ガンゲイル・オンライン:Apex of Gunfighters   作:EoEo.

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▼更新がとても遅れました。

▼今回は試験的に第三者ナレーションで書いています。

▼大型Update "Vehicle Kill"実装。

【Vehicle Kill】
今までSBCグロッケン外の戦闘区域で拾った車両しか運転できなかったのが今アップデートによりショップから車そのものの購入や、設計図と素材を集めることによって
車両を作成出来るようになりました。
設計図や素材はモンスタードロップやショップにて販売。
装甲が一切無い一般車両や重装甲の軍用車。車に加え、オフロードバイク、4輪バギーなど種類様々。
別途で車両に取り付けられる各種装備を作成可能。
また、これによりSBCグロッケン内の区画が整備され車両用道路が通行可能になりました。

※今回のアップデートで戦車、IFV、APCは追加されていません。


OPS 08:アップデート

火曜日、アルバイトが終わって帰宅したサーニャの携帯のメール受信の音楽が鳴る。

 

『サーニャ!見せたい物があるから時間があったらGGOにログインして!アルフレッドさんの店で待ってるね!』

 

彼女は結局サーニャの説得で学校に来ていた。

しかし昨日は遅くまでやっていたようで、サーニャが寝てからもアップデート語コツコツと何やらしていたらしい。

 

『今帰って来たよ、シャワーとご飯済ませたらログインするね。』

 

そうサーニャは返信し、服を脱ぎ洗濯機にそれを放り込みシャワーを浴びた。

シャワーから上がってすぐ夕食の準備。サーニャの祖父母の家から送られてきた鍋を使い料理を作る。

最初段ボールで送られてきた時サーニャはなにかと思ったが、箱を開けてみると大げさすぎるクッションに埋まった一人用の小さな鍋だった。鍋の蓋を開けると手紙が入っており、サーニャの祖母からだった。

 

『サーニャへ、元気ですか?ちゃんと美味しいものは食べていますか?鍋を入れておいたのでボルシチなど作ってみてはどうでしょう?もう一枚にレシピを書きました、参考にしてください。お節介なお祖母ちゃんより。』

 

と、書かれていた。

日本に来てからサーニャは料理本を買ったり、インターネットでレシピを漁って色々作ってはいたのだが、一人暮らしをしている大切な孫を心配してくれたのだろう。

書かれている通りサーニャは二枚目を確認するとボルシチのレシピが手書きで書かれていた。

さすがに肉や野菜は悪くなると思ってか送られては来なかった。

帰宅途中に食材を買い、今日はレシピ通りボルシチを作ることにした。

サーニャは作りながら、立ち込める匂いで祖母が作っていたボルシチを思い出す。

 

Вкусно пахнет...!(良い匂い...!)

 

ついサーニャの口から母国語が出てしまう。

出来たボルシチの鍋をテーブルに運び

 

「いただきます。」

 

今夜の夕食は故郷を思い出す時間だった。

 

「さて、一ノ瀬さん待ってるかな。」

 

夕食を堪能し、一息ついたところで約束を思い出す。

サーニャはベットに横たわり、ふと横を向くと祖父母の家から持ってきたテディベアがこちらを向いていた。

 

「行ってくるね。」

 

サーニャはテディベアの頭を撫でる。

アミュスフィアを被り、一呼吸し瞳を閉じ«仮想世界»への扉を開く。

 

「リンクスタート...。」

午後10:30

 

「やっほー!サーニャ!」

 

「こんばんはサーニャちゃん。」

 

「遅かったじゃないかサーニャ。」

 

ログインしたサーニャをラファールとスコッチ、それから店主のアルフレッドが出迎えた。

 

「こんばんは皆。それで、見せたい物って?」

 

サーニャはさっそく、ラファールにメールの内容について聞く。

 

「うん! それじゃあアジトへ移動~!。」

 

"アジト"と、ラファールがそう呼んで居るのはスコードロン専用ルームのことである。

昨日サーニャ、ラファール、スコッチの三人でスコードロンを結成した。

SBCグロッケンの中央広場の一角にある建物、もともと建物自体は有ったがシステム的に中には入れない事になっていた。しかし今回のアップデートでプレイヤーが建物を購入し、使用できるようになったようだ。

集合場所のアルフレッドの店から歩き、建物に到着。ラファールが扉を開けると

 

「あれ?来る場所間違えた?」

 

一番最後に入ったサーニャが辺りを見回して言った。

昨日、スコードロン結成後すぐに下見に来た時は閑散とした室内だったが、今はオシャレなバーのような内装になっており、バーのように見せているカウンターの奥にはキッチン、グラス棚、ボトルまで完備されていて明らかにそれは正真正銘バーだった。

 

「今日一日使って全部整えちゃった~、まぁこのへんのアイデアは仕事をほったらかしにしてログインしてたスコッチだけど。」

 

「どうだ、良いセンスだろう?」

 

スコッチが、辺りを見回しているサーニャに聞く。

 

「うん、内装はおしゃれだね。ただ、ここを一番使うのはスコッチだろうけど。」

 

「あちゃー、バレたか。まぁ、マスターは俺がやるから酒が飲みたくなったら来てくださいなアルフレッドさん!。」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて今度是非!」

 

がはは!と、笑いながら大人二人はそんな話をしていたが

 

「スコッチ、私達まだ未成年。」

 

「おっと、そうだった! 失礼失礼。」

 

ラファールにそう言われスコッチは顎髭を弄りながらサーニャとラファールに謝る。

 

「って、本題はここじゃないの! サーニャ、そこの扉開けてみて!」

 

ラファールが指を刺した先に、木製の扉があった。

サーニャは言われた通りその扉を開ける。

 

「うわ。」

 

「びっくりした?」

 

「どうしたのこれ...?」

 

「どうしたのって、今日一日使って出来たんだよ~!」

 

サーニャが開けた扉の先にはバーのようなメインの部屋の二倍はあるであろうガレージがあり、そこには車が止まっていた。

 

「だって...今日アップデートされたばっかりだよね...?」

 

「ふふーん、寝ずに素材と設計図を集めるのに苦労しただけはあるよ~!」

 

彼女こそオンラインゲーム廃人と呼ぶにふさわしいだろう。

 

「SUV、戦闘用ってわけじゃないけど5人乗りので快適だよ」

 

アルフレッドがサーニャのために説明する。

悪路でも走破出来る高い車高に、錆臭いこの世界らしい小綺麗にまとまったSUVだ。

 

「ちゃんと防弾仕様、四駆改造までしてるんだから!まぁ、本当は軍用の装甲車とかが良かったんだけどね...。」

 

「誰が運転するの?」

 

「もちろん私よ私!」

 

自信満々でラファールが答える。

 

「ふぅん...。ん?」

 

サーニャが車両の反対側に回ると、もう一台分のスペースがガレージにあり、そこには一台のオフロードバイクが置いてあった。

日本のカワサキ製KLX250を米国、ヘイズディーゼルテクノロジー社が米軍特殊部隊向けにカスタマイズしたオフロードバイク、"M1030 A4"である。

エンジンはカワサキ製250cc水冷4ストローク単気筒エンジンからディーゼル250cc水冷4ストローク単気筒ディーゼルエンジンに載せ替えている。これは引火しやすいガソリン燃料を前線で扱わずに済み、また輸送ラインを1種類にできるという利点から陸、空軍の燃料をNATO規格の"JP-8"に統一したからである。車体色はカワサキ特有のライムグリーン、では無くボディーからフレーム、エンジンまでのほとんどすべてを黒で塗装され、市販車には無い威圧的な印象がある。

 

「これは誰が乗るの?」

 

「サーニャ。」

 

「えっ、私...!?」

 

サーニャが驚くと、ラファールが言った。

 

「この中でバイクに乗ったことあるのスコッチとサーニャしか居ないんだ~」

 

サーニャは幼年学校に居た際、訓練の一環でオフロードバイクに乗ったことがある。

そのことを先日のショッピングモールへ出かけた際に話したことが今回抜擢されたのだろう。

そして、このことを普通にスコッチたちに聞こえる声で言ってるということはサーニャの事を言ってあるということだ。

 

「サーニャのことは聞いたぜ、言ってくれたってよかったんだぞ水臭い。」

 

「スコッチは信用ならないからでしょ。」

 

ラファールがそう言うと、スコッチはなんだと...っと少しショックを受けていた。

 

「スコッチはバイク駄目なの?」

 

サーニャは自分以外にバイクに乗れるスコッチに聞く。

 

「俺はバイクより馬が良いんだよ!」

 

「って、言ってバイクには乗らないんだってさ~。」

 

彼いわく、"普段乗れない馬に乗りたいのと西部ガンマンがオフロードバイクでは性に合わないから"だそうだ。

 

「さーて、じゃあトライブと行きますか!」

 

サーニャ、ラファール、スコッチの三人はメインの部屋のもう一つの扉を開けると、再びワープゲートがそこにあり、そこを潜るとSBCグロッケンの中央広場に帰って来た。アルフレッドは店番があるからと、一人店に戻っていった。

 

「さてさて、こっちこっち!」

 

ラファールはサーニャの手を引っ張り、とある場所まで連れてゆく。その後ろをスコッチがついてくる。

 

「じゃあサーニャ、ここのコンソールに触れてみて。」

 

手を引っ張られ、連れられて来たのはゲートのあった場所から10mほど離れたバス停のようになっているロータリーだった。ここは以前殺風景な空き地だったが今回のアップデートで追加されたものだ。

サーニャは言われた通りコンソールに手を添えると、"転送させる車両を選択してください。"と、彼女の目の前にウィンドウが表示された。

ウィンドウには"自宅:まだ所有していません。""スコードロンガレージ内:使用可能2台"と書かれており、ラファールの言葉でスコードロンガレージの方のUIに触れると更にウィンドウが立ち上がり、"転送する車両を選択してください。"とポップアップ表示された後、"SUV"、"M1030 A4"と名前、画像が表示され今回は3人のためSUVのUIをタッチする。すると、コンソールの目の前にある転送装置らしきものが青白く光りだしたかと思うとバラバラのポリゴンが出現し、それが瞬く間に先ほどガレージで見たSUVの姿を成形し、彼女の目の前に転送された。

 

「どう?凄いでしょ!これで乗れるよ!」

 

「うん...!」

 

「今回ばかりは、馬はお預けだな。」

 

3人は7.62mmを防ぐ装甲化された少々重いドアを開け、乗り込んだ。

ラファールが運転席、スコッチは助手席、サーニャはスコッチの後ろの席に座る。

 

「出発するよ~?二人共、シートベルトはしたかな?」

 

「大丈夫。」

 

「OK、いいぞ!」

 

「ではしゅっぱ~つ!」

 

そう言うと、ラファールは一気にアクセルを踏み込む。

タイヤがキュルキュル!とスキール音を鳴らし、急発進した。

 

「ちょっ...ラファール...?!」

 

「なに~?」

 

「もっとゆっくり...。」

 

ロータリーから車道に合流、ラファールはスピードは一切落とさず車と車を縫うように進む。向かうは、荒野のフィールド。

 

「やっぱり俺が運転しておくべきだった...! うっ、おえ...」

 

「私でも良かった...うぅ...。」

 

「ひゃっほーい!たーのしーいっ!!」

 

2人の発言をよそに、楽しげに運転するラファール。

なんとか無事、フィールドに出ることは出来たものの精神的なHPはごっそり持って行かれた2人だった。

車両を一旦止め、休憩をする。

 

「久しぶりに車酔いしたぜ...仮想世界でもなるんだな...。」

 

「もう乗りたくない...。」

 

「えぇ!?二人共そんなに駄目だった...?」

 

ラファールが二人に聞く。

 

「駄目だな...。」

 

「駄目だね...。」

 

二人は口をそろえて言った。

 

「次はスコッチが運転を...、ん? あの砂煙は...。」

 

サーニャが車の運転をスコッチに変わるよう要求しようとした時、後ろから迫ってくる砂煙を見つけた。

ポーチから双眼鏡を出し、その砂煙を上げている主を確認する。

1kmないしは800mほど先に荒野の砂の色と同じ色の車両、M1151 HMMWV(ハンヴィー)だ。

 

「むこうから車がこっちに近づいてる...。」

 

「何台?」

 

ラファールが聞く。

 

「1台だけ、武装は特に付いてないみたい。」

 

サーニャの双眼鏡には一切止まることの無い、HMMWVが徐々に迫ってきていた。

すると、突然HMMWVのルーフから一人のプレイヤーの胸から上が出てきた。

その手にはなにか黒い、長い物、銃が握られていていた。

 

「スコッチ、運転お願い。ラファールは助手席、私はうしろから狙う。」

 

「狙うって...、その人達敵なの?」

 

「すぐに分かるよ...。」

 

サーニャがそう言った途端複数の赤いバレットラインが砂煙の舞う方から伸び、そのラインはラファールの方へ。

 

「うわっ!?」

 

間一髪、ラファールは銃弾を避けたもののとっさの回避で尻餅をついてしまった。

 

「ラファール!乗れ!」

 

スコッチが運転席に乗り込み、開いている助手席のドア越しにラファールを呼ぶ。

ラファールが助手席に飛び込むとスコッチはアクセルを踏み、その場から退却する。

 

「危なかったなラファール。」

 

「うん...。サーニャ、敵は?」

 

それまで横たわる感じで助手席に乗り込んだラファールは姿勢を直すと、サーニャに敵の動きを確認する。

 

「追ってきてる、敵のほうがちょっとスピードが早いかも。」

 

「向こうさんのほうがトルクが有るのかもな...。」

 

スコッチが運転しながらそう言った。

足を取られる砂漠を走る上でサーニャたちのSUVよりトルクがあるHMMWVの方が

有利のようだ。

敵車両との距離は3、400mほどまで縮まっていた。

サーニャは車内に立てかけておいた自身のAKを手に取り、車両の後部座席の窓を開けて敵の車両に狙いをつける。三発を三回に分けて放つが、車両の揺れで当てることが出来なかった。

 

「ラファール、アルフレッドさんから借りてた"アレ"貸して。」

 

「え、あぁうん、分かった...!」

 

サーニャがそう言うとラファールはメニューウィンドウを開き、自身のアイテムストレージからある武器を実体化させた。

 

「はい、サーニャ!」

 

サーニャに手渡された武器は3.5倍から15倍まで望遠機能を持つスコープが取り付けられ、長銃身と延長フォアエンド、精密射撃用のバットストックを備えた"SCAR-H TPR"米軍採用名称"Mk20 SSR"。ベルギー、FNハースタル社が開発したSCARの7.62x51mm NATO弾仕様、H(Heavy)シリーズのマークスマンライフル仕様である。

先日の狩りの際にアルフレッドの店から借用したライフルだったが返すのを忘れ、俗に言う借りパク状態であった。

 

「ありがとう。」

 

サーニャは助手席に座るラファールからMk20 SSRを手に取ると、AKを車内に無造作に置き、Mk20 SSRに持ち替えた。

適車両との距離は200m、先程からこちらに数発づつ撃ってきてはいるがさすが装甲を有する車両だけあり一発も貫通していない。

 

「今度こそ...。」

 

サーニャは銃を窓から出すが自分の顔や身は出さず、半分まで開けかけた防弾窓ガラス上に置くようにして右手でMk20 SSRのピストルグリップを握り、左手は親指と人差指で銃を持ち中指、薬指、小指はガラスの縁に押し付けるようにして伏せるようにして構える。揺れる車両で少しでも安定した射撃ができるよう、銃をホールドしながら撃てるようにしたのだ。

拡大されたスコープの中には運転席に座っているドライバーの姿が見え、頭にバンダナ、目元にゴーグルを着けたプレイヤーということがわかる。

サーニャは車両の動きを止めるべく、ドライバー向けて狙いを定め一発撃つ。

 

「当たった...けど...。」

 

放たれた弾丸はHMMWVのの運転席目掛けて飛び、フロントの窓ガラスを貫通、することが出来なかった。

 

「防弾ガラス...。」

 

M1151 HMMWVは装甲や窓ガラスの防弾が強化されたモデルで、Mk20 SSRの7.62x51mm NATO弾では貫通することは不可能であった。

 

「じゃあタイヤは...。」

 

続いてサーニャはHMMWVのフロントタイヤを狙う。

今度は二発撃ちこむ。一発目はタイヤ、車体に当たること無く地面に当たったが二発目は見事にタイヤに命中。しかし車両の動きに変化は無く、更に接近してきている。

 

「パンクしないタイヤ...。」

 

軍用車両の殆どはタイヤが銃撃を受けても、すぐに離脱できるよう市販の車とは違ったタイヤが装備されている。もちろんGGOでもそれは変わらない。

敵の車両はサーニャ達の車両の進行方向から見て左側に車両を付けると、体当たりをしてきた。

 

「うわぁぁっ!?」

 

「ぐぅっ...!」

 

衝撃で車内が左右に揺れる中、スコッチがなんとか車体の体勢を戻す。

サーニャも衝撃で、尻餅をついていた。

サーニャがリアゲートから顔を出さなくなった途端、HMMWVのルーフからプレイヤーが顔を出す。

その手にはベルギー、FN社の軽機関銃"ミニミ"の7.62x51mm NATO弾仕様"Mk48 mod.0"が握られていた。体勢を立て直したサーニャが顔を車両後部から覗かせると、赤いバレットラインが複数サーニャの頭に点射され、サーニャはすかさず頭を車体に戻す。弾は伏せたサーニャの頭上をかすめた。

サーニャの姿が消えたことを確認すると、サーニャ達の車両にいくつも弾丸を浴びせる。しかしその装甲はHMMWVと同じく、7.62mmを弾きタイヤもパンクしないタイヤであった。

 

「大丈夫サーニャ!?」

 

「うん、向こうの車両にも銃弾は利かないね...。」

 

「ロケットランチャーはないけどグレネードは有るよ?」

 

GGOには元々車両が実装されてなかったため、ロケットランチャーの類は実装されておらず、あるとすればグレネードランチャーがあるくらいだ。

もちろん手榴弾や地雷、GGO世界の技術で作られたプラズマグレネードなどの爆弾類は多くある。

 

「二人とも、プラズマグレネード持ってる?」

 

「私は二つ、スコッチは?」

 

「俺も二つ。」

 

サーニャは二人からプラズマグレネードを拝借すると、すでに相手の車両のほうのルーフから先に顔を出していたプレイヤーに向かってブラインドファイアの如く、窓からAKだけを出して相手の車両に向けて撃つ。ルーフから顔を出していた敵プレイヤーは怖気づいたのか途端に顔を車内に引っ込めた。隙ありとばかりにサーニャは射撃をやめ、窓から顔を出すと二人から拝借したプラズマグレネードを3つ手に取り、起爆タイマーを最低の3秒にセットし横付けしている相手の車両の前方の方に投げる。サーニャの手から離れた3つのプラズマグレネードは荒野に弾むこと無く落ちると、セットされた起爆の瞬間までインジケーター部分を赤く点滅させている。

相手の車両はサーニャの一連行動に気付いたのか、スピードを落とし回避行動をする。

3秒後強烈な青白い発光とともに、3つとも起爆。周囲の土、砂が吹き飛び。地面に大きな穴が3つ開いた。

 

「気付いちゃったか。」

 

相手の車両は早めに気づいたことが功を奏し、爆発を回避。しかしサーニャ達の車両から少しばかり離す事ができた、が、サーニャは。

 

「倒してくる、それまで走り続けて。」

 

そう言うと、プラズマグレネード一つをポーチに入れ、未だ走り続ける車両の後部ドアを開けて飛び降りた。

 

「えっ、ちょっと?!」

 

「サーニャ!?」

 

突然の行動にスコッチとラファールが驚くが、時すでに遅くサーニャは荒野の地に足をつけていた。

受身をし、着地したサーニャは顔を上げ敵車両を最後に確認した方を見る。しかし、爆風で巻き上げられた砂が彼女の周りの視界を覆い、その姿を確認できない。

 

『サーニャ、無事なの?!』

 

通信用アイテムの音声が耳元でラファールの声を再生している。

 

「大丈夫、さっき言ったそのまま走り続けて。」

 

『敵は車だよ!?』

 

「大丈夫任せて、切るよ。」

 

『あっ!ちょっ...!』

 

サーニャはラファールが言い終わる前に通信を切った。

そうしているうちに巻き上げられた砂は落ち着き、視界が回復し始める。

すると、100mほどの距離に先ほどの車両が止まっていて、すでにサーニャの事を捉えているのか今まさにサーニャの方に向かって進み始めた。

 

「さぁ、一騎打ちだ。」

 

サーニャはそう言うと、あろうことか向かってくる車両に全力疾走で向かってゆく。

車両もサーニャの行動に気づき、速度を上げその距離は50mになっていた。

サーニャには運転手とルーフでこちらに照準を合わせている射手の顔がはっきりと見える。

 

「今...っ!」

 

ぶつかる直前、サーニャは地面を蹴りジャンプ。右足で、向かってくるHMMWVの分厚いボンネットを再度蹴りジャンプ。右手に持っていたハンドガン、"ストライク ワン"をルーフから呆然とこちらを見ている射手のプレイヤーに銃弾を2発撃ちこむ。それと同時に左手に持ったプラズマグレネード一つをルーフの隙間に投げ入れ、そのまま空中で前転をしつつ、再び荒野の地に足をつけた。

射手のプレイヤーの頭に2つの赤いヒットエフェクトが煌めき、死亡判定。消滅。

残された車両は投げ入れられたプラズマグレネードに気づき、HMMWVの扉を開け逃げようとしたが間に合わず、プラズマグレネードの爆発に巻き込まれバラバラのポリゴンの塊となり消滅した。

 

「すぅ...ふぅ...。」

 

サーニャはホルスターにストライク ワンを戻し、深呼吸をする。

すると、一部始終を何処かで見ていたのかラファール達が乗っている車両が遠方からサーニャのもとに向かってきて、サーニャの近くに止まる。

 

「サーニャ!」

 

助手席からラファールが飛び出すように降り、サーニャに駆け寄る。

 

「サーニャが全部やったの...?」

 

ラファールがドロップアイテムと化した車両のパーツと先ほどのプレイヤーが落としたと思われる、装備を見て言った。

 

「うん。」

 

「あぁ...ホント見かけによらず大胆なことするよねサーニャって...。」

 

「うーん、何かこう"倒したい"って思ったら体が勝手に動いちゃって...。ごめん...。」

 

「いや、改めてサーニャが強いって実感したよ!」

 

「GGOを始めて数週間でこの強さだ、やっぱりサーニャがあっちで送ってきた生活のおかげなんだろう。ほらサーニャ、忘れ物だ。」

 

運転席から降りてきたスコッチが、サーニャが飛び出していった際に車内に置いていったAKを片手でサーニャの方へ投げ、サーニャはそれを両手でキャッチする。

 

「サーニャお前の強さは本物だ、それを実感した。改めてだが、今後共よろしく頼む。」

 

スコッチがサーニャに握手を求め、サーニャはそれに応える。

 

「ありがとう。」

 

「ふーんスコッチ、ナンパ?」

 

間に入るラファールが言う。

 

「違うわ!」

 

その後、ラファールはちゃっかりとHMMWVの残骸からドロップアイテムのパーツ類とプレイヤーの落とした装備を回収し、サーニャ達の車両に設けられたアイテムストレージにしまう。

 

「それじゃあ帰ろっか。もうリアルじゃ12時回ってるよ...。」

 

「ラファール、明日もちゃんと学校来るよね?」

 

メニューウィンドウで現実世界の時間を確認していたラファールに顔を覗かせサーニャが言う。

 

「うっ...アップデートのせいでこんなにも学校に行きたくなくなるなんて...!」

 

ラファールが肩を落とす。

 

「学生は勉学が第一だぞ。」

 

「うるさい、八百屋のおじさん。」

 

「おじさん言うな!...っていうかラファールがなんでそれ知ってるんだよ!?」

 

「...。」

 

サーニャが顔を逸らす。

 

「サーニャお前...。」

 

「私達が学生って言うの知ってるんだし、私が知っててもいいでしょ別に!」

 

三人は再び車に乗り込みラファールを運転手に、アルフレッドの店まで向かった。

しかし、2人は忘れていた。ラファールに運転させると駄目なことを。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!!!」

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