ガンゲイル・オンライン:Apex of Gunfighters 作:EoEo.
▼本文中ルビ"*"は、あとがきで詳しく紹介します。
▼登場人物が新たに増えましたので第0話:登場人物紹介が本話投稿と同時に
更新されております。合わせてどうぞ。
SBCグロッケンから西に行った一面赤土の砂漠の地域、そこに唯一ある小さな町。プレイヤーからは"ウェスタンタウン"と呼ばれているここは、アメリカ西部開拓時代を思わせる建物やなどが立ち並び、ゲーム設定上では"文明衰退でウェスタンタウンに二度目の開拓時代が来る"とか、ここに集まるプレイヤーもカウボーイや当時の保安官を模した格好でこの世界を楽しんでいるプレイヤーが数多い。その、ウェスタンタウンのとある一角にあるウェスタンサルーン風の酒場にテンガロンハットを被り長髪で顎髭を生やした一人の男が居た。
「マスター、いつもの。」
彼はもうそれが習慣になっていると言っても過言ではないと言った素振りで口にした。
「はいよ」
マスターと言われる彼もまた、そう答え、決まったものを出すというのが習慣となっているのであった。
店主はNPCではなく、プレイヤーで情報交換もできるということもあってこのサルーンはこの街で一番人気となっている。男が頼んだのはスコッチ・ウィスキーのストレート。
マスターがカウンター席にいるその男の前にグラスを置いた。
「なぁ、スコッチ、今日はちょっとおもしろい情報があるんだが...。」
"スコッチ"店主の男はウィスキーのことを指したわけではない。カウンター席に座るこの男の名が"スコッチ"なのだ。
客の男はかなりの常連で、店主の男とも付き合いが長い。
「なんだ?まーたお婆さんのお使いクエストとかじゃないだろうな?」
彼はついこの間、マスターに報酬の良いクエストを紹介する。と言う口実で騙され、NPCのお婆さんのお使い系クエストで散々に振り回されたのだった。
「いやいや、今回はちょっと違うんだ。これは他のお客から聞いた話なんだけどな、GGOで2人組の少女が暴れてるって話、お前さんは聞いたことないか?」
「2人組の少女?聞いたことないなぁ...なにせ"そっちの"趣味は無いからな。」
「バカタレ、真面目な話だ。なんでもその二人、かなりのプレイヤーを倒してるらしいぞ。」
「ほう...。」
「それでだ、かなりの懸賞金が掛かってる。たしか...。」
と、突然店の戸が乱暴に開かれ4人組の男たちがぞろぞろと入ってきた。
「スコッチとか言うクソ野郎を探してる!お前しらねぇか!?」
入り口に一番近い客に乱暴に聞く。
「マスター、話は後だ。」
ウィスキーの入ったグラスを一気に飲み干し、テーブルに置くと席を立った。
「クソ野郎のスコッチは俺だが?」
「テメェか、表出ろ!」
4人組男たちに囲まれて、スコッチは店の外にでる。
「用件は何だ、俺とデートでもしたいってか?悪いがそう言う趣味はないんだ。」
「へっ、そのふざけた口叩けるのも今のうちだぜ。テメェ、ウチんとこのスコードロンのメンバー一人、賞金首になってるやつをこの間殺したよなぁ?」
「あぁ、お前と一緒で口だけ達者のあの男か。」
「可愛い部下のために俺様が直接仕返しに来たってわけだ、もしここで土下座して詫びるってんなら命だけは保証してやるぜ?」
男はホルスターからレミントン社の
「御生憎様、お前に下げる頭は持ち合わせてないんでね。もしやるっていうなら...早撃ちで勝負はどうだ?」
「いいぜ、受けてやるよ。テメェの眉間に大穴開けてやるぜ。」
スコッチが腰のポーチから
「こいつが地面についたら開始だ、それでいいな。」
「上等だぜ。」
互いに距離を取る。
「準備はいいか?」
「いつでもいいぜ、すぐに終わりにしてやらぁ..。」
スコッチは弾を親指で弾き、すぐに自分のホルスターに手を添える。
弾かれた弾は空中で回転し、落下を始める。
サルーンの客や、周りの見物人も固唾を呑んで見守る。
そして、地面に弾が触れた瞬間。銃声はひとつ、決着はついた。
「なにっ...?!」
男が持っていたニューモデルアーミーは、シリンダーが粉々になり瞬く間に銃ごとエフェクトとともに消失した。
どうやらスコッチは、男自身を狙うのではなく銃本体の方を狙っていたようだ。
「クソがぁ!野郎どもアイツをぶっ殺せぇ!」
男が叫ぶと、取り巻きの3人が背中に持っていた
スコッチは撃ち終わるとガンスピンをさせ、シングルアクションアーミーを腰のホルスターに戻した。
「まだやるかい?」
スコッチは目の前の男に聞く。
「えぇぇい!覚えてやがれ!!!」
男はへっぴり腰でそそくさと逃げていった。
「ふぅ、さてと酒と話の続きだマスター。」
スコッチは再び店に入っていった。
・
・
・
・
・
・
日曜日、私は学校とアルバイトが休みのためお昼からGGOにログインしていた。
先日の戦いでスナイパーライフルを使っていた彼がドロップした
「サーニャ!カバー!」
「了解。」
私達は今、SBCグロッケンの西部外周ゲートを出て、そのまま北西に進んだ先にある廃墟都市の元地下鉄構内ダンジョンに潜っていた。
「ラファール、左から
「了解!」
このダンジョンには"ボス部屋"と呼ばれる部屋がなく、最深部になっている駅構内のホームに先陣が残していった塹壕でモンスターのラッシュを掻い潜ると言う設定だ。
「あと、50体...サーニャ全弾は?」
「ハンドガンラストマグ、残り17発。」
「こっちも66発でラストマグ...。」
このラッシュを終えれば、報酬としてレア武器が手に入るという。確率は低いらしいけど。
「私、塹壕の外で戦ってくる!」
「気をつけて、ラファール。」
ラスト50匹の戦闘、ラファールは自分のAGI(俊敏性)を活かせる外で戦うために塹壕から出る。
「できるだけ弾数を浮かせるために、頭を集中的に狙って...!」
AGI(俊敏性)型ならではのラン&ガン戦法でラファールは敵のビームサーベル、フォトンソードを綺麗によけつつ、次々と敵を撃ち倒す。
対する私は、一発一発を敵の頭部に命中させるよう正確に1体づつ倒していた。
「残り...2体...!」
ラファールはまさに"突風(Rafale)"のごとく目にも留まらぬ速さで数を減らし、ついにラストスパート。
「ラスト1体...!貰った...!」
最後のモンスターに銃口を向けようとしたが、彼女の持っているGlock18C、2丁のスライドが寸前に倒したモンスターへのとどめの弾で無常にもスライドストップしていた。
それを見ていた私も、救いの手を差し伸べようとしたが私のストライクワンも同じく弾を全弾撃ち切りスライドストップしていた。
「そんなっ...!」
ラスト1体のモンスターがフォトンソードを構え、ラファールに襲いかかる。
「ラファール...!!」
はっ、と私はとっさに腰に刺していた斧、Voodoo Hawkをラファールに襲いかかるモンスターめがけて投げた。斧はくるりくるりと前回りをしながら宙を飛び、モンスターの振りかざしたフォトンソードがラファールに当たる寸でのところで斧がモンスターの後頭部に刺さり、モンスターは倒れ消滅した。
「ふぅぅ...た、助かったよサーニャ...。」
安堵の表情で私の方を見るラファール。
「危なかったね...。」
パチンと私達はハイタッチをする。
しかし終了後のリザルト結果報告のウィンドウに目的のレア武器の名前はなかった。
・
・
・
「だぁぁぁ!、あんなに頑張ったのにレア武器でないなんて意味無いじゃん!!」
ダンジョンの帰り道、ラファールはレア武器がドロップしなかったことが相当悔しい様子。
「まぁまぁ、また補給して来ようよ。」
ここに来るために、普段より多めに弾薬を持ってきていたが、先ほどの戦闘ですべて使い切ってしまった。
「昨日の土曜日いれてもう今日で10回目だよ!本当に出るのかな、そのレア武器っていうやつ!」
「一体どんなレア武器なの?」
「えーっと...アルフレッドさんによるとモンスター達が使ってるフォトンソードと同系列の武器でGGO内のフォトンソードの中でも最強らしいよ?でもこのゲームでフォトンソード使う人って指で数えるくらいしか居ないんじゃないかな...そもそも居なかったりして...。」
「確かこの間、トイフェルメンバーを倒すプレイヤークエスト依頼主のハーミットさんが言ってた"フォトンソードで銃弾を切りながら戦っていた女の子"っていうのは?」
「あぁ~、私は直接見たわけじゃないんだけどちょっと前にそういう子が居たらしいね、急に現れたと思ったら誰も使わないフォトンソード"
「へぇ...。」
勿体無い、と私個人の意見ではあるがそう思った。
しかし実際、剣を使うとなるとその剣が届く距離まで銃弾を避ける、もしくは技量があるならラファールの言う、その彼女のように弾を切らなければならないわけで、もし囲まれてたりでもしたらすべての敵に対応はできない、もちろんそれは銃を持った場合でも言えることではあるけど。
それを考えると、やはりこのゲームで剣というものを使うのは厳しいのだろう。
「名前は確か"キリト(Kirito)"だったかな?まぁ本当に剣とか二刀流が使いたいならALOとかやってたほうがいいからねぇ...。」
「ふーん。」
「私はその子より、一緒に行動してた"シノン(Sinon)"っていう子のほうが気になるよ!」
「どうして?」
「私と同じでGlock 18Cを使ってて、メインウェポンはレア中のレア!スナイパーライフル"
「なるほど。」
地下鉄構内から階段を上がり、地上に出る。
「弾もないし、街の中は危険だから注意しながら帰ろっか」
「うん。」
と、そのとき物陰からガサッと音がした。
「誰っ!?」
ラファールが音のするほうにグロックを構える、もちろん弾は一発も入ってない。
「おーっと...見つかったか...。」
建物の影から出てきたのはメキシカンポンチョをなびかせた、西部劇に出てきそうな男が出てきた。
「怪しい者じゃあ無い...と言いたい所だが、まぁこんな状況じゃ無理だわなぁ」
無造作に伸ばしているであろう髪をくしゃくしゃとしながら彼はあまり敵意のない、それでいてただの通行人でした。なんて言い出す雰囲気ではない口振りで言った。
何はともあれ目の前にいる彼の目的を聞かなければ話にならない、そう判断した私はラファールよりも先に彼に問い掛けることにした。
「おじさん、私達に何か用?」
"おじさん"と言った所に反応した様で、おじさん、おじさんかぁ...そうだよなぁ...と、彼は顎髭を触りながら明らかに落胆した独り言をぽつぽつと呟いている。
「ゴホン...ッ用と言うほどではないが」
一つ咳払いをし、ばつが悪そうに話を切り出した彼を見て、隣にいたラファールは話を戻すのか...!なんて、変に関心しているのを私は見逃さなかった。
「最近、2人組の少女が暴れ回っていると聞いてね。丁度キミ達がその条件に合っていたもので、つい後をつけさせて貰ったんだ。」
"暴れ回っている"と聞き、そんなような、しかしそうでもないような...ここ数日起きた事が頭を巡る。ふと隣のラファールを見ると、彼女もまた同じ事を考えているのか何とも微妙な顔をしている。
「うーん...否定も出来ないし肯定も出来ない...」
「その二人組、懸賞金がかかっていてね。額は一人当たり10メガクレジット。」
「えぇ!?、一人に10メガクレジット!?」
その価格を聞いて、ラファールが声を出して驚いていた。
10メガクレジットといえば10,000,000クレジット現実換算で日本円にして10万円。
「私達にそんな大金がかかってるって事?」
「まぁ、そういうことになるな。そこで本題なんだが俺と決闘をしてくれないか?」
彼は自信ありげにこちらに返答を求めてきた。
「だとしてもあなた変わってるわね...わざわざ懸賞金が掛かってる二人を前にして普通に話しかけてきて"決闘してくれないか~"だもん。普通こそこそ後をつけるくらいなら後ろから撃っちゃえばいいのに。」
ラファールが男に言う。
「いやいや、俺はそう言う卑怯な手は使わない、堂々と戦いたいのさ。」
「ガンマンみたいな格好でよく言うわね...。」
「俺は"
「...?まぁ戦うならそれでもいいけど2対1でいいの?そうするとあなた、不利じゃない?」
ラファールが、私を見て彼に問う。
「ふむそうだなぁ、じゃあこうしよう1対1の決闘スタイルだ。よく西部劇で見るだろう?」
彼が自分のベルトに手を回す。
サーニャはそれが、武器を取り出すように見えたのか素早くホルスターに手をかける。
「あぁ、待て待て、コレだコレ」
取り出したのは、弾だった。薬莢部分が普通の弾よりも長いためリボルバー用弾丸だろう。
「こいつをお二人さんのどちらかが上に投げて、地面に落ちたところでもう一人と俺が互いを撃つ。といった感じでどうかな?」
指でその弾丸を摘むようにしてこちらに向ける。
「おっけー...じゃあ...」
「私がやるよ。」
私は彼女の言葉を遮るように答えた。
たぶん私が何も言わなかったらラファールが決闘を受けていたはず。
彼の"堂々と"というこの言葉に興味というか、このゲームをやっているプレイヤーでそういった事を言えるということは、やはりそれほどの自信があるということだろう。
「えっ...?!、ちょ...」
「任せて。」
それでもなお、食い下がるような目でこちらに訴えかけるラファールに向け、私はピースサインを送った。
「はぁ...任せたよサーニャ。」
私に何を言っても無駄だと悟ったのか呆れたような顔で、しかしそれ以上に、私に期待の眼差しを向けているようにも思えた。
私達のその一連のやり取りを見ていた彼は、くつくつと笑いながら私に聞く。
「決まりだな、一発で決着を着けるつもりだが見ていた所ダンジョン帰りだろう、残弾はあるかい?」
「ライフルもハンドガンも弾が切れてるんだ。予備の銃も無いけど。」
私がそう答えると、彼は左手で左のホルスターから銃を引き抜く。
ホルスターから抜かれたリボルバーはコルト社の"シングルアクションアーミー(SAA)"だった。
彼はそのまま左手を使い手慣れた手つきでガンスピンをさせると、軽く宙に投げ、右手に持ち替えると銃身を持ちグリップを私の方に向け、差し出した。
「ありがとう。」
その他、予備の右用ホルスターも借りた。
気軽く彼からSAAを借りたが、私はそのガンプレイを見て彼はこの銃を自分の物にしていると思った。
「じゃあ、やろうか。」
互いに、少し距離を起き睨み合う。
「じゃあ...行くよ?」
ラファールが私と彼に視線を送る。私も彼も、準備は整っていると目線を送る。
それに従い、ラファールは親指で弾を弾きあげる。
弾が落ちるまでのその時間が、ゆっくり動いているような気がした。
しかしその刹那、一番頂点まで上がった弾丸がどこからか飛んできた別の銃弾によって弾き飛ばされた。
「わっ...?!」
ラファールが思わず、顔を逸らす。
銃声がした方を向くと、馬に乗った10人ほどの集団がぞろぞろと、こちらにやってきた。
「あいつら...」
彼のその言葉からしてなにか、心あたりがある様子。
集団のリーダーと思わしき男が馬から降りて、こちらに歩いてきた。
「その決着、ちょっとまってもらうぜお嬢ちゃん達。」
口ひげを生やした小太りの男はニヤリとこちらを見た後、ガンマンの彼の方に改めて顔を戻す。
「よぉよぉ!!向こうの町で見ねぇと思ったらこんなところでお嬢ちゃん達と遊んでたのかぁ!?」
リーダーらしき男と、その回りにいる男たちはガンマンの彼に向かってゲラゲラと笑った。
「お前も暇だなぁ、この間やられたくせにまた性懲りもなく...。」
ガンマンの彼は呆れた顔でやれやれ、と首を振っている。
リーダーらしき男は笑うのをやめ、顔を真っ赤にさせながら声を荒らげた。
「うるせぇ!俺はテメェの事が気に入らねぇんだよ!」
男は腰のホルスターから銃を引き抜くとガンマンの彼に銃口を向ける。
「テメェに壊されたニューモデルアーミーから
S&W社製"Model 3"を.45 スコフィールド弾が使えるように改良されたリボルバーだ。それを見せびらかすように、ガンマンの彼に向ける。
「ハッ、あんたがアープの銃を持つなんてな、片腹痛いぜ。」
ガンマンの彼は男に指を指しながら、茶化した。
「テメェがふざけた口叩けるのも今日までだぜ、やっちまえ野郎ども!」
男が部下と思わしき周りのプレイヤーに呼びかける。
「キミさっきの銃、ちょっと返してもらっていいか?」
「もちろん。」
私が借りていたSAAを彼に投げ渡し、彼は左手でキャッチする。
「二人は隠れてな。」
ガンマンの彼は私達が弾切れしていることが分かっているためか、廃墟ビルの入口で隠れているようにと合図した。
集団の方は全員馬を降り、各自散らばるように展開する。
ガンマンの彼もさすがにこの人数は相手にしたことが無いのか、"骨が折れるぜ"と独り言をつぶやいていた。
彼は私が返したSAAをガンスピンさせ左手で回転させながら右のホルスターからもSAAを抜き、右手でもスピンをさせ、まずは一番近くにいるローリングブロックライフルを持った男二人にガンスピンをやめた2つのSAAで3発つづ弾を放つ。放たれた弾丸は二人の胸部に集中して命中し、倒した。すぐさま彼は前方へ駆け出し、弾を避けながら正面にいる
「あの人...強い...。」
私と一緒に隠れて居たラファールもその一部始終を見ていた。
先ほどまで10人居た男たちは次々とガンマンの彼に打ち倒され、半分にまで減っていた。
「おいお前ら!敵はたったの一人だぞ!さっさと殺せ!!!」
一番後方に居る小太りの男は部下たちに声を荒げるが、ガンマンの彼の攻撃を抑えることは出来ない。
「残り5人...」
2丁合わせ12発を装填していた銃弾を撃ちきったため、彼は再装填に入るがその動作一つ一つに無駄な動きはなく、2丁をリロードするのに掛かった時間は約10秒以下と早業だった。
リロードを終えた彼は左のSAAをしまうと、再び物陰から出る。
そこに居たのは4人、リーダーの男の姿はなかったが、ファニングしつつ1秒以内にその4人を撃ち倒した。
「バカがぁ!!何処見てんだぁ!!!???」
いつの間にか小太りの男はガンマンの彼の後ろを取った。どうやら戦闘が行われているすぐ隣の建物を回り後ろに出たようだ。
ガンマンの男は振り向かずに、付けていたメキシカンポンチョを男のほうに投げた。
すると、小太りの男にポンチョがかぶさりあわてて取ろうとする。
しかしガンマンはその隙に、ポンチョで隠れた背中に隠していた
「くそったれ!ふざけた真似しやがってッ!」
やっとの思いでポンチョをとるが、男の視線の先には銃を構えたガンマンの彼が立っていた。
「ジ・エンドだ。」
小太りの男に有無を言わせず、水平二連を放つ。弾は小太りの男の頭に直撃し、顔面に大穴を開けた。そのままゆっくりと後ろに倒れDeadエフェクトとともに消滅した。
「ふう...。」
ガンマンの彼は一息つくと、水平二連を背中に戻し地面に落ちている自分のポンチョを拾うと再びそのポンチョを纏った。
「おまたせお二人さん。」
私達が隠れていたビルの入口に来て早々、"さっきの続きをやろうか"と私達に言ってきた。もちろん断る理由はないため、再度仕切りなおしで銃を借りお互い距離を取ってその時を待つ。
「そういえば名前を言っていなかったね、俺は"スコッチ"キミは?」
「私はサーニャ、彼女はラファール。さっきはお見事スコッチさん。」
「そりゃあどうも。」
お互い、目線は動かざずに互いの名前を言いあった。
「じゃあ、いくよ...!」
ラファールが銃弾を弾く。
時間はゆっくりゆっくりと流れ、その場の空気の流れが変わったかのように思えた。
最頂点に達した弾は回転しながら落ち始め、地面に当たると高い金属音がした。
それと同時に私は借りたホルスターからSAAを素早く抜き、撃った。
「なっ...!?」
スコッチさんが目を見開いて、驚く。
そう、互いが放った弾丸はどちらの身体にも命中はせず、丁度互いの間の距離で弾丸同士がぶつかり合い、砕け散った。
私は先ほど見た彼の動きを真似るようにガンスピンをさせ、ホルスターにSAAをさした。
「俺は確かに銃を持ったキミの右腕を狙って撃ったはずだぞ...!」
私のその動作を見て、驚きを隠せない表情で言う。
「目だよ。」
「目...?」
「撃つ瞬間にスコッチさんの目が私の右腕の方を向いてた、だから弾道予測線が無くても弾道を予測できたんだ。」
生き物は何かをする際、その方向を必ず見る習性がある。
もちろんそれは現実とは別に作られた《仮想世界》であっても変わることはない。
彼は私を撃つ際に、右腕をしっかりと見ていた。あの銃を抜いてから撃つまでの動作は0.数何秒程、それでは弾道予測線を見てから回避、または弾を撃ち落とすなんて事はできないだろう。だから私は彼の視線の先にあるゲームが創りだした物じゃない"人間自身が作り出した弾道予測線"を見て弾丸を撃ち落とした。
「なんだよそれ...はぁ...俺の負けだ、降参...!」
彼は両手を上げて、私に降参のポーズを出してきた。
もちろん私も次弾を撃つことはしない。決着はもうついたのだから。
「返すよ。」
私は借りたSAAとホルスターを彼に手渡す。
「それで、懸賞金のかかった私達を倒せなかったわけだけどあなたどうするの?」
ラファールがスコッチさんに問いかける。
「うーんそうだなぁ...まだ"お尋ね者"は沢山いるからな、そいつらを倒して金を稼ぐと
するよ。」
彼はホルスターに銃を挿し直す。
「今日は迷惑かけたな、でも楽しかったよありがとな。」
「私も、楽しかったよ。またいつかどこかで。」
「あぁ、またいつか。」
私と彼は握手をした。
それじゃ、と彼は西の方へ歩き出し、砂埃の舞う廃墟の街の中に消えていった。
でも、"またいつか"はすぐに来ることになった。
・
・
・
・
・
・
「サーニャ~!教えてよ~!どうやって銃弾撃ち落としたの~!!」
それから二日後、あの決闘を間近で見ていたラファールは私に銃弾の撃ち落とし方をずっと聞いてくる。
「勘...かな...?」
「"勘"って何よそれ~!!」
「ラファールちゃんはSEN(五感)上げ直さないとね。」
「えぇっ!?」
私達は学校終わりにいつもの様にアルフレッドさんの店に集まり、店の奥の別室で談笑をしていた。
そこへ、店の扉が開き一人のお客が入ってきた。
「いらっしゃい、今日は何をお探しで?」
店主のアルフレッドさんは店の方へ出て行き、いつもの様に接客対応をする。
『あぁ、人を探してるんだ。これくらいとこれくらいの身長の銀髪と橙色の髪をした女の子なんだが...。』
それを聞いていた奥の部屋に居る私達は互いに目を合わせ、お互いの髪を見つめる。
「サーニャだ。」
「ラファールだ。」
私達はコッソリと店の方を覗くと、見覚えのある男が立っていた。
「あの人...。」
私の声が聞こえたのか、こちらに目をやるその男。
ガンマンの彼、スコッチさんだった。
「おぉ!やっぱりここだったのか、情報屋ってのは金は高いが頼りになるよ。」
どうやら色々な情報で商売をしているプレイヤーに高値を払って聞き、ここに辿り着いたようだ。
「二人共知り合い?」
アルフレッドさんが私達の方を振り返り、問いかける。
「ほら、この間話したガンマンの話の人ですよ!でもあなたがどうしてここに?」
ラファールが彼に問いかける。
「いや、実は謝罪とお願いに来たんだ。」
「謝罪と...お願い?」
私とラファールの首が傾く。
「実は懸賞金のかかってた少女の二人組っていうのはキミ達のことじゃなかったんだ。俺がキミ達に決闘を申し込んでた間に新しい情報が入ってね、帰ってから改めて聞いてみたら実は人違いだったんだ。」
「って言うことは、私達じゃない他の女の子二人組が暴れまわってるってこと...?」
「そういうことだ、新しい情報ではその少女はお互いそっくりなアバターで、言動からするにどうやら、本物の双子らしい。」
「双子でGGOに...それも女の子でねぇ...。」
ラファールが苦笑いしながら聞いている。
「それでだ、最近ついた通り名が"双子の悪魔""デビルズ・ツイン"だとさ。何でも彼女たちの機嫌を損ねると、GGOを辞めたくなるくらいには酷いことされるらしい...。二人組にあったことのあるやつはその件に関して口を開かなくなるし、忘れたがってるようで情報があまり入ってこないというわけだ。そこでキミ達にお願いしたい、俺と一緒にこの二人組を倒してほしい!」
「唐突だなぁ...!」
ラファールは"そんな二人組にあってGGO辞めたくなったりでもしたら嫌"ということで賛成していない様子。ガンマンの彼はそれでも私達にお願いをしている。
「私はいいよ。」
「サーニャ!?」
それほど、その二人組が強いということなんだろう。
私は興味が湧いていた。もっと、強いプレイヤーに会ってみたい。自分が《現実世界》、幼年学校で学んだ力をどこまでこの《仮想世界》、GGOで活かせるのか知りたいから。
「おぉ!恩に着るよ!」
ラファールは頭を抱え、"うーん"と何回も唸っている。
「はぁぁぁ....分かった...サーニャがそうするって言うなら私も一緒に行くよ...でももし何かあったら、責任取れるんでしょうね!?」
スコッチさんにラファールが詰め寄る。
「そうだなぁ、まぁ《現実世界》で"結婚"くらいなら責任とってあげないこともないかな?」
「乙女をからかって!このぉぉぉ!」
「だははははっ!」
ラファールが店の中でスコッチさんを追いかけ回す。
「それじゃあスコッチさん、よろしく。」
店の中でラファールから逃げまわっていた、スコッチさんが急に止まりラファールはスコッチさんの背中に鼻を打ち付け、しゃがみ込み悶えている。
「あぁ、よろしく!あと"さん"は要らないぞ、スコッチで良い。」
ラファールは《仮想世界》で痛みがないことを思い出し、立ち上がると彼の背中を勢い良く叩き。
「よ・ろ・し・く・ね・!」
と言った。
▼本編に登場した銃器紹介
*1"ニューモデルアーミー"
レミントン社製M1858で最も生産された新型(ニューモデル)"アーミー"の事。
南北戦争で活躍したシングルアクション・パーカッション・リボルバー。
1860年から1875年まで製造され、銃身からフレームまでを一体とした堅牢なソリッドフレーム構成で優れた耐久性と精度を有していた。また、銃身下のローディングレバーを引き倒すだけで簡単にシリンダーを外すことができたため、弾薬を装填済みのスペアシリンダーを携帯しておけば、再装填も容易かつ迅速に行えた。
また、シリンダーのニップルにセイフティスロットが彫られ、シリンダーがフル装填のままでも安全に携行することができた。
*2".45ロング・コルト弾"
.45ロング・コルト弾は1872年に開発されたアメリカ陸軍に採用された拳銃弾。
主にコルト社製"シングルアクションアーミー"で使われることで有名である。
この弾を自動拳銃に適合するように短縮し、リムレス化したのがM1911ガバメントにも使用される.45ACP弾である
*3"ローリングブロックライフル"
レミントン社製"ローリングブロックライフル"は後装式小銃であり、ローリングブロックというブリーチ(銃尾)閉鎖機構を持つためこの名称で呼ばれる。
シングルショットというシンプルな構造だが、(当時の)大口径の弾薬が使用可能。
*4"シングルアクションアーミー"
1873年に開発されたコルト社製シングルアクション式回転式拳銃。当時の保安官が愛用していたことから、"ピースメーカー(Peace Maker)"という愛称で呼ばれることが多い。
装飾や塗装、使用弾の種類がとても多く、銃身長の違いによってそれぞれ、
・シェリブズ(3インチ、保安官用)
・シビリアン(4-3/4インチ、民間用)
・フロンティア or アーティラリー(5-1/2インチ、砲兵用)
・キャバルリー(7-1/2インチ、騎兵用)
・バントラインスペシャル(8インチ以上のバレルを持つSAAの通称)
と呼ばれている。
スコッチが使用しているのは2丁ともブラックパウダー(つや消しブラック)モデルのアーティラリー(5-1/2インチ) .45ロングコルト弾仕様。
*5"ファニング"
発射速度を上げるため、添え手側の手の平でハンマーを起こして連射するシングルアクションならではの撃ち方。あらかじめトリガーを引いた状態で行う。ハンマーを連続してコックするときの扇ぐような仕草からこう呼ばれている。連射性重視なので素人が行えば命中率は望めない。達人なら1秒足らずで6発全弾を撃ち切ることも可能。
*6"PGM.338"
4話で紹介できなかったため、ここで紹介。
フランスのPGMプレシジョン社が開発・製造している"ウルティマラティオ"と"ヘカートII"の中間に位置する、ボルトアクションライフル。12.7×99mm弾に次ぐ強力な.338 ラプアマグナム弾を使用するスナイパーライフルで、"ミニヘカート.338"または"PGM .338 LM"の名前でも知られる。
*7"フォトンソード"
"光剣"、"ビームサーベル"とも呼ばれ、高温のプラズマを抑制フィールド(エネルギーを逃さないための透明のエネルギーフィールド、外からのエネルギーを反射できるためこの技術は"防護フィールド発生装置"にも使われている。)に封じ込めて形成した光線剣。使用しない時はとてもコンパクト。使用時はエネルギー残量とオーバーヒートに注意しなければならない(使用を止めれば再充電され、熱も下がっていく)が、ゲーム内に存在するほぼすべての物質を切断することが可能。
6話ではモンスターが使用使用しているがプレイヤーもショップで普通に購入することができるが値段は比較的高めであり、銃を好むプレイヤーが多いためか使用者はとても少ない。標準型の"カゲミツG4"や、柄の両端から光線を出せる"ムラマサF9"などいくつかの種類がある
*8"カゲミツG4"
上記フォトンソードの種類の一つ。
基本的な性能を持つ標準型のフォトンソードで、プレイヤーが一番最初にショップで目にするであろう物。11色の色が選べ、グリップ部分と光線の色も変わる。
SAO ファントム・バレット編でキリトが使用したもの。
*9"ファイブセブン"
5.7mm×28弾を使用するFN社の自動拳銃。同社のP90をメインとした場合のサイドアームとして開発されたため、弾丸の共用が可能。
使用弾薬のSS190は、ライフル弾を小型にしたようなボトルネック形状をしており、弾頭は従来の拳銃弾のようなドングリ形ではなく鋭利な円錐形をしている。そのため弾丸の初速が速く、クラス3のボディアーマーを撃ち抜く貫通力を持つ。さらに、人体等の軟体に命中すると弾丸が横転する性質を持っていて、するりと貫通せずに体内の傷口を広げるのでストッピングパワーも高い。また、従来の9mmパラベラム弾や.45ACP弾に比べ長く細い弾薬形状のおかげで、グリップの前後幅は増したものの、装弾数は20発となっている。
*10"PGM ヘカートII"
フランスのPGMプレシジョン社が開発、製造しているウルティマラティオの最大口径モデル。NATO標準の重機関銃弾薬である.50BMG(12.7×99mm)を使用するボルトアクション対物ライフルで、約1800m以上での射撃を想定して設計されている。
本銃の設計は 他のPGM系列に属するライフルと同様に金属製スケルトン構造が採用されており、ただスケールアップが施されている。本銃は最高精度を求めるため、前方に二脚、後方に一脚を装備し、これらは両方とも調整が可能である。
銃身は放熱と重量軽減のために深いフルーティング(表面に螺旋状の溝掘り加工を施すこと)が行われた。また、7.62x51mm NATO弾を使用するライフルにおいて想定されるレベルにまで反動を軽減するために、本銃には高効率のマズルブレーキが装着された。ストックもまた調整が可能である。
SAO ファントム・バレット編でシノンが使用したもの。
*11"クランクトン"と"アープ"
1881年10月26日アリゾナ州トゥームストーンのO.K.コラル近くの路上で起こった銃撃戦(OK牧場の決闘という名で日本で知られている)を行った男達の名前。
クランクトンはいわゆる"悪役"で"アープ"が"ヒーロー"ということになる。
詳しい紹介は省略する。詳しくはwikipediaを参照して欲しい。
https://ja.wikipedia.org/wiki/OK牧場の決闘
*12"スコフィールド・リボルバー"
S&W社が1870年に開発した、トップブレイク式シングルアクションリボルバーである。
ブレイクオープン操作で一度に6発全ての排莢が可能な上、グリップハンドを反すことなく装填が行えた。登場から2年後の1872年には、当時の帝政ロシアからの大量発注を得ている。この時、先方からのオーダーを受け、数度の設計変更を経て作られたのが.44ロシアン弾仕様の「ロシアンモデル」である。ロシアンモデルは、ロシア経由で日本にも渡り、明治期の日本海軍に「一番形拳銃」として採用されている。
元は"Model 3"という名前だが1875年に、ジョージ・W・スコフィールド少佐のアイデアを取り入れて改良した、.45スコフィールド弾仕様を"スコフィールド・リボルバー"という。6話でスコッチが「あんたがアープの銃を持つなんて」といったのは、ワイアット・アープがOK牧場の決闘の際に携行した銃として、その名が知られるからである。
*13"M1897ショットガン"
ジョン・ブローニング設計によるウィンチェスター社製ポンプアクション式散弾銃。同じくブローニングが設計したM1893の問題点を改善させたもので、元がレバーアクション式だった物をポンプアクションに改めたため、後のモデルと異なり、ハンマーが露出しているのが大きな特徴。そのためレシーバーの全長が若干短く、排莢孔のカバーを設けるスペースもないため、中のメカがのぞけるようになっている。
レピーター(3発以上の装弾数を持つ銃の総称)散弾銃の元祖と云われている。
*14"ソードオフ水平二連ショットガン"
ソードオフとは銃身を切り詰め、銃床も短くした(あるいは無くした)ものを指す。
水平二連ショットガンは水平に2つのバレルを備え、銃の連発化の為に考え出された中で最も歴史の古い多銃身設計の散弾銃である。二つの銃身は同じところを狙うのではなく、たとえば右の銃身は近い目標を、左の銃身は遠い目標をという具合に照準をずらしてある。本編で使用されているのはレミントン社製"スパルタン100"のソードオフ型である。