ガンゲイル・オンライン:Apex of Gunfighters   作:EoEo.

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2017/07/08
ナレーションを三人称に統一+一部セリフを修正


OPS 02:ログイン -Fixed-

- 自宅 玄関 -

 

 

 

「行ってきます。」

 

サーニャは玄関先で誰もいない居間に向かってそう言う。

もちろん返事は帰ってこない、なんとなく彼女が言いたかっただけだ。

今日はサーニャが高校へ行く日である。制服やノート、教科書も揃え準備は万端だ。

 

「戸締まり良し、っと」

 

鍵をかけ、家を出る。

 

「おっ、おはよう!今日から学校かい?」

 

隣に住む大家のセルゲイが、自宅の前を掃き掃除していた。

 

「おはようございます。はい今日からです」

 

「そっかそっか、気をつけてねー」

 

「はい、ありがとうございます」

 

お辞儀をして、駅へ歩き始める。

サーニャが通う学校へは最寄りの駅から二駅、そこからバスで最寄りのバス停まで行き、徒歩で5分。通学時間は大体1時間位である。

何度かサーニャが通う高校の学生と思わしき人々に電車やバスでひそひそと彼女のことについて話している声が聞こえた。

ハーフといえど日本の高校の制服を着た見慣れぬ女子が居たらそれは当然でもある。

そんなこともありながら、無事学校へ到着。

 

 

 

- 都内某中高一貫校 校内 -

 

 

 

「今日からお世話になる、アレクサンドラ・チャイカです。」

 

職員室へ挨拶に来た。

 

「おぉ君か!慣れない環境で分からないこともたくさん有るだろうけど

 

先生や生徒の皆に何でも言ってくださいね」

 

彼女が通う高校の学校長がサーニャに挨拶をする。

 

「はい、ありがとうございます。」

 

「それにしても、日本語が上手だねぇ、勉強したのかい?」

 

「いえ、以前日本で暮らしていたことがあったので」

 

「なるほど、アレクサンドラさんでいいのかな?」

 

「いえ、一応日本語名も持っているんです。牧宮沙羅(まきみや さら)って言います。」

 

ロシア名だと色々と不便なため、幼少の頃日本で使っていた日本名を使おうとサーニャは考えていた。

"牧宮"は母方の苗字から、"沙羅"はアレク"サ"ンド"ラ"から取って付けられたものである。

 

「沙羅さんだね、いい名前だ」

 

サーニャが学校長と話していると、1時間目を知らせるチャイムが鳴った。

 

「おっと、それじゃあ頑張ってね」

 

学校長との話を終え、担任教師の後について行き自分のクラスのドアの前に着く。

 

「じゃあ、呼んだら入ってきてくださいね」

 

「はい」

 

担任の先生は扉を開け、たぶんいつもの様に朝の会を開始した。

 

「じゃあ、入ってきていいよー」

 

担任教師の合図が飛んできた。

扉に手をかけ、ゆっくりと開ける。教室の全員がサーニャを見つめる。

 

「かわいい…」

 

「かわいい…」

 

「かわいい…」

 

「かわいい…」

 

小さくではあるが教室内の数人が同じことを言っていた。

 

「じゃあ自己紹介お願いできるかな?」

 

「はい」

 

ふりかえると黒板、のような濃い緑のボードが壁に立てかけられていた。

 

「えーっと…」

 

「あっ、使い方わからない?」

 

「はい、すみません…」

 

「ごめんね、これを使って書くんだ」

 

渡されたのはチョークに似せて作られたタッチペンのようなもの。

幼年学校に限らずロシアではまだこういった機材が入ってる学校は少ない。

なにせ仮想世界、VR技術がロシアに入って来たのもほんの数年ほど前位だ。

サーニャはぎこちなくではあるがなんとか名前を書き終えた。

 

「ロシアから来ましたアレクサンドラ・チャイカと言います。日本とロシアのハーフです。あっちではサーニャって呼ばれてました。日本名の牧宮 沙羅って名前もあるので呼びやすい方で呼んでください」

 

拍手が教室に鳴り響く。

 

「じゃあ薪宮さんは真ん中の列の一番奥の席が空いてるからそこに座ってね。」

 

「はい」

 

クラスメイトの席の横を通り過ぎる度に視線を感じる。

自分の席に座り、サーニャは一息ついた。

初日はクラスメイトから質問の嵐だった。ロシアの事はもちろんロシアに居た時の学校のことについても聞かれた。

彼女はごまかした。

普通の学校に通っていたと。幼年学校のことを話すと異色な目で見られると思ったからである。

そんな事もあってサーニャの学校生活一日目は終わった。

 

 

 

- ゲームショップ "ゲーマニア" 店内 -

 

 

 

日本に来て数日が経ち、サーニャは日本での学校生活にも少しばかり馴染めてきたようであった。

実はサーニャが日本に来て始めたのは高校生活だけではない。

彼女の家の最寄り駅前にあるゲームショップがアルバイト募集をしていたのでサーニャは軽い気持ちで応募した所、見事通ってしまった。

店長いわく「可愛い女の子が入ってくれればお客さんがいっぱい来てくれる。」とかなんとか。

 

「じゃあサーニャちゃん上がっていいよー」

 

「りょうか…、はい…」

 

時間は夜の10時、サーニャは学校が終わってからこの時間までアルバイトをしていた。

そして彼女はアルバイト中に気になる本を見つけた。

それは"月刊VRMMO GAMES"という本、店にはゲームだけではなくそういった情報雑誌も

販売しているのだが彼女自身、幼年学校に居たこともあって持ち運べる古い携帯ゲーム機は何回か遊んだことはあるが、VRMMOゲームといったものに触れたことがないのだった。そもそも"MMO"とは何なのか、それすらサーニャには分からなかった。

 

「店長さん、この本買います。」

 

雑誌を手に取り、レジへ。

 

「あれ、そう言えばサーニャちゃんってVRMMOゲームやったこと無いんだっけ?」

 

「はい、全然…」

 

「この雑誌いろいろVRMMOゲームの事書いてあるから、興味湧くんじゃないかな?あっ、お金は従業員価格で安くしておくね!」

 

「はい、ありがとうございます。ではおつかれさまでした」

 

雑誌を購入して家路につく。

 

「ただいま。」

 

もちろん返事は帰ってこない。

シャワーを浴びて、夕飯を作り、食べる。

 

「そういえばこっちに来て"あの"袋開けてないんだっけ。」

 

"あの"袋、とはサーニャが幼年学校にいた時に使っていた制服や道具が入ったものである。サーニャは日本に来てから押入れに閉まったままであった。

 

「えっとたしかここに...あった」

 

中を開けると制服が最初に目に入った。

 

「まぁ、もう着ないかな…」

 

次に卒業勲章。

 

「これは飾っておこう」

 

そして一番下に大きな円形状のものがあった。

 

「これは…」

 

バイザーのような形をした器具。

 

「確かVR訓練の時に使ってた…アム…アニュ…何だったっけ」

 

ふと、時計を見ると既に1時を回っていた。

 

「あっ、もうこんな時間。明日はアルバイト無いし、制服とかは明日帰ってきてからアイロンがけしよう。」

 

制服とバイザーのような器具を袋につめ、電気を消し彼女はそのまま寝てしまった。

 

 

 

- 都内某中高一貫校 2-C教室 -

 

 

 

「じゃあ授業終わり、課題来週までに提出ねー」

 

翌日、普段通り学校に行き休み時間。

 

「あれ?」

 

サーニャはふとバックを見ると、昨日買った雑誌がバックに入れっぱなしなことに気付いた。

 

「うーん、まぁ丁度休み時間だし読もうかな。」

 

表紙には新発売または発表したばかりのゲームタイトルが載っており、そのゲーム内スクリーンショットが掲載されていた。

サーニャがページを捲るとファンタジー系のゲームだろうか、羽が生えた妖精のような

キャラクターが飛んでいる。アルヴヘイムオンライン、通称ALOというゲーム名である。

また次のページを開くと、今度は銃を使ったゲーム。

ゲーム内通貨還元システムと言うものが存在し、ゲーム内でプレイヤーが稼いだ金銭を

現実の実際の金銭に還元でき、一部の上級者は月に約20~30万円稼ぐ強者もいる様だ。

 

「牧宮さん」

 

「はい?」

 

ふと、雑誌越しに声をかけられた。

 

「ゲーム、好きなの?」

 

「え?あぁ、いや、私VRMMOゲームってやったこと無くて…」

 

「そうなんだ!、雑誌読んでるからついVRMMOプレイヤーかと思っちゃったよ」

 

「えっと貴女は確か…」

 

「あっ、私は一ノ瀬 詩子(いちのせ ともこ)です!まだ名前覚えられない?」

 

「うん、ごめん…」

 

「あぁ、いいよいいよ!私なんて特に覚えづらい名前だからね、ってGGOが載ってる!」

 

話しかけてきた彼女はその本に乗っている一つのゲームタイトルに気づくとサーニャの隣にやってきて雑誌を覗き込む。

 

「知ってるの?」

 

「知ってるも何も私このゲームのプレイヤーだもん!」

 

意外や意外、入学間も無い頃の紹介でクラス委員をやっているとサーニャは聞いていたが、見た目は失礼ではあるが眼鏡以外の特にこれと言った特徴がなかった為、サーニャも名前を覚えることができなかった。

 

「なんか敷居高そうだと思ったよこのゲーム…」

 

「まぁ一部のプレイヤーが自分の生活をかけて死に物狂いでプレイしてるってだけで、そこまでじゃないんだけどなぁ、あぁ…こうやって書くからGGOのプレイヤーが増えないのよ…!」

 

彼女は拳をぐっと握りしめて力説する。

 

「あはは…」

 

「ところで牧宮さん。」

 

「?」

 

彼女はサーニャの両肩を手で鷲掴みにし。

 

「すごい唐突なんだけど、このGGO一緒にやらない!?」

 

「えっ…!?」

 

「大丈夫!私がちゃんと、手取り足取り色々教えてあげるから!」

 

「えっと…私まだゲーム機も持ってないし、確かあれ10万円くらいするよね…流石に手が出せないなぁって…」

 

「まぁそうだよねぇ…VRマシンはナーブギアの時よりも安くはなっているけど、それでもまだゲーム機としては手が届きづらい価格だもんねぇ...」

 

"ナーブギア"、その言葉はサーニャも聞いたことがあった。

数年前に初めて作られたVRゲーム機、発売後すぐに1万台以上売り上げたがゲーム機本体と同時発売であった"ソードアートオンライン"、通称"SAO"にログインした者はゲーム内に閉じ込められ、そしてゲーム内で死亡した場合は現実世界のプレイヤー自身が本当に死亡するという前代未聞の事件が起きたことを。

丁度サーニャは幼年学校に居た際、食堂にあったテレビでニュースになったのを見ていた。

 

「今発売してるVRゲーム機、えっと…」

 

「アミュスフィア?」

 

「そう、それはあのナーブギアみたいにはならないの?」

 

「心配ご無用、安全装置も付いてるし脳に送る電磁パルスの出力はナーブギアより大幅に弱められて、脳の破壊は物理的に不可能になってるからね。」

 

サーニャのアルバイト先でも販売していて大丈夫と分かってはいるが、改めて彼女はホッとしていた。そして、それと同時にサーニャはあることに気づく。

 

「もうひとつ聞いても良い?」

 

「うん、何?」

 

「アミュスフィアってどんな形してるの?」

 

「うーん、この雑誌に載ってないかな?今は色々なメーカーが出してて一概にこの形とは言えないけど、基本形でレクト社が出してるのは…あった、これこれ」

 

サーニャも他の形は見たことが有る、アルバイト先のゲームショップで売られているからだ。しかし彼女が指さしたのは別の場所で見た、というよりも昨日見たばかりであった。

 

「私…これ持ってる…」

 

「えっ、持ってるの!?でもこれ初期型だよ?」

 

「うん、確かにある」

 

「ゲームやったこと無いんだよね…?」

 

「ゲームはやったこと無いけど…」

 

幼年学校で使っていた事を言うと先日ごまかしたのが水の泡である。

 

「あっそっか、ゲーム以外にもリラクゼーションとか医療用でもアミュスフィアは使えるんだっけ、私ゲームしか頭になかったから、ごめんごめん!」

 

運良く気付かれずに済んだ。

 

「じゃあ後はソフトだけだね!」

 

「えっ、ま、まぁ...」

 

サーニャは一方的に流されている様である。いや流されてる。

 

「今日放課後時間ある?」

 

「う、うん今日はアルバイト入れてないし大丈夫だけど…?」

 

「じゃあ私の行きつけのお店に一緒に行って見てみましょう!」

 

「えっ、あぁ…」

 

休み時間終了、次の授業開始のチャイムが鳴る

 

「じゃあ、後でね!」

 

彼女はささっと、自分の席に戻ってしまった。

 

「い、イメージとぜんぜん違うなぁあの子…」

 

 

 

- 都内某所 駅前 -

 

 

 

放課後、サーニャはクラスメイトの詩子とお店に行くことなった。

 

「ここ、私の行きつけのお店!」

 

「えっと、ここは…」

 

道すじからしてサーニャは嫌な予感はしていた、案の定サーニャのアルバイト先であった。

 

「いらっしゃいませ!ってあれ、サーニャちゃん?今日はお休みなんじゃ?」

 

入口近くの棚で作業していた店長が気づく。

 

「店長さんこんにちは!」

 

「あれ!?詩子ちゃん!サーニャちゃんと知り合い?」

 

「知り合いも何も同じクラスですよ!」

 

「ふ、二人とも知り合い…?」

 

「詩子ちゃんはこの店の常連さんでね、GGOを買ったと思ったらもうあんなに強くなっちゃって、この街じゃたぶんナンバーワンプレイヤーだよ!」

 

「店長さんそれは言いすぎですよー」

 

「っと、で、今日はなにかお探しかな?」

 

「はい、牧宮さん、サーニャさんにGGOを始めて貰いたくてソフトを探しに!」

 

「えっ、サーニャちゃんがGGO!?」

 

店長はサーニャが今まで見た以上にびっくりしたような顔をしている。

 

「い、いや、まだ私はまだ一言も...」

 

「うちの店からまた女の子GGOプレイヤーが出るなんて!うちにもMMOトゥデイの取材が来るのもそう遠くないねぇ…」

 

「またまた大げさなー、それで、GGOのソフトあります?」

 

「そりゃあもう、売れ残った在庫が沢山だよ…」

 

「お値段は?」

 

「在庫処分しないとだからね…、元々7000円だったのが4000円になってるよ。」

 

「4000円かぁ...どうする?」

 

「どうするって...えっ?」

 

サーニャに二人の鋭い期待の眼差しが刺さる。

 

「そうだ!サーニャちゃんが買うなら社員割引効かせるよ!そうだなぁ…特別に2900円かな!」

 

「あぁ安い!さぁ、買おう!一緒にやろう!」

 

「えぇぇぇ…」

 

「さぁ!」

 

「どうする!?」

 

「…」

 

 

 

- 都内某駅 改札前 -

 

 

 

「いやー、私嬉しいよ!一緒に出来る人が居てさ!」

 

サーニャの手にはお店の袋、押しに押され買ってしまった。

 

「でも買ったは良いけど、私やり方とか遊び方全然わからないよ…?」

 

「大丈夫大丈夫、アミュスフィアとの接続方法は説明書にも書いてあるしゲーム内では

 

私が教えてあげるから、ね?」

 

「う、うん…」

 

サーニャが日本に来てこんなに話したクラスメイトは初めてで、初めての友達もできてよかったのか、いや、ちがうそうじゃない。

 

「じゃ、私帰ったらログインしてスタート地点にいるから!」

 

詩子はサーニャの住む街の駅から更に1つ先に住んでいるため、サーニャは改札の前まで見送った。サーニャも家路につき、服を洗濯しシャワーを浴びて夕飯を済ませる。

 

「さて、と」

 

昨日押し入れにしまった袋を再び取り出す。

 

「アミュスフィア…」

 

幼年学校で教材として使っていた機器をVRMMOゲームで使用するとは彼女自身思っても見なかった。

購入したGGOのソフトをケースから取り出し、説明書通りに挿入する。

ネット回線は、サーニャの住む家に既に通っている為、ケーブルを差し込むだけで済んだ。

ベッドで横になりながらプレイするのが推奨と書いてある為ベットへ行き、ゲーム開始方法の項目欄の最後に"ログインするには瞳を閉じ、リラックスしたまま心の中で「リンクスタート」と言ってください"と書かれていた。

サーニャはVR訓練を開始する時、この言葉を言っていたのを思い出した。

 

「まさかゲームをするためにこれをまた付けるなんて思わなかったな…」

 

アミュスフィア内側のモニターには左上に現在時刻21:00、右上には内蔵バッテリーの

充電容量が記されていた。

 

「じゃあ、早速…」

 

深呼吸をし、目を閉じて体をリラックスさせる。

 

『リンクスタート』

 

目を瞑っている筈であるのだが、ゲーム起動エフェクトが確かにサーニャの視界に流れた。

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