「魔王様魔王様、勇者たちが攻めてきましたよ。どうします?どうします?」
「とりあえず、その何も問題なさそうな声色で報告するのをやめようか。それはそうと、この騒音の原因はなんなんだ?」
隣で漫才をやっているのは現魔王のサタンとその片腕の悪魔大元帥の一人アルシエル。このお城の主とそのペットみたいな関係のふたりである。
「失礼なこと言われた気がするが、アルシエル何か知らないか?」
「知りませんよ。それより、魔王様もうここにいた悪魔たちは全滅したみたいですよ?」
「なんでそんなに緊張感がなさそうなんだ?そんなにのほほんと紅茶を飲みながらいうことでもないと思うのだが?それはどうでもいいとして、この音どうにかならんのか?煩すぎてもう我慢ならん。」
「そうですね。せっかくのティータイムが台無しです。私が何とかしましょう。」
そう言ってアルシエルはカップを傾けススッと紅茶を飲んだ。
「これを飲み終わったらですけども。」
「悠長なことで…」
バタン!
魔王城の最奥にあるこの部屋の扉が開いた。
「観念しなさい魔王!悪逆非道の数々ここで精算してあげます!」
あれは勇者だったけ?もうここまで攻めてきたのか。それならもう反撃しても…
「煩い!そこ、静かにしておれ!」
魔王は叫び散らした。
「魔王様、おかわりをしても構いませんか?」
「構わないぞ、それにクッキーを追加で三枚食べることを許そう!」
「ありがたき幸せ。」
アルシエルは魔王の足元で深々と頭を下げ、おかわりを注ぎに行った。
「魔王様お疲れでは?」
「いや、今日は勇者とやらが来るらしいからな。いつ来てもいいように構えておらんと!」
「それではせめて今だけは休憩なさっては?」
「それもそうだな。少々お手洗いに行ってくるぞ。」
「行ってらっしゃいませ。」
魔王は仁王立ちを崩し部屋を出ていった。その間勇者エミリアもその一行はポカンとしていた。
暫くして魔王は部屋に戻ってきた。それは先程と違って髪の毛が決まっていて、その上、マントまできれいになっていた。それは勇者がいつ来てもいいようにと整えられたものであったのだが……
「そこを退いてくれるかな、麗しのお嬢さん?」
「あ、はい。じゃなくて!」
「アルシエル、俺の髪の毛決まっているか?さっき、誤って髪の毛をさわってしまってな。それとマントも変えてきたんだが……」
「お似合いでございます、我が君。」
「おうそうか。これで勇者が来ても恥ずかしくはないな。」
そのやり取りを聞いていた、勇者エミリアとその一行は唖然としていた。それもそうである、魔王が敵である自分たちのためにめかし込んで来ていることに。そして、その敵に気づいていないことに呆れたのだ。
「エミリア、俺らはこんなやつらに今までやられていたのか?」
「そうね、そう考えると少し情けなくなってきたわね。」
気が抜けてきた勇者一行はここで勝負に出た。
「魔王サタン!私たちをバカにするのもいい加減にしなさい!」
そう叫び、右手に精製した
「お嬢さん?少し過激ではないですか?」
「え?」
アルシエルは何事もなかったかのように紅茶を飲み続けていた。
「魔王様、お戯れもほどほどにしてくださいね。このお城の耐久は紙を通り越してマシュマロなんですから。」
勇者エミリアは何か納得したような、そしてやりきれない思いでいた。
「本気で城をマシュマロで作るやつがどこにいる!!!」
勇者の仲間はもう戦う気が起きなかった。だってコントみたいだったもん、と、後日に語っていた。
「いい加減にしなさい!」
勇者エミリアは聖剣を片手に魔王に斬り上げを放った。しかし魔王は顔を傾けてかわした。だがそれがいけなかった。
「いったぁあ!」
エミリアの聖剣は豆腐でも切るかのように魔王の角を切り落とした。
「あ、あんたが悪いのよ!そこ存在しているから!」
「存在を否定することないだろ?確かに見た目は醜悪かもしれないけど、それを小娘に言われる故はない!」
「あんた、私を何がなんでも勇者と認めないってこと!?」
「てか、勇者ならもう少し大きくて、威圧感が凄くて問答無用で悪魔を切り落とす非道の戦士だと聞いていたのだが……。どうやら非道なのは今の世の中らしい。だってこんな小娘に勇者をやらせなきゃ成り立たない社会なんて存在する意味あるのか?」
「そ、それは」
なにも言えなくなった勇者と、片方の角を切り落とされた魔王は敵同士でありながら険悪なムードにはならずに会話をしている。
ここで私の自己紹介をさせてもらいます。兄さんを見守る心優しい幽霊の子です。名前はありません。生まれてすぐに殺されてしまったので。それ以来兄さんについて回っている兄離れできない幽霊です。幽霊と言うのは便利で、壁抜けや、攻撃を受けなかったり。それだけじゃなく、寿命すらない。あぁ素晴らしいではないか。
はしゃぎすぎました。
「消え去れ魔王!」
「誰が貴様なんかに!」
あ、自己紹介してる間に何かあったみたいですね。口調ってなかなか安定しない。
「消えろ、消えろ、消えろ!」
勇者エミリアは聖剣を右へ左へと連撃を放ちながら魔王を追い詰めていく。
「何するんだよ!」
さすがにかわすのが難しくなってきたのか少しずつ攻撃が当たるようになってきた。
「あんたのせいで、あんたのせいでもうお嫁に行けないじゃない!」
本当に何があったかは想像におまかせします。
「あ、あれは不幸な事故じゃないか…」
追い詰められた魔王は壁を壊し外へと出た。
「魔王様、そこは出入口じゃありませんよ?」
「アルシエル、何をのんきなこと言っている?」
「え?散歩に行かれるんですよね?勇者を待つ間に。」
「だから私がその勇者だっていってるじゃない!」
「「ありえない」」
「どこまでバカにするつもりよ!」
その一言と共に放った一撃は魔王に直撃。ぼろぼろになった魔王は逃げ切るためにゲートを開いた。
「アイルビーバック!俺はまたここ、エンテイスラに戻ってくるぞ!」
そう言ってゲートをくぐっていく魔王を追いかけるようにアルシエルが飛び立った。
「魔王様待ってください。」
「あんたも待ちなさい!」
魔王一行を追いかけるようエミリアもゲートに飛び込んだ。
ちょっと!おいてかないで、兄さん!
感謝です。
少し修正入れました。