四葉達也は優等生 作:さすおに
彼は介入者
2062年4月 少年少女魔法師交流会に出席していた四葉真夜は、崑崙方院に攫われてしまった。
そして人体実験をされ生殖能力を失い、精神構造干渉魔法によって経験を知識に変えられた。
そして四葉真夜の復讐心により捻じ曲げられた精神を、今度は四葉深夜によって暴走しないように改造された。
それが司波達也だ。残されたのは兄弟愛のみ。12歳で女性の幸せを奪われ、経験を知識に変えられた四葉真夜も可哀想だが、情動を消された司波達也も可哀想だ。
私がこの世界で成し遂げることがある。
原作で精神を弄られた四葉真夜と四葉深夜の仲違いを阻止する。司波達也の情動を消させないことだ。
原作が壊れる。
世界観が壊れる。
「それでも私は救済する」
「異論は認めん」
「断じて認めん」
「私が法だ」
「黙して従え」
変態があの場で言った場合は威厳は全くと言ってないが、今回はその言葉を自分に言い聞かせた。
男は転生者である。数多の武術、魔法、魔術、異能を極め異世界の技術や道具を所持している。
IQと肉体は人を超え、魂は超越されている。
しかしどこか人間臭さを残していた。
四葉真夜は深い絶望を味わっていたが、恐怖を感じていなかった。
きっと誰かが助けに来てくれると信じていた。信じるしかないというのが正しいかもしれない。
魔法を使おうとしても使えなかった。
男達を見る限り、軍服を着ていて言葉が日本語ではなかったので大陸の人間と判断できた。
彼女が来ていた服は全部脱がされて、手足を拘束されて生まれたころの状態を見知らぬ男達に見られているのだ。
真夜はこれから何をされるのか分かっていた。
男達は次々とズボンを降ろし始めた。男達は真夜に下品な笑いを浮かべながら近づいてくる。
「やめて! 近寄らないで! 嫌っ!」
真夜が必死に暴れるが拘束は解けない。真夜は神を信じていなかったが、この時だけは神に心の底から願った。
誰でもいいから助けてほしいと。こんな理不尽や不条理を壊してくれる絶対的存在を。
目の前の男が真夜の細くて綺麗な脚を両手で鷲掴み犯そうとした時、男の身体が目の前でバラバラになった。
男の鮮血が真夜を赤く染め上げた。
男達は悲鳴を上げるが、次から次へとバラバラの死体となっていった。
部屋中が血で赤く染まっていた。
真夜は何が起きたのか分からなかった。
突然目の前で起きた惨劇を目の当たりにしても、真夜は不思議と恐怖を感じることが無かった。
すると突然男が目の前に現れた。容姿は黒い髪で黒い服を身にまとった身長185cmぐらいの若い男だった。
「大丈夫ですか? すぐに拘束具を外しますね」
男はそう言うと真夜の拘束具を外して、懐からタオルと服を取り出し、真夜に渡した。
男は気遣ってくれたのか、後ろを向いていた。
真夜は身体を拭き、着替え終わると男の話し掛けた。
「貴方、日本人ですよね? 日本語で喋りかけてくれたから。それとなんで私を助けたのですか? 父に頼まれたのですか? どうやってあの軍人たちをバラバラにしたのですか?」
真夜は絶望を味わったが、思考停止したわけでは無かった。真夜は男に質問攻めした。
男は首を横に振って、口を開いた。
「違います。私の意思で助けに来ました。それは今はお話しすることができません」
「まぁいいわ。それで何が狙いなの。四葉からの報酬目当て? 」
「いいえ違います。私は四葉真夜を助ける為に来ました。助けた理由ですが正直に言いますと、私の自己満足です。助けたという達成感が欲しいのです」
男は自分の事を軽く語り始めた。
私を助けるためなら人殺しだってするのだと。人助けをするのに、人を殺す人格破綻者と自虐していた。
「一通り説明したのでいいでしょうか。私は貴方の味方です。それだけは信じていただきたい」
男が真夜に向かって手を差し伸べた。真夜は数秒思考した末に男の手を握ったのだった。
「今は貴方を信じてみます」
真夜と男は部屋を出た。男と真夜は手を繋いで通路を歩いていた。
男が半歩早く、真夜が付いて行っている。
曲がり角にさしかかった時に2人組の軍人と遭遇してしまった。
相手も気付いたのか魔法を発動しようと構えるが、男が言葉を発すると相手は魔法を発動するのを止めた。
「私に従え」
男の両眼には、赤い鳥が羽ばたくような紋様が浮きあがっていた。
皆が幸せに暮らせる世界を作ろうとした男が使っていた絶対尊守の異能。
その能力は、目を合わせた相手に命令を下しそれを必ず実行させる。
「エレベーターはどこですか」
男は男達に訪ねた。
「こちらを曲がって、奥に進めばエレベーターがあります」
真夜は驚いていた。さっきまで敵意のある者達から意思を奪い取った力を。
自分の姉である四葉深夜と目の前で使われた力が似ているものだと感じた。
真夜には大陸の言葉は分からなかったが、男は言葉を理解したようだった。
「さぁ行きますよ」
真夜は男に手を引っ張られ、付いて行った。
ふと真夜が男達の方を見ると、その眼には光が無くただ立っているだけだった。
結果を言うと無事エレベーターに乗れた。
途中、監視カメラがあったりしたが気付かれなかった。
2人は屋上に来ていた。
「失礼します」
男はそう言うと、真夜の華奢な身体を抱え上げたのだ。お姫様抱っこと呼ばれるものだ。
「えっ、ちょっと!」
突然、抱きかかえられて可愛い悲鳴を漏らしてしまった。
真夜は先程、醜い大人達に穢されそうになり男という存在に嫌悪感を出していたが、この男にだけは嫌悪感という感情が湧き上がらなかった。
「夜空の散歩と行きましょうか」
真夜は男の言葉を信じていなかった。人が空を飛ぶなんて幻想にもほどがあると。
しかし男の身体がゆっくりと浮いた。真夜は怖くて男に思いっきり抱き着いた。
そう真夜は"高所恐怖症"だったのだ。その可憐な瞳には涙が溜まっていた。
この日の夜空は、雲は一切なく星々が輝いていて満月だった。
真夜はしっかりと男に抱き着いて、夜景を楽しみながら四葉本亭へと帰宅したのだった。