2017/3/16 修正
空高く舞う鳥達の鳴き声が響き渡る
気温は適温 空は快晴 風もなし
ちょうど温暖期に入りかけた平原フィールドは絶好の狩日和だった
竜車に揺られて約2日
特にモンスターに出会うこともなくたどり着いたので
到着するまでは二人ともぐーすか寝て過ごした
キャンプ地に着き、支度を済ませた私たちは広いフィールドへと繰り出す
キャンプから出た先の開けた丘にはアプトノスたちが草をはみ、
草花たちはそよそよと風に吹かれている
そして手をかざしてしまうほどのきれいな青空が私たちを迎えてくれていた
今日は「あたり日」だったな、と軽くおしゃべりしながら適度な速度で走りぬける
ハンターは基本、フィールドに出ると駆け足で移動する
ジョギング程度の速さだが、これで3時間は余裕で走れる、
ハンターの心肺機能は伊達じゃない
モンスターの攻撃を緊急回避したり、注意を引くために全力で走ることもあるが
このような時はさすがにスタミナ切れを起こしてしまう
それでも無理して走ると急にめまいに襲われたり、
その場に倒れてしまうため、自己管理が非常に大事だ
また、私のような大剣使いや、双剣、ランス使いは
一撃のためにスタミナが切れる限界まで体を酷使することもある
とにかくスタミナ管理は狩の基本、これができなきゃハンターにはなれない
ハンターは狩の際に採集も行う
薬や武器の素材として使える虫や、いくつかの効能がある薬草
鉱石や魚などは、ほとんど狩場で現地調達するのだ
狩りを行う場所は一般人が行き交うことはまずなく、資源も多い
採集に使用されるピッケルや虫網は、折り畳み式の簡易的なものや、質を高めた上等なものもある
(ピッケルグレートなどは重く大きい為、基本的にキャンプに仮置きしている)
ただ、私たちは資材の在庫に余裕がある
今回は狩に集中するため、採集系の持ち物は一つも持って来ていない
プライベートな狩とは言ったものの、
ハンターはひとつの狩に対して常に真剣でないといけない
フィールドを進むにつれて、お互いの目つきは徐々に殺気立ち、
臨戦態勢に入っていった・・
崖に面した岩の多いフィールドに出た私たちは息をひそめ、
体をかがませながらゆっくりと進む
荒巻に尋ねる
「どうだ?見えるか?」
耳打ちすると、どうやら崖の上で陰になってわからないが
間違いなく居るという
荒巻の眼は非常に良い
2キロ離れたバサルモスを識別できるくらいだ
しかも夜でも目がよく効くため、非常に役に立っている
わたしは特別目がいいわけではないが、代わりに鼻が利く
1キロ離れた浜焼屋が何を焼いているか嗅ぎ取ることができるくらいに...
狩ではあまり役に立った試しがないが、
一狩分のペイントボールが少なくて済むくらい...かな
しばらくの間、様子をうかがっていると崖の上にゆっくりと動く影が見えた
今回の狩猟対象、リオレウスの亜種、蒼火竜リオソウルだ
やつもこちらに気づいたのか、ゆっくりと顔をもたげ、こちらを見据える
次の瞬間バサリと翼を広げ、威嚇の咆哮をあげた
狩の始まりだ
リオソウルは飛び上がり、そのままこちらへ滑空してくる
狙いは荒巻のようだ
彼は武器に手をかけたまま私と距離を取るように回避する
その間に私は着地したリオソウルの背後に回りこみ、死角に入る
回避した荒巻は「桜剣蒼斧【狂咲】」を斧モードで抜刀し、
滑空の勢いで動きが鈍ったソウルの足を切りつけた
切れ味に定評のある「桜剣蒼斧【狂咲】」は鮮やかに目標のふくらはぎの筋肉を切断する
たまらずソウルはのどを絞ったような鳴き声をだしこちらに顔を向ける
その咥内に炎がチラリと見えた
ブレスを放つつもりだ
私たちはそれを察知し回避行動に入る
荒巻はリオソウルの首下まで入り込み、そのまま喉元を切りつけた
熱い鮮血が荒巻に振りかかるが気にする様子もなく、
腹の柔らかい肉をズタズタに切り裂いていく
やつの足踏みを全て回避し、まるで踊っているかのようだ
荒巻の装備は回避に重きをおくため身軽なものを着用している
手慣れたステップで全身を赤く染めながら連撃を浴びせていく
リオソウルもたまらず後ろへ仰け反った
さて、そろそろ出番かとアイコンタクトを送る
荒巻はそれに一瞬で気づき、前転回避で距離を取る
そして武器の血潮を払った相棒はもうリオソウルの姿を見ていなかった
そのまま武器に砥石を当て始めたようだ
何故そんな余裕を見せているかって?
なぜならば、この狩りはあと30秒で終わるからだ
痛みに絶叫するリオソウルは逃げようと翼をはためかせるがうまく飛べない
荒巻は連撃の最後にやつの左翼の翼膜を裂いていたのだ
よたりとのけぞり顔をおろした瞬間
私はブレイズブレイドχの持ち手を握りしめる
ここからは私の時間だ
一瞬でリオソウルの目前1mまで迫り 利き足で踏ん張り宙へ舞う
背中で握っていた大剣の持ち手をひねり 刀身から爪を射出する
勢いよく体を前かがみに倒し、大剣を肩に担ぐようにして左手も柄に添える
空中前転しながら武器に遠心力に乗せる、全身の力を得た大剣の爪は
バリッ!
と音を立てて、そのままリオソウルの脳天に突き刺さった
爪が鱗を貫通し、頭蓋骨を割って脳まで到達する感触が伝わってくる
断末魔をあげる余裕もなく、その巨体は、そのモンスターは絶命した
「・・・今回もいつもと変わらないな」
ぼそりとつぶやき、
息の根を止めたソウルの頭部から ぐしゃり と大剣を引き抜く
顔はすでに原形をとどめておらず、血生臭い臭いが辺りに立ち込めていた
体を返り血で赤く染め、武器を綺麗に整え終えた荒巻がこちらへ歩いて来る
「どうだった?」
、
「まだまだかな」
と一言だけ会話をする
そして剥ぎ取り用ナイフを取り出し、二人で解体作業を行う
この頃には二人の殺気は無く、いつもの調子に戻っていた
剥ぎ取りはハンターの狩の報酬を大きく左右する大事な作業だ
モンスターはその種類を問わず(小型の獣、鳥類は除く)、
命を終えるとすぐに腐敗が始まる
絶命してから数時間もたたないうちに肉が腐ってしまい
その浸食は驚くべき速さで鱗や骨に到達する
腐敗する仕組みについては、またいずれ話そう
まれに骨が残っていたりするが、かなり珍しい
まれに、何百年も腐敗せず骨だけが残ることもあるが
そのほとんどが原形を保っていないため、
総称して竜骨や、古の竜骨などと呼ばれている
これらはなかなか見つからない代物で、貴重なアイテムだ
とにかく剥ぎ取りは時間との勝負なので、急いで作業にかかる
一度の狩で剥ぎとれる素材は、せいぜい多くて大タル一杯分だ
狩りで傷つけたりした部分は使い物にならないので、
綺麗なところを狙って剥いでいく
今回のリオソウルのような大型飛竜からは、
稀に貴重なアイテムを得ることがある
その中でも喉元にある逆鱗や、
体の奥深くにあって最も腐食しやすい紅玉と呼ばれるアイテムは
50頭狩って一つ手に入れば幸運なほどである
このリオソウルからはどちらも得ることができなかったが、
延髄や骨髄などの骨の素材をいくつか採集することができた
剥ぎ取りが終わるころには腐敗がかなり進み、臭いもひどくなってきたので
それぞれ素材を持ってキャンプへと向かう
荒巻の浴びた返り血もすでに黒ずんで乾いてきていた
キャンプから少し離れたところに川が流れているので
防具を洗ってから軽食を取り、帰路に着く
本来狩猟の時間は、その依頼者とギルドとハンターが相談し、決められる
決定権限はギルドにあるのだが、ある程度のHRを持つようになると
そこそこの発言力を持てるようになる
私たちのように狩に時間を浪費しないようになると、帰りの足が早くなるため
短い期間で負担の少ない(依頼者の負担も減る)ビジネスとなるわけだ
今回は全日程で4日間(往路2日、狩猟2時間うち戦闘約4分、復路2日)
とあまり時間がかからなかったため
あと3日は休みを満喫できそうだ
明日は街で買い物でも行くとしよう
おまけ
~帰路の途中~
k「今回は結構斬ってたみたいだし、ストレスは発散できたかい?」
荒「まぁまぁかな、でも来週から女ふたりが部下になると思うとやっぱ気が滅入るよ」ハァ
k「そうだなーかわいいといいなー」
荒(たぶん聞いてないなこれ)
k「・・・ところでさ。だいぶ俺らの連携も染み着いたとは思うんだけど、
そろそろ次のステップに進みたいと思ってるんだよねー」
荒「・・・ついにあれに手を出すってことか?
俺にはまだ早いように思えるが。」
k「その時はその時さ。修練は積んでるし次の機会までには
ギルドにも話は通しとくよ」
荒巻は少しうなり、困った顔でアプトノス車から空を見上げる
荒「また大長老と喧嘩にならないといいけどな」
k「今度は絶対勝つさ」ガッツポーズ
荒(こいつはほんとに・・・このまっすぐな思いがなんのしがらみも無いものだったら、
心から応援してやれるんだがなぁ)
揺れる竜車の上で
荒巻が見つめる夜空には、満天の星空が輝いていた・・・
初戦闘シーン
書くのに時間がかかりました
次回はお買いもの回です