死亡フラグは目の前に   作:空箱一揆

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陰獣に師事するオリ主って見たことなかったので、書いてみたかった。
興が乗ったら読んでみてください。

 



第1話 大風呂敷と梟と

「誰だ、お前?」

 

 そびえ立つ巨大なビルの群れの合間。その中でも一際小さくて錆びれた屋上で、サングラスの男は疑問符を浮かべていた。

 今まで誰もいなかったはずの場所に、白い手に引きずられるようにして、一人の青年が姿を現したのだから。

 短髪で平均的な身長の男。二十歳は超えていないだろうと思いながらサングラスの男が舐めるように青年を見据える。

 

 

 青年は、男台詞に対して、同じセリフを目の前の男に吐き出した。

 

「あんたこそ誰だ?」

 

 しかし、すぐに見慣れぬ景色が視界に飛び込んで来る。見たこともないビルの群れに、青年の思考は停止した。

 

「……どこだ(此処は)」

 

 少なくとも、自分の住む町に、このような高層ビルはなかったはずだ。

 自分の置かれている状況と経過が分らずに困惑する中で、青年は目の前で訝しげな表情を浮かべる男に再度目を移す。

 黒いサングラスからはみ出た目玉が、ぎょろりとこちらを見据えている。くたびれたジーパンと、サンダル姿の男。どこかで見たような気がして思考するが、どこで見たのか思い出すことができない。

 

 「急に現れやがって、そいつがお前の能力か?」

 

 途方にくれる青年に対して、痺れを切らしたのか男が一歩近づいた。警戒を強める男は、右手を掲げて、

 

「ふくろうッ!!」

 

 何もない空間から、大きな布を具現化させた。その瞬間にすべての思考がつながる。

 能力の名前はファンファンクロス(不思議で便利な大風呂敷)。十老頭に仕える、陰獣の一人であった。

 ハンターハンターの世界。漫画やアニメでよく見ていたし、ネット上で、いくつかのトリップ小説や、転生物を見たが、まさか自分がこんな状況に陥るとは思うまい。

 

「俺を知っているのか? てめぇ一体何者だ……」

 

 しかも、なぜ梟? どうして俺は、物語として微妙な位置の人物の目の前に放り出されているんだ? 原作にまったく関係ない平穏な町とか、くじら島とうかもっと安全そうな場所はありそうなはずなのに……。いや、それでも流星街とか、ヒソカの目の前に放り出されるよりはましなのだろうか? などと余計なことを考えている間に、俺の視界は一瞬のうちに暗転した。

 

 「その白い手が、お前の能力か」

 

一瞬の間に風呂敷包みの中にとらわれた俺。

 

 「お前みたいな奴が、どうして俺の名前を知っていたのか、ゆっくり吐いてもらおうか」

 

 どうして知ったも何も、こんなこと本気で話しても信じてくれるわけないだろう。

 ファンファンクロスの手触りは普通の布と同じだが、これは内側から抜け出す方法はあるのだろうか?

 

 「拷問と尋問は専門じゃねえが――。まぁすぐに話したくさせてやるさ」

 

 ぐわんぐわんと、包み込まれた布ごと、ぶん回される。

 目が回り、胃が逆さに裏返るように吐き気がこみ上げてくる。

 

 「やっ、やめてくれッ……」

 

どういえば、信じてもらえるのか。俺は生きてこの状況を脱出できるのか。

もはや回らなくなってくる頭のなかで、必死に知恵を絞り出す。

 

 「おっ、俺は――」

 

 

 

 その後で何と言ったのか明確に思い出すことはできなかった。ただ、思いつく限りの言葉の羅列。喋っていいことなのか、悪いことなのか、そんなことを考える余裕もなく、全てを、原作を梟に喋ってしまった。

 これが俗にいう原作介入。

 しかも、こんな死亡フラグのど真ん中の人に。

あなた以外の陰獣は、蜘蛛に殺されますよ。

 原作を信じたとして、そんな未来が分かる貴重な人間、簡単に開放してくれる訳ないじゃない。

 信じなかったとして、どうやって梟の能力を知ったのかと、納得のいく答えが出るまで拷問と尋問ですよ。はっきり言って、原作が全てなんだから答えられるわけがない。

 どっちをとっても死亡フラグじゃないかッ!

 ダメだ……、転生とか、介入とか、オリ主とか言うなら、チート能力とかあっても良さそうなのに、その兆候すらないし。

 俺は無力な一般人。もはや、死ぬまで利用されて、嬲られるしかないんだ……ッ。

 

 

 

 「終わった――ッ!!「起きたようだな」……」

 

 いきなり声に反応してそちらをに首を向けると、水の注がれたコップを手に梟が立っていた。

 そして、ゆっくりと自分の置かれている状況が認識できてくる。

 元いた世界となんら変わりのない平凡なホテルの一室。部屋に一つのベットの上で、俺は寝かされていた。

 特に拘束もされてはいないし、目立った外傷もない。

 だが、目の前にいる男はその気になればすぐに俺を殺すことができるんだと思うと表情はこわばり、身体も固まる。

 ゆっくりと近づいて来る梟。

 

 「まぁ、これでも飲んで落ち着け。と言ってもただの水だがな」

 

 枕元に置かれた水。あからさまに怪しそうに眺める俺に、梟が察したようにいう。

 

 「別に毒なんて入っちゃいねえよ。ほらな」

 

 そう言って、少しばかり自分の口に含んで見せた。

 

 「さっきの話からするに、お前ジャポンの出身なんだろ。それもかなり隔離的な地域の出身らしいな。ワカヤマなんて聞いたことのない地名だったしな。お前がどうしてこんなところにいるのかを俺が説明してやろう。それは念ってやつのせいだ。おそらくお前は放出系の能力者。ここに来る直前のことは支離滅裂でなにがあったのかわからなかったが、おそらく自身に何らかの危険が訪れたために、無意識に能力を発動したんだろうな」

 なぜだ。梟が、マフィアに雇われる運び屋がこんなにも赤の他人に親切にしてくれるものなのか?

 だが、俺がさっき喋った事は、都合の良いように解釈されているようだ。しかし、どうして俺を介抱する必要がある?

 しかも念についてまで教えてくれるなんて、都合良すぎる。

 そして、そこまで考えた時に梟がある提案を出してきた。

 

「まあ、身体ひとつでこんな場所に来たんだ、ここからジャポンまではかなりの距離がある。お前の国に帰るためにも、それなりの金が必要だ。だから、お前、しばらく俺の下で働いてみないか? そうすりゃお前がここに来る切っ掛けになった念ってやつも俺が教えてやる」

 

 なんだと。梟自らが念について教えてくれるなんて。というか、あなたマフィアですよね、運び屋ですよね。他人に教えるっていうことできるんですか? いや出来るかもしれないけれど、まっとうな方法じゃないんだろうな。

 念について教えてくれる。

しかしその方法は絶対にまっとうな方法じゃないと思う。

それに念について教わるなら、まともな心源流の人に教えてもらいたいものだ。

 なんとかやんわりと断れないものか、そうしてできるなら、二度とマフィアなどという人種と出会わない遠いところへ行きたいと考える。すると梟は、

 

「あんまり、気が進まねえみたいだな」

 

口ごもる俺に、梟が心中を察してか口を開いた。

 

 「まあ、しばらく考えるのもいいだろう。明日の朝また答えを聴きに来てやる。そうだ、ここの支払いボッタくるなよ。まあ、眠っている間に発信機仕掛けといたから、逃げたら内臓の半分なくなるけどな」

 

じゃあなと言うと、梟は笑顔を浮かべたままで部屋を出て行った。

 

 「部屋の支払いって、払ってくれるんじゃないのかッ! てか、これは明らかに脅迫だろ」

 

 金も何も一切ないのを知っていて言いやがって。

 それから、身体中をペタペタと触りまくり、発信機を探すが、みつからない。さすがに、素人に見つかるような場所には付けられてないようだ。もしかすれば、身体の中とか、奥歯に仕込まれているのかもしれない。

 これは、あれだ、自分の意思で選ばせるように思わせておいて、全く選択の余地がないじゃないか――。 

 だめだ、このままここにいたらやっぱりマフィアの都合の良いモルモットか何かにされてしまう。しかし、身体一つで一般人がこんな物騒な場所から逃げ出す事なんて出来るわけがない。

 逃げても発信機がついているのなら意味ないし……。

 その後夜明けまで、思考のループにはまった俺だが、もはや逃げ出す事など出来るわけがないと、観念するのだった。

 

 

 

 青年と話した後、部屋を出た梟は、すぐに何処かへ連絡を入れる。

 「俺だ、904号室の男だが、絶対に逃すな。常に監視をつけておけ、後さっき仕込んだ発信機は動いているだろうな……。そうか、いやなに、あいつは使えるぜ。運び屋にとってこれほど貴重な能力はない。一人で仕事が出来るようになるまでの間、死なない程度に監視しておけ。そうだ、命の危機がない限りは手出し無用だ。だが、本当にやばそうな時には手を貸してやれ。絶対に死なすんじゃねえぞ、あれは貴重だ。じゃあな」

 ピッ。という電子音と共に通話を切る。

 ゆっくりとホテルを出て行く梟。そして、ふとホテルを振り返り、

 

 「どうやら、俺にも運が向いてきたらしい……。絶対に逃さねえぞ」

 

 誰にともなくつぶやいた。

 その声を聞く者は誰もいない。

 そして、梟の姿はヨークシンの闇の中へと消えていった。

 




最後までよんでくれました皆様、ありがとうございます。
気が向いたら、感想を書いていただければ幸いです。

誤字修正しました。uytrewqさん、ありがとうございます。
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