それにしても八幡の周りを誰にしようか…………。
部員達と話し終わった後
俺は近くのサイゼリアで、今日の記録を編集しながら食事をとる。
…………やっぱり彼だけじゃダメか。
本当なら『比企谷八幡』のみを取材対象にしたいが、それでは総武高校の取材にはならない。
他にも、面白みのある生徒を何人か取材しなければならない。
何がいいか…………やっぱ『葉山隼人』か?
それに卒業生ってのもいいな。
一年坊も回ってみるか………?
あの先生は止めとこう。
なんか危ない気がする……何故かは分からないが。
取材して内容を纏めて計画を立てていると、サイゼリアに一人の女性が入ってくる。
一目見ただけで分けるほどの美人。
嫌味な美しさは無い。
知性的な目、水をよく弾きそうな肌、柔らかそうな唇、着こなされた派手すぎない服。
寧ろ近づきたくなるような、人を惹きつける何かがある。
顔はもちろん、プロポーションもかなりの物を持っている。
馬鹿な男子がいれば、十中八九遊ばれるだろう。
肌に触れることは叶わないだろうが。
だが、危険だ。
これほどまでに危険な匂いのする女には出会ったことが無い。
別に、殺し屋とかの雰囲気があるというわけじゃ無い。
そう、それなのに危険と分かる事がおかしいのだ。
あれほどの美人。
近寄りがたい雰囲気を出していないのに誰も近づかない。
いや、近づけない。
話しかけたいが話しかけられない。
近づきたいが近づけない。
イカロスの話に似ている。というかそのままだ。
蝋でできた羽で空を飛んだイカロスは、太陽に近づこうとする。
だが蝋が溶けてしまい、羽が崩れ地に落ちて死んでしまう。
人の深層心理を熟知しているのだろう。
誰も近づかない事を知っている。
こういうタイプは将来、かなりの大物になる。
例えば政治家だ。
あいつらは大衆の心を掴む話し方を得意とする。
この女は話してもいないのにこの店の人間、全員を虜にしている。
俺を除いて。
だが近づくのは得策ではないな。
何かしらの問題が起きてしまったら面倒だ。
何か起きなくても、ああいう輝いた人間には近づきたくない。
何十年も生きてると、ああいう『良品』に出会う機会が多い。
連中と話すと、必ず腹の探り合いをしなければならない。
だから俺は目線を机から離さない。
例えその女が隣のテーブルに座っていて、雪ノ下の名前の資料を見ていても。
……………………………勘弁しろよ。
もうかれこれ5分は見てるぞこの女。
普通ここまで露骨に見られると、咳払いの一つや二つしたくなるものだ。
だがそれをやったらおしまいだ。
何かしらのアクションを起こす時、それは話しかけるチャンスになってしまう。
今ここで、俺がゴホン!とでも言ってみろ。
その時におそらくこいつは『あっ、すいません』から始まって、そのまま資料を見せなければならない事になる。
ふっ!このまま史料を纏めたらすぐに帰って寝るん
「あのー、ちょっといいですか?」
…………咳払いすらしてないんだが?
魔王降臨。
記者涙目。
作者望眠。