A.P.228/8/7/13:40
壊れた建物、捨てられた車、あちこちから発生する炎。
いつもの平穏な日常は突然の襲来によって破壊された。
―――さっきまで三人で遊んでいたのに。
炎と瓦礫の中を一人の少年と二人の少女たちが歩いていた。
背の高い少女は少年ともう一人の少女の手を引いて歩き、もう一人の少女は背の高い少女の手を掴み、泣きながら歩いていた。少年はどこか遠くを見つめながら手を引かれていた。
―――どうして突然こんなことに。
背の高い少女が言う。
「二人とも、まだ歩ける?ここ真っ直ぐ行けばすぐ避難所だから」
もう一人の少女が頷く。
「よしっ!じゃああと少し、頑張って歩こう!きっと皆も...避難所にいるはずだよ」
―――妹や両親は無事だろうか。
少年が口を開く。
「姉ちゃん...」
背の高い少女は立ち止まる。
「どうしたの?疲れちゃった?休憩する?」
「なんで...どうしてこんなことになったの?なんで姉ちゃんは...そんなに落ち着いていられるの?」
「...なんでだろうね、それは私にもわからない。けど、私が落ち着いていられるのは私がお姉ちゃんだから。可愛い妹たちや可愛げのない弟を守らないといけないから」
背の高い少女は笑顔を浮かべながら答え、少年たちの手を引きながらまた歩き始める。
―――なんでそんな風に笑えるの。姉ちゃんだって、泣きそうな顔してるのに。
そのとき、近くの建物から爆発が起こった。少年は突然の衝撃によって倒れてしまった。
背の高い少女は少年を起こすために振り向き、手を差し伸べようとした。そのとき、少女は見た。
少年の背後から赤黒い煙のようなものが迫ってきているのを。
それが、少年を狙っていることを。
少女は少年を急いで起こそうと手を貸す。しかし赤黒い煙はスピードを上げ少年へ向かってきた。
(間に合わないーーっ!)
少女は少年を起こすのを止め、少年の後ろへ駆けていく。少年と煙の間に立つように。
少年が驚いたように振り向きながら言う。
「?姉ちゃん、どうしtーーー」
その瞬間、少年は見た。
少女が赤黒い煙に飲み込まれていくところを。
「ーーーっ!姉ちゃん、姉ちゃん!」
「ーーーね、姉...さん?」
少年は叫ぶ。泣いていた少女はその光景をみて茫然としてた。
少年は背の高い少女を助けようと駆け寄ろうとする。
「きちゃ...だめ。うぐっ、ああああっ!」
「でもっ、姉ちゃん!」
「はやく、逃げて...ユキノちゃんを連れて、はやく...避難所へ」
「ね、姉ちゃんを置いて行けるかよ!姉ちゃんも一緒に行くんだよ!」
「ハチマン!」
「っ!」
―――嫌だ、嫌だ
「お姉ちゃんは大丈夫だから...こんな煙すぐに追っ払って皆のところに行くから。だから先に行って、ね?」
背の高い少女はさっきと同じ笑顔を少年に向けて言った。
「...わかった。行くぞ、ユキノ」
少年は振り返り、茫然としている少女の手をとった。
「え...ハチ、マン?ね、姉さんは...」
「いいから、行くぞ」
少年は少女の手を取り、歩き出す。
「で、でも...姉さんが」
「...姉ちゃんは大丈夫だ、後から来る」
「で、でも」
「行くぞっ!!」
「っ」
少女はまた泣き出しそうな顔をしながら、少年と共に歩き出す。
彼らは振り返ることなく、避難所へと向かった。
―――ちゃんと、戻って来いよ...
彼らは避難所で妹と両親と合流し、姉が来るのを待った。しかし、姉が、ハルノが来ることは―――なかった。