ガンゲイル・オンライン:Apex of Gunfighters 作:EoEo.
▼武器解説は出来るものは本文で行い、出来なかったものはあとがきで、と言うことにしました。
▼登場人物が新たに増えましたので第0話:主要登場人物紹介が本話投稿と同時に
更新されております。合わせてどうぞ。
SBCグロッケン南外周ゲートを出て直ぐに、文明崩壊から手付かずの森がある。
ここは森自体が入り組んでいて、ゲーム内が夜になると明かりは一切なく、一面闇に包まれてしまう。しかし、この森のとある場所にあるダンジョンはレア武器が手に入るということもありプレイヤーの通りは少なくない。
しかし、ダンジョン帰りのプレイヤーのアイテム強奪を狙ったPKも多発しており、今まさに行われるところであった。
「おい、来たぞ。一番後方のやつバカみたいに背中に実弾ライフルを背負ってる...全員手持ちの武器は光学銃、一気に片付けるぞ。」
「今度の奴はちゃんとレア武器を落としてくれよなぁ~。」
「つったって、ランダムドロップだろ~。」
"今度の"という言葉から、彼らは短時間の間に何度もここでダンジョン帰りのプレイヤーを襲っているようだ。
ダンジョンの入り口は洞窟のようになっており、そこから4人組のプレイヤーが出てきた。
一方、PKスコードロンの男は木の陰に隠れ、仲間のスコードロンメンバー5人に、無線で指示を送る。
「さっきと同じ要領だ、一斉掃射でなぎ倒す。」
男たち5人は目だし帽を被り、全員アサルトライフル持ち、スイス、シグ社製"
「目標まで100m、射撃用意...撃てっ!!!!!!」
リーダーの男の合図とともに、弾丸の雨がダンジョンから出てきたプレイヤー4人を襲う。
撃たれるまで、彼らはその存在には気づかなかったようで一瞬にして一人、また一人と倒れ、消滅していく。
「撃ち方止め!撃ち方止め!!」
先ほどまで聞こえていた雷鳴のような掃射の銃声と、空薬莢が地面に落ちる金属音は合図とともにぴたっと止み、不思議な静けさが漂う。
「二人はその場で全周囲警戒、残りの二人は俺とドロップ品を見に行くぞ。」
各持ち場から2人をその場で周囲警戒させ、残りの2人をリーダーは呼び、自分とともに倒した彼がドロップしたアイテムを見にゆく。
「見て下さいよコレ!!」
先に辿り着いたKH2002持ちの彼が死亡位置に、ここのダンジョン手に入るレア武器、イスラエル、IWI社製ブルパップアサルトカービンライフル"X95"を見つけた。どうやら入手した彼はその嬉しさのあまりアイテムストレージにいれず、スリングで肩から下げていたようだ。X95は同社の"タボール"シリーズの設計を元にサブマシンガン並にまで全長を短くしたライフルである。使用弾薬は5.56x45mm NATO弾で、そのコンパクトな見た目から、マイクロ・タボールとも呼ばれている。
「まだ出現が報告されてないアサルトライフルですよ!ここのダンジョンだったんですねぇ...。」
「売ったらどれくらいになるんだ?」
「さぁ、まだ市場で見かけたことはないので...。」
すると急に夜の空に雲が増え、雨が森に降り始めた。
「雨...。」
GGO内は時間とともに天候はランダムで決まり、雨はもちろん場所によっては雪なども降ることがある。
と、その時、見張りをしていた2人から無線が飛ぶ。
『敵がそっちに近づいています。』
「何人だ?」
『一人です...っ!?あいつこっちに気付...ッ、ぐあぁぁぁッ...』
悲鳴とともに、耳を劈くようなノイズが聞こえ通信が途絶える。
「おいどうした...!?くそっ、おい!そっちはどうなってる。」
唐突に森に銃声が聞こえる。
そして無線に返答が聞こえて来た。
『助けてください!!!ぎゃぁぁああッ...』
二人と連絡が途絶える。
「くそっ!何がどうなってる!」
すると、見張りをさせていた方から一つの影が雨の中、こちらに近づいていたのが見えた。
「やつか...おいお前ら!あいつに向かって撃ちまくれ!」
その合図とともに部下の二人はSG540とKH2002でその影、プレイヤーと思わしきものに弾を撃ち放った。しかし、その影は止まるどころか更に近づいてくる。
「何やってんだ!ちゃんと狙え!!」
二人合わせて50発以上は撃ったであろうその時、雨の切れ間にその姿が見えた。
「何だと...!?」
ゆっくりと歩きながらこちらに迫ってくるプレイヤー、両手には赤く光るフォトンソード、つまりは二刀流でプレイヤー自身はフードをかぶった黒く丈の長いマントを着ている。
「撃て撃て撃て!!!」
二人は再装填し、更に弾をプレイヤーに撃ち込む。しかしあろうことか向かってくる銃弾をその手に持った二つのフォトンソードで、
「嘘だろ...!?」
切り落とした。
突如、そのマントのプレイヤーは男たちの方に接近してきたかと思うと一人、二人と素早い剣舞で切り刻み、被弾エフェクトがバラバラになった身体の断面から赤くキラキラと輝いていた。
「冗談じゃねぇ...!、光剣をここまで扱えきれるやつがまだ存在するなんて...!!」
男は一目散に森を抜けるため、その場から後ろを向き、逃げる。
しかし、マントのプレイヤーは走る男の頭上を飛び越え、背中を向けて着地したかと思うと二本のフォトンソードを逆手に持ち替え後ろへ突き刺した。
フォトンソードは男の腹部を突き刺し、がりがりと継続ダメージでHPを削ってゆく。
「ぐあッ...お前一体...何者...。」
霞む視界の中で男が目にしたのは、フードの中で赤く光る"何か"だった。
そのまま振り向きざまに切り払い、男は死亡エフェクトの赤いポリゴンの欠片とともに消滅した。
フードのプレイヤーは、再びドロップアイテムがある場所に戻ると、落ちていたX95ライフルを手に取り、森のなかに消え、それと同時に降っていた雨は止んだ。
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«一ノ瀬さん、具合どう?»
«うーん...まだダメかも...»
«安静にね。»
«ごめんね~、ありがと~»
メールを返信できるくらいには落ち着いたのだろう。
今日、学校で一ノ瀬さんが倒れてしまい、保健室に連れて行ったら熱があるとのこと。
午後に入ってすぐ早退という形となった。
「さてと、課題終了。」
家に帰り、出されていた課題を終わらせ、アルバイトが無いのを良いことにベットに寝転がり、アミュスフィアをつける。最初はそこまで乗り気ではなかったが、今では日課となってしまった。
「リンクスタート。」
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「あれ?今日はラファールは一緒じゃないのかい?」
ログインするとスコッチがアルフレッドさんの店の中で一人、銃の手入れをしていた。
「体調不良、今日は来れないかな。それで、スコッチはどうして夕方からログインしているんだい?」
社会人であろう彼に問う。
「俺は自分で店やってるからなぁ、客があまり来ないから店は早めに閉めちまったさ。」
「スコッチって、リアルでは何をしてるの?」
VRMMOではリアルのことを聞くのはマナー違反、とラファールから言われていたがつい聞いてしまった。
「俺か?俺は"八百屋"を家でやってるけど。」
以外にもあっさりと答えてくれた。ただ...
「八百屋?なにそれ...。」
その言葉を初めて聞いた。
「えっ、サーニャ八百屋知らないのか!?現代っ子だなぁ...。」
「いや私日本人じゃないから...。」
あっ、と私も個人情報を漏らしてしまったと気づくが時すでに遅し。
「えっ!?そんな日本語ペラペラなのに日本人じゃないのか!?一体どこのお人で?」
スコッチが目を丸くして私に聞く。
「お人って...ロシアだよ、"サーニャ"っていうアバター名も向こうでの名前から取ったんだ。」
「なるほど...ふふ、俺のはともかく女の子のサーニャの個人情報がいくつかわかっちまったぞ。」
「そういう変な事をする人なの、スコッチは?」
私はじっと、スコッチを見る。
「冗談だ冗談!、でも男でGGOやってるプレイヤーは俺みたいな紳士的なやつだけじゃないんだ、あんまりリアルのこと口すべらせて言うんじゃないぞ?」
「うん、紳士的かは置いといて、肝に銘じておくよ。」
「....。ところでどうしてそんなに日本語上手なんだ?」
「昔ちょっとだけ日本で暮らしてたからね。」
「ふぅむ...じゃあロシア人のサーニャはリアルの方もそのアバターみたいに可愛いわけだ。」
「どうかな?普通だと思うけど...?で、八百屋って何?」
曲がりくねった主旨を戻す。
「ん、あぁ、八百屋っていうのは物凄く小さい、個人でやってるスーパーみたいなもんだな。」
「なるほど、そこの"おじさん"なわけだね。」
「"お兄さん"な。」
「"おじさん"でしょ?」
「"お兄さん"だ!...ゴホン...まぁ、それは置いといて...。」
スコッチは咳払いをして話題を変えてきた。
「サーニャはもう二刀流の話聞いたか?」
「二刀流?」
唐突にそう言われ、首を傾げた。
二刀流という日本語は理解しているが、このゲームで、ということだろうか。
「その顔は知らないって顔だな。GGOに"光剣"の二刀流使いが現れたんだよ。」
「光剣って、フォトンソードのことだよね、モンスターも使ってる。」
「そうだ。でもフォトンソードはGGOでは不人気なんだよ、攻撃するために近づかなきゃならないし、そもそもガンマニアが多いこのゲームじゃ人気が無くてな、そのくせ妙に高い。」
「で、その二刀流の人は?」
「聞いた話なんだが、なんでも、PK専門ギルドの5人を光剣でバッサバッサと切り倒したらしいぞ。」
「その人達の装備は?」
「全員アサルトライフルだ。数百発は撃ちこんだらしいがHPは1mmも削れなかったとか。」
「前に聞いたことがあるよ、銃弾をフォトンソードで切りながら戦った女の子の話、その人じゃないの?」
以前聞いた、フォトンソード使いの女の子の話を思い出す。
「うーん...俺もその子の話は聞いたことがあるがコンバートしたって噂だしなぁ...その後にも光剣を使って周りを驚かせた女が居たけどな。」
「"ピトフーイ"さん...だっけ?名前はラファールから聞いたこと有るよ。」
「その二人が光剣を使って、少しの間光剣を使うプレイヤーが増えた時があったが...、やはりこの世界で使いこなすのはいくらステータス値が高くても難しいらしい...強いて言うなら長い間、剣を自分の手のように使ってたやつか、ステータス的な意味以外で器用なじゃないとあれを扱うのはムリだろうな...。」
「ふーん...。」
フォトンソードで銃弾を切りながら近づいてきたら銃を持ったこちらは対処できないだろう。ただ、今噂になっているそのプレイヤーのように一発も銃弾を身体に受けずに無傷で戦うには、どれだけの技術がいるのだろうか。
「でだ、その襲われたスコードロンの連中がどうもその二刀流使いのプレイヤーを倒すために手練なプレイヤーを募集してるそうだ。俺は参加するけどサーニャはどうする?」
人数が集まれば銃を使うプレイヤー側が有利かもしれない、でも銃弾数百発を防ぎきったプレイヤー。そう考えると勝敗は五分五分だろうか。
気になる。
「私も参加するよ。その二刀流使い、私も気になるし。」
「よーし、じゃあ今日の10時集合だからよろしくな。」
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同日午後9時30分
「うわ、結構集まってる。」
集合場所に指定された、以前スコッチと決闘をしたSBCグロッケンから北西に進んだ先にある廃墟都市の一角に二刀流使いを倒すため、私達を含め約30人のプレイヤーが集まっていた。
「有名スコードロンの奴らも何人か来てるな...報酬もそれなりだったが敵一人に対しては多すぎる気がしないでもない...。」
「それほど二刀流の人は強いんじゃない?」
「まぁ今まで光剣を使って有名になったやつは皆トップランカーレベルだったしな。」
「そもそも、その二刀流の人がここに現れるって確証はあるの?」
「あぁ、どうも主催の脳筋野郎達がSBCグロッケンすべての区域に場所と時間を記した張り紙とGGOのネット掲示板に書き込みをしたらしい、。」
「わざわざ丁寧に向こうから来てくれるかな?」
「さぁな、まぁ俺もそんなに期待しては居ないが...。」
「期待してないのに私を誘ったの...?」
「いやまぁ、普段サーニャは少数の身内だけでやってんだからこの人数でのクエストはいい経験になると思ってな。」
「ふーん...。」
私達二人も、その集団の中に入ってゆく。
すると、すでに集まっていたプレイヤー達の視線が一気に私に向けられた。
『おい、女の子だぞ。』
『容姿は可愛いが戦えんのか?』
『いや、あの子はトイフェルを倒した子じゃないか?』
『隣のあの男は?』
『西のウェスタンタウンじゃ知らない奴は居ない手練のガンマンらしいぞ..』
スコッチも一部では有名らしい。
そしてどうやら私があのスコードロンのメンバーと戦ったことはすでに知れ渡っているようだ。
「人気者だなサーニャ。」
「恥ずかしいから言わないで...。」
私はそんなに大勢の注目を浴びるのが得意というわけじゃない。
高校編入初日の自己紹介でさえ内心とても恥ずかしかった。
「ほう...悪名高いスコードロンのメンツを倒した期待の新人サーニャちゃんも恥ずかしいという感覚はあるんだな。」
「...。」
私はスコッチの腕を軽く叩いた。
「すまん、すまん。」
そんなことをしていると主催の男が集まったプレイヤーの前に現れた。
「プレイヤー諸君、今日は集まってくれてありがとう。主催のイーライ(Eli)だ。」
他のプレイヤーが拍手と歓声でそれに応える。
「スコッチ、あの人も有名なの?」
「あぁ、一応プレイヤーの間ではリーダーシップやら統率関係の良さで有名だな。ただPKスコードロンの長でもあるから一部では悪名も高い。」
このゲーム自体
ちなみにアイテムストレージ内に保管している物はランダムドロップの対象にはならないため、死亡する前に装備全てをストレージ内に入れることができればランダムドロップを防ぐことができる。
「今日集まってくれたのは他でもない。皆知っているとは思うが、GGOにまた"光剣"使いが現れた、それも今回は二刀流だ。俺達は一昨日、SBCグロッケン南にある森林地帯でその二刀流使いに襲われた。今回、奴を倒した暁にはラストアタックを決めた一人に私が所有するレア武器を一つ譲ろうと思う!もちろん今回集まってくれた全員分のお礼も支払うつもりだ!」
再び拍手と歓声が響き渡る。
『その二刀流のやつは今日本当に現れるのか!?』
一人のプレイヤーが声を張り、主催のイーライに訴える。
それに合わせ集まった周りのプレイヤーも、"そうだ、そうだ!"と声を出した。
「来なかった場合は、"光剣使いの恥"、"臆病者"とネットと張り紙でばら撒くさ。」
この返しに、他のプレイヤーは微笑していた。
「こりゃあ二刀流使いさん、意地でも来なきゃな。」
スコッチが腕を組んで言った。
「どうして?」
「オンラインゲーム、と言うかPKができるこういったゲームじゃあ評判の悪いプレイヤーは集団で攻撃されたり、嫌がらせされたりするからな。そのプレイヤーもそれじゃあGGOに居づらくなるだろうよ。」
ゲーム、«仮想世界»でもそういった人間関係、社会的地位は«現実世界»に忠実なようだ。
「ではこれからパーティーを組んでレイドを作るが、余った者は俺の護衛についてもらう。では始めてくれ。」
と、早々に何やら始まった。
「スコッチ、レイドって何?」
「レイドってのは複数のパーティの集合体のことなんだが...。」
「?」
辺りを見渡すと、他の集まったプレイヤーはすでにパーティが出来上がっているようで二人でこの場に来た私達だけがあぶれてしまった。
「余ったそこの二人、こっちに来てくれ。」
余った私達に気付いたのか、指を指され呼ばれた。
「申し訳ないが、君達は指揮する俺とともに最後方に居てもらう事になる。頼めるか?」
「あぁ、もちろん。アンタの命は保証するぜ。」
「有り難い。では諸君、時間まで各持ち場で待機してくれ。」
約30人のプレイヤーは指示された場所に散会し、廃墟都市の大通りとT字路両脇を見張り、迎え撃つ最前線A班と両脇の廃墟のビルのテラスから撃ち下ろすB班、そしてA、B班より後ろの大通りT字路正面にある元は美術館のようなギリシャ様式の建物で、その入口の周柱に陣を構えたイーライと彼のスコードロンメンバーの一人、私、スコッチの本部C班で分けられた。通信アイテムは各班リーダーに手渡され、私達本部C班だけ全員が通信アイテムを持つこととなった。
午後9時58分、時間が迫る。
イーライともう一人は双眼鏡で、二刀流のプレイヤーが来るであろう正面大通りを、私は入り口の大階段の下でT字路両端と大通りを、スコッチは私の後ろの階段に座り大通りを見ていた。
「サーニャは来ると思うか?」
「どうかな、私は二刀流の人見てみたいけど。」
「同感だ。」
・ ・ ・
午後10時になった。と、同時に本部のイーライへ無線が飛ぶ。
『こちらA班、怪しいプレイヤーが接近中。数1、どうぞ。』
「そいつの容姿は?、送れ。」
『黒っぽいマントでフードをかぶっている...顔と武器は分からない、どうぞ。』
「奴かどうかわからない、威嚇射撃だ。そっちのタイミングでやってくれ、送れ。」
『了解、威嚇射撃をする。通信終わり。』
イーライも双眼鏡で大通りを見る。
すると無線の通り、風でなびいた黒いマントにフードをかぶったプレイヤーらしき人影がこちらにゆっくりと近づいてきていた。
A班の一人が向かってくるプレイヤーの足元に3発ほど威嚇射撃を行う、しかしそのプレイヤーは怯みも、歩みを止めようともしなかった。
『こちらA班、威嚇射撃を実施したがなおも接近中。どうぞ。』
「了解、A班射撃準備だ。目標、こちらに接近中のプレイヤー一名。射撃用意、撃て!!」
1対約30名の戦いの火蓋が切られた。
数十の弾丸がそのプレイヤー目掛けて放たれるが、それと同時に両方の手元から赤く光る棒状のものが見えた。
・ ・ ・
「サーニャ、今の見たか?」
後ろで同じく双眼鏡で見ていたスコッチが言う。
「あれが二刀流...?」
スコッチの方から再び視線を戻し、双眼鏡で見る。
数十発の弾丸を浴びたはずのそのプレイヤーは止まることも、走ることもせず歩いてくる。両手には赤い光を帯びたフォトンソード。フードの中は...よく見えない。
T字路を見ていた残りのA班のメンバーも揃い、大通りの二刀流プレイヤーに向け集中砲火する。
銃声は大通りの建物に反響して響く。絶え間のない銃声、しかし二刀流のプレイヤーはその銃弾を目に見えない速さで飛んでくる弾一発一発を正確に切り捨てる。
あっと言う間に距離は300mほどにまで迫っていた。
「正面からじゃ絶対に破れないな、あの鉄壁は...。」
スコッチが言う。
『B班、攻撃開始!』
イーライの無線指示で隠れていたB班が両脇の廃墟のビルのテラスから一斉に合図で撃ち下ろす。両脇から放たれた弾丸は二刀流のプレイヤーに向かって雨のように降る。
しかし、すでに隠れていたことに気付いていたのか片方のフォトンソードで正面を、もう片方のフォトンソードで防いだ。
そしてついにフォトンソードの刃がA班のプレイヤーにまで届く距離にまで来ていた。
「こりゃダメだな...。」
あきらめムード全開のスコッチが双眼鏡を下ろし、首を降る。
銃がフォトンソードより有利に戦える距離をA班は完全に失ってしまった。それを証明するかのように一人のプレイヤーが二刀流のプレイヤーの攻撃を受ける。しかし、フォトンソードの刃はプレイヤーへ最も致命傷、更には一撃必殺を与えられる胴や首、頭ではなく銃を持つ両腕と、両足を切断。切断面は被弾エフェクトのような赤いポリゴンがキラキラと光っていた。その後もそのプレイヤーにとどめを刺すわけでもなく、二刀流のプレイヤーは近くにいる数人を目視では、同時にではないかというようなスピードで同じく両腕両足のみを切断した。
「どうしてとどめを刺さないんだアイツ。」
再び双眼鏡を構え直し様子をうかがうスコッチ。
こちら側は完全に二刀流のプレイヤーを"倒す"つまりは"殺す"事を目的に戦っている訳だが、向こうはなにか別の目的があるのだろうか?
ふと、今の戦闘でひとつ私の頭に疑問符がついた事をスコッチに聞く。
「切断された両腕両足ってどうなっちゃうの?」
「数十分でトカゲの尻尾みたいに生えてくるぞ。でも例えば足をブーツごと持ってかれたとしてもブーツ自体の装備耐久度が0にならない限りは足と一緒にブーツも生えてくるんだ。」
「なにそれ怖い。」
一応ゲームシステム的な救済措置だと思うし、切断された腕や足がそのまま戻って来ないとなるとゲームそのものが続けられなくなってしまう。
また、"装備"と言われる武器、各種アタッチメント、防弾ベスト、ポーチやマガジン、などには耐久値が設定されており、一定値を下回ると正常に機能しなくなり、耐久値が0になった時点で消滅してしまい、再度入手するしか手段はない。しかし、器用値(DEX)が一定以上あるプレイヤー自身が修理、または店で修理などもできるためこまめなメンテナンスも大切になってくる。
しかし下着や一部服装(戦闘用のボディースーツなど)といった、破壊されるとハラスメントコードに引っかかる、つまり脱げてはいけないものが脱げたり、壊れたりはしないようにもなっている、とか。
「じゃあ数十分間あの人達は戦えないってこと?」
「まぁそういうことになるな。」
その言葉通り、胴と頭だけの姿になったA班のプレイヤー"全員"はジタバタと道路上で蠢き、その様子はホラー映画なら5つ星を貰えそうなほど不気味に仕上がっていた。
それを両脇のテラスから見ていたB班のメンバーも若干、顔がひきつっているように見えた。
『B班怯むな!、まだ勝敗はある!』
その無線を聞いて我に返ったB班は再び銃を構え始め、撃てる準備が出来た者から次々と弾を敵へ撃ちこみ始める。
しかしA班ほど人数は多くなく、そこまで脅威ではないと思ったのかそのプレイヤーはB班の攻撃を無視し、ついに本部であるC班の私達のに向かって、走って距離を詰めてきた。
「くそっ...!」
それを見てイーライはメニューウィンドウを開き、アイテムストレージからとある武器を選択し実体化させた。
「"銃弾"が切られるなら、こいつを使うしかないようだな!」
その手に握られていたのはドイツ、H&K社製"XM25 IAWS"グレネードランチャーだった。
XM25 IAWSはグレネードランチャーではあるが、箱型弾倉を用いており、セミオートで6発発射することができる。そして、他のグレネードランチャーと異なる点が、専用のエアバースト弾を使用すれば、ランチャーに内蔵されたレーザーレンジファインダーで目標までの距離を測定し、プレイヤーが目標の前方3m~後方3mまでの間で起爆位置を設定すると、薬室に装填された25mm弾の信管に信管測合機が自動的に起爆位置を入力。発射後は25mm弾が自らの回転数で飛行した距離を測定して事前に決められた距離に到達すると自動で起爆するという点。これはつまり地面に着弾する前に空中でグレネード弾を爆発させることができる、ということだ。
イーライはフォトンソードで切られる前に弾を爆発させ、ダメージを与えるつもりだ。
「食らえ!!」
レーザーレンジファインダーで距離を測り、爆破距離を設定、発射。
放たれた25mmグレネード弾は二刀流のプレイヤー目掛けて一直線に飛ぶ。
私居る所まで100m少し程だろうか、それに気づいた二刀流プレイヤーも弾を切る体勢に入るが、これが手前で爆発するとはつゆ知らず。切りにかかるも爆発。
煙に包まれる。
「どうだ!!!」
XM25 IAWSを掲げ、大きく声を上げる。
しかしイーライの喜びもつかの間、赤い棒状の光が高速で振られたのが煙の中で見え、それと同時に煙が一瞬にして晴れる。
煙の中から現れたのは、全身パワードスーツに覆われたサイボーグのような姿だった。
頭部には目、では無く赤く発光しているものがいくつか付いており人間らしいのはそのシルエットのみだった。
マントは先程の爆発のダメージで耐久値が完全に0になり、サイボーグ姿のプレイヤーの周りで赤いポリゴンが舞っていた。
・ ・ ・
「スコッチ...あれは?」
「噂で聞いたことが有る...どこかのメカメカしいダンジョンで強化外骨格だかパワードスーツみたいなレア防具が手に入るってな、だがこの目で見るのは初めてだぞ...。」
マントで完全に身を隠し、アバターの顔も性別も不明だったが、そのマントの中から出てきたのは更にそれらを不明にさせるものだった。
"サイボーグ"といってもミサイルが出るわけでも、レーザービームが出るわけでもなく両手には先程から使用している二本のフォトンソードがしっかりと握られていた。
B班のプレイヤーも先ほどの剣撃とその威圧的な姿に、手から銃をポロリと落とし、両膝をつく者まで居た。しかし、B班のとあるプレイヤーが双眼鏡でイーライの持っている武器を見て、とっさにB班のリーダーから通信アイテムをさっと取り上げイーライに向け
『アンタが持ってるそれ俺から奪ったやつじゃないか!?』
と、言い放った。
『な、何を言ってるんだお前!?』
慌てた顔でイーライが言い返す。
『俺はついこの間、ダンジョン帰りに全員が目出し帽を被ってLMGを持った5人のプレイヤーに持っていたXM25 IAWSを奪われたところだ、それにイーライ!、お前やお前のスコードロンの連中が関わってることはそこのサイボーグが教えてくれたぞ!』
『何っ!?』
『それにアンタ、この作戦が始まる前に"二刀流使いに襲われた"って言ったよな!?サイボーグの話によりゃあ、アンタ達スコードロンがその前にモンスター狩り帰りのプレイヤーを襲ったって聞いたぜ!全員目出し帽を着けてな!。』
『ぐっ...』
『そのレア武器を本来手に入れてたのは俺のフレンドなんだよ!お前その後サイボーグが横取りしてったと思ってそれの仕返しにこの作戦を立てんだろうが違うぜ。サイボーグのあいつはわざわざ落とした俺のフレンドを探しだして、渡しに来てくれたぜ!』
『....ッ!』
そのプレイヤーの言葉を聞いて他に居たA班やB班のプレイヤーも、
「そういえば俺も目出し帽のやつに武器奪われたぞ...!」
「よく見りゃあの隣のやつが着てる防具、俺がドロップしたのとそっくりじゃねーか!」
など、敵意の眼差しはすでにサイボーグのプレイヤーではなく主催者だったイーライ達に向けられていた。
その他のプレイヤーたちが本部のある建物に押し寄せてくるのはそのすぐ後だった。
私とスコッチは押し寄せるプレイヤーにもがきながら、そこから立ち去るサイボーグのプレイヤーの姿を見た。
「スコッチ...お先。」
「あ、ちょっと待て!おーい!助けてくれ...!」
私はスコッチを背に、本部に押し寄せてくるプレイヤーの並を掻い潜り、サイボーグのプレイヤーを追いかけた。
「ねぇ...!サイボーグの人...!」
サイボーグのプレイヤーはやはり走るわけでもなく、ゆっくりと歩きSBCグロッケンがある南東の方に向かっていた。
私の呼びかけに応えてくれたのか立ち止まって、しかし振り向かず首を曲げ、顔だけをこちらに向けた。
「あなた、最初からあれが目的であの場所に来たの...?」
私のその問に一言も返答はない。
「敵にとどめを刺さなかったのは、他のプレイヤーがイーライって人にただ利用されてるだけだったからでしょ?」
やはり私の問に答えてくれることはない、数秒後再び前を向くとメニューウィンドウを開き、アイテムストレージからマントを実体化、それをフードとともに羽織ると。その姿は消え、透明化した。
「メタマテリアル光歪曲迷彩...。」
サイボーグのプレイヤーが消えたその現象、以前店長...アルフレッドさんから教えてもらった。あのプレイヤーが幽霊というわけではなく"メタマテリアル光歪曲迷彩"という技術を使った、と言うゲーム内設定のマントをとあるボスが低確率で落とすレアアイテム。これを羽織ったプレイヤーは攻撃を受けるまで透明になれるというものだ。そんなアイテムを持っているということは、フォトンソードを使いこなすことは別に、相当な腕を持ったプレイヤーなのだろう。
「今度は一戦、戦ってみたいな...。」
私は、消えたそのサイボーグの行方は探さず、プレイヤーが消えたその通りをただ見つめていた。
*1"SG540"
スイス、シグ社が1971年に開発した、5.56mm×45NATO弾を使用するアサルトライフル。
「新時代の軽量ライフル」として1967年に当時の5.56mm×45弾を使用する"SG530"を開発したシグ社であったが、ガス作動にローラーロッキングという複雑かつ高い生産コストのかかる内部機構を採用したがために失敗に終わった。
そこでシグはより強健かつシンプルで信頼性の高いものを求め、東側の"AK-47"に着想を得た結果、ガス・ピストン方式を採用した本銃、"SG540"を1971年に世へ送り出した。
SG540には、"SG541"のほか、バリエーションとして7.62mmNATO弾を使用する"SG542"、ショートバレルで折り畳みストックのカービンモデル"SG543"が存在する。
GGO内ではそれなりにレアなアサルトライフルである。
*2"91式歩槍"
2002年に開発された中華民国、第205造兵廠が製造しているアサルトライフル。
同造兵廠が製造しているガスピストン式M16クローンである"T65"シリーズの最新モデル。直接のクローンではないものの、その影響が色濃いところから“台湾版M4カービン”として紹介されることもしばしば。
外観はベースとなったT86に似ているが、レシーバーと一体だったキャリングハンドルが着脱式となり、レシーバートップとフロントサイトブロック下部にピカティニーレールが設けられた。
性能は平均的ではあるがGGO内での存在はレア。
*3"Vepr"
2003年頃に設計された、ウクライナ製ブルパップアサルトライフル。
ウクライナ軍が現在使用している"AK-74"を直接ブルパップ方式とした設計であり、外観はベースとなった"AK-74"の面影を残している。
使用弾薬に変更はなく5.45x39mm弾で、AK-74向け30発マガジンを流用する。
作動方式もAK-74そのままで、ガス圧、ロテイティングボルト方式である。
読み方は"ヴェープル"で、クライナ語で猪を意味する単語である。
AK-74とそれほど性能はほとんど変わらない(取り回しは良くなってはいる)がこちらもレア。
*4"KH2002"
イランのDIO(Defense Industries Organization)が2001年に設計し、開発したブルパップアサルトライフル。ベースとなったのは同社の"S-5.56"で、中国のノリンコ製"CQライフル"という"M16A1"のクローンのこれまたクローンである。それをブルパップ化したのが本銃となる。作動機構はオリジンである"M16"とほぼ同一のものらしく、排莢口からはM16そのままのボルトグループを見ることができる。
巨大なキャリングハンドルを備え、これに覆われる形でコッキングハンドルが配されている点など、外観はどことなくフランスの"FAMAS"似で、グリップガードの形状などはオーストリアの"AUG"風である。バットストックの左側には、セミ/フル/3点バーストの切替えセレクターを配しているが、現代銃らしいアンビデザインは採用されていない。
キャリングハンドル上には、スコープを始めとする各種光学照準器を装着可能で、オプションとして、フォアエンド前方にバイポッドとバヨネットが装着可能である。
こちらも同じくレア。
*5"AMD65"
ハンガリーのFEG(フェギバール・エス・ガスゲスレーケージ)が、製造したアサルトライフル。
AKMの問題点であった放熱性の改善と操作性の向上のため、ハンドガードの一部を廃し、フォアグリップが標準装備されているのが特徴。そのため上部ガスパイプが剥き出しになっている。
ワイヤーストックを装備したAMD65は空挺部隊・特殊部隊向けのモデルである。7.62mm×39弾仕様としては最小クラスの銃で、強い反動を軽減するため、銃口に大型のマズルコンペンセイターを装備している。
GGOに登場するAKシリーズの中で存在するいくつかのレアモデルの一つ。