リンク・ザ・スタート   作:ヤギザ

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ヴァンガードの時系列がかなり解りずらかったので、ここで説明します。

一言でいうとヴァンガードの194話~195話の間です。
詳しくいうとレギオンメイト編でアイチが戻ってきてから櫂くんたちの卒業式の間です。
ここでは映画の出来事は櫂くんたちが高校生の間に起こったことにします。
そうなると少し矛盾点がありますが、完全な間違いでもないのでご了承ください。


RIDE 3 はじまりの街

ナーヴギアを装着した櫂が目を閉じた後、目蓋の裏に様々な色の線が通り抜けていき、起動確認の表示が映し出され、一瞬だが意識が途切れ、目を開けるとそこは先程までいたカードショップではなかった。

広場に集められた何千という人たち、その人たちを見下ろしている茅場晶彦を名乗る赤いローブの巨人。

その巨人が告げる残酷な現実。プレイヤーはソードアート・オンラインの世界…浮遊城アインクラッドに閉じ込められ、百層あるエリアをクリアしていき、頂上にいる最終ボスを倒さないと解放されない。何よりこのゲーム内の死は現実の体と連動しているということ。すぐに広場は大混乱に陥った。

 

そんな中で櫂は茅場晶彦のことを考えていた。

茅場晶彦個人についてはフルダイブシステムとソードアート・オンラインの開発者であることしか知らないが、あの赤いローブ姿で現れたことが気になった。

あれこそが櫂が夢で見た惑星クレイを滅ぼした者の姿に他ならない。

 

クレイを滅ぼしたのは茅場晶彦。

 

そう思うと、櫂は激しい怒りに奥歯を強く噛み締めた。

しかし、櫂は深呼吸をして頭と心を落ち着かせる。

今の現状、右も左もわからない自分が軽率な行動をしても録なことにならない。

櫂は先ずゲームに入る前に読んだ説明書の内容を思い出しながら、基本の動作を確認していく。

メニュー画面を出し、メニュー欄の項目を確認する。

その時説明書に書いてあったログアウトボタンが無いことも確認した。

次に体を動かし、具合を確かめる。

その最中、櫂は関心させられていた。ここがゲームの中だとは信じられなかったからだ。

肌の感覚、物の質感、空気や匂い、それらは現実と何の遜色もない。

体の動作も何かに限界を強制されている感じするものの、自分の本当の体と変わらない動きが違和感なくできる。

ただのゲームとして楽しめるのなら、多くの者のが魅了されていたことだろう。

 

櫂は周囲に目を向ける。

広場の混乱はまだ続いている。先程より人数が減っている気がしたが、まだそれでも数千人はいた。

怒りのため叫ぶ者、体裁を気にせずに泣いている者、ショックで立ち尽くす者、どうしていいのかわからず不安な表情で周囲を見ている者。

何もわからないままゲームに閉じ込められてしまった彼らに思うところはあったが、櫂は自分の使命を意識し、広場を離れた。

 

 

櫂の目的はこのソードアート・オンラインの舞台となるアインクラッドに隠れた23個のクランを探しだて、櫂の世界にヴァンガードを取り戻すことだ。

だが今の櫂には何の手掛かりもない。

この世界にどのようにクランが隠れているのか、どんな姿をしているのか、まるでわからない。

茅場晶彦が何かを知っているのかもしれないということだ。

しかし、櫂には茅場晶彦に接触する方法がない。

そもそも茅場晶彦がこの世界にいるかどうかもわからない。

 

とりあえず櫂は自分に出来ることをやっていくことにした。

それはなんてことはない単純なこと。行けるところすべて自分で行って、しらみ潰しに調べるというもの。

どう考えても効率が悪いが、他に出来ることは何もない。

 

手始めに櫂は今いるはじまりの街を調べることにした。

すぐに街の地図が乗っている掲示板を発見して覗いてみる。

はっきりいって櫂の予想を越える広さだった。

例え今日一晩中、街の探索に費やしても半分も調べられないだろう。

とりあえず櫂はこの街で一番大きな施設であろう『黒鉄宮』に向かうことにした。

 

「もう止めとけって! 」

 

「うるせぇっ!! 」

 

櫂が黒鉄宮に向かっている途中、口論らしき声が聞こえた。

 

「こいつからぶつかってきたんだ! 」

 

「そんなのわざとじゃねえだろ。大人気ないことするなって」

 

櫂が意識を向けると、鮮明に会話の内容が耳に入ってきた。

意識をして会話を聞こうとするとゲームのシステムがアシストして声がハッキリ聞こえるようになるのだ。

櫂は現実ではあり得ない現象に、何だかんだでここはゲームの中なんだな、と思いながら声がした方向を見る。

 

一人の男が怒鳴り散らしている。怒鳴り散らしている男は正確な年齢はわからないが、未成年ではないだろう。

その男をなだめようとしている複数人の男たち。その中で印象に残るのはバンダナをしている男。彼は少し髭を生やしているが二十代ぐらいに見える。

そして、複数人の男たちに庇われている少女。

 

会話の内容と見た状況からどうやら怒鳴っている男と少女とぶつかり、それが男の気に触れて、少女に怒りをぶつけているところに集団の男たちが割って入って男をなだめている、という経緯のようだ。

 

普通考えれば怒鳴っている男がただ過剰に反応しているだけなのだが、櫂も含めたその場にいる者全員が単純に男のことを責められないことはわかっていた。

ゲームの中に閉じ込められ、いつ帰れるかわからない。しかもゲーム内で死んだら本当に死んでしまう。そんな状況で心の整理もつかないままの状態で、不安と恐怖と怒りの捌け口を見つけてしまった。だから必要以上に声荒げて、特別悪くもない相手にぶつけてしまっているのだ。

集団の男たちも全員わかってる。だから男たちは怒鳴っている男を刺激しないようになだめているし、少女もわかっているからこそ、怖がっているからではなく何も言わずに黙って糾弾をうけている。

 

櫂はそんな彼らを見て、いてもたってもいられなくなった。

 

「おい」

 

「っ! 何だお前! 」

 

櫂は集団の男たちをかき分け、男の前に立つ。

 

「お前も俺が悪いって言いたいのかよっ!! 」

 

男は櫂の胸ぐらを掴む。

 

「お前だけじゃない」

 

「あっ!? 」

 

「不安なのも、恐怖していることも皆同じだ」

 

「だからなんだ! 俺は俺はぁ!! 」

 

男は目に涙を滲ませながら、叫ぶ男の手を掴む。

その掴んだ手は引き剥がすようなものではなく、戒めるようなものでもなかった。

 

「お前は…ひとりじゃない」

 

男は真っ直ぐ自分を見る櫂の目。力強く掴まれた自分の手。それらは自分を励まそうしているものだということがわかった。

そして櫂の視線は視線で周りに向けられ、男も後を追うように周りを見る。

集団の男たちや少女はまるで男のことを心配するように見ている。いや、実際に男を気遣っているのだ。

それがわかった男は何かが切れたように泣き出してしまった。

バンダナの男が泣き出した男の背中を擦りながら「わかるから…わかってるから」と声をかけ続けた。

 

櫂はその様子を少しの間見守ってから再び黒鉄宮を向かった。

 

「お~い。待ってくれよー」

 

少し歩いてから櫂は後ろから声をかけられた。

声の主はバンダナの男だ。

近寄ってきたバンダナの男は櫂の前に立つ。

 

「いやそのなんだ、兄ちゃんのおかげで助かったよ」

 

照れくさそうに櫂にそう言う。

 

「俺たちじゃあいつを止められなかった。いや、わかってやれなかった。本当にありがとうな」

 

バンダナの男は親指で後ろを指差しながら、櫂に礼を言う。

後ろの方では怒鳴っていた男が少女に謝っていた。周りの男たちが心底安心した表情をしていたのが印象的だった。

 

「みんないきなりこのゲームの中に閉じ込められちまって、ワケわかんなくて、心の整理もつけられなくているんだよな。だからあんなことでキレちまう」

 

バンダナの男は「どうしてこんなことになっちまったんだろうな」と空を見る。

その姿を見て櫂は居たたまれなくなり、顔を伏せて力なく「ああ」と返事をする。

 

「あの…」

 

バンダナの男の後ろから女性の声がした。

櫂とバンダナ男が声のする方見ると、少女が立っていた。

 

「先程は助けていただいてありがとうございました」

 

少女は二人に丁寧に頭を下げる。

 

「気にするなよ。あと出来ればあいつのこと悪く思わねえでやってくれねえか? 」

 

「わかってます」

 

少女はバンダナの男がいった言葉に優しく微笑んで答える。

見た目は幼い印象を受ける少女だったが、落ち着いた性格をしているようだった。

櫂は少女の表情を見て、心に影が差す。

 

「失礼する」

 

櫂は少し早口にそう言ってその場から離れようとする。

 

「あっ…」

 

「引き留めて悪かったな」

 

名残惜しそうにする少女と櫂の態度を気にする様子のないバンダナの男を残し、櫂は歩き出す。

 

「っとちょっと待ったー! 」

 

と、少し歩いてからまたバンダナの男に引き留められる。

 

「なんだ? 」

 

さすがに櫂の不機嫌になりながら、足を止める。

 

「悪りぃ悪りぃ。ちょっと聞きたいことがあってよ」

 

櫂に平謝りをしながらバンダナの男は尋ねてくる。

 

「あんたこの世界は初めてか? 」

 

「ああ」

 

「あんたソロか? 」

 

「ああ」

 

「じゃあこの街を出る気はあるか? 」

 

「しばらくはこの街を拠点にするつもりだが、近いうちに次の街に行くつもりだ」

 

櫂は確かにこの街を隅々まで調べるつもりだが、どこにあるのかもわからないクランを探さなくてはならない。いつまでもこの街は要るわけにはいかない。

 

「そうか。街の奥の方へ行くみたいだが、何か用でもあるのか? 」

 

「用というよりも、街の探索だ。街のことを調べておくことに越したことはないだろう」

 

当たり障りのない理由を選んで櫂は質問に答える。

 

「あーならよ。俺たちのギルドに入らねえか? 」

 

バンダナの男からのいきなりの提案に櫂は驚いたが、答えは決まっている。

 

「すまないが、俺はソロで行くつもりだ」

 

櫂は自分の戦いに他者をましてや異世界の人間を巻き込むわけにはいかなかった。

 

「そっか。悪かったな、いきなり変なこと言って」

 

ダメ元だったのだろう。気にする様子のなく、バンダナの男は櫂に謝る。

 

「もういいなら俺は行くが」

 

「あー最後に一つアドバイスな」

 

歩き出そうする櫂を本当に最後だからとバンダナの男は引き留める。

 

「これは知り合いに言われたことなんだけどよ。たぶん街の連中が落ち着いたら、ここら一帯のモンスターは狩りの取り合いなっちまう。だから行けるんだったら次の街に早く行って効率よくレベリングした方がいいんだと」

 

レベリング。

櫂もそのことを考えていなかったわけではないが、確かにバンダナの男のいうことはもっともだ。

出現するモンスターの数が限られているなら尚更だ。

だが櫂にはクラン探しがある。レベリング効率だけを優先するわけにはいかない。

 

「だが俺にはしばらくこの街にいる理由がある」

 

「ならせめて上げられるだけレベルを上げた後にすればいいんじゃねえか? この街を出ていくつもりがあるなら尚更よ」

 

櫂はクラン探しとレベリングの優先順位を天秤にかける。

 

「わかった。そうさせてもらう」

 

櫂はバンダナの男の意見を採用した。

今は準備が大切だと櫂は判断した。

 

「おう。それじゃ俺は行くわ。本当に引き留めて悪かったな」

 

「いや、アドバイス感謝する」

 

櫂の感謝の言葉にバンダナの男は笑顔で答え、仲間たちの元へ戻っていった。

 

そして櫂は黒鉄宮とは反対のフィールドへ足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

櫂がフィールドに出ると完全に夜の時間帯になっていた。

かなり暗いが、地形の輪郭は見えるので、草原が広がっていることはわかった。

櫂はモンスターを求め、暗い草原に足を踏み入れる。

 

櫂の今の装備は初期の物、そのままだ。

片手剣のスモールソードと安っぽい皮の胸当てだ。

資金も初期のままなのでほぼ何も買えない。

装備確認時に櫂は自分の姿を見たが、ヴァンガードで自分が見習い騎士ライドした気分になった。

 

櫂が暗いフィールドを歩いていると、遠くの方で小さく何かにが光った。

それはランダムに不定期何回か起こった。

光った辺りの方に行ってみると、他のプレイヤーたちが猪ようなモンスターと戦っていた。

そのプレイヤー以外にも何人かのプレイヤーがいた。どうやら彼らはパーティを組んで戦っているのがようだった。

その中で櫂はあるプレイヤーが気になった。

そのプレイヤーが何かの構えをとり、少ししてから構えていたプレイヤーの持っていた剣が光を放ち、そのプレイヤーは流れるように剣を振るい、猪モンスターを斬り裂く。

そして猪モンスターは小さく光ながらポリゴンになって消えてしまった。

櫂が見た光は剣の光とモンスターが消える時のものだった。

櫂はソードアート・オンラインの説明書に書いてあった『ソードスキル』を思い出し、剣が光ったのはソードスキルを発動させた為だということはすぐにわかった。

だが櫂は今のを見ただけではソードスキルの出したかはわからなかった。

もう少しこのプレイヤーたちを観察しようと思ったが、周囲を見渡してみると、先ほど同じ光が他の所にも見えた。

 

バンダナの男の言っていたことはこういうことか…

 

モンスターの取り合いはもう既にはじまっていたのだ。

はじまりの街ではあんなことがあったから、ほぼ全員が足踏み状態だと思っていたがそうではなかった。

明日の朝になればきっともっと多くのプレイヤーが狩りに出てくるだろうということは簡単に予想できた。

櫂も他のプレイヤーの観察をやめ、奇妙な焦りの元にモンスターを探しはじめた。

 

 

先ほど場所から少し離れた所で猪モンスターを発見した。他のプレイヤーは見当たらない。

櫂はスモールソードを抜き、猪モンスターを前に構える。

猪モンスターは櫂に気付き、突進してくる。

櫂はリアルな猪モンスターに僅かな恐怖を感じたが、それを無いものとし、突進を避ける。

際どかったがノーダメージで避けられた。

何回か突進を避け続け、猪モンスターの攻撃は完全に学習した。

次に櫂はソードスキルに挑戦してみるが、まったく発動する気配はなかった。

仕方ないので突進を避けながら、普通に剣で斬りつけることにした。

猪モンスターは2、3回斬りつけたらポリゴンとなって消えた。

とりあえず猪モンスターなら楽に倒せるので、櫂はそのまま猪モンスターを狩りつづけた。

 

 

 

 

時間を忘れてモンスターを狩っていた櫂が何匹目のモンスターを倒した瞬間安っぽいファンファーレが鳴った。

櫂のレベルが2に上がったのだ。

櫂がゲーム特有の達成感を感じながら、目の前に出たパネルを見る。

レベルが上がった時のパロメータの振り分けの指示がパネルには映っている。

櫂はとりあえず筋力に振り分けた。

 

「ふう…」

 

櫂は初めてモンスターを倒してから、ようやく一息つくことにした。

櫂は多くの猪モンスターを倒してきたが、倒したのは猪モンスターだけではなかった。

途中で狼のモンスターも出てくるようになった。狼モンスターは猪より手強かったが、何とか攻撃パターンを見切り、僅かなダメージで倒せるようになった。

少なからず運良く手に入れたいくつかのポーションで回復がまかなえるくらいには余裕がある。

因みに戦闘中何回かソードスキルを試みたが、一度も発動することはできなかった。

ともあれ、この調子なら朝までにレベルを3に上げることも不可能ではないだろう。

 

そして櫂ははじまりの街から大分離れてしまったことに気がついた。

他のプレイヤーの気配もまるでない。

はじまりの街の方向はわかる今なら街に問題なく戻れる。

櫂はこのままのペースで狩りをつづけるか、一度街に戻るか。

 

思案していると、櫂は妙な気配を感じた。

 

それは後ろ、真後ろだ。

櫂は直感で後ろを振り向かずに前方へ転がる様に跳ぶ。

 

土に何かが勢い良く叩きつけられる音がした。

櫂は今までいた所を見る。

 

そこには降り下ろされた剣が地面に突き刺さっていた。

剣を目でたどっていく。

 

剣を握る鎧の手甲部分、西洋の全身鎧、そして何より特徴的だったのは兜があるはずの部分には何も無かった。

 

本物の生き物ではないデータからの敵意に櫂は戦慄を覚えた。

 

 




ここの戦闘は終わらせたかったのですが、無理でした。
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