ガンゲイル・オンライン:Apex of Gunfighters 作:EoEo.
第0話:登場人物紹介のほうに書きましたので、ご確認ください。
詳しい表は、現在作成中ですのでしばらくお待ちください。
『あいつやられたのか、使えねぇ...』
近くで声が聞こえる。
どうやら私が倒した一人目に気づいたらしい。でも死体を見たわけでもないのに一体どうやって...。
「スナイパーは後回しで先に彼を無力化しよう...。」
リーダーということもあり、彼を先に倒せば指揮系統は崩れてスナイパーは孤立するはず。
ただ、倒す前に彼からスナイパーの場所を特定するための"協力"をしてもらおうと思う。
私はゆっくりと彼の背後から近づき、じりじりと距離をつめる。
ついに私と彼との距離は3m程にまでなっていた。
「動かないで。」
私はAKを彼に向けたまま言う。
「おっと...声からして女の子かな?」
「こちらからの質問以外は喋らないで。」
「ふーん...初心者の格好してる割に銃とガッツだけは良い見たいだねぇ~。」
男が首をひねり、こちらを見る。
「向こうを向いてて、撃つよ。」
「はいはい...、それで質問って何かな?」
「仲間のスナイパーの人、今どこにいるか貴方知ってる?」
「さぁ?、ばらばらに行動してるからねぇ...、それにもし知ってたとしても君に教えると思うかい?」
彼はあっ、と気づいた様に再びこちらに顔を向ける。
「そっかぁ~君が俺の腕を撃ったんだねぇ...。」
「そうだよ、友達が襲われてたからね。」
「友達...、あぁあの子ね~君に撃たれてなかったら殺せたのになぁ...」
「っ...それと私がもう一人の人を倒したこと、何であなた気づいたの?。」
「くはははははっ。」
男が笑う。
「何がおかしいの?。」
「これはたまげた、本当に根っからの初心者とはねぇ、左上見てごらん君のお友達の名前とHPが書いてるだろう?」
男が言うとおり、左上に目をやるとラファールのHPが表示されており、稲妻のようなマークがHPバーの横についていた。
「なるほど、これを見てたわけだね。」
「そうだよ〜、んじゃあ用件は済んだかな?終わりにしよっか。」
男が上げていた手を下げる。
「まだ手を...っ?!」
ふと、彼の後ろでキラキラと小さく光るものがあった。とっさに私は近くにあったコンクリートブロックの壁に飛び込んだ。その時、先ほどいた場所の後方の壁に無かったはずの穴が出来ていた。思ったとおりさっきの光はスナイパーライフルのスコープが反射した光だった。
「君、運がよかったな!」
仲間のスナイパーに助けられた彼は距離を取り、身を潜めた。
「ゲームだから死の恐れが無いってわけだ...ソードアート・オンラインなら通用したかな...。」
そんなことを思いつつ、AKを持ち直し壁から半身を出す。発砲音とともに弾が側面の壁に当たり破片が飛び散る。
「ほらほら~出て来~い!!」
彼は私を釘付けにしたいらしく、弾をばら撒いてくる。このまま動かないとスナイパーに回り込まれる...。
私はポーチに入れていたスモークグレネードを手に取り、ピンを抜き、彼とスナイパーがいる方へ投げた。壁に当たって地面に落ちたスモークグレネードは瞬く間に煙を炊き始めた。
「いま...っ」
私は飛び出し、反対側まで走る。
しかし、彼は煙のかすかな隙間に見える私の動きに気付いたのか、こちらに向けてタイミングよく発砲し、弾は私の左太もも、左肩に命中した。
そのまま、奥の壁にもたれかかり呼吸を整える。
「現実だったら動けないよこれじゃ...。」
改めてゲームで良かったと痛感した。
「さて、こっちもそろそろ打って出ないと...。」
とりあえず、立ち止まっていても相手に囲まれるため動き回ることにする。動き回るといってもコソコソするのではなく、ただ闇雲に。
「それにしても何で一番最初のカウンタースナイプの時は向こうからレーザーが出たのにさっきは出なかったんだろう...それにあのレーザー、発射数と同じ数だけ出て弾道と同じカーブを描いていたような...。」
私が敵の狙撃主のスナイパーライフルに装備されたレーザーサイトと思っていたものはたぶん別の...バレットサークルのようなゲーム的演出なのだろうか...。
「もしも本当にあのレーザーみたいなのが、弾が飛んでくる"弾道を予測するための線"だとしたら...。」
そう思った途端、目の前100mほど先に彼が銃を構え飛び出してきた。
「ゲームセット~!!!」
私に5つの赤いレーザーが伸びる。
「今...っ!」
私は5つの、赤いそのレーザーに沿うようにバレットサークルを合わせ、5発発砲する。
火薬の燃焼によって発生した高圧ガスの炸裂音とエジェクションポートが前後する金属音が鳴り響き、私と彼の銃から放たれた弾丸は互いの弾丸にぶつかり合い砕け散る。しかし、最後の一発だけは私の狙いが甘かったのか私が放った弾が彼の銃弾をかすめる形となりその衝撃で弾道が反れ、私の足元に着弾した。
「銃弾を撃ち落としたっっっ!?」
思いがけない行動に男がたじろぐ。
もちろん今、私が《現実世界》ではありえない事をしたのは自分が一番分かっている。しかし、この世界は《仮想世界》«ゲーム»であって、私が学んだ戦術や戦い方はほぼ役に立たないかもしれない。じゃあ逆に《現実世界》では出来ないことを出来るんじゃないかと、あの疾走中に思いついた結果がこれだった。
「何者だよあの子はッ!くそッッ!!」
すかさず彼は私に向かって銃を構えるが、もう私に向かって撃つ時間は目を瞬きする時間さえも残されて無かった。彼の数メーター手前で背中から滑り込みその際中ハンドガンに持ち替え、彼の頭に一発、胸に二発撃ちこみそのまま股をくぐり抜けた。
「くそがぁぁぁぁ!!!」
なんとか振り向き、片手でライフルを構え私に向けるが。
「"ゲームセット"だよ。」
すでにAKを構えていた私は、そのまま彼の頭に5.56mmの鉛の弾丸を命中させ、彼のアバターはそのままうつ伏せの状態で倒れこみ、DEADエフェクトと共に消滅した。
「リーダーの仇ッ!!!!」
息をつく暇もなく、背後からスナイパーの男が飛び出し私をスコープ越しに捕えていた。
「っ...!」
とっさに銃を構えようと思った矢先、私の頭上を何者かが飛び、マシンピストルの連射でそのスナイパーの男を倒してしまった。
「サーニャ!大丈夫?!」
彼を倒したのは、私が助けるはずだったラファールだった。
「もう麻痺は平気なの?」
私が聞くとラファールは、ぽかんと口をあけたままな顔をした。
「えっ...あ、う、うん、この通りピンピンだけど...私が麻痺してるときに狙撃で助けてくれたのもサーニャだよね...それに一人で二人も倒しちゃったの...?」
「そうだけど?」
「えっとね...私も改めて見て気付いたんだけど私が襲われてサーニャが戦ったさっきのスコードロン、名前が《トイフェル(Teufel)》ドイツ語で悪魔って意味で、腕は立つプレイヤーぞろいなんだけど狩場独占とか横槍PKとかハラスメント行為とかマナーが悪くて最近GGOのネット掲示板とかで名前がよく上がってるスコードロンなんだけど...」
「?」
「いろんなプレイヤーから恨まれてて、プレイヤーの間で懸賞金がかけられてるんだ。確か最高でもし倒したらメンバー1人辺り3メガクレジット、現実換算だと3万円って言われてる...。でも今まで倒した人居なくて...」
「私達が最初...ってこと?」
「う、うん...。」
ただ単純に私はラファールが襲われたから仕返し感覚で戦っていたのだけどまさかそんな事になって居たなんて...
「とりあえず、それを扱ってるNPCがいるから町まで戻ろっか。」
「うん。あっ、この人達のドロップした武器全部没収してアルフレッドさんの店に仕入れよう。」
「あはは...。」
というわけで敵の落としたドロップ品を回収し、私たちはグロッケンの都市の一角にある情報交換所にたどり着いた。建物に入ると他のプレイヤーが数十名ほど居て、お互いに話し合っている人達、これから戦いに行く人たちが準備をしていた。
「ここはNPCクエストはもちろんプレイヤーが依頼したクエストを他のプレイヤーが受注したり、その逆も出来るって場所なんだ。」
「へぇ...。」
その部屋の一角に、壁にかけられたボード一面に張り紙が張られたものがあった。
「えーっと...あーあったあったこれこれ。」
ラファールが一つの張り紙を指差す。
「"スコードロン 《トイフェル(Teufel)》のやつらを倒してほしい。やつらは3人組で特徴はリーダー格の男がG36K、仲間の一人がAR70/90、最後の男がスナイパーでレアなPGM.338を使ってる。やつらの銃がドロップした場合は倒したやつが持ってってもらってかまわない。メンバー一人につき3メガクレジットを支払う。よろしく頼む。"、なるほどね。」
「じゃあこれを張った依頼主にメッセージを飛ばして報告...」
「君たち、あいつらを倒してくれたのかい?」
唐突に後ろから声をかけられ、振り返ると一人の男性が立っていた。
「一応...そういうことになりますね。」
ラファールが返答する。
「そうかそうか!、いやぁよくやってくれた!」
「いえいえ...!そんな...。」
男性は大きな声で感謝の言葉をラファールに言い、両手で彼女の手を握り上下にぶんぶんと振った。もちろんその声は周りに居る他のプレイヤーにも聞こえ、周囲がざわめいていた。
「私の名前は"ハーミット(hermit)"。うちの仕事仲間でスコードロンを組んでGGOをやっていたんだが、ちょうど一ヶ月くらい前にやつらのスコードロン、《トイフェル》に襲われてしまったんだ。うちはモンスター狩りを目的に活動してるスコードロンだから光学銃しかなくて、やり返そうにも自分たちじゃ歯が立たないから他のプレイヤーに頼んだってわけなんだ、いやぁまさか君たちみたいな女の子が倒してしまうなんて驚きだよ!。」
『あの子達があの《トイフェル》を倒したのか...?』
『たった二人だけで...?』
彼、ハーミットさんの声が大きいため周りのプレイヤーにも筒抜けだった。
「一応スナイパーの人を倒したのが私で...こっちの子が残りの2人を倒したんですけど...。」
「ということは、リーダーの男ともう一人かい?すごいじゃないか!君はどれくらいGGOをプレイしているんだい?」
「今日で2日目です。」
彼が固まる。
「ふ、2日目...?じょ、冗談はよしてくれよ」
「それが本当なんですよねぇ...あはは...。」
彼の言葉にラファールが返す。
「たまげた...たった初めて2日目で倒すなんて...何か他のVRMMOでもやっていたのかい?」
「いいえ、ゲームはGGOが初めてです。」
私が答えると彼がラファールのほうを見る。
「本当です...。」
ラファールが答える。
「じ、じゃあ参考までにどうやって倒したか教えてくれないかな?」
「あ、そういえば私も聞いてなかった。サーニャ、一体2人をどうやって倒したの?」
「一人目は転がってた石を落として音でおびき寄せて、出てきたところを後ろからこの斧で倒したよ。」
ドロップした斧を見せた。
「あれ、その斧アルフレッドさんのお店で買ってたっけ?」
「ううん、あそこのモンスターを倒してたらドロップしたんだ。それで最後のリーダーの人は私も2発弾があたっちゃったけどその次にあの人が撃って来た弾は撃ち落として...」
「ちょっと待ってサーニャ、今私の聞き間違えかな、撃たれた弾を撃ち落してって聞こえたんだけど...。」
「うん、撃ち落した。それでそのまま近づいてスライディングであの人の頭に1発、胸に2発撃ち込んで、股を潜り抜けて後ろに回りこんでとどめに頭に一発撃ったって感じだよ?」
二人ともぽかーんとしていた。周りで聞いていた他のプレイヤーも同じ感じだった。
「この子本当に初心者だよね...。」
「はい...初心者です。」
「いつだか光剣で銃弾を切りながら戦っていた女の子以来だなぁこんな子は...いやぁやつらも倒してもらえたし面白い子にも出会えたし、私は満足だよ!じゃあこれ、約束の。」
そういうと彼はメニューウインドウを出し、何かを操作すると私とラファールの前に自動的にメニューウィンドウが表示された。
「お礼だ、スナイパーを倒してくれた君には3メガクレジット、残りの二人を倒してくれた彼女には6メガクレジットを渡すよ。今回はありがとう!」
「いえいえ...!こちらこそお役にたてて幸いです...!」
その後、彼と別れ情報交換所を後にする。
「銃弾を銃弾で撃ち落すなんて聞いたことないよサーニャ!一体どうやってやったの?」
アルフレッドさんのお店への帰り道、ラファールに聞かれる。
「うーん...銃口から赤いレーザーが見えてそれに合わせて銃弾を撃つ感じかな...?」
「赤いレーザーって《弾道予測線》かな?」
「《弾道予測線》?」
「うん、"守備的システム・アシスト""バレット・ライン"とも言うんだけど、自分に飛んでくる弾丸の線が薄赤い光の筋で表示されるんだ。これがサーニャの言った赤いレーザーの正体だよ。」
「でもそういえば、2回目にスナイパーに狙撃されたときその弾道予測線の赤いレーザーは出なかったよ?」
「それはね、敵に気づかれずに初弾を撃つときは弾道予測線は表示されないんだ。初弾を撃った後はまた弾道予測線は表示されるんだけど、初弾の後撃たずに60秒相手に見つからなければまた弾道予測線無しの弾を撃てるんだ。」
「なるほど。」
「にしても、よくあんな早い弾を撃ち落せたよね...SEN(五感)が高いとそういうことも出来るのかな、確か私よりも高かったよね。」
「STR(筋力)と同じ数値だよ。」
「うひゃ~...一体どんな経緯でそんなステータスになっちゃったんだか...。」
「...。」
そんな話をしてると、アルフレッドさんのお店に到着。
「さて、なんか今日はいろいろとあったけどサーニャ疲れてる?」
「うーん、そうでもないかな、でも初めての戦闘は楽しかったよ。」
「(やられた相手は初心者にやられて悔しいだろうなぁ...)そっかそっか、じゃあ今日はもう落ちよっか、また明日学校だし明日金曜日だから終われば土曜日、日曜日とGGO出来るよ!」
「私土曜日アルバイト朝から入ってるよ。」
「がーん...」
「また明日一緒にやろう。」
「うん、そうだね!明日学校で戦闘の話もっと詳しく聞かせてよね!」
「う...うん...。」
たった数時間だったけど、《現実世界》と《仮想世界》の違いを見せられ、それを学ぶ時間だった。
私はログアウトし、伸びをしてまたベッドに寝転がりいつの間にか寝ていた。