ガンゲイル・オンライン:Apex of Gunfighters 作:EoEo.
▼今回から第二章、大会編が始まります。
▼かなり日を分けて書いていたため、誤字やミスが有るかもしれませんがその際は
後日修正していきますのであしからず。
▼更新が遅れてしまいましたが、今後とも宜しくお願いします。
OPS 11:アイランド・ブレイク
夏休みを前日に控え、世間では旅行などの計画で胸を躍らせている人々がいるが、今日もGGOではいつもの様にプレイヤーで溢れかえる。
そんな中、サーニャ達はスコードロン専用ルームでのんびりとしていた。
「あぁー夏休みなんて先の話と思ってたけど、もう明日からなのよねぇ~...」
バーの様に装飾が施された専用ルームのヘキサゴンカウンターに突っ伏して、少量入った飲み物と、ロックアイスが入ったグラスを揺らす。ロックアイスがグラスにぶつかり、音を奏でる。
「酔ったのか、ラファール?」
と、スコッチが言う。
カウンターにはハットとポンチョ、その他ここでは必要のない装備一式を解除したスコッチがグラスを磨いていた。
「酔う訳無いでしょ、オレンジジュースなんだから。」
身体はカウンターの机に突っ伏したまま、顔だけを動かしてスコッチの方を見てそう言うラファール。手に持たれたグラスの縁にはカットオレンジが添えてある。
「実は香り付けにブランデーを...。」
カウンターの中の脇においてあるブランデーの小さなボトルを指差してスコッチが言う。
「えっ...?!」
カウンターに突っ伏していたラファールがさっと起き上がり、手に持っているグラスとスコッチを交互に見る。
「冗談だ、 未成年に酒は飲ませないさ。」
「はぁ...まったく...。」
再びラファールはカウンターに突っ伏す。
ラファールとスコッチがカウンターで話しをしている中、部屋の中央に背の低い横長のダイニングテーブルとそれを囲う様に設置されたソファにサーニャとその向かいにピエージェが腰掛け、サーニャは銃の手入れをしていた。
「あの、サーニャさん...。」
「うん?」
サーニャが丁度銃の手入れを一段落させたと同時にピエージェが話を切り出した。
「俺、実は今回の大会楽しみなのもあるんですけど、ちょっと不安で...。」
「どうして?」
「自分は銃がほとんど使えないので、足手まといになるんじゃないかと...。」
「そんなこと気にしなくてもいいよ。」
「分かっては居るんですけど...。」
「君が出来ないことを、私達がする。私達が出来ないことを君がすればいい。」
「は、はぁ...。」
「明日はよろしくね、"ピー君"。」
「へっ...?ピー...?」
ピエージェは急にそう呼ばれたため、少し困惑したがサーニャは何事もなかったかのように次の銃の手入れを始めていた。
そしてゆっくりと時間は過ぎ、1日が終わり夏休み初日が始める。
- SBCグロッケン 総督府 地下20階 待機ロビー-
- 午前 11:30 -
エレベーターを使って総督府地下20階へと降りる。
サーニャ達以外にこのエレベーターに乗っているプレイヤーはおらず、談笑しながらエレベーターに乗っている。未だにスコッチとピエージェの仲は良いとはあまり言い難いが、4人とも大会への緊張はそこまで無いように見える。
あっという間に地下20階に着き、扉が開かれると今までに感じたことの無い異様な空気にさらされた。開会式が行われる総督府の地下20階に設けられた待機ロビーにサーニャ達は向かうと、開始30分前ではあるがそこにはかなりの数のプレイヤーがごった返しており、今回の大会のことなどを話し合っているプレイヤーが見受けられる。
エレベーターの近くにいた何名かのプレイヤーはサーニャ達を睨む様に何かを探っているようだがサーニャはそれを気にせず、もしくは気づいてないのか足を運んでいく。
「こんなにたくさん。」
とサーニャは辺りを見回しながら言った。
サーニャはGGOの中でこれほどの数のプレイヤーが一箇所に集まっているのを今までに見たことが無く、驚いていた。
何とか空いているテーブルスペースを見つけ、腰をかけ一息つく。
「BoBの時ですらこんなにいなかったわね...予選が特に無いから初心者プレイヤーも気軽に参加出来るからかしら。」
「ん?ラファール、BoBに参加したことあるのか?」
スコッチが聞く。
「予選落ちだけどね~、1年前くらいだけど。」
何度か開催されているBoB(バレットオブバレッツ)ではブロック別に予選があり、各ブロックの一位、二位が決勝に進むことが出来る。対して今回行われる大会では、人数制限は有るものの予選は無かった。
「という事は、いろんな人がいるわけだ。」
「サーニャ、楽しみ?」
「うん。」
すると、ロビーのモニターに"各参加者に番号を配布する"との文字が流れた。
モニターに文字が流れた後、一斉に参加者へ数字がランダムに送られ、ウィンドウとして表示された。
「"80"...数字から見るにかなりの参加者ね、これ...。」
「100人位は参加してるってことだよね。」
ラファールやサーニャの言うとおりスコッチやピエージェのウィンドウにも100番台の数字が表示された。
総督府の一階ロビーに入れる人数は決まっているため、更に上の階などにその他の参加者を振り分けられているようだ。
全参加者に番号が配布された後、モニターには"これより参加者全員を待機エリアへ転送します。"との文字が流れた。直後ロビーに居るプレイヤーは青い光に包まれ、サーニャ達も同じく光の中に消えていった。
- GGO内 スタンバイルーム -
「真っ暗。」
一番最初に転送が完了したサーニャが言う。
すぐに3人とも到着したが、転送された場所は一面暗闇で4人がいる箇所だけ不自然に明かりが点っているスペースだった。
「おい、左腕になんか付いてるぞ。」
スコッチがそう言い、各自が左腕を見る。
左腕には時計のような、デバイスが付いており現在の時刻を示していた。
すると、ゲーム内のアナウンスが流れ、女性の声で話し始めた。
『プレイヤーの皆さんの腕に装着されているのは、本大会で使用する時計型ホログラフィックデバイスです。』
「ホログラフィックデバイス?」
『はい。』
「返事した。」
アナウンスの音声はサーニャの声に対してリアクションを返してきた、ゲーム内のCPUと同じAIシステムだ。
『マップや、その他情報をそちらのデバイスで見ることが出来ます。文字盤を押してみてください。』
そう言われ、ボタンも何も付いていない時計のようなデバイスの文字盤に軽く触れる。するとサーニャ達の足元に大きく立体的なマップが映し出された。
サーニャ達4人の位置は白くマークされ、その映像に触れることも出来、いろいろな角度からマップを見ることも可能だ。再びタッチするとそのマップはばらばらになり、デバイスに吸い込まれるように消えていった。
「なるほど、これは便利。」
『銃やその他アイテムと違ってそちらの端末は壊れることが無いイモータルオブジェクトですのでご安心を。さて、今回の大会のルールですが。』
一拍置かず、アナウンスは大会のルール説明を始める。
「そうそう、それ大事よね。」
「そういえばまだ、ルールというルール知らされてなかったな。」
『大会自体は大会用に用意された島、"
「結構ハードだなぁ...おい。」
スコッチが愚痴をこぼす。
『制限時間よりも先に1スコードロンを残して全滅すればもっと早く終る可能性もあります。』
「もし全滅しなかったら?」
サーニャが聞く。
『サドンデス形式で島のとある場所に転送され、決着を付けていただきます。もしそのような事になる際は運営の方からアナウンスさせていただきますのでそれは後ほど』
「弾とかの補充とか出来ないんですか?長い時間戦ってれば弾薬とか消耗品が無くなると思うんですけど...。」
ピエージェが聞く。
『定期的に、輸送機が上空から物資を島の何処かにいくつか投下させます。車両等はプレイヤーが持っているものは使用できませんが、島の各所に放置されている物を使用することが出来ます。』
「スコードロン同士で奪い合いの戦闘になりますね...。」
『プレイヤーはマップにスコードロンごとバラバラに配置されます。開始直後の各スコードロン間の距離は離れておりますがBoB、SJほど遠くはありません。』
「開始後直ぐに戦闘も、ありえるわけね。」
『可能性的にはあり得ます。最後まで1人でも行き残ったスコードロンが勝利です。」
「あ、そうそう今回もBoBとかSJみたいにスパイ衛星とかあるの?」
他の大会ではスパイ衛星という何分かに1回、上空をスパイ衛星が通過し全プレイヤーの位置を端末に表示する、というものがあった。
『はいもちろん、今回は30分に1回上空を飛行し、各スコードロンの位置情報データをプレイヤーへ送信します。』
「なるほど。」
『それでは他のスコードロンの方達にも説明が終わったようなのでカウントダウンをさせていただきます。』
そう言うとサーニャ達の前に120秒後開始のカウントダウンを示すウィンドウが現れた。
「さぁて、このメンバーで戦闘するのは始めてだけど他のスコードロンを倒して優勝するわよ!」
「無茶だとは思うが...まぁ無駄に死ぬよりそれなりに戦ってから死にたいものだな。」
「銃は使えませんが...足を引っ張らないように頑張ります...!」
「どんな人と戦えるか楽しみ、絶対勝とうね。」
『それでは転送します、"アイランドブレイク"開始。ご武運を。』
カウントは3.2.1と進み、4人は再び青白い光に包まれた。
- ISLアーネスト -
何もない空間に突如青白い光が輝き、転送されてきた4人のアバターが無数のポリゴンから成形され形になる。
「全員物陰に...!」
4人は同時に転送が完了し、ラファールの掛け声ととも近くの腰ほどの高さの壁に身体を隠し、張り付く。
「よしっ、皆無事に転送完了したみたいね。」
全員が壁に居ることを確認し、ラファールは「ふぅ...」と息を吐いた。
「ピエージェ君、現在位置教えてもらえる?」
「了解です!」
ピエージェは転送前に説明された端末を操作すると、空間上に大きくマップが
表示された。
「うわっ、広いなぁ...。と言うか少し涼しいような寒いような。」
マップを開いたピエージェが言う。
表示されたマップは縮小表示されており、約200km²の島全体が映し出され、島の見て呉れは常夏のリゾート地ではあるが異常気象という設定のおかげか夏とは思えない気温であった。
「歩いて全部回るのは大変そう。」
コッキンングレバーを引いて初弾を装填、ピエージェの開いたマップを横目にそういう。
「とりあえず自分たちが居るのはここ、ISLアーネストの北東にある島です。」
縮尺表示されたマップの右上の少しばかり小さな島にサーニャ達がいることを示す白い表示がされており、そこに触れると拡大表示されより詳細を知ることが出来た。
ISLアーネストの本島から北東、橋を挟んだ先にある高級ホテルやプール、ビーチがあり、その島のホテルとビーチの間に湖に浮かぶ円形のレストランにサーニャたちは居た。
「見た目はいかにも南の島って感じ...、現実世界で来てみたいわねぇ...もちろん夏に。」
「これからどうします...?」
「うーん...多分こっちの島がそれだけの広さがあるとすると私達以外にも、もう1、2組ぐらい居るでしょうね。」
ラファールも自分の端末からマップを開き、序盤の行動を練っている。
「とりあえずここに留まっていても仕方がない。まずはそこらに放置されてる車両を...。」
スコッチがそう言い、身を隠していた壁から立ち上がると銃声とともにスコッチの鼻先を銃弾が霞め、向かいにあったカウンターに穴を開けた。
「スコッチ伏せて!」
サーニャが立ち上がったスコッチの腕を引っ張り、壁に再び引き込む。
「すまないサーニャ...。」
「まだ始まったばかりなのに...! どこからか分かる?」
ラファールがそう聞くと、サーニャは壁の端の方まで移動し壁の終わりから顔をのぞかせる。サーニャが顔を出して2秒ほどたって弾道予測線が射手から伸び、サーニャのほうに再び弾丸が飛んできた。
「向こうのホテルから狙撃して来てる。」
「二手に分かれるわ!、ピエージェ君とスコッチはここでスナイパーの目を引いてて!私とサーニャはホテルに近づくから、もし何かあったら無線で連絡して!」
ラファールはそう言うと自身のホルスターから二丁のグロック18を取り出す。
「相手も一人だけってことはないから十分注意して!行くよサーニャ!」
サーニャに呼びかけ、カウンターから出て行こうとするラファールにスコッチが
「言っておくがリーダーはお前だ!死ぬなよ?!」
「任せておきなさい!」
スコッチはラファールの返答を聞くとストレージから"
それを背にサーニャとラファールは、ホテルへと走りだす。
*1 "ISLアーネスト"
今回の大会の舞台、SBCグロックケンから遠い面積約20km²ほどの南の島。
ホテルやレジャー施設などが有り、観光客で賑わっていたが今では異常気象と文明崩壊により島全体が廃墟と化している。
サーニャ達が転送されたのはISLアーネストから橋を挟んで北東にある別の小さな島で、そこには高級ホテルの跡地と美しい砂浜、ビーチがある。
*2 "ウィンチェスターM1886"
ウィンチェスターM1886のベースとなった"ウィンチェスターM1873"はレバーアクションで有名な、西部開拓時代もといアメリカを代表する名ライフル。「西部を征服した銃」と呼ばれる。ウィンチェスター社初の銃である"M1866"に様々な改良を加えたもので、西部開拓民が先住民と戦う際に多く使用された。制式名がM1873で口径が同じであることから、コルト SAAの相棒ともいわれる。スコッチが使用するウィンチェスターM1886は内部構造の見直しによって、フル規格の45-70ライフル弾他、強装の50-110ウィンチェスター弾まで使用できる。