ガンゲイル・オンライン:Apex of Gunfighters   作:EoEo.

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▼ご無沙汰しております。約1年ぶりの更新です。

▼武器や大会の設定が1年前と少し変わっているところがございますので、以前見てくれていただいた方は、恐縮ですが前回の話も踏まえてご覧になっていただけたら幸いです。


OPS 12:ファーストコンタクト

- ISLアーネスト ホテル上層階-

 

 

 

青い海、白い雲、キラキラと眩く浜辺、誰もがバカンスを楽しむであろうこの島では

不釣り合い過ぎる程、銃声が鳴り響いている。

 

「馬鹿!撃つなって言っただろ!」

 

「2人しか見えなかったんだよ!」

 

リゾートアイランドには場違いな格好をした二人組の男が、ホテルの最上階付近で何やら揉め事をしている。

 

片方はヘルメット、もう片方はニットキャップを被り、二人共々ドイツ系の装備を身に纏っている。メインの武器はヘルメットを被っている男が"G36A2"(*1)、ニットキャップを被っている男が"ブレーザーR93 Tactical2"(*2)を装備し、ニットキャップの男がスナイパーということが伺える。

 

「おいっ!二人が走り始めたぞ!撃て撃て!」

 

ヘルメットの男がそう言ってスナイパーの男を急かすと、物陰から走っていった2人のプレイヤーに射撃する。

が、初弾を外したためバレットラインが見えているのか上手く当たらない。

 

「さっき頭出してたのはあいつらか?」

 

「いや、今走ってったのは女の子二人だ。俺が最初に撃ったのは髭の生えた男だったぞ。」

 

スナイパーの男が言った矢先、狙撃していたテラスの壁に数発弾が着弾した。どうやら相手が位置を特定して反撃した様だ。二人は慌てて身を屈めながら部屋へ避難する。

 

「くっそ!位置バレてんじゃねぇか!結局敵は何人だ!?」

 

「4人だ4人!」

 

「じゃあお前は位置を変えて再度狙撃しろ!俺は走ってった二人を探す!」

 

「了解了解!」

 

二人は作戦を立てると、慌しく部屋を出て別れた。

 

 

 

- ISLアーネスト ホテル外 -

 

 

 

二手に別れたサーニャとラファールは、開始早々狙撃をしてきたスコードロンを倒そうとしている。

リスポーン地点のレストランから敵からの狙撃を避け、ホテル側に走り込み、サーニャとラファールはホテルの裏口と思われる扉の前に張り付いた。

 

「ふぅ…なんとかホテルまでたどり着いたわね…。」

 

そうラファールは言うと、一呼吸置いてリスポーン地点で別れたスコッチとピエージェに通話用アイテムで連絡を取る。

 

「こっちはホテルにたどり着いたわよ、そっちは大丈夫?」

 

『あぁなんとかな…!いま狙撃が止んだから俺たちも別の場所に移動してる所だ。』

 

サーニャの耳に装着された通話用アイテムからも同じく声が聞こえる。スコッチは続けた。

 

『こっちで確認出来たのは2人だけだが、他にまだ居るかもしれない。気をつけろよ!』

 

「そっちもね、じゃ!…よしっ。」

 

「向こうも大丈夫そうだね。」

 

「だといいんだけど…じゃあ私達も行こっか!」

 

「うん」

 

サーニャとラファールは早速扉の前に。

ラファールが指で3、2、1…とカウントダウン。サーニャはAKの安全装置を

解除し、合図でラファールが扉を開けるとサーニャが先行して入り、左右を確認。

 

「クリア、ラファール入ってきていいよ。」

 

扉の後で待機していたラファールを呼ぶ。

右側にはホールの様な開けた場所、左にはエレベーター。

どうやらここはロビーと各フロアへ行けるエレベータを結ぶ通路のようだ。

 

「どうする?」

 

リスポーン地点から移動していた時、上から狙撃してきたプレイヤーの他にもう一人居たのはスコッチからの無線で把握済み。狙撃が止んだという事は、サーニャ達の位置がバレて位置を変えたか、下から攻めてくる事を察して迎え撃つ為に下に来ているか…

そんな事をサーニャが考えていると、左のエレベーターから「チン」という音がした。サーニャが気づいた時には扉が開きかかり、プレイヤーの姿を確認した。

 

「ラファール!」

 

「えっ…!?」

 

ラファールを連れて近くの柱に隠れ様としたが、間一髪間に合わず、目視された。

 

『げっ!もうここまで来てんのかよ!』

 

柱に逃げ込むと後ろから相手プレイヤーの声が聞こえ、同時にこちらに対して弾を撃ち込んできた。

 

「ラファール撃たれた?」

 

「ううん、大丈夫。エレベーターで降りてくるなんて大胆ね…!」

 

一瞬弾幕が止み、隙有りとサーニャも柱の陰から応戦しようと試みたが、エレベーターの扉は静かに閉まっていた。

エレベータの前まで歩いて行くも、すでにエレベーターは動き出し、エレベーターの階を示す数字が上へと進んでいた。

 

「また上の階に行ったみたい。」

 

エレベーターの現在位置を知らせるランプは25階で止まった。

 

「私達もエレベーターで後を追うよ!」

 

このホテルは25階(屋上を含め26階)もある大きなホテルで、階段を使うとなるといくらゲームでも体力が持たない。

私たちは先程のプレイヤーが乗っていたエレベーターとは別の右側にあるエレベーターに乗り込む。

 

「あの人は25階で降りたから、私達はその一つ下、24階で降りよう。」

 

「おっけーい!」

 

何故一つ下の階に降りるのか、それは屋上を除いた25階で降りた場合待ち伏せされ、扉が開いた瞬間にグレネードでも投げられたら堪ったものではないからだ。

また、25階より上の階を押し降りようとしても直前で25階のボタンを相手プレイヤーに押されたら結果は同じである。恰好の的にならずに済むには24階から進む方が安全なのだ。

 

エレベーターはぐんぐんと上り、24階のランプが点滅すると"チン”という音と共に扉が開く。

各部屋へ行く通路はスーツケースや衣類、ペットボトルなど物が散乱しており、海辺とは一転世紀末、廃墟的な感じが漂っている。

 

「じゃあ、行こうか。」

 

ラファールに声を掛け、サーニャは24階の部屋をクリアリングしてゆく。

隈なく、そして素早く正確に一つの部屋を終えて行く。

ラファールも辺りを警戒しながら進んでいるが、サーニャの動きに感心してチラチラとサーニャの方を見ていた。

幾つか部屋を見回し終わって2406番客室に入った時、サーニャはある事に気づいた。

 

「ここからの景色…。」

 

「どうしたの?」

 

ラファールが後から声をかけ、近づいてくる。

 

「わぁ!すっごい綺麗!」

 

眼下に広がる青い海と晴天の空、その境界がはっきりと分かる。

ここが戦場だと忘れるほどである。

実際、ラファールは忘れているのか目をキラキラと輝かしながら景色を楽しんでいる。

 

「確かに綺麗なんだけど…ほら、あそこ。」

 

我に返るラファールは、サーニャが指差した場所を確認する。

 

「うん?あっ、私達がスポーンしたレストラン?」

 

そこは丁度サーニャ達が居たホテルのバルコニーから1時の方向にスポーンしたレストランが見えた。

 

「狙撃されてるときに私が見たスナイパーの位置と、今私達の居るこの部屋がぴったり一致するんだ。」

 

サーニャがそう言うと、二人の耳に付けた通話用アイテムからノイズ音と共にスコッチの声が聞こえた。

 

『そろそろ一回目の偵察衛星の時間だぞ。』

 

スコッチの言葉で、ホログラフィックデバイスの腕時計を見るラファール。

時計は午前 12:29を指し、残り30秒足らずで衛星が通過する。

 

「ありがとう、今何処に居るの?」

 

『ラファール達が入った所と正反対の入り口だ、距離はあるがそっちに向かう。』

 

『僕はスコッチさんと別行動で、少し離れた位置からホテル全体を監視しています。24階のテラスに居るサーニャさんとラファールさん以外見えないですし、屋上にも人影はありません。」

 

「オッケー、二人共気をつけて。」

 

「ラファール、衛星来るよ。」

 

サーニャはスコッチとピエージェの無線を聞いて、ホログラフィックデバイスのマップを開いていた。

ホログラフィックが島全体を映し出し、サーニャの操作で彼女達の居る島の北側のホテル周辺を表示させる。

電子音のアラームが腕時計から発せられ偵察衛星通過が開始される。現状サーニャ達と相手のスコードロンの位置が表示される筈だが、ホテルの周辺にはプレイヤーが居るマーカーが一つしかなかった。ちなみにスコッチたちの位置が表示されていないのは、マーカーはスコードロンのリーダーの位置しか表示されないからだ。

 

「私達しか居ないよ…?」

 

サーニャが言う。

 

「いや…ちょっと待って…。」

 

ラファールがホログラフィックに触れ、マーカーに触れると"サーニャ達スコードロン名"(*3)のポップアップと同時に、知らないスコードロン名"EAST BATTALION"のポップアップが重なって表示される。

 

「ねぇ、これって…。」

 

ラファールがそう言うと、サーニャはこくっと首を動かし肯定すると、天井を見上げる。

サーニャはスリングで体の前に垂らしていた銃を再び握ると、天井に向かってダダンッダダンッ!と連射し、それに続き今大会始まって初めてラファールも、自身のグロック18Cを放った。

偵察衛星からプレイヤーの位置情報が分かるというシステムは便利なものだが、高低差までは再現しきれない為、複数の階層がある建物内で別プレイヤー同士が別階層で重なっていると、マーカーもそれに伴い重ねて表示してしまう。

今回の場合、敵が一つ上の階にいる事は明白(ピエージェからの事前の無線で2つ上の屋上に人影が無い事は確認済み)だった為、サーニャ達は現在居る部屋の真上の部屋に敵が居る事に気付いたのだ。

 

『銃声がしたが大丈夫か…!?』

 

スコッチが銃声を聞いて慌てて無線を飛ばしてきた。

 

「私達の上の部屋に敵が居る、さっきの偵察衛星のマーカーでそれが分かったんだ。」

 

サーニャが撃ちながら答え、続ける。

 

「スコッチ、今のうちにエレベーターを使って屋上で待ち伏せしてて。」

 

『屋上…?まぁいい、分かった。』

 

スコッチにそう指示したあと、ラファールに

 

「階段を先に抑えるよ、付いてきて。」

 

と言った。

 

「う、うん分かった!」

 

射撃をやめて部屋から出た二人は、移動中にリロードをしつつ、一箇所しか無い階段へと向かった。

 

 

 

- ISLアーネスト ホテル25階 2506客室 -

 

 

 

「はぁ?逃げてきた?」

 

客室で装備を整えていたスナイパーの男が駆け足で入ってきた仲間のもう一人に

ため息まじりで言った。

 

「向こうは二人だぞ!オレ一人でどうにもできねぇだろ!」

 

「上に逃げたら袋のネズミじゃねぇか…どうすんだよ…」

 

「っ…最悪うまいこと隠れてやり過ごすしか無いだろ…それか通路で

挟み撃ちにして倒しちまえばいい」

 

逃げてきた男は、図星を指されるもそう言い返した。

 

「そう簡単に行くかよ…それにそろそろ衛星が来る時間だぞ?」

 

そう言ってスナイパーの男は上を指差す。

もう一方の男がホログラフィックデバイスの腕時計を確認すると残り数十秒で衛星が

上空を通過するのを示していた。

 

「丁度いい、衛星に気を取られてる間に逃げちまおうぜ!」

 

「馬鹿野郎、下手に出れるか!敵の位置を確認するのが妥当だ。あとお前もう少し声の

トーン下げろ!」

 

そんなやり取りをしていると、衛星通過が始まるアラームが鳴った。

表示されたマップには彼ら二人の居るはずの場所にしかマークが表示されていなかった。

 

「おい、俺たちしか居ねぇぞ…?」

 

「表示バグってんのか…?こんな時に…。」

 

スナイパーの男が、彼らのマーカーをタップすると詳細表示のポップアップが表示され

そこにはスコードロン名"SILVER BULLETS"(*3)の文字が出ていた。

 

「俺達のスコードロン名じゃねぇな…。」

 

「なぁおい、これってもしかして…。」

 

二人が顔を見合わせたその時、銃声とともに二人の間を弾丸がかすめた。

お互い尻餅をつきながら、部屋から出る。

 

「あいつら俺達の真下の部屋にいやがった!」

 

「表示が重なってたって事かクソっ!」

 

部屋から死に物狂いで脱出した彼らは偵察衛星から送られてきた敵の位置情報マーカー

が一つしか表示されなかった意味を今理解した。

 

「階段だ!階段へ急げ!」

 

二人は25階の通路を全速力で走り、階段へと向かう。

しかし下りの階段を一歩踏み込んだ時、目の前に先程1階で出会った敵プレイヤーである

二人と鉢合わせしてしまった。

 

「あっ…。」

 

『あっ。』

 

敵プレイヤーの二人はすでに24階から階段で25階へと上がってこようとしていた。

 

「やっべぇ!」

 

彼らは素早く方向転換し上へと登る階段へ駆ける。

 

『待ちなさいこらぁ!』

 

声からして女性であろう敵側のプレイヤーが怒号を散らしつつ後ろから

追いかけてくる。

 

「上へ行っても逃げられないぞ...!どうすんだ!?」

 

息を切らしつつ階段を駆け上がりながらスナイパーの男が言った。

 

「最悪屋上で迎え撃つ…!」

 

階段を勢い良く駆け上がると、屋上へと通じる鉄扉が見えた。

二人は一気に登りきり、ドアノブを回すと同時に体当たりするかの如く扉を開け、閉まると

同時に外から鍵をかけた。

一息ついたと同時に、ドアの向かい数十メートル先にエレベーターがあるのを確認する。

 

「あれだ!あれで一気に下に降りるぞ!」

 

二人は嬉々としてエレベーターの方へと向かおうとすると、チンッとエレベーターの方から音が鳴った。

エレベーターの扉がゆっくりと開くと、中には二人が開始早々仕留めようとした髭を生やしたカウボーイ姿の男が一人立っていた。

 

『あぁ、ぴったり到着ってところか。お前達二人だけか?』

 

カウボーイの男はそう言いながら一歩ずつゆっくりとエレベーターから出てくる。

 

「あぁそうだよ、クソったれっ!」

 

二人は手持ちの銃を構え撃とうとするが、トリガーに指をかけるすんでの所でカウボーイの男から1、2発の銃声がした。直後、足と手の力がとたんに抜け、二人の手元にあった筈の銃がガシャンと金属音を立て地面に落ちた。

 

「ぐッ…!」

 

ガクッと二人は膝をつく。

二人の手元、丁度手首のあたりと膝を撃たれ、その箇所から赤いダメージエフェクトがキラキラと光っている。

 

 

『なぁ、敵さんをほぼ無力化したんだが俺でトドメを刺してもかまわないか?』

 

カウボーイの男は他の味方と連絡を取っている様で、耳元に装着された通話デバイスから微かに誰かの声が漏れている。

 

<<…って…は…よね…>>

 

通信デバイスからは微かに女性の声だと聞き取れる音声が二人の耳に届き、先程二人が

階段で出会った女性プレイヤーのどちらかと予想がついた。

 

「ハッ…お前そんなカウボーイみたいな小洒落た格好しといて、女とつるんでるのかよ…!」

 

スナイパーの男はカウボーイの男に向かって挑発する。

男は視線を挑発したカウボーイの男に向ける、そこには屈強な男でも後ずさりするのではないかと思わせる程冷酷な目つきをしていた。

 

「…っ!?」

 

挑発したスナイパーの男が息を飲むと同時に、二回小刻みに銃声が鳴る。

それと同時に挑発したスナイパーの男は倒れ込み、頭上には死亡した事を示す

DEADマークが表示されていた。

もう一人の男は気付いた、一つはこのカウボーイの男が只者ではない事に。

先程1、2発の銃声しかしなかったが、単純に"聞こえなかった"のだ。彼は人が聞き分けられる

音の速さよりも早く4発の弾丸を放ち、彼らの手首と膝に命中させていた。

そして残りの2発の弾で挑発したスナイパーの男の頭部を貫いた。GGOでは一発でも生身の頭部(特に脳組織)に命中すれば死亡判定だが、この男は情け容赦なく1発多くオーバーキルをしていたのだ。

 

<<ちょ…だ指示は…!>>

 

『ああすまん。無力化した筈だったんだがな、抵抗されて仕方なかった。』

 

カウボーイの男はそう言いながら跪いた男を尻目にリボルバー

"シングルアクションアーミー"の排莢を行う。

 

<<…よ…こっていれば…さして…>>

 

もう一人の男には、通信デバイスからは十分な音声は聞き取れなかったが。

これから何をされるのかはその会話から十分に取れていた。

カウボーイの男は排莢が終わり、銃弾を一発だけ装填する。

 

「悪かった!、降参(リザイン)す…」

 

『だ、そうだ。』

 

懇願する男の声を遮る様に、カウボーイの男は銃口を向ける。

 

『"お姫様"達から許可が出たんでな、ここでさようならだ。』

 

カウボーイの男は貼り付けた様な、目だけ笑っていない笑顔を男に向けるとトリガーに指を掛けた。

 

 

 

- ISLアーネスト ホテル屋上 -

 

 

 

サーニャはホルスターからストライクワンを抜き、鍵の掛かったドアノブ目掛けて数発打ち込み蹴破る様に開けた。鉄扉が勢い良く開きサーニャはそのままハンドガンを構え屋上へと到着し、その後ろに少し息を切らせながらラファールが続いて入っていく。

入ってすぐに二人の目についたのはごろりと無残にも床に転がっているプレイヤーが二人。頭上にはDEADマーカーが煌々と表示されている。

その近くでは銃を回転(スピニング)させ、ホルスターに銃を収め終わったスコッチの姿があった。

 

「おぉ、お姫様方のご登場だ。」

 

二人に気づいたスコッチは調子の良い笑みを向けると、これまた調子の良い台詞を発する。

 

「なによそれ。こっちはアンタが危なっかしいから急いで駆けつけたってのに!」

 

「ん?俺がいつ危なっかしい事をしたんだ?」

 

「さっきの無線の事よ!抵抗されたとか言ってたでしょ!」

 

「ああ、なんだ心配していくれたのか?可愛い所もあるんだなぁ。」

 

「っはあぁ!?だーれが心配なんか、初っ端で戦力を失くすのは勿体無いからよっ!」

 

翻弄されているラファールと、良い様に弄んでいるスコッチを尻目に、サーニャは転がっている二人のプレイヤーを調べていた。

 

「…。」

 

片方のプレイヤーに視線を向けると、弾痕が頭部に二つある事に気づく。

無線では抵抗されたからと言っていたが、それにしては狙いが正確である。

まして一発当たれば倒したとシステム上で気付く筈がなのだが、どうした事か正確に二発撃ち込んでいるのだ。

 

「なるほど…。」

 

サーニャが思索に耽っている後ろでは未だきゃいきゃいと言っているラファールと、まるで幼子をあやすかの様に頭を撫でくり回すスコッチのやり取りが続いていた。

途端、スコッチが目の色を変えるや否や

 

「サーニャ、隠れろ!」

 

と。声を荒げて言う。

刹那、ドスッと鈍い音が聞こえた。

サーニャはとっさに伏せたが、よく見るとスコッチは近くに居たラファールに覆い被さっていた。

 

「うぐ…っ」

 

スコッチからは小さくではあるが低く呻き声を発していた。

どこから狙撃されたのか定かでは無いが、一つ分かる事としては弾丸はスコッチの丁度右肩を貫いていた。

 

「いたたたた…っ?!スコッチ!?」

 

スコッチが覆いかぶさった事が功をなしたのか、ラファールは負傷を免れていた。

 

「悪い…ケガは無いか?」

 

「ケガは無いかじゃないわよ!あなた、私を庇って…!ダメージは!?大丈夫なの!?」

 

ラファールが正体不明の狙撃から狼狽している中、サーニャは先程の敵プレイヤーの亡骸の側に落ちているスナイパーライフルに手を伸ばすと

 

「二人共、そのままで。」

 

未だ狼狽えているラファールと負傷したスコッチに声を投げ掛ける。

そう言った最中敵からの第二射が放たれ、これはホテルの壁に命中したようだ。

こちらに撃ってきてはいるが射撃音が聞こえない、これはサプレッサーの影響であろう。

しかし二射目の狙撃の場合、バレット・ラインが見えるはずなのだが見えなかった。

 

「何処…。」

 

数十分前のスパイ衛星の際、サーニャ達の付近には倒した二人組のマーカー以外は一切写っていなかった。

サーニャの眼が緑色に光り、スコープは覗かず、視力強化スキル"ホークアイ"(*4)の目視で見つけようとする。

すると遠方に何やらギラギラと反射する光が点滅していた。それはスコープの反射光で

サーニャはそれを見つけ、ピエージェに無線で連絡を入れた。

 

「ピーくん今何処?」

 

『これからホテルへ向かって合流しようと思ってます。』

 

単独でホテル周辺を見張っていたピエージェから返答が来る。

 

「ごめん、スコッチが狙撃で負傷しちゃった。」

 

『えっ!?サーニャさん達は?!』

 

「私達は大丈夫。ピーくん、今から教える場所を偵察して欲しいんだ。」

 

サーニャは極AGI型のピエージェに偵察を要請した。

 

『わ、分かりました!どうぞ!』

 

「私達の居るホテルから南方約800m位、私達の居るこのホテルよりも少し大きめのホテル。」

 

サーニャは光が発光。敵狙撃手のスコープレンズが反射していた位置をピエージェに伝えた。

 

『見えました!あれですね!』

 

「もし気付かれて攻撃されたら引いて構わないから」

 

『了解です!』

 

サーニャは無線を切ると、スコープを覗いてスコープレンズの反射に向かって躊躇なくトリガーを引く。

弾丸は逸れたが向こうもこちらに悟られた事に気付いたのか、移動を始めた。

 

「外した…。」

 

サーニャは拝借したブレイザーR93のボルトを引き排莢し、再びボルトを戻して次弾を装填するが、スコープから目を放しラファールとスコッチの方へと駆け寄る。

 

「大丈夫?」

 

ラファールとスコッチはサーニャがピエージェと連絡を取り合っている間に、ホテルの最上階階段前まで退避していた。

 

「あぁ、肩に当たったみたいだ。」

 

スコッチの言葉通り、肩に少し大きなヒットエフェクトがキラキラと赤く光っている。

 

「ごめんなさいスコッチ…私の不注意で…」

 

ラファールは肩を落とし、俯きながら言った。

 

「気にするな、なぁにちょっと痺れてる位すぐ元通りになるさ。」

 

スコッチはそう言うとラファールの肩をぽんと叩いた。

とは言え、利き手である右の肩を負傷している為、一定時間は射撃精度などの

ステータスにデバフ効果が働くのは確かであった。

 

「とりあえず今ピーくんに偵察に行ってもらったから、どんな敵かはそのうちわかると思うよ。」

 

 

 

- ISLアーネスト 南側ホテル -

 

 

 

ピエージェは先行してサーニャ達を狙撃したと思われるホテル近くの建物に到着していた。

先程ホテルからサーニャが撃った銃声以降、周囲一帯は静まり返っている。

耳元に装着した通信用アイテムにサーニャが連絡を送ってきた。

 

『そろそろスパイ衛星が来るよ。』

 

ピエージェは時計を見る、あと数十秒で2回目のスパイ衛星通過だ。

 

「そっちは大丈夫ですか?」

 

『うん、今の内にさっきスコッチが倒した敵から使えそうな弾薬とか整えておくから。ピーくんも気をつけて。』

 

「了解です!では。」

 

通話を切ると、腕時計型のホログラフィックデバイスを展開する。

展開すると同時に衛星が丁度のタイミングで通過した。サーニャ達を狙撃してきた

敵スコードロンは既にホテルを出て居る様だ。

幸い、チームリーダーであるラファールが先程のホテルに居る為、ピエージェの姿はマップにマークされない。

 

「もう移動してる…行動が早いな…。」

 

ピエージェもデバイスを閉じ、建物と建物を縫いながらホテルを大回りする。

ホテルの外周を回ってみると、地下駐車場へと続くゲートと広めの通路が見えた。

 

「さっきのマーカではここの筈だけど…。」

 

すると、地下駐車場ヘと続く通路の奥から車と思わしきエンジン音が聞こえてきた。

ピエージェが恐る恐る近づこうとすると、地下駐車場から猛スピードで車が出口に向かって走ってきた。

 

「やばっ!?」

 

車の形状はピックアップトラックで前に二人と後ろの荷台部分に4人の計6名が乗っている。敵側もピエージェに気づいたのか、荷台の4人が銃を構えピエージェに向かって発砲してくる。

ピエージェも棒立ちという訳とは行かず、持ち前の俊敏さで間一髪近くのコンクリート壁に身を隠し難を逃れた。

 

「サーニャさん達、聞こえますか?」

 

ピエージェはサーニャ達に連絡を送る。

 

『聞こえてるよ、敵見つけた?』

 

応答したのはサーニャだ。

 

「はい、でも見つかってしまって。敵は5人でした車を使って多分あの方角だと南側の本島の方に向かって行ったと思います。」

 

『了解、じゃあさっきのホテルの1階で落ち合おう。詳しい事はこっちに戻ったときに聞くね。』

 

「了解です!」

 

ピエージェは無線を切るとサーニャ達の居るホテルへと向かうのであった。




*1 "G36A2"
G36はドイツのH&K社が製造したアサルトライフルである。
フレームはプラスチックを多用して軽量化に努めている。また、マガジンも半透明のプラスチック製として残弾数を一目瞭然にし、ケースと一体成型のラッチを設けてクリップ無しにマガジン同士の連結を可能としている。
通常型であるG36(輸出モデルはG36E)の他、銃身を短くしたG36K(クルツ)、さらに短くしたG36C(コンパクト)、バイポッドを装備しドラムマガジンにも対応した軽機関銃版のMG36、スポーターモデルとしてアメリカの法規制に合わせたサムホールストックのSL8がある。
今回の敵である二人のうちの一人が通常型G36の改良型であるG36A2を使っていた。

*2 "ブレーザーR93 Tactical2"
ドイツのブレーザー社が1993年に開発した、狩猟用の直動式(ストレート プル)ボルトアクションライフル。
直動式ボルトアクションは、ボルトハンドルを手前に引くだけで次弾の装填ができるというもの。
ブレーザー社はスイスのシグ社の傘下に入ったことをきっかけに、それまで採用していた狩猟用の木製ストックではなく、アルミ合金のシャーシに、フォアエンドやバットストックを取り付けるというモジュール構造を採用。
競技スポーツ用としてLRS(Long Range Sporter)モデルがあり、今回敵側のニット帽を被った狙撃手が使っていたのは公的機関用としてフラッシュハイダーやバイポッドを装備したタクティカルモデル。

*3 "SILVER BULLETS"
サーニャ達のスコードロン名。
リーダーは一応ラファールなのだが、ざっとメンバーを並ばせると銀髪のサーニャが
一番目立つ為と、チームのマスコット的な意味でこの名前がつけられた。

*4 "視力強化スキル "ホークアイ" "
GGO内のスキル。
視力を強化するスキルで双眼鏡を使わずともある程度ズーム出来、また視界の
解像度が増し索敵がしやすくなるがスコープや双眼鏡との併用はできず、スコープや
双眼鏡ほど拡大されない。
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