西暦二〇〇三年6月24日 日本合州国 関東州 海鳴市 現地時間一五三八時
良し、私の今の状況を確認してみよう。
左腕に幼女が抱きついている。
これはまあ良いや。
イケメン金パオッドアイの子供が俺を殺さんばかりに睨んでいる。
これもまあ良いや保留だ。
さて、自己紹介をしよう、私の名前は椎葉祐二。年齢は16となっている、前世では45歳だった。なぜ年齢が分かったかと言うと、財布の中に原付免許が入っていた。
閑話休題。話は2時間ほど巻き戻る。
「ああまぶしい……」
私は太陽の明るさに目をくらませながら、周囲を見回す。
どうやらここは公園のようだ。子供たちが遊んでいるのが見える。私は、右腕につけていた腕時計で時間を見る、なぜか愛用のセイコーではなく、見慣れない形のデジタル式腕時計が私の右腕にはまっていた。
何だこれは?私はそう考える。
すると、いきなり何もない空中にウィンドウが開き、いくつかの情報が表示される。
所在地:海鳴市 海鳴第4児童公園
状態:健康そのもの
装備:デラメーター(レンズマン)
これが何かは良くわからない。おそらくこいつは今私が置かれている状況を表しているのだろう。
今私は海鳴市の公園にいるらしい。
次に状態、これは私の身体の状態だろう、おそらく怪我なんかをしたらここに負傷などとかかれるのだろう。
そして、装備、コイツは簡単だ。今私が召還している銃が書かれている。ここには私が召還した武器がかかれるのだろう。
私はウィンドウを消して、ポケットに入っていたOD色のシガーケースを手に取り、こう念じた。
ザ・ピースよ出て来い。
するとケースが淡く光り、フタをあけると中からザピースが出てきた。
なお、使い方であるが、私の記憶の中になぜか使い方が刻み込まれていた。
「やった!」
私は満面の笑みでライターで火をつけ、ゆっくり、静かに、深く息を吸い込んだ。
タバコの煙が灰を満たし、ニコチンの甘みとタールのほろ苦さが口腔内に広がる。
そして、ゆっくり煙を吐き出し、空に上っていく紫煙を眺め、一息つく。
「ああ、どうやら悪い夢じゃなさそうだ」
私は、周囲を見渡す。無論タバコは口にくわえたままだ。
すると、一人の女の子が、悲しそうな顔でベンチに一人で座っている。
待ち合わせといった雰囲気ではない。
おそらく、彼女は一人なのだろう。
私も実はぼっちだった経験があり、あの辛さは痛いほど分かる。
「よし。行くか」
私は彼女の方に近づき、不審者らしくないように明るく声をかける。
「お嬢さん。飴でもいかが?」
しまった、失敗した。これじゃあまるで不審者かどこかのロリコン野郎じゃないか。
すると、彼女は、いきなり声をかけられたことに驚いたのか。びっくりした表情でこちらを見上げる。彼女の身長はおそらく110センチほど。多分幼稚園生だと思われる。
「お母さんが、知らない人から物をもらっちゃいけませんって言われてるの」
どうやら意外としっかりしているようだ。
私は感心しながら、話を続ける。
「俺の名前は椎葉祐二だよ。君の名前は?」
「高町なのは」
彼女は素っ気無く言う。
高町なのは。どこかで聞いたことのあるような名前だ。さて、どこで聞いたのやら……。ああ!思い出した。確か神さんはリリカルなのはの世界だかなんだか言っていた。
つまり、だ。彼女がこの世界の主人公か。この子がミンチマシーンと化すのか。そんなことはさせないようにしよう!私は心の中で決意する。
「いい名前だね」
私が名前をほめると、彼女は顔をほころばせた。
「ねえ祐二お兄ちゃん」
ヘイ!今彼女は何と言ったと思う?
「祐二お兄ちゃんってば」
いきなりのことで、私は少々フリーズしていたようだ。
「ああ……、すまない。いきなりだった物でね、脳がフリーズを起こしていたようだ」
「?」
どうやら私の発言が理解できなかったようだ。
「えーと……、高町君?」
「なのは!」
名前で呼んでほしいそうだ。
「なのはちゃん?」
私が名前で呼ぶとなのはちゃんはうれしそうに返事をする。
「何?祐二お兄ちゃん」
「何か言いたいことでもあったの?」
私がそうなのはちゃんに質問すると、なのはちゃんは顔をうつむかせた。
おっといけない何か地雷でも踏んでしまったようだ。
私はすぐにポケットから飴を取り出す。子供向けのオレンジ飴《神様印》
「はい。飴でもどうぞ」
「ありがとうなの」
なのはちゃんはそう言って飴を受け取り、個別包装を破き、飴を取り出し口に入れる。
もごもごと口を動かして、飴をなめる。
「美味しい!こんなおいしい飴初めてなの!」
口からビームを吐き出しそうなリアクションをとるなのはちゃん。
「うーまーいーのー!」
あ、口と目からビームだ。
「さて、本題だが。なのはちゃん。君は何で一人でベンチに寂しく座っていたんだい?」
なのはちゃんはゆっくりと答える。
「実は――」
どうやら彼女の父親が大怪我を負ってしまったようだ。
そして、彼女の母親と兄と姉は経営している喫茶店の方にかかりきりになってしまい、なのはちゃんの面倒を見れなくなってしまったようだ。
そして、なのはちゃんはそんな家族を見て、自分のわがままで困らせないようにと頑張っているらしい。
健気だね~。私はそう思うね。
「良し、じゃあお兄さんが君にこう言ったとき何をすればいいかを教えよう」
得意げに言う私。
「何?」
首をかしげるなのはちゃん。
「家族の人たちにちょっとした我侭を言ってみると良い。例えば本を読んでとか、お話しよとかね」
私がそう言うと顔に不安の色を浮かべるなのはちゃん。
「え……、でも……」
私は笑顔でなのはちゃんに言う。
「大丈夫!家族の人たちはなのはちゃんの事大好きだからね、絶対聞いてくれるよ」
私はそう言って、なのはちゃんは「うん!頑張る!」と言って私の腕に抱きついてきた。
「hey!君は何をやっているんだい?」
「ありがとう……私の話を聞いてくれて。本当にありがとうございます……」
なのはちゃんはそう言って静かに泣き始めた。
きっと寂しかったのだろう。そりゃそうだ、いくら大人びているとは言えまだ子供だ。寂しかったのだろう。相談する相手もいなかったのだろう。
私は黙って、タバコを携帯灰皿に押し付け、火種を潰しながら空を見上げる。
忌々しいくらい空は青かった。
「クソ喰らえ」
私はそうつぶやいて、まぶたを閉じ昼寝を始めた。
「離れろ!」
いきなり怒鳴られたと思ったら、私の右のすねに痛みが走る。
おそらく蹴られたのだろう。
「いてえ!」
私は飛び起きて、私の繊細なすねを蹴った奴を見る。
なんと言うことだ!私のすねを蹴ったのはすばらしく美しい金髪を持ったすごい美形の男の子だった。
最近の子供は切れやすいともっぱらの評判ではあるが、見ず知らずの人間を蹴っ飛ばすだなんて、この子はどんな教育を受けてきたのだろうか。私は、彼に一般常識を教えることにした。
「良いかい、君。人は蹴ったりしちゃあいけないよ」
「うるさい、なのはから離れろ!」
話がかみ合ってないぞ。
「君は誰だい?」
ここいらで、一般的な質問でも一つ。
「なのはの夫だ!」
夫!彼は今夫!などと言った。面白いジョークだ。
「すまないが、日本では18じゃないと結婚できないんだ」
さて、法律を出して見よう。
「うるさい、なのはは俺の嫁だ!」
よし、なのはちゃんに聞いてみよう。
「なあ、なのはちゃん起きて」
私は、なのはちゃんを起こす。
「うみゅ~。お兄ちゃん?」
どうやら若干寝ぼけているようだ。
「なのはちゃん彼のこと知っている?」
私はなのはちゃんに聞いた。
「しらないの。ねえ、君誰?」
なのはちゃんが彼に尋ねる。
「おお、僕のことを忘れてしまったのかい」
彼、これから金パと呼ぶ。
金パは芝居がかったしぐさで、髪の毛をかき上げ、これまた芝居がかった口調で言った。
痛い奴じゃないか。私は思う。
少し早い中二病だろう。
「なあ君名前を教えていくれないか?いつまでも君と言った二人称じゃ分かりにくいから」
「そうか、俺の名前を知りたいか」
金パは偉そうに、芝居がかった口調で口を動かし始める。
「俺の名は――」
「祐二お兄ちゃん。おなかすいたから私帰るね。じゃあ、また明日!」
そう言ってなのはちゃんは元気一杯に手を振って家へと駆け出した。
あいつめ逃げたな。
私はこの金パの相手が面倒なので、活動拠点に向かう。
え?金パはどうするって?んなもん無視だ!無視!
「――だ!金髪イケメンオッドアイそして、魔力EXランクに――」
「俺か帰るわ」
そう言って俺は活動拠点に向かう。
おっと、重要なことを忘れていた。私は家の場所を知らないではないか。
私はそう考えながら、ジャケットのポッケをあさる。
すると、1枚の紙と財布と携帯が入っていた。
紙にはこう書いてあった。
(デバイスはオマケをつけといたぞ。わしマジ優しいよね)
私は紙を握りつぶして、飲料自販機に備え付けてあるゴミ箱に投げ入れた。
次に財布の確認だ。
さっき免許証を取り出したのは胸のポケットだ、財布はジャケットの内側のポケットに入っていて、銃は腰のカイデックスのCQCホルスターに装備されている。
財布の中には銀行のカードが2枚と1万円札が8枚と5千円札が5枚と千円札が18枚入っていた。
後、IDMと呼ばれる電子マネーカードが入っていた。
住所が書かれた紙は小銭入れの中に鍵と一緒に入っていた。
私は自動販売機に硬貨を200円入れ、パプシコーラを買う。
ガコンと自販機が唸り下の商品取り出し口に350ミリリットル入りのコーラ缶が吐き出される。
私は缶を取り出し、プルタブを押し上げて飲み口を作り、口にあて一気に飲み始める。
炭酸飲料特有の爽快感が私の食道で暴れまわる。
「ほう。こっちのも中々いけるな」
私はそう言いながら、飲み歩く。
歩いて大体15分ほど歩くと、アパートが見えてきた。
紙に書いてある住所によると、あの14階建てのアパートの8階801号室が私の家らしい。
私は、ロビーに入ると、1階の郵便受けをチェックした。
中にはコールガールのチラシと電気料金の領収書が入っていた。
私はコールガールのチラシを近くのゴミ箱に捨て、電気料金の領収書に目を通した。
基本料金プラス3千円。
まあ、安いだろう。一応契約では80アンペアだそうだ。
エレベーターのボタンを私は押して、エレベーターが来るのを待つ。
エレベーターはすべるように下がってきて、ドアを開ける。
私は階数選択ボタンの8階を押して、ドアが閉まるのを待つ。
エレベーターのドアが閉まり、モーター音がエレベーターの中に満ちる。
間抜けな電子音が目的の階層に着いたと私に知らせる。
リノリウムの廊下で足音を響かせながら私は廊下を一人歩く。
着いた、私の家だ。
私は鍵をポッケから取り出し、鍵穴に差込み捻る。
終われ
短さに定評のある私
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