 

「とにかく全員のマッピングデータを渡す」

 

と、メニューウィンドウを櫂は展開し、全員にマッピングデータを渡す。

 

「マジでマッピングしてやがる…」

 

ハフナーは引き攣った顔で受け取ったデータに目を通していく。

 

「じ、じゃあフロアボスと戦ったっていうのも…」

 

「無論本当の事だ」

 

キリトの問いに櫂は頷き、五層のフロアボスの説明を始める。

 

「今回はボス部屋には扉を開けて入るのではなく、広い階段を上ることで直接ボス部屋に通じでいる。部屋に入ってもボスの姿はない。だが少し奥に進みと床に青く光る線が浮き出てくる。その線が床でランダムに動き、線を踏むと踏んだ所かその真上の天井に線が集まってきて、一定量集まると真下だった場合は床から大きな岩の腕が体を掴もうと伸びてくる、真上だった場合は腕と同じくらいの岩の足が踏みつけてくる。対処法としては動く線を踏まないように避けるか踏んだ後、線が集まりきるまでにその場から離れることで避けられる。誰も線を踏まない状況が続くと天井に額に明らかに怪しいマークがついた岩の顔が出てきて、大声を上げてくる。この声はダメージはくらわないがデバフ効果がある。使うごとにデバフの効果の種類が変わってくる。ボスにダメージを与える為には敢えて線を踏み、現れた腕と足に攻撃するが主な方法だと思われる。ボスのHPのバーの数は六本、二本削ると天井の顔が床からこちらを咥えようとするパターンが加わる。その時ボスの額にはマークは無くなっている。しかし、腕か足の何処かに同じマークが現れているからそこに攻撃すると床の顔が元の階段に戻る」

 

「………」

 

「俺が試せたのはここまでだ。これ以上は危険だったからな。ともかく普通のボスとは違い、セオリーのパーティは通用しずらい変則的な動きを要求される。なら慣れているソロの方がいい。即席の連携であのボスに対応できると思わない………どうした? 」

 

自分の説明に何の反応を見せない十二人を櫂は怪訝な目で見渡す。

 

「いや、待て…いろいろと整理がつかない。てか説明も一気にされても訳わかんねえし…」

 

「そうか。ならもう一度説明する。今回のボス部屋には「そういう事じゃなくてっ!! 」

 

と、目頭を押さえながら櫂の信じられない話を必死に受け入れようとしたハフナーがボスの説明がわからないと言ったので櫂は再び説明をはじめようとしたらそのハフナーに遮られる。

 

「その話、本当に信じていいのか? 」

 

「あ~たぶん本当のことだと思ウ。前例があるかラ…」

 

未だに信じられない視線で櫂を見るハフナーに苦笑いの鼠が小さく手を上げる。

 

「コホンッ、とりあえずボス部屋に向かおう。マッピングデータがあるおかげで、予定よりもかなり時間を短縮できるはずだ。ボスの話は直前になってからで」

 

色々と微妙な空気の中でキリトが即席メンバーのリーダーとして指揮を取る。

 

「…あとパーティを六人の二つと一人のソロの三つで行くことにする。ソロになるのは彼だ」

 

「えっ? 」

 

「おいっ」

 

「ちょっとっ! 」

 

キリトの意外な提案にリーテンの金属的な声とハフナーとアスナの抗議の声が上がる。

それにキリトは手でそれを納める。

 

「…ボスの話が本当なら彼の言っていることも一理あるし、複数のパーティ同士での連携は確かに難しい。単純でわかりやすい方がみんなもやりやすいだろうし、ここでもし無理強いして中途半端な説明のまま、抜けられても困る」

 

と、キリトは櫂を見る。櫂はやや睨むようにキリトを見返す。

 

「だからってコイツの要求を素直に飲むのかよ? 」

 

「勿論、条件はある。二つのパーティは攻撃と防御で完全に役割を分担するように組む。最終的にボスがどんな行動パターンになるかわからない以上、最低限の連携はするようにする。彼には状況に応じて攻撃と防御の両方をこなしてもらう。それから回復のアイテムの移動や補充、他のサポートもしてもらう。ハッキリ言ってかなり大変だ」

 

キリトは櫂に向き直る。

 

「それでもいいなら、ソロでいい」

 

「………わかった。それでいい」

 

キリトの条件に櫂は頷く。

 

「…じゃあパーティを考え直すから少しだけ待っててくれ」

 

 

それからキリトは数分ほどでパーティの組み直し、櫂達十三人は迷宮区タワーに突入した。

 

 

 

二つのフルパーティと一人のソロとなったメンバーは連携の練習の為にワザとモンスターと戦いながら進んでいった。思いの外、メンバーの連携は良く、手こずることはあまりなかった。

櫂のマッピングデータのおかげで予想以上に速くフロアボスの手前まで辿り着くことだができた。

 

ダンジョンに突入してから一時間強、フロアボス部屋に直接続く大階段の前でメンバーは最終確認を行っている。

 

「…と、いうことだ」

 

「全員わからないとこはあるか? 」

 

櫂の説明の後、キリトの確認の問いに全員が頷いて応える。

 

「それじゃあ次に全員でストレージの確認をしよう」

 

レアアイテムの旗を誰もドロップしていないとなった時に、それぞれのストレージ内で隠す物が無いかを確かめる為の最終チェックだ。

 

「なら、先ず俺のストレージ確認してくれ」

 

櫂が先陣を切り、ストレージを開く。残りの十二人が同時に見ることは出来ないので数人ずつで交代で確認することになった。

最初に櫂のストレージを確認するのはハフナーとオコタンだ。

 

「よーしっ空気読め夫君のストレージを確認してやっか。どれどれ」

 

「失礼します」

 

二人は左右から櫂のストレージを確認していく。櫂のストレージは余計な物は少ないので割と速く確認が終わるはずだが、若干ではあるが無駄に長引き事になる。

何故なら…

 

「っておいっ!! S級アイテムってなんだよっ!? 」

 

「これはすごい…」

 

と、ハフナーの『S級アイテム』という言葉に他のメンバーの多くが反応した。

恐らく現時点で全プレイヤーの中で櫂しか持っていないであろう最上級のアイテムに驚きを禁じ得なかった。因みに一番の反応したのはキリトだった。

 

「オマエどこで手に入れたんだよ? 」

 

「五層の地下墓地ダンジョンだ」

 

「遺物かよっ!? オレも時間があったら探したいぜ」

 

「そっか…S級のアイテムがあるかもしれないんだ…がんばるぞっ」

 

「…………………」

 

ゴンッ

 

「っなぁ!? 何するんだよアスナ!? 」

 

「今、ヒロワーに転向しようと考えてたでしょ? 」

 

「うっ…」

 

その話を聞いて今自分のパーティと遺物探しに精を出している元鍛冶師はこのボス戦が終わった後の遺物探しにやる気を出し、キリトも真剣に遺物探しをしようか悩んでいるとアスナに小突かれていた。

 

「次は私が」

 

それから櫂のストレージの確認は初めて見るS級アイテム見学会となったものの無事に終わった。

二番手にアスナが立候補する。

 

「いいのか? 」

 

「いいわよ。どうせ恥ずかしい思いをするんだったらさっさと済ませちゃいたいし」

 

キリトとアスナの会話に櫂は何のことだかわからなかったが、すぐに何のことだかわかった。

アスナのストレージの中には正直櫂にしてみれば多すぎると言わざるおえない程、衣服類が入っていた。

しかも下着も。

アイテム名でどんな物かわかる物とわからない物、色々とあったが確認する度に何とも言えない気持ちになった。

 

アスナのストレージ確認が終わった時は場は微妙な空気になった。

アスナ本人は顔が真っ赤でそれでも平気なのを装うとしているのがわかるので、男性陣の若いメンバーは居た堪れない思いをしていた。

そんな中で鼠は同情による苦笑いをして、大人のメンバーはあまり動じているようではなかった。

フルフェイスのプレイヤーだけはどんな反応をしているか櫂にはわからなかった。

 

「次はオイラダ」

 

アスナに続いたのは女性プレイヤーの鼠だ。

 

誰も口に出さなかったが謎の情報屋の鼠のストレージの中を殆どメンバーが興味を持っていた。

そのことを見抜いているのか鼠はニシシと笑っている。特に男性プレイヤー達に対して。

 

ストレージの内容自体はそこまで珍しい物は無かった。

 

やや気になる物がいくつかあったが、特別変わったところのない普通のアイテムばかりだ。

しかし意外だったのはアスナほどではないが(アスナが異常に多いだけかもしれないが)衣服の類がいくらかあったことだ。

その中には勿論下着もあって、アスナの時と同じような空気なったがキリトの「意外な下着だな」という呟きにアスナがまるで汚物でも見るかのような目でキリトを睨むアスナとそれにビビるキリトのやり取りにキリトに対して、バカな奴、という全員共通の感想を懐き、緊張感のない雰囲気となった。

 

「次は私が…」

 

「リッちゃんっ! 」

 

次にストレージを公開したのはアインクラッド解放隊のフルプレートだ。

シヴァタが何故か止めようとするが、すぐにそれをやめた。

フルプレートのストレージを確認中、シヴァタはストレージの中よりも確認している他のメンバーのことを気にしているようだった。その他のメンバーはシヴァタに気を使っているようにストレージを確認していた。

櫂だけがそれが何故かわからなかったが、フルプレートのストレージの中に明らかに女性物の衣服類があり、やっと櫂にも合点いった。

 

フルプレートのプレイヤーは女性だということを…

 

 

 

 

その後、残りの男性プレイヤーのストレージを確認して、全員のストレージの中にアイテムを入れられそうな物は入っていない状態になった。

 

「よしっこれでボスを倒した後、例のアイテムをドロップしたという人がいなかったとしても、ストレージ内の順序を入手順にソートして先頭部分を見せてもらえれば、隠すことは出来ねぇな」

 

「ああ。それじゃあ次にボス戦の動きを確認する」

 

ハフナーの言葉に頷いた後、キリトが前に出て、全員の注目を集める。

 

「最初は事前情報からしてまともな連携は出来ないだろうから、各個人で床の青いラインとやらを踏まないように気を付けてくれ。落ち着いたら声を掛け合って、ワザとラインを踏み、出てくるらしい腕か足を回避。これを何度かやってみて、タイミングを掴めたら出てきた部位を攻撃。その繰り返しだ。たぶん天井に現れる顔はネズハのチャクラムで攻撃が届くはずだ。ボスの六本あるHPバーの内、四段目まではこのパターンで大丈夫らしい。その後はどうなるかわからないがほぼ間違いなく何パターンか敵の攻撃手段が増える、気を付けてくれ。特殊なボスだから練習もできないが頑張っていこう。最後に大事なことなんだけど…」

 

キリトは櫂に目を向ける。

 

「アンタにはネズハのサポートをしてもらいたいんだけど」

 

「どういうことだ? 」

 

「ネズハはFNC…いわゆるフルダイブ不適合者で遠近感が掴めないんだ。だから床のラインを踏まないように動くのは大変だと思う。だから…」

 

「わかった。傍にいて線を踏まないよう、手を貸せばいいんだな」

 

「ああ」

 

キリトの指示に櫂が了承すると、元鍛冶師改めネズハが「よろしくお願いします」と櫂に頭を下げてくる。

 

「じゃあ問題が無ければ行こうか」

 

と、キリトの言葉に全員が大階段を上り始める。

 

 

メンバー全員が大階段を五mほど上りきると、ドーム状の大きな部屋に出た。

最初の一人が部屋に踏み込んだ瞬間、明かりの無かった部屋に明かりが灯った。それと同時に気温がいきなり低くなった感じが、ここがボスの部屋であることを理解させる。

メンバーの中で櫂だけは二回目になるので、他のメンバーより幾らか緊張が薄かった。

 

「俺が少し前に出る…」

 

そう言って櫂は先頭に出る。

 

「おいっ! 」

 

「部屋の中央床にある青い光の線が集中しているところに足を踏み入れないと戦闘が始まらん。俺が踏むから体制を整えておけ」

 

迂闊に見えた櫂の行動にハフナーが止めようと声をかけるが櫂は説明をして指示を出す。そんなハフナーをキリトは肩を掴み止め、櫂の指示に従うようにと、視線だけを向ける。ハフナーはキリトの意図を理解し、武器を抜いて待機する。

 

櫂は青い線が集中している床の数歩手前で立ち止まる。

 

「カウントダウンで踏むぞ。その後床がかなり揺れるが、動かなければ倒れるほどじゃない。床の線を踏まずに避けるのは揺れが収まった後で十分だ」

 

櫂の説明にメンバー全員が頷く。

 

「なら行くぞ。5…4…3…2…1…0! 」

 

踏み込んだ櫂の足元の線が光を放つ。その後大きな揺れが部屋を揺るがす。

その間に櫂の足元から岩の指が現れる。それに対して櫂は揺れが収まるギリギリのタイミングで全力で後方へと離れた。

 

「スイッチ! 」

 

「はあああああっ!! 」

 

櫂の声を合図に櫂を掴もうとしたが空振りとなった床から現れた大きな岩の腕に待機していたキリト達がソードスキルで攻撃をした。

後方へ離れた櫂はネズハの傍に床の青い線を踏まないように待機する。

 

「声を掛け合いながら腕と足を出させて攻撃していくぞ!! 」

 

「おうっ!! 」

 

キリトの掛け声に各々了解の意を示し、戦闘は本格的に開始された。

 

作戦の一人がワザと線を踏み、出てきた腕と足を攻撃するという方法は事前にわかっていただけに上手く機能させることが出来た。

 

戦闘が始まって、少ししてから天井に現れた額にマークのついてある岩の顔が声でこちらをデバフしようとしたらネズハがチャクラムで額のマークを攻撃してそれを防ぐ。

顔と同時にプレイヤーの視界にフロアボスの名前とHPバーが現れ、そのHPの一段目の目盛が大分削れていたのは連携が上手くいっている証拠でもあった。

 

そんな中で櫂は一人、ネズハの傍でほぼ待機している。

 

櫂はネズハが間違って床の線を踏まないよう声を掛けたり、足を移動させようとして体勢を崩しそうになったら支えるなどをして為、戦闘には参加していなかった。

 

直接的には…

 

「しまったっ!! 」

 

順調だった戦闘の中、ハフナーがボスの口に咥えられてしまった。

ハフナーは重金属装備の為、直ぐにはHPが削られることはなかったが、装備の耐久値が徐々に削られていく。

櫂は離れたところで周りを見ているからわかることだが、全員が個人差があれど焦っていた。

初めて敵に咥えられた光景を目の当たりにして恐怖を感じ、今までと同じ行動パターンと変わらないことをすればいのだが、それが上手くやれないでいる。

櫂はキリトとアスナがいるから大丈夫だとは思ったが、このデスゲームにおいて絶対はない。

だから櫂はクランスキルを使うことを選択した。

櫂もまた異様な光景で人の死が迫っていることに冷静ではいられなくなっていた。

 

「なんだコイツらはっ!? 」

 

エギルの声がボス部屋に響く。

 

ボス部屋内に突如として現れたサーベルを持った三体の骸骨剣士。

 

「こんな状況でMobがポップ!? 」

 

アスナの驚愕の声。

 

「いや、よくこいつらのカーソルを見ろ! 」

 

キリトの声にアスナとエギルが現れた骸骨剣士の頭上にあるカーソルを見る。

 

そのカーソルの色は黄色だった。

 

プレイヤー意外にもモンスターやボス、NPCには頭上にカーソルがあるその色や濃さで強さや立場が分かる。

 

この場合の立場は敵か無関係か…味方かである。

 

そして黄色のカーソルは味方を現す色だ。

 

「き、黄色!? じゃあこいつら味方なのか? 」

 

困惑するキリト達を他所に櫂だけは冷静にその骸骨剣士達を見ていた。

いや、コントロールしていた。

 

骸骨剣士達は櫂が《グランブルー》のクランスキルで呼び出した者達だ。

 

《グランブルー》のクランスキルは自分のHPを消費することにより、《グランブルー》のユニットを模したモンスターを呼び出すことが出来る。

呼び出したモンスターは意識だけでコントロールが出来るし、たとえ倒されてしまってもデメリットは無いので囮最高である。

櫂がこの第五層のフロアボスに一人で挑んである程度戦えたのはこのクランスキルのおかげである。

だが難点は消費するHPの割りに呼び出されたモンスターは弱くHPも低いので、戦力としては今のところ期待できないのである。

櫂がこのボス戦に向けてパーティを組むのを断ったのも、このスキルの正体を勘付かれない為だ。

パーティを組むと組んだプレイヤーに自分のHPの減り具合を見られてしまう。

攻撃も受けていないのに変にHPが減ってしまっては不審に思われてしまう。

それを避ける為に櫂はパーティを組まなかった。

いざという時、憂いなくこの力を使えるように…

 

そして今櫂はクランの力を使いモンスターを呼び出し、その意思でコントロールをしてモンスターにワザと線を踏ませる。

 

「そいつらが青い線を踏んだ! 出てきた腕と足をよく見てボスの額にあったマークを探せ! 」

 

櫂のその言葉にメンバー全員が距離を取り、集中する。

 

現れた腕と足に三体の骸骨剣士は呆気なくやられてしまった。しかし、そんなことを気にしている者は誰もいない。今この場にいるプレイヤーは全員ボスのマークを探している。

 

「ありましたっ! 」

 

ぐぐもった全身鎧の女プレイヤーの声が全員の耳に入る。注目したのは女プレイヤーが指した場所…足の脹脛の裏だ。

 

「任せて! 」

 

一番近くにいたアスナがその素早いソードスキルでマークを攻撃。するとまるで痛がるような声を上げたボスの顔はハフナーを吐き出し、床の中に消えていった。

 

ハフナーが助かったことによりプレイヤーに安堵の空気が流れる。

 

「よしっ! 油断せずに押し切ろう! 」

 

緩みそうになった場の空気をキリトが強い口調で引き締め、全員の意識が戦闘に向けさせた。

 

 

 

 

 

 

それからすぐに六本あるボスのHPを四段目まで減らすことが出来た。

ボスの顔が床に現れ、プレイヤーを噛みついてくる攻撃を仕掛けてくるようになってから回避に苦労させられるようになったがそれでも事前の情報があり、先ほどのようなピンチになることはなく、ボスのHPを安定して削り続けることが出来た。

 

そしてボスのHPバーが最後の一本になった、三十一日午後六時半頃。

ボスは今までにない変化を起こした。

顔や腕、足しか出してこなかったボスが体長十mを超える人型のゴーレムとして現れたのだ。

床や壁、天井に張り巡らされていた青い線は赤い線となり、人型のとなったゴーレムの体中に纏わりついている。

故にボス部屋にはもうあの線は無い。

 

「人型になれば、通常の連携で戦える! ―――ラスト一本、全力で削るぞ!! 」

 

「「「おう!! 」」」

 

ここでようやく櫂も動き出すことが出来る。

 

まず最初にボスの前に他よりも多くのPOTを持った櫂は手持ちが少なくなったプレイヤーに渡していった。まとめて渡せる袋の類は今は一切持っていないので、渡すのにかなり手間がかかった。

 

次に状況を見て完全に攻撃と防御に分かれているパーティの不足している方の手伝いをする。

攻撃側の手伝いの時には単純に一緒に攻撃をすればいいだけだが、防御側の手伝いをする時は難しい。守る為の装備を持っていない櫂は増悪値―ヘイトを稼ぎ自分に攻撃を向けさせたところをスイッチの要領でタンクのリーテンやシヴァタにガードしてもらったり、弾きやすい攻撃をソードスキルを放ってキャンセルなどしている。

 

このフロアボス戦の最終盤にて一番忙しく動かなくてはならない櫂。

しかし、大きなミスをすることなく戦闘は続き…

 

「ヴォア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!! 」

 

ついにキリトのソードスキルでボスはHPが0になり、断末魔の咆哮を上げて爆散した。

 

その後、全員の目の前にリザルト画面が現れた。

リザルト画面を確認した櫂の取得アイテムには目当てのアイテムは無かった。その最中にボス部屋の揺れと大き目な音と共に石で出来た螺旋階段が形成されていった。

 

「…………終わった………」

 

男性プレイヤーの誰かの声。

そしてその後の大きな歓声。

 

櫂達は第五層のフロアボスを倒すことに成功したのだ。

 

櫂が周りを見るとキリトとアスナが拳をぶつけ合っていてそこにネズハが駆け寄っていき、シヴァタが全身鎧の女プレイヤーを抱き上げ、回っている。

 

他のプレイヤーも各々喜びを表したり、お互いを労っている。

今一番目立っていたシヴァタが女プレイヤーを下し、キリトに近づき、二人はハイタッチをして気持ちのいい音が部屋に響く。

その音を合図にプレイヤー全員が集まった。

 

「……まずはおつかれさま……そしてありがとう―――――」

 

キリトが慣れない代表としての労いの言葉と挨拶をしていく。

やはり死線を共に乗り越えた者同士の何か繋がっているような空気がこの場にはあった。しかも乗り越えた直後ということもあり、別のギルドやパーティ、ソロの垣根は無くなっていた。

皆の喜びや笑いが心地良い。

 

「――この作戦のそもそもの目的……ギルドフラッグがフスクスからドロップした人は、いま申告してほしい」

 

フスクスというのは今倒したフロアボスのことで、正式名称フスクス・ザ・ヴェイカントコロッサスだ。

そういえばボスの名前は気にしていなかったなと思いながら、他のプレイヤーの「ドロップしていない」という声を聴いていた。

 

「お前は? 」

 

「ドロップしていない」

 

ハフナーから話が振られ、櫂はドロップしていないことを伝える。

 

「となると残るは…」

 

と、一人のプレイヤーに集中する。

アインクラッド解放隊所属の中年のオコタンだ。

 

「……………私のところにドロップしました」

 

「おお」という感嘆の声が複数のプレイヤーの口から零れる。

 

「持ったいつけんなよオコさん」

 

「……すみません」

 

ドラゴンナイツ・ブリケード幹部のハフナーがアインクラッド解放隊パーティリーダーのオコタンに親しげにツッコみを入れる。

その姿はここにいるメンバーの理想の未来を見ているようだった。

 

「…それではこれはキリトさんが預かっていてください」

 

「へっ!? 」

 

オコタンのいきなりの発言にキリトは変な声を上げる。

 

「だな」

 

オコタンの意見に真っ先に賛同したハフナーに続き、皆一様に頷く。

 

「な、なんで俺なんだよ? 」

 

「はぁ!? アンタこそなんでだよ? そうなるに決まってるだろ? 俺、シヴァタ、オコさん、リーテンさんはギルド所属だから持ってちゃ今回の作戦の意味がなくなるし、エギルさん達もパーティ組んでるからギルド作るんじゃないかって疑われたらかなわんだろうから、ソロのアンタしかいないだろ? 言い出しっぺだし」

 

「うっ…」

 

ハフナーの尤もな言い分に言葉が出ないが、視線だけは抵抗の意を示していた。

主に二人…アスナと櫂にだ。

言い出しっぺはともかくあの二人もソロじゃん、という意味が込められているのを櫂とアスナは気付いていたが当然無視。

二人の態度に諦めたキリトは溜息を吐く。

 

「わかったよ…ならちょっと考えがあるから先に第六層の主街区に行ってアクティベートして転移門から戻ってもらっていいか? 俺は少し一人でここに残る」

 

「わかった」

 

キリトの言葉に了承したハフナーにそのハフナーに無言の同意をした他のメンバーは続々と螺旋階段を上っていく。

櫂ももうここには用がないので速く街に戻り、休息なり探索なりをしたかった。

 

図らずともアスナと後の最後尾について歩きはじめようとした時

 

「悪い。アンタには少し残ってもらっていいか? 」

 

そうキリトに声を掛けられた。

 

そのキリトの声を聴いていたのは櫂とすぐ前を歩いていたアスナだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三十一日午後七時。

第五層フロアボス部屋で座り込んでいるキリトと立って胸の前で腕を組み目を閉じている櫂。

その二人がつい先ほどまで戦いが行われていたとは思えない静寂に満ちた部屋で二人だけでいる。

 

キリトに呼び止められた櫂は正直断ろうと思ったが、目の前を歩くアスナの視線(本人はたぶん気づかれてないと思っているのだろうが)と万が一他のプレイヤー(特にハフナー)に聞かれでもしたら面倒なことになりそうだったから、素直にここに残っている。

 

他のプレイヤーが第六層に上ってから約十分。話があるのだろうから残れと言われたのだろうと思ったが、一向に話す気配がない。

櫂としてはさすがに時間の無駄は御免被りたい。

 

「…何もなければ俺は行かしてもらう。時間の無駄はしたくない」

 

「えっ、あ、いやっ、ちょっと待ってくれ」

 

「なんだ? 」

 

慌てて立ち上がり櫂を止めるキリトに櫂は不快感を隠さずに睨む。

 

「あ~…じゃあ単刀直入に聞くけど…」

 

キリトは櫂を真っ直ぐ見る。

 

「…お前何者だ? 」

 

「っ! 」

 

キリトの問いに櫂は僅かに動揺した。

 

「四層の時のエリアボス戦で明らかにお前は水の上を歩いていたし、ここの層の地下ダンジョンでモルテ達と対峙した時と今回のボス戦の途中で俺たちを助けるために出てきた骸骨のモンスター…ゲームのパターンにしては明らかに不自然だ…まるで誰かの意思で現れたみたいだ…もしこれらがプレイヤーが起こしたことならもはや特殊なスキルなんてもんじゃないシステム外スキルだ」

 

「………」

 

櫂は黙るしかなかった。

 

「もしかして…」

 

あるはずのない心臓の鼓動が煩い。

 

「…茅場晶彦なのか…? 」

 

「…はっ? 」

 

キリトの突拍子もない予測に櫂は間抜けな声を出してしまった。

 

「ええっと…もしそうなら色々と辻褄が合うんだけど…」

 

「残念ながらそれはない…」

 

櫂はキリトに何か自分の正体について気付かれているのではないかと、前々から思っていたが、どうやら杞憂だったようだ。

まあよくよく考えてみれば、異世界人などと誰が思うだろうか…

 

(なら俺は何を暴かれるのを恐れていたんだ? )

 

その疑問にすぐに思い至った櫂は自嘲して笑う。

 

いきなり笑う櫂に疑問符しか浮かばないキリト。

 

「話はそれだけなら俺は行く」

 

櫂はキリトに背を向き、歩き出す。

 

「ま、待て! まだ答えをちゃんと聞いてないぞ! 茅場晶彦やその関係者じゃないってことは余計に何者かがわからない! ただのプレイヤーじゃあないんだろ!? 」

 

「俺が何者か…」

 

櫂は立ち止まるが、振り向かない。

 

「俺は…」

 

本当に自嘲しながら…

 

「…卑怯者だ」

 

「はっ? 」

 

櫂の答えに今度はキリトが間抜けな声を出すことになり、櫂を引き留めることはなった。それはキリトはキリトで混乱していたからだ。櫂の言葉の意味やその解らなさに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

櫂が螺旋階段に向かう途中、階段の陰に赤い人影が隠れているのを見つけた。

本人は隠れているつもりなのだろうが、《隠蔽》のスキルを取っていないであろうあいつは特別スキルを使用しなくても、簡単に見つけられる。

まあ触れる必要はないと判断したし、そんな気分でもなかった。櫂はそのまま階段を上り始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

階段を上っている間、櫂はまた自分の罪悪感に押しつぶされそうになっていた。

否、その罪悪感から目を逸らそうとしていた自分に嫌悪していた。

キリトに自分が命を懸けていない存在だと見抜かれて糾弾されることを恐れていた自分に先ほど気が付いた。

しかもそれを自覚していなかった…

 

(俺は結局…何も変わっていないのか…あのディアベルの死を望んだ時から…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…何者だ? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

唐突だった。

いきなりだった。

櫂の二十段程、上の階段から声が聞こえた。

男か女かわからない不気味な声。

反射的に櫂が上を見ると、見覚えのある姿をした人物が立っていた。

 

一度目は夢の中で、二度目はこのソードアート・オンラインを始めた初日に…

 

そう血のような濃い赤の全身ローブの…

 

 

 

茅場晶彦だった。

 

 

 

 

「茅…! 」

 

「お前は何者だ? 」

 

数分前に同じ問いを聞いたはずなのにまるで印象が違う。

寒気がするような冷たい声。

 

ヒョオッ!!

 

「なっ!? 」

 

目を離さなかったはずなのに不意をつかれた様に感じたのは、今まで見たことのない速さで突進してきたからだ。

あと櫂の勘違いでなければ、宙に浮いていたように感じられた。

ローブの人物が櫂に突進してくる刹那、櫂は背中の両手剣に手をかけようとしたが、勿論間に合うわけがなく、その不気味な姿を櫂の眼前に迫る。

 

(ぶつかる! )

 

そう思うのと同時に反射的に目を瞑る。

しかし、数秒しても衝撃もなければ、何かが起こるようなことは無かった。

 

ゆっくりと目を開けるとそこには誰もいなかった…

 

櫂は数分ほどその場に立ち止まったまま硬直していた…

 

櫂が動き出したのは次のことを呟いた数秒後だった…

 

 

 

 

「茅場晶彦…」

 

 

 

 

 




ようやっと現在出ているのプログレッシブの内容を完了しました。
次回からオリジナル話になります。
実際の予定では一層のボス倒した後、次の話に続く予定でした。
なので時間が飛びます。
投稿の目標としては低くあるのですが、六月一杯までには
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