ガンゲイル・オンライン:Apex of Gunfighters   作:EoEo.

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▼更新が少し遅くなりました。

▼今回はゲーム内の話が少なめで、現実のサーニャのことについて触れる回です。


OPS Ex:写真とテディベア

日曜日、私はお昼ごろからログインしアルフレッドさんのお店の射撃場でいつもの様に射撃の練習をしていた。もちろん、本気では無かったが。

そして私の隣のレーンには日曜をお店の休みにしているスコッチが、早撃ちの練習をしていた。

 

「銃弾を撃ち落とすくせに、射撃の精度があんまり良くないなサーニャ。」

 

スコッチがシングルアクションアーミーを撃ち終わり、一発一発再装填しながら隣にいる私に言う。

 

「うーん、まぁあれはSEN(五感)に頼ってるのもあるし...。」

 

私は誤魔化す。

 

「ふぅん、まぁ射撃の腕が良くなればもっと弾丸を撃ち落とすこともできるだろうからな、腕を上げておいて損はないと思うぞ。」

 

「うん。」

 

バレットサークルが拡大縮小をゆっくりと繰り返し、一番小さく、そして的の真ん中に来たところでトリガーを引いた。放たれた弾丸は100m先にある的の真ん中に吸い込まれるように命中した。

 

「お、その調子だな。」

 

再装填が終わり、腕を組みながらそれを見ていたスコッチが私に言った。

丁度それと同時にラファールがログインしたことを知らせるポップアップ表示が出て間もなく、私達の後ろのほうでログイン時のエフェクト音とともにラファールが来た。

 

「ふっかーつ!」

 

先日から体調を崩していたラファールが数日ぶりにログインし、元気な姿で現れた。

 

「もう大丈夫なの?」

 

私は射撃練習をやめ、銃をアイテムストレージにしまって彼女に言った。

 

「うん、おかげさまでね!」

 

先ほどと同じように元気よく答えたかと思うと、すかさずスコッチの方を見て表情を変え

 

「スコッチ、私が居ない間二人っきりでサーニャに変なことしなかったでしょうね?!」

 

と言った。

そう言われたスコッチはすかさず

 

「なっ...! するわけ無いだろ!」

 

と、言う。

 

「ほんとかなぁ...、サーニャ何もされてない?」

 

今度は私に聞いてきた。

ふと、この間のサイボーグのプレイヤーを討伐するプレイヤークエストの時、スコッチが私をからかった事を思い出して

 

「うーん...。」

 

と、唸ってしまった。すると

 

「ほらー!なんかしたんでしょ!」

 

「サーニャ?! 俺は何もしてないだろ!」

 

「あはは...。」

 

二人はこの後も夫婦漫才のように、楽しそうに話していた。

その後すぐ私はラファールに、サイボーグのプレイヤーの一件を話した。

 

「二刀流でサイボーグねぇ...また光剣使いがGGOに現れたか~...サーニャとスコッチはそのプレイヤーと戦ったの?」

 

「ううん、戦う前に色々決着がついちゃってサイボーグの人は離脱しちゃったよ。」

 

「ふーん...。なんか私が来ない間楽しそうなことしてたのね~。」

 

「しょうがないよ、ラファール熱あったんだし。」

 

「ぐぬぬ...、あ、そうだ!サーニャ明日午後空いてる?」

 

「明日の午後...?」

 

「うん、明日もテストで午前中に学校終わっちゃうでしょだから...あっ...。」

 

先週からまたいで明日の午前までテストがあり、

すぐ近くにスコッチがいることを忘れて、リアルのことを話してしまいラファールはしまったと、うっかり顔でスコッチの方を見る。スコッチは手で耳を押さえ

 

「ん?俺は何も聞いてないぞ?」

 

と、言った。

 

「うん、私は空いてるよ。どこかダンジョンかクエストでも行くの?」

 

「ふ、ふふーん!二人だけで行くからね!」

 

そう言われて、私はてっきりGGOの話だと勘違いしていた。

そして

「えーっと...。」

 

「こっちこっち~!」

 

GGOでどこか一緒に行くわけではなく現実の、リアルの方で一緒に出かけるということだった。

午後になる前に学校が終わり、そのまま一旦家に帰り私服に着替え、一ノ瀬さんの最寄り駅からすぐにある、大型ショッピングモールに行くことになった。

もちろん一ノ瀬さんも私服に着替えていた。

 

「わー!サーニャ...じゃなかった、牧宮さんの私服いかにもロシアっ娘って感じだね!」

 

「いやロシアっ娘っていうのはよくわからないけど...それと別に名前言い直さなくてもいいよ、むこうではそうやって呼ばれてたし。」

 

ラファー...、一ノ瀬さんの服装は落ち着いていて、どこかのお嬢様かと思うくらい整った出で立ちだった。眼鏡はそのままだったけど。

 

「お互い私服を見るのは初めてだね!いつも制服か、GGOでの物騒な格好しか見たこと無いからね!」

 

「あはは...。」

 

「じゃあいこっか?」

 

「うん。」

 

ショッピングモール内を軽く歩いた後、12時を回っていたのでお昼ご飯を食べた。

その後、一ノ瀬さんが本を見たいというのでショッピングモール内の書店に立ち寄った。

 

「サーニャも好きなの見てていいよ~」

 

「分かった。」

 

私と一ノ瀬さんは書店の中で一旦別行動と言うことになった。

特にこれといって読みたい雑誌があったわけじゃないが、ふらっと私が入ったのは、どちらかと言うと男性向けの軍事、ミリタリーのコーナー。

偶然か、そのコーナーに他のお客さんはおらず、私だけだった。

ふと、目に止まった本が一冊。

ロシアの軍事関係について書かれた雑誌があった。別に幼年学校に入ったからといって自分の国の政治や軍事にそんなに詳しくなるわけではないので、パラパラと載っている写真を見るだけでこの本を見終わると思っていた。でも、とあるページで私の手が止まった。"少女達が銃を持つモスクワ第9女子士官候補生寄宿幼年学校とは"というページだった。

もちろん写真が多く掲載され、懐かしい景色や教官の顔も乗っていたが、その次のページにはその幼年学校の生徒へインタビューというページがあり、私は思い出した。

 

「そういえば、あの時日本のジャーナリストの人が来てたっけ...。」

 

そして、順々にページの内容を目で追って行くと私が写真とともに載っていた。

 

「あっ...。」

 

そう、私はあの時インタビューを受けた。

まだ日本へ来る5ヶ月ほど前だったか、それよりも前だったか。

あの日の午前中は射撃訓練があり、射撃場で同級の生徒達と一緒に訓練に励んでいた。

 

「サーニャは射撃が上手だよね~。」

 

「そうかな?」

 

「そうだよ~!私達同級の中で1位だと思うよ?」

 

「それは言い過ぎ。」

 

彼女はアンナ、よく一緒に食事をしたりする一番仲の良い同級の友達だ。

射撃訓練が終わり、射撃場から次の教室へ移動するための準備をしている時。

 

「サーニャ、見てあれ。」

 

「うん?」

 

唐突にアンナが指を刺して私に言った。

指された方を見ると、1台の車が敷地内に入ってきていた。偉い人かな?と思ったが、車から降りた人物の格好で、その考えを打ち消した。

明らかに私服のようだった。

 

「誰だろう?」

 

「ジャーナリストかカメラマンじゃないかな。」

 

その人物は男性だったが、この幼年学校に居る男性といえば教官しかおらず。

その人数は片手で数えられるほどで、週によっては男性と触れ合わない日もあったため

私達の他に見ていた同級の子達も、ざわざわとなっていた。

 

「さぁ行こう、次の時間に遅れるよ。」

 

「あ、うん!」

 

その時、私は特にその来客を気にしてはいなかった。

午前の科目が終わり、昼食の時間私は一人で食堂へ向かっていた。教官の所へ行くと言って、先に食堂へ行っててとアンナに言われていたからだ。

食堂は1階にあり、私が居るのは2階のため階段を降りなければならないのだが、ここでその来客とすれ違った。

 

Здравствуйте.(こんにちは。)

 

その彼はロシア語で挨拶をしてきた。

 

Здравствуйте.(こんにちは。)

 

私ももちろん返す。

その顔を見た感じではアジア系、強いて言うなら日本人の顔のような気がした。

目をそのまま下に向けると首から下げたネームプレートがあり、"Japan"と書かれていた。

肩からは大きなカメラが下げられていて、やはりジャーナリストかカメラマンだった。

「やっぱりあの人ジャーナリストかカメラマンだったよ。」

 

「サーニャあの人に聞いたの?」

 

「サーニャ~、抜け駆けはダメだぞ~!」

 

「イリナ、口に入れたまましゃべるのはお行儀が悪いよ!」

 

私とアンナ、そして食べながら喋るイリナ、それを注意するナターシャ。私と仲の良い3人だ。

 

「いや...そういう訳じゃなくて...。」

 

「カッコ良かったか!?」

 

イリナが私に顔を近づけながら言う。

 

「普通、かな?挨拶はしたよ、日本人(イポンスキー)だった。」

 

「なーんだ、じゃあ私は興味ないな~。」

 

がっかりという顔でイリナは再び食事に手を付け始めた。

 

「失礼でしょ、イリナ。」

 

「へいへい。」

 

それを注意するナターシャと軽い返事でそれに返答するイリナ、これはいつもの光景だ。

 

「お前ら、昼食中だが聞いてくれ。」

 

男性教官が食堂に入ってくる。

 

「何だろう?」

 

「誰か銃の弾抜き忘れたんじゃないのかー?」

 

「それは昨日のイリナでしょ。」

 

「あ、えへへ...。」

 

教官が話を続ける。

 

「今日は日本からジャーナリストがここに来ている。全員失礼の無いように。」

 

その言葉を聞いて、私を含めたその場に居た全員が返事をする。

すると男性教官は私の方を向いて。

 

「それからサーニャ。」

 

「はい?」

 

「お前にはジャーナリストのインタビューを受けてもらう事になった。」

 

「私ですか...?」

 

急なその言葉に私は驚いていた。

 

「この学校で日本語を話せるのはサーニャ、お前だけだ。これも何かの縁だろう。」

 

「は、はぁ...。」

 

「というわけだ、サーニャ昼食が食べ終わったら応接室に来てくれ。以上だ。」

 

そう言うと男性教官はそそくさと食堂から出て行った。

 

「凄いじゃんサーニャ!インタビュー受けるなんて!」

 

「これでサーニャも有名人だな!」

 

アンナとイリナが私を見て言った。

 

「えぇ...私そういうの初めてなんだけど...。」

 

「あれあれ~、成績優秀なサーニャちゃんは恥ずかしがり屋さんなのかな~?」

 

イリナがフォークを私の方に向け、くるくると回しながら私をからかう。

 

「別にそういう訳じゃ...。」

 

「私は羨ましいよ~、次の科目が潰れるんだから~、あ~羨ましい~。」

 

「イリナちゃん絶対そうは思ってないでしょ...。」

 

「えー、潰れるのが羨ましいっていうのはホントの事よ!」

 

「はぁ...ごちそうさま。」

 

私は重い足取りで席を立つ。

 

「よし、じゃあ頑張ってなサーニャ!」

 

「頑張ってね~!」

 

「頑張れ~!」

 

三人が私にエールを送る。

食器類を片付け、広い敷地内の奥にある応接室へと向かった。

食堂も敷地の一番端にあるため、応接室に行くのに少し歩くことになる。

私は応接室に来るのは初めてであった。

 

「ふぅ...。」

 

息を整え、扉をノックする。

 

「失礼します。」

 

「いいぞ。」

 

返答を聞き、扉を開ける。

その部屋には先程の男性教官と階段ですれ違った例のジャーナリストが居た。

 

「では私はこれで。」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

私が来たことを確認して、男性教官は席を外し外へ出て行った。

 

「やぁ、さっき階段ですれ違った時に挨拶してくれた子だね。」

 

片言のロシア語で話しかけてきた。日本人の口からロシア語が出てくるのは何とも不思議なものだった。

 

「日本語で大丈夫ですよ。」

 

私がそう言うと、彼はびっくりした表情をした。

 

「へぇ、キミは日本語を話せるのかい?」

 

「はい、少しの間日本に住んでいたので。」

 

「そうなんだ~、僕は"沢田 佳一"っていうんだ。じゃあ日本語でインタビューに答えてもらおうかな。まずは...あーそうだ、名前教えてくれるかな?さっきの人に聞きそびれちゃって。」

 

彼はメモを取り出した。

 

「私はアレクサンドラ・チャイカって言います。皆からはサーニャって呼ばれてます。」

 

「サーニャさんだね。」

 

彼はペンで私の名前をメモしているようだ。

 

「じゃあ、サーニャさんはどうしてこの学校に入ろうと思ったの?」

 

私がここに入ろうと思った理由。

別に国のためとか、そう言った理由ではない。

私以外の生徒は他の学校からの成績優秀者編入を除いてに孤児の子が多く、両親がいない子が8割から9割を占めている。

自分の居場所を探してきた子、一人で生きていくために来た子など様々。

しかし私はどうしてここに入ろうと思ったのか。

祖父母に迷惑をかけたくなかったから、それもある。しかし第一は、私が祖父母を守らなきゃと、当時の私は幼いながらにそう考えていたのだと思う。

実際今の私は一人日本に来てその目標はどこへやら、だが。

 

「家族を守る為です。」

 

そのときの私はそう答えていた。

 

「なるほど、家族の為にねえ...。」

 

彼は再びペンを動かす。

 

「ここは楽しい?」

 

「はい、授業や訓練は大変ですけど楽しいですし、友達にも恵まれてるので。」

 

「なるほどねー。じゃあ、卒業したらどうするんだい?」

 

卒業したら。

私はこの時悩んでいた。

他の皆はそのまま陸軍大学へ進むのが大半で、卒業生には政治家になった人もいる。

私は最初から陸軍大学に行くつもりはなかった。先程も言った通り、祖父母を守るという使命があったからだ。だから、卒業後は祖父母の家へ帰り、一緒に暮らすというのがここに入った当初の目標だったが、この頃の私は幼少のほんの少しの期間だけ暮らした日本に行ってみたい、出来るなら一人で暮らしてみたいとも思っていた。

 

「私の家族、祖父母の家で一緒に暮らすか、幼い時に暮らしてた日本で一人暮らしするか迷っています。」

 

「なるほど。」

 

またメモに書く。

しかし途中でペンを持つ彼の手が止まった。

 

「ちょっと僕の話をしようか。」

 

そう言って彼は自分の仕事を始めるまでの経緯を話し始めた。

 

「僕は軍事ジャーナリストもやってて、戦場カメラマンでもあるんだ。僕にはね、父親が居なくて、母親が女手ひとつで育ててくれたんだ。うちは小さな店をやっててね。僕が高校を卒業する前の日の夜の夕飯の場で仕事を継ぐって言ったんだ。その時にはもう戦場カメラマンになるって夢があったんだけど、もし僕が行った先で死んだら母親がすごく苦労するだろうと思って諦めてたんだ。でもその時母親がお前にもやりたいこととか夢があるんだろう、お前はお前の道、人生を進みなさい。って言ってくれてね。

結局そこから独学で勉強して今こんなかんじになったわけ。」

 

彼は手に持っていたメモ帳を折りたたんでペンとともに胸のポケットに仕舞って最後にこう言った。

 

「キミの家族、お爺ちゃん、お婆ちゃんも多分同じこと考えてるんじゃないかな?サーニャさんの人生は誰かのものじゃない、キミだけの物なんだからね。」

 

この時私は頭のなかでなにか、もやもやが少しばかり晴れた気持ちになっていたのを覚えている。

 

「なーんて、偉そうなこと言える立場じゃないんだけどね。うん、取材はこれでいいよ。色々お話聞けてよかったよ。」

 

「あ、いえ、こちらこそ。貴重なお話聞けて良かったです。」

 

私がそう言うと彼はすぐ隣の机に置いてあったカメラを取ると

 

「写真一枚いいかな?取材用で使いたいんだ。」

 

「はい、いいですよ。」

 

笑って笑ってと彼言っていたが、内心恥ずかしく不自然な作り笑いになっていただろう。

そしてその時の写真が今この雑誌に載っていた。

 

「やっぱり変だ...。」

 

撮り直してくれても良かったのに、と思った。

しかし、彼の言葉のおかげで今の私があるのかと思うと感謝してもしきれない。

ただ、残念なことに彼はあの取材の数週間後。とある紛争地帯を取材中に何者かに頭を狙撃されて亡くなったそうだ。その訃報はロシアでも放送されており食堂で昼食を食べていた私の目にも映った。そして、彼が最後に記したのが今私が手に取っているこれだった。そのコーナーの最後に"この本を故 沢田 佳一に捧ぐ。"と書かれていた。

 

「あの時のお礼を言いたかったな...。」

 

せめても、と思いレジへ向かおうとした瞬間。

 

「サーニャ、何持ってるの?」

 

一ノ瀬さんが一足先に本の会計を済ませ私に声をかけに来た。

 

「えっとこれは...。」

 

私が隠そうと思った途端、さっと本を取り上げまじまじと表紙を見る。

 

「ロシアの軍事...ふむふむ~サーニャも少しはこういうのに興味が湧いたのかな?」

 

表紙を見たかと思うとページをペラペラとめくり始める。

 

「ふむふむ...お、サーニャ。女子士官候補生寄宿幼年学校って知ってる?女の子しか居ない軍事学校なんだよ~。」

 

「えーっと...。」

 

「ほらほら見て!、皆かわいいよね~こんな子たちが銃を持っちゃうんだから凄いよ~。」

 

一ノ瀬さんが私にページを開いて見せる。

そして次のページをめくる。

 

「この子もかわいいな~...って...あれ...?」

 

一ノ瀬さんの表情が固まる。

そして、そのページと私の顔を交互に見て

 

「サーニャにそっくり...。」

 

と言った。

 

「一ノ瀬さん...それ私...。」

 

「へ...えぇぇぇぇぇ!!??」

 

静かな書店に一ノ瀬さんの絶叫が響き渡った。

「なるほどねぇ~。」

 

本を買い終えた私達はカフェでお茶をしていた。

そこで私は、今まで隠していたすべてを一ノ瀬さんに話した。

 

「でもなんで教えてくれなかったの?」

 

「言ったら変な目で見られて友達じゃなくなると思って...。」

 

私がそう言うと、一ノ瀬さんは

 

「あははは!」

 

笑っていた。

 

「だって...日本じゃそう言うの無いし...あんまりいい目で見られないと思って...。」

 

「私は逆にかっこいいと思うし、凄いと思うよ!そういうの!」

 

一ノ瀬さんは目を輝かせていた。

 

「うん...まぁ一ノ瀬さんはそういうの分かってそうだとは思ってたけど...。」

 

「なんか褒められてないような気がするけど...。」

 

話をしていると、ウェイトレスの人が二つのパフェを運んできた。

 

 

「さぁ~!食べよっ!」

 

「うん。」

 

グラスから大きくはみ出たチョコレートソースのかかったソフトクリームを私はスプーンですくい、口の中に頬張る。

 

「おいしい...。」

 

パフェなんて名前しか聞いたこと無くて、食べるのは今日が初めてだった。

その後も手が止まらなく、ぱくぱくと食べていた所に一ノ瀬さんが

 

「はい、サーニャ!あーん。」

 

と、スプーンに大きな苺がのっていた。

 

「えっ...それは恥ずかしい...。」

 

「別に男の子とじゃ無いんだからいいでしょ~?ほら~。」

 

一ノ瀬さんがスプーンをこちらにぐいぐいと向けたので仕方なくぱくりと頬張る。

 

「ん...おいしい...。」

 

「はい、よく出来ました~。」

 

私達はパフェを食べ終え、温かい紅茶を飲みながら話をする。

 

「じゃあコンバートされたあのアカウントはなにか関係あるの?」

 

「多分あの学校に居た時に訓練で使ってたVRゲームみたいなやつのアカウントをコンバートしちゃったんだと思う。あれは確か自身の身体能力をそのまま仮想世界に持っていくってやつだったし...。」

 

「どんなことやったの?」

 

「GGOみたいな銃の撃ち合いだね、人を撃つことに抵抗をなくすためチームで分かれて撃ち合うっていうゲームだった。痛みはGGOほど無かったけど。」

 

「GGOでサーニャが強いわけがわかったよ、納得。この事、クラスの皆には言う?」

 

一ノ瀬さんが聞く。

 

「うーん...一ノ瀬さんと同じ反応を皆がしてくれるとは限らないし...」

 

「それなら私に任せなさいな!これでもクラス委員なんだから!」

 

お茶を飲む私に向かって自信ありげにピースをする。

 

「じゃあお願いしよっかな。」

 

「任せて!、あ~そうだ。サーニャにいい忘れてたんだけど。」

 

「うん?」

 

「GGOで私、スコードロン作ろうと持ってるんだけどサーニャ入ってくれないかなーと思って、どうかな?」

 

スコードロンはSAOやALOで言うギルドのようなもので、スコードロンメンバー用の専用ルームが与えられたり、アイテムをしまっておけるロッカーを無料で使用できスコードロン用の共有アイテムストレージが使用できるなど、メリットは様々である。

 

「うん、入りたい。」

 

「そっかぁ!ありがとうサーニャ!」

 

テーブルを乗り出し私の手をにぎる。

 

「でも2人だけ?スコッチとかアルフレッドさんは誘う?」

 

「アルフレッドさんは商売仲間と商用スコードロンを組んでるらしくって誘えないかな~、スコッチは...うーん。」

 

一ノ瀬さんが頭をかく。

 

「まぁ...ちょっと"変な"所はあるけど、腕は確かだし...。」

 

「まぁとりあえず数合わせとして、メンバーに誘って様子見かな!」

 

「あはは...。」

 

 

 

 

 

私とサーニャはカフェでの会計を済ませ、店を出る。

時間は午後5時過ぎを指していた。

 

「うーん、サーニャは他に見たい所ある?」

 

時間も時間でそろそろお開きかなと思っていた。

 

「うーん...、あ。」

 

サーニャは辺りを見回して、ひとつのお店を見つけた。

そのお店の看板には"Bear・Bear"と書かれていた。

 

「あそこ見たい。」

 

「うん、いいよ~。」

 

サーニャは少し早歩きで店に向かって歩いていた。

ショッピングモール内にある他のお店とは違い、木製の白い扉があり、サーニャがそれを開けるとそこはクマのぬいぐるみばかりが置いてある、テディベア専門店だった。

 

「うわぁ、すごい数。」

 

所狭しと店の中に飾られたテディベアは大小、種類様々で、店内の壁には"世界中から集めたテディベアを販売しています。"と、書かれていた。

 

「あれ?サーニャ?」

 

さっきまで私の前に居たはずのサーニャが突然姿を消した。

ふと、店の奥に目をやると一つのテディベアを手に取り、じっとそれを眺めているサーニャが居た。

 

「サーニャ、テディベア好きなの?」

 

じっと無言で眺めているサーニャに声をかける。

 

「うん、大好き。」

 

意外や意外、普段やGGO内でもあんまり表情を変えて見せないサーニャにこんな一面があるなんて。

 

「もしかして家にもテディベアがあったり?」

 

「お爺ちゃんとお婆ちゃんの家に30体あるんだけど、こっちに来るときにバックに入る5体だけ持ってきた。」

 

「30体!?全部サーニャの?」

 

「うん。」

 

サーニャにこんな可愛い一面があるなんて。いや、普段から可愛いけど。

 

「これ、丁度日本に来る日に発売したやつだ...こっちじゃ買えないと思って諦めてたのに...。」

 

「買う?」

 

「うん。」

 

そう言って、そそくさとレジに向かうサーニャ。

ふと、置いてあるサーニャがレジヘ持っていったテディベアのリボンから延びた値札を見ると"\5,980"と書かれていた。

 

「サーニャ!これ高いよ!?」

 

レジに向かったサーニャの方を振り返るとすでに会計を済ませていた。

 

 

 

 

 

「今日は楽しかったよサーニャ!」

 

「うん、今日はゲームやる?」

 

「もちろん!スコッチにスコードロンの話しなきゃだしね!」

 

「そっか、じゃあまた後でね」

 

「うん!きをつけてね~!」

 

駅まで見送りに来た一ノ瀬さんに手を振って、改札に入った。

私の手には本とお気に入りのテディベアが入った袋が握られていた。

丁度ホームへ降りると電車が来ていてそれに飛び乗る。

電車に乗り、私の家の方へはこの時間に行く人は少ないのか席には空席が目立っていた。私は開いている席に座り、今日のことを振り返った。

夕飯のための買い物を済ませ、家につき、シャワーを浴びて髪を乾かし、夕飯の準備。の前に、買ってきた本のページをめくって私の写真が載っているページを開き、テーブルの隅に置いてある小物入れからカッターを取り出して、その写真のあるページの下に厚い当紙を敷いてその写真を切り抜く。

もう一方の袋からテディベアを取り出して切り抜いた写真と一緒に手に取り、立ち上がり壁にかけてあるコルクボードにピンでとめた。コルクボードには幼年学校卒業の時に私、アンナ、イリナ、ナターシャで撮った一枚と日本へ出発する前に私と祖父母の三人で撮った写真。そして今貼った、ジャーナリストの人に撮ってもらった私の写真。テディベアはその横に置いた。

「おまたせ。」

 

ログインするとテーブルに座ったスコッチとその前で立っているラファールが居た。

 

「おっ、サーニャ待ってたよ~。スコッチにはもうスコードロンのこと話したよ。」

 

「もちろん俺も参加するぜ、双子の悪魔を俺一人じゃ探せないしな。」

 

「私もその双子の悪魔とかっていう女の子のプレイヤー気になるし、まぁ全く情報はないんだけどね。あ、サーニャも座って座って。」

 

ラファールに案内されたスコッチの隣の開いていた席に座る。

 

「まぁそれはそれとして、さっきGGOからメールが届いてたんだけど、サーニャは見た?」

 

「ううん。」

 

「日付が変わる明日の0時に、アップデートが入るんだって!それも結構大型の!」

 

「今まで乗り物は私物化出来なかったんだが、今回のアップデートでそれができるようになるらしい。まぁ入手方法は簡単じゃないようだがな。」

 

「それと新しい土地も増えるんだって、私明日学校休んで一巡りしてこようかな~」

 

「俺も明日店閉めて朝からプレイするか...。」

 

「えっ...!スコッチはともかくラファール明日学校だよ...!?」

 

「仮病仮病~!大丈夫、成績はクラスでもトップだし~。」

 

「駄目!」

 

さすがに冗談だとこの時ばかりは思っていたのだが、以外に本気でこのあと何度も説得することになるとはこの時の私は知る由もない。

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