-王立書士隊バルバレ支部-   作:みーきんぐ

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もしこの世にアイルーがいたら、

世界はもっと平和になると思います。


今回もよろしくお願いします。

2017/3/27 修正


出会い編 鍛錬

朝目が覚めて(サクマに起こしてもらって)

朝食を準備する(サクマが作る)

 

簡単に掃除をすませ(サクマがそもそも綺麗にしてくれている)

狩猟用のインナー上着とブルージャージーを履いた

 

今日は仕事が無いため

一日トレーニングに当てようと思う

サクマをひとしきり撫でて、家を出る

 

 

まずは反射神経の鍛錬

 

 

書士隊技術部専用グラウンドへ向かう

そこにはバリスタが設置してあり、最大150mの射程を自由に試射できる

(もちろん許可が必要)

 

 

技術部本部にタイミング良くトト・エリザベスがいたので

練習相手になってもらった

 

砂地のグラウンドはバリスタの痕でそこらじゅうに穴が開いている

 

私はバリスタの発射台から30m離れた場所に正座し、

ブレイズブレイドχを抜刀(全爪射出)状態で右脇に置いた

 

 

特性アイマスク(サクマ作)を付けて完全に視覚を遮る

トトが準備の合図を送ったので、私は背筋をぴん、とただす

 

彼女には私の心臓狙いでバリスタの照準を当ててもらい

そのバリスタを目隠しで切り落とすというのが特訓内容だ

 

バン!と大きな発射音が鳴るとほぼ同時に

右脇に置いた剣を左手で抜きそのまま天に向かって振り上げる

 

しぃん・・・と静まり返ると私の両サイドで

真っ二つに切り裂かれたバリスタの弾が転がっていた

 

間髪入れずにトトはバリスタを発射する

そのまま次々に迫ってくる弾を「左手持ちのみ」で切り払う

 

合計で約100発のバリスタを捌いたところでトトが終了の合図を出した

私の周辺にガラガラと鉄くずが山になり、焦げた匂いが辺りに充満する

ふぅ、と息を付きアイマスクを外そうとした瞬間・・

 

バン!

 

と音がしてバリスタが発射された

すかさず体をずらし、右手でバリスタをキャッチする

(バリスタの弾は槍状で、全長2.5m重さ20㎏、素材は酸化鉄製)

 

発射台の方を見ると、にやけ面のBCがいた

どうやら酒に酔ってノリでバリスタを発射したらしい

隣のトトにすごく怒られているのが遠目でもわかる(連続ビンタ喰らってる・・・)

 

まったく、そんなに怒らなくても

 

バリスタ程度じゃ私を射抜くことなんて出来ないし大丈夫なのだが…

(というか、あのトトのビンタをよける方が私には難しそうだ)

 

さて、トトに礼を言って技術部を後にする

 

ちなみに技術部の部屋の壁には「打倒king!」と書かれている

なぜモンスターではないのか・・

 

まぁタダで設備を使わせてもらっているから、

何も文句は言わないけれど

 

 

 

次に体躯の鍛錬

 

 

向かったのは工房オヤジの弟子の家だ

そういえば彼の名前は知らないなぁ

 

弟子はそれなりの名家に住んでいるそうで、

広い土地を持つ地主の跡取り?だそうだ

 

本人は武具職人になりたがっているようだが

まだ世継ぎ話に決着はついてないらしい

 

 

弟子は笑顔で私を迎え入れてくれた

 

さっきこの弟子について何か気になったのだが、

なんだか忘れてしまった

 

早速、敷地内の田んぼの一つに入る

畑はすでに水が貼られており

青空が綺麗に映りこんでいる

 

ブーツを脱いで、ズボンをまくり上げた状態で田んぼに入る

膝の高さまで泥につかると、ひんやりした感覚を感じ、ぶるっと震えた

 

田んぼは約200㎡あり、その中心まで進むと

竜神族の男性が待っていた

 

彼の名前はリオン先生

弟子の家庭教師である

 

彼は私より50歳ほど年上だが

初めて会った時から気が合い、こうやって稽古をつけてもらっている

 

 

ちなみに先生が弟子に教えているのはそろばんと文字の読み書きだ

 

 

稽古が始まる

 

私は長さ1.5mの丸太に鉄の棒を差した擬似大剣を2本(両方合せて160㎏)

リオン先生は双剣を模した木刀といういでたちだ

 

内容は簡単

 

リオン先生が双剣の型を見せ

そのまま私がトレースする

 

初めはゆっくり、上半身だけの動きを正確にコピーする

 

双剣は非常に繊細な動きをするため

それに伴って体中のあらゆる筋肉を連動させる

 

乱暴に剣を振るう大剣とはそもそもの基本が違う

そのため30分もしないうちに私の腕がすぐにへばってしまう

 

汗をだらだら流しながら鍛錬を続ける

リオン先生は次第にペースを上げていき

全身を使った型へと移行する

 

腕が棒になったみたいに言うことを聞かなくなるが

それでも気力で何とかついていく

 

平手からは血が滲み始めていた

 

双剣は、ジャンプや舞等を取り入れた攻撃が豊富で、

その「身軽さ」を活かした連撃でダメージを与える

 

私は双剣の動きをそのまま大剣2本分でトレースするため

手首の関節にかかる負担は双剣の比じゃない

 

もともと繊細に扱う武器では無いこともあって

剣先がぶれてしまう

 

しかも足元は泥沼だ

足先まで気を付けないとすぐに転倒してしまう

 

また泥沼の抵抗も大きい

最近やっとこの状況下で水面から1mくらいはジャンプできるようになった

(リオン先生は2m飛べる)

 

リオン先生は3時間ほど熱心に指導してくれた

ここ最近暇さえあれば先生に指導を乞うている

 

 

先生はお金は取らない主義だ

 

これにはいつも申し訳なく思っているので、

たまに好物の魚やお酒などをプレゼントしている

 

指導が終わり

弟子の家でシャワーを浴びる

 

 

リオン先生はなぜ私がこんな鍛錬を

しているのか私に聞かない

 

以前、こんな鍛錬をお願いしておかしいとは思わないか、と尋ねたら

 

「別に内容は何でもいい、向上心があるやつに協力するのは嫌いじゃない」

 

と返されたことがある

 

別によこしまな思いでこんなことをやっている訳ではないが

なんだか心を見透かされているような気分だった

 

リオン先生と弟子に礼を言って家を後にする

 

 

次に向かったのはバルバレに面している砂海だ

 

砂海はとても危険な場所ではあるが

陸側のビーチ(砂海と違って地面が硬い)は観光スポットで有名だ

人もそこそこいる

 

 

 

ビーチで待っていたのは荒巻だった

 

 

荒巻は東方の黒い道着を着ており、額には真っ赤な鉢巻、そして素足で待っていた

あたりは真っ赤な夕日に包まれて、砂海もキラキラと輝いている

 

私も素足になり、白い道着と赤い鉢巻を付けて

荒巻の前に立つ

 

彼は直径5メートルくらいの、円形に仕切られたロープの中にいた

仕切りの中に入場し、荒巻の目前まで迫る

 

 

始めるか

 

 

一言挟んで二人で腰を落としにらみ合う

これは東方の伝統的なスポーツ

 

相撲だ

 

近くのヤシの木から木の実が落ちた音を合図に、

私たちは正面からぶつかり合う

 

ツッパリ(張り手)という掌を使ったパンチで相手を押し

ロープ外に押し出したり、膝をつかせれば勝ちだ

 

私は単純な力でいえば荒巻をはるかに上回る

しかし回避能力とダメージの受け流し方は荒巻の方が上だ

 

風をゴウゴウ切る音を立てながら掌底を放ち続ける

荒巻はそれを紙一重のところでいなしながら反撃する

 

今まで何度もここで勝負をしているのだが、

私たちの試合に勝敗が付いたことはない

 

一度たりとも投げ飛ばされないし

線からはみ出すこともないのだ

 

傍から見たら演武のように見えたのだろう

 

30分も試合を続けていると、

砂浜にいる観光客や若い連中がぞろぞろ集まってきた

 

仕切りのロープがまるで戦場と観客席を区切る塀のように

皆が周りを囲む

 

70人くらいはいるだろうか

 

少し恥ずかしいが、荒巻は全く気にしていない

少しでも周りに気をそらせば

 

負ける

 

互いに意地の領域(ゾーン)に入っている

周りの声援も全く聞こえなくなっていた

 

更に気迫を上げる

周りの客は急な突風に当てられたような

衝撃を感じたが、興奮の方が勝っていて気付かない

 

残りの体力を考えると

次のツッパリで決めなければ勝てないだろう

 

荒巻もすでに足の筋肉が痙攣している

足腰に限界が来ているのだろう

 

「ふんっ!」

 

余力を振り絞った一撃を彼の鳩尾にぶち込む

荒巻は掌の動きに合わせて後ろに数歩仰け反りいなそうとする

だが、完全に打撃を与えることはできず、

 

力尽きた私は前のめりに

倒れこんだ

 

荒巻もフラフラの状態で膝をつき、倒れこむ

 

 

わぁっ!と歓声が巻き起こり、

観客たちはぐでんぐでんになった二人を胴上げする

 

彼らにとっては楽しいショーだったのだろう

どっと押し寄せる疲れに、軽く意識が遠のいていく・・・

 

 

 

・・・気が付くとあたりは真っ暗で

砂浜に二人で寝転んでいた

 

お互いの道着にはこれでもかというくらいの紙幣とコインが詰め込まれていた

恐らく先ほどのオーディエンスが集めた観覧料のつもりだろう

 

 

負けてしまった・・、とつぶやくと

荒巻は首を横に振った

 

どうやら最後のツッパリを回避するとき

リング(土俵)から足がはみ出てしまったらしい

 

荒巻は私の攻撃に押され、

ロープ際の意識が非常に難しかったという

 

彼の律義さに少し笑ったあと、

フラフラで立ち上がった私たちは

道着とお金を片付けて家路に着く

 

ぼろぼろになった姿を見て

いつものように「にゃふ~」とため息をついたサクマは

いそいそとご飯の用意をしてくれた

 

トレーニングの日は晩御飯を荒巻と食べることが多い

 

サクマもそれを分かっているので大量におかずを用意してくれる

(荒巻は普段一人で弁当を食べることが多い)

 

今日のメニューは、

まるかぶりアプトノスのステーキ(レモンペッパー風味1人前1㎏)

海藻とズッキーニの酢の物(お酢は私の自家製)

霜降りチーズin焼きおにぎり(フルーツソース味)

 

ちなみにお酢やおにぎりは祖国の伝統料理だ

私たちは故郷が東方なので食の文化がよく似ている

 

リリもベリルもお酢については嗅いだだけでめまいを起こしていた

(おにぎりは大好評だった)

 

食事時の二人の話題は、戦闘に関することばかりだ

 

新しいコンビネーションや、立ち回りについて

時には体を使って表現しながら熱く語り合う

 

最近はリリとベリルの笑い話もするが、

基本的に「過去」の話はしない

 

今までの狩猟自慢や武勇伝なんて

これからさらに強いモンスターと戦う上で

その意味は何もないからだ

 

特に私たちは、数年前まではだれも手を付けられないような

暴れん坊のガキだったこともあって、少し羞恥している面もある

 

それに何度も言うが狩は楽しくない

どんなモンスターでも討伐できれば問題ない

 

 

サクマの作ってくれたおにぎりを堪能しつつ

私は次のトレーニングのことを考えていた

 

荒巻もトレーニングに付き合ってくれる日は、

口の周りのソースなんて気にせず飯をほおばる

 

こういう姿は私とサクマの前でしか見せない

そのワイルドさを誰にでもふりまけたら

コミュニケーション力も上がると思うのだが・・・(特に女性との)

 

おいしい晩御飯を完食して

荒巻が自室にもどった後に

サクマがぷにぷにの肉球でマッサージしてくれた

 

私の体は固くて傷も多く、感覚が鈍いため、あまり気持ち良いとは感じないが

一生懸命押してくれる彼女に感謝しながら、疲れでそのまま眠りについた

 

明日明後日まではこの生活だ

 

 

ちなみに今週末は、ベリルとの国外調査の予定である




この世界の主食について

東方:米
西国:多種多様(主にパン)
南国:芋
北国:肉と酒


次回も見て頂けると嬉しいです。
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