ガンゲイル・オンライン:Apex of Gunfighters   作:EoEo.

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今話では主人公が日本に来るまでの物語となっています

まだVRMMOについては触れません、次回からです。


2017/06/20
ナレーションを三人称に統一+一部セリフを修正


第一章:Game Start
OPS 01:旅立ち -Fixed-


「敬礼!!」

 

凛とした声の女性教官の声とともに、その場に集った軍服姿の少女たちが背筋を伸ばし一同に敬礼をする。

 

「休め!!」

 

その言葉とともに手を背の後に下げ、しかし背筋はピンと張り、身動きひとつしない。

彼女達はモスクワ第9女子士官候補生寄宿幼年学校を今日限りで卒業する卒業生だ。

その中の一人、彼女の名前は"アレクサンドラ・チャイカ"彼女の同級の友人達からは"サーニャ"の愛称で呼ばれている。サーニャは11歳の時にここ、士官候補生幼年学校へ入学。普通の学生がする勉強に加え、その他に軍事戦略と射撃を含む軍事基礎を学び、女性士官の卵として教育されてきた。

 

「アレクサンドラ・チャイカ!」

 

彼女の名前を呼ばれた、サーニャはすぐさまその場から一歩踏み出し壇上へと歩みを進める。

すれ違う彼女の同級の者は真剣に前を向く者、涙を必死に堪える者、様々。

ここを卒業すると皆、陸軍大学に入学したりするのが一般的だが、彼女、サーニャはこの時既に心に決めていた。

 

"日本へ行く"と。

 

 

 

「じゃあサーニャは"日本(イポーニヤ)"に行くの?」

 

無事卒業式が終わり、サーニャは同級生と今後のことについて話をしていた。

 

「うん、まぁね」

 

サーニャは今日、同級の仲が良かった友人に日本に行くことを初めて打ち明けた。

 

「私やナターシャ、アンナは皆陸軍大学に進学するけど本当にそれでいいの?」

 

「1年前くらいから決めてたことだしね…お母さん死んじゃってから日本(イポーニヤ)に行ったこと無かったから。」

 

この学校に入学する者達は入学以前から成績優秀者の他に、親が居ない子や身寄りのない者が多い。サーニャも実はその中の一人である。

サーニャはロシア人でロシア語講師の父とその生徒であった日本人の母の元に生まれ幼少を日本で過ごした。

しかしサーニャが小学校に上がってすぐ病で母親が病死し、父親とサーニャはロシアへ帰国。そして数年後、今度はサーニャの父が不慮の事故で他界してしまう。

サーニャは父方の祖父母の家に預けられたが、幼いながらもサーニャは祖父母の迷惑にならないようにと幼年学校へ入学したのだった。

 

「まぁ、サーニャが決めたことだしなんとも言えないけど…勿体無いと思うけどなぁ」

 

「教官にも言われたよ、ここで学んだことをムダにするのか!ってね」

 

「だろうねぇ…」

 

日本(イポーニヤ)にこんなことわざがあるよ、『可愛い子には旅をさせよ』って」

 

「それ自分で言う!?」

 

そんな話をしながらサーニャとサーニャの友人達、そして同級生は共に過ごした幼年学校を後にした。

モスクワから電車に揺られ4時間、サーニャの祖父母の家、そして生まれ故郷のサンクトペテルブルクに帰って来た。

 

「6年ぶりかぁ…」

 

モスクワもそうであったが、サンクトペテルブルクもまだ雪が降り積もってる。

6年も経てば町並みも若干変わっていた、あったはずの店が無かったり無かったはずの

物が出来てたり、サーニャはそれが新鮮であって懐かしくも感じていた。

モスコーフスキー駅からタクシーでサーニャの祖父母の家に帰って来た。

 

「ただいまー」

 

サーニャが扉を開けると、懐かしい匂いがした。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「おかえりなさい、元気だったかい?」

 

最初に彼女を出迎えてくれたのはサーニャの祖母だった。

 

「うん、おばあちゃんは?」

 

「私はいつでも元気だよ、それにサーニャの顔が見れたんだ、ますます元気さ」

 

彼女の祖母はニッコリと笑う、サーニャが6年ぶりに見た顔だ。

 

「あれ、おじいちゃんは?」

 

「あぁ、爺さんは暖炉に使う薪を採りに行ったよ」

 

「それはまぁ元気なことで…」

 

「さぁさぁ、せっかく帰って来たんだお入り!」

 

久しぶりの家、やはりサーニャはここが一番落ち着く。

 

「それで、サーニャはどうするんだいこれから、この間電話で日本(イポーニヤ)に行くって言っていたけど。」

 

サーニャがソファーに座った途端、話を切り出してきた。サーニャは祖父母には事前に電話でそのことを話していた。

 

「うん、みんなと一緒に陸軍大学に進学するのもいいんだけど、やっぱり私諦めきれなくて…」

 

「そうかい、まぁサーニャが決めたことさ、間違ってないないと私は思うよ。」

 

「おばあちゃん…」

 

「ワシも婆さんと同意見だよ」

 

サーニャが後ろを振り向くと、薪を持ったサーニャの祖父が立っていた。

 

「あら、お帰りなさい。サーニャはさっき着いたばっかりだよ」

 

「そうかそうか、おかえりサーニャ」

 

「うん、ただいま」

 

「よし、じゃあサーニャも帰って来たし今日はごちそうだねぇ!」

 

「ありがとう、手伝うよ」

 

当たり前のようなやりとりでも、6年間寮に泊まりこみだったサーニャには懐かしく、幸せな気持ちであった。

 

「今週中にはここを出るよ」

 

食事の席でサーニャは祖父母に話した。

 

「そうかい、じゃあそろそろサーシャに渡す時かねぇ…」

 

「?」

 

サーニャの祖父がすっと席を立ち、部屋の隅の引き出しから一枚の封筒を取り出した。

 

「それは?」

 

「これはサーニャ、お父さんと日本(イポーニヤ)のお母さんが残したお金だよ」

 

「えっ…」

 

「自分達に何かあった時のためにと、二人がサーニャのために貯めていたものだよ、これを向こうに持って行き」

 

サーニャが両手でその封筒を取ると、ずしりと来る重さだった。

 

「で、でもおじいちゃんやおばあちゃん達は…」

 

「ワシらはもう老いぼれだ、できることとすればサーニャ、お前が幸せに生きて行けるように見守るだけさ」

 

サーニャの祖父がそう言うと隣りにいるサーニャの祖母もうんうんと頷いている。

 

「おじいちゃん、おばあちゃん...」

 

自然とサーニャの目から涙がこぼれていた、彼女が父親を亡くした時も彼女の祖父母は暖かく迎えてくれた。

サーニャは、「二人に恩返しは出来ただろうか?いや、私が幸せに生きることが二人への恩返しなのだろう」と心の中でそう思っていた。

3日後、スーツケースとバッグに荷物を詰め彼女は祖父母の家を後にした。

祖父母は笑顔で見送ってくれたが、どこか少し寂しそうな顔をしていた。

サンクトペテルブルクから電車に乗り、モスクワのドモジェドヴォ空港から日本への

直行便の飛行機にサーニャは乗り込む。離陸するとサーニャは瞬く間に故郷が遠くなった気がした。

サーニャは日本で暮らすにあたって、日本の高校2年生から留学として卒業まで学ぶことになった。

書類関係は彼女の祖父の友人、元仕事仲間などの手助けを借り、彼女が住む家までも手配済みという、手の回し様。サーニャは少し祖父の人脈について恐怖を覚えたのだった。

モスクワから離陸して10時間半ほど、日本の成田空港に到着。

サーニャはそのまま高速バスとタクシーを使って約3時間、彼女が住む家がある街に着いた。

 

「真っすぐ行って…路地を曲がって…ここ…?」

 

メモに書かれた地図を頼りに進むと、目の前には平屋の家が佇んでいた。

 

「い、一軒家…」

 

サーニャはてっきりアパートだと思っていた為に、開いた口が塞がらない。

新居の前で立ち尽くしていると、隣の家の扉が開き男性がこちらを見るやいなや小走りで近寄ってきた。

 

「あぁ!君がサーニャちゃんだね、おじいさんから聞いているよ~、一人で暮らすんだって?

大変だけど、困った事があったらいつでもいってね~」

 

彼はそう言うと、来た道を戻り始めてしまった。

 

「あのっ…!貴方は…?」

 

「ん?あぁ~、ごめんごめんつい同じ出身の人が近くに引っ越して来るっていうんで

テンション上がっちゃって…うん、僕は君が暮らすこの家の大家のセルゲイって言うんだ、よろしくね」

 

「同じ出身ということは貴方も…」

 

「そうだよ~、僕も産まれはロシアのサンクトペテルブルクさ!」

 

「あぁ…えっと祖父とはどういう…?」

 

「ん、あぁ、君のおじいさんとは僕が学生時代の担任でね、僕は今ロシアからこっちに

移り住んできた人達に家を提供する仕事をしてるんだ」

 

サーニャの祖父は昔、教師をしていた。

 

「大切な孫がそっちで暮らすから家を提供してくれないかって言われてね、丁度ここが空いてたってたって訳! あっ、ちなみに2年分のお金はもう貰ってるから好きにして

くれちゃっていいよ~!、もっとも、2年分にしては多すぎるくらいだけどね!」

 

「あはは…どうも…」

 

サーニャの祖父、恐るべし。

 

「じゃあ、困ったことがあったら何でも言ってね!」

 

「あっ、はい、ありがとうございます…」

 

こうして、彼女の一人暮らしが始まったのだ。




というわけで第1話でした。

まだVRMMOについては触れていませんが、次回から入るかと思います。

それでは。

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