「ナンジ……チカラヲノゾムカ」
「ココロ、チガオドル……チカラヲノゾムカ」
「スベテヲコワス……チカラヲノゾムカ」
「スベテヲマモル……チカラヲノゾムカ」
「スベテヲネダヤス……チカラヲノゾムカ」
「ナラバアタエヨウ……ナラバタイカヲノゾム」
「ナンジガアタエルタイカハ……」
「ワレガノゾムタイカハ……」
「ソレハナンジノ……」
**
「うおぁぁぁ!! 完璧に遅刻じゃねぇかぁ!!」
現在、朝の十時……そして今日は平日の月曜日だ。もちろん学生の俺は学校に通わなければならない。なのだが……学校の一時限目の始まる時間は八時半、なんの言い訳もできない程に完璧に遅刻だった。
「ったく、こんな時に限って目覚まし時計が壊れてるとか、世界が俺を虐めてるようにしか思えんっ」
急いで制服に着替えて部屋を出る。朝飯? 食パンを咥えて登校ですがなにか?
「あぁ〜っ! ってかここまできたらもう学校休んでいいんじゃね?」
イケナイ考えを思いついてしまった……その瞬間、俺の頭の中には天使と悪魔が現れ、両者ともに言い争っていた。
『いいじゃねぇ〜かよ〜、もう十時だぜぇ? 二時限目始まってるしよぉ〜、もう遊びに行こうぜぇ』
『まだ二時限目だろう? 走れば三時限目には間に合う』
『だってよぉ〜、たりぃじゃねぇかよ〜』
『たるかろうがなんだろうが、学校には行かないとダメだろう?』
『天使がいい子ぶってんじゃねぇぞコラァ!』
『悪魔こそもうちょっとまじめになれっ!』
と、言い争いが取っ組み合いになってしまった。ここまでして、天使と悪魔が正直役に立たないことを俺は知る。当たり前だろう、どっちも俺なのだから。
「はぁ……転校初日だしなぁ、流石に行かないとまずいかなぁ」
なんて思いながら、だらだらと学校への道を歩いていると……
「ち、遅刻だぁ〜!」
「え?」
十字路に差し掛かったところで誰かの声が聞こえ、上を見上げると……そこには女の子が壁を乗り越えて飛んできていた。
『『「お、親方っ! 空から女の子がっ!」』』
この瞬間、俺と天使と悪魔の心がひとつになった……ような気がした。
「って、そんなこと言ってる場合か!?」
「ふぇ? ひゃわっ!?」
「ぐふぅっ!?」
何が起こったのか……それは言うまでもないかもしれないが、初めて会った名前も何も知らない女の子に膝蹴りを食らったのだ。
「い、いってぇ!?」
「ご、ごめんなさいっ、怪我はないですか!?」
「う、う〜ん、だ、大丈夫……怪我はないと思うよ、ちょっと口の中が血の味がするだけで……」
「だ、大丈夫じゃないじゃないですかっ! え、えと……どうしよう……ここじゃだめだし……一旦うちの学校で手当を……」
女の子は慌てた様子でいる。その目は完全にパニックになっていて、半分涙目になっていた。これじゃあ俺が泣かせたみたいでたまったもんじゃないんだが……
「だ、大丈夫だから……俺もこれから学校に行く途中だし」
「そ、そうなんですか?」
「あぁ……私立リディアン音楽院とかいうところに編入するんだ」
「え……えぇ!?」
女の子はすっごく驚いた様子で俺を見ていた。
「どうした? えと……茶髪短髪少女?」
「も、もしかして学校中の噂になってる初の男の人の編入生って……て、その前にっ、わ、私の名前は立花 響ですっ」
「え? 噂になってるの? マジで? あ、俺の名前は出雲ユキヒラだ、よろしく」
「宜しくお願いしますっ!」
「お、おう……それで、俺の編入が噂になってるって、マジ?」
「ま、マジですっ! 学校中で噂になってて凄いことになってます!」
「ま、まぁそうだろうな……女子校に初めての男子生徒だし……」
こうなるとはわかっていたが……まったく、情報は回るのが早いというかなんというか……それにしても、ひっそりと歌ってるところを学園長に見られてそのまま入学が決まるとか……それでいいのか女子校よ。
「って、そうでした!? もうこんな時間ですよっ」
「あ……そういえば俺達遅刻してたんだったな」
「そうですよっ! 急ぎましょうっ!」
「あぁっ!」
俺と立花は走った。私立リディアン音楽院への道をダッシュで、意外と立花の足は早く……俺も少し早めに走らないとついていけないくらいだった。
「そういえば私立リディアン音楽院って、学生寮とかなかったか?」
「え、えへへ……実はそうなんですけど、来る途中で困ってるお婆さんを見つけちゃって」
「ふ〜ん……なるほどな」
どうやら立花は優しい奴らしい。困っている人をほっとけないタイプっていう奴だろうか。まぁ、そういうやつは嫌いではない。
「さぁ……そろそろ着きますよっ」
「お? おぉ〜、聞いていたとおり広いな」
私立リディアン音楽院は聞いていた通り、とても広く、さすがは私立と言いたくなるくらいだった。
「それじゃあ俺は職員室に行ってくるな、まぁ、同じ学校なんだし、また会うこともあるだろうな」
「そうですねっ、それじゃあ、また何処かでっ!」
「おうっ」
こうして俺は立花と別れ、職員室に向かった。だがしかし……そこで待っていたのは……
「編入初日から遅刻をする生徒を見たのは……私の教職人生の中では貴方が初めてですよ……出雲君」
「あ、あはは……えっと、すみません」
「ん〜、謝って許されるわけないでしょう?」
俺の担任を名乗る先生が頭に怒りマークを浮かぶように見えそうなくらいにお怒りになっていた。
「ま、まぁまぁ落ち着いてください。 先生只でさえ小さい体がさらに縮んでしまいますよ?」
「なっ……わ、私が気にしているところを……あ、貴方はっ!」
因みに、この先生はとても小さかった。身長は百四十センチあるかないかくらいで、長髪の黒髪を揺らしながら白衣を纏っていた。
「落ち着いてくださいって先生、可愛い顔が台無しですよ?」
「か、かかか、かわ///」
あ、やばい、この人面白いかも……
「はいっ、めちゃくちゃ可愛いですよっ!」
「うぅ……///」
「と、いうわけでっ、遅刻は見逃していただけるとありがたいな〜……なんて」
「はっ!? そんなこと、できるわけないでしょっ!!」
「ですよね〜…… 」
やっぱり誤魔化すことは出来なかった。だが思った……この学園生活…そして立花の出会いがあったおかげで、面白くなりそうな気がしていた。
だけど、少し心の中にあったのは……俺は何をしているんだろうという、気持ちだった。
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