「__ん?」
魔女の結界、最深部。その扉の前で、俺は足を止めた。
先程まで散々喰い散らかしていた使い魔、その魔力の残滓が鼻がバカになりそうな匂いを撒き散らしているので分かりづらいが__この匂いは何だ?
魔女の甘い香りとは対極の、香辛料か何かのような鼻がひりつく匂い。
「……ま、大体予想はつくけどね」
突然現れた、魔女とはまるで反対の匂い。これ推測するに__恐らく魔法少女だろう。
……面倒なことになったな。この時期マミと杏子が師弟関係にあり、協力して魔女狩りを行っていたことは知っているが、見滝原にその他の魔法少女がいないという保証はどこにもない。最悪の場合、魔女と魔法少女を同時に相手取ることになるかもしれない。
「ま、
ニヤリと笑い、扉を蹴破る。
……本当に、自分で嫌になるほどイカれてるなあ、俺。あの堕天使は何故こんな奴をよりにもよって
* * *
えー現在、結界の主である魔女と対峙している真っ最中なわけだが
「■■■■■■■■■!!!!」
「気持ち悪っ!?」
グロいのではなく、キモい。スカートを履いた女子高生の下半身から、にょっきりとキリンの首が生えている。しかも背中には怪しげな虹色の翼。原作に出てきた薔薇園の魔女の方がまだ可愛いレベルだ。
……どんな姿をしていようと、最終的にはR-18Gのグロ画像に変わるので問題ないと言えば問題ないが。
「__ま、とりあえず、小手調べといきますか」
ズボンを通すようにして、右の膝裏から先が二股に別れた尻尾のような赫子__『尾赫』を伸ばす。決め手に欠けるが万能型。様子見にはもってこいの性能だろう。
さて、どんな攻撃が来るか__!?
「ごっ……!?」
「■■■■■■■■■!!!!」
__次の瞬間、左半身に自動車が衝突したかのような衝撃が走り、壁に勢いよく叩きつけられていた。
「ゲホッ!ガハッ、おえっ……野郎、首振り回して殴るとかふざけた真似を__だあっ!?」
ハンマーのように打ち下ろされた頭がついさっきまで俺が転がっていた地面を抉る。
「この__舐めんな!」
首を狙って蹴りを放つ。魔女とはいえ、赫子が直撃すればタダでは____
「■■■■■■■■■!!!!」
「……冗談だろ、おい」
無理な体勢でやったのが影響してるとしても__皮一枚しか傷つかないのかよ。化け物か。いや化け物だったわ。
「■■■■■■■■■!!!!」
「ちょ、待____ごぶっ!?」
魔女が首を真っ直ぐ槍のように突き出す。再び体が宙を舞い、受け身も取れずに地面を転がる羽目になった。
「……」
うん。痛いわ。魔法少女と違って痛覚は人間と同じなのに気軽に吹っ飛ばしやがって。おまけにまだやる気らしく首引き絞って力溜めてやがるし。
「■■■■■■■■■!!!!」
「そう何度も同じ手を食うか!」
赫子__蝶の羽のように広がった甲赫__を発現させて攻撃を防ぐ。ゴギンという鈍い音がして刺突が完全に停止した。
「ったく、餌の分際で散々暴れてくれやがって……大人しく喰われろっての」
ぎゅん、と先程攻撃を防いだ甲赫が滑らかに動き、魔女の首に絡みつく。更に腰から鱗赫が伸び、花が閉じるようにして右腕を覆った。
「さっきは無理だったけど__掻っ切ってやるよ、その首」
腕ごと赫子を振るう。肉を抉る確かな手応えと共に、極彩色の血が噴き出した。
「■■■■■__ッ__◆◆◆◆◆◆!!??」
「……うまっ」
苦痛の悲鳴を上げて暴れる魔女を拘束したまま、赫子に飛び散った血と抉り出した肉を口に入れる。味わったことのないタイプの旨味が広がった。
「赫子から吸収するだけじゃなくて、ちゃんと口から喰えるのか……おい暴れんな、喰いづらいだろうが。というかその羽飾りじゃなかったんだな」
甲赫を釣り上げるように動かし、まだ血が噴出している傷口を目の前に持ってきた。更に激しく暴れ、挙げ句の果てに飛んで逃げようとした魔女の体を赫子の巻きついた右腕で貫く。
「それじゃ、ランチタイムと洒落込みますか」
「■■■■■__ッ__◆◆◆◆◆◆!!??____……」
露出した柔らかい肉を次々と喰いちぎる。最初は暴れていた魔女も赫子からの吸収と肉を喰われ続けるダメージで次第に弱っていき、最終的には痙攣するだけになり__
ぱしゃん。ころん。
呆気なく黒い水のようになって消えてしまった。
「あー……勿体無い。赫子から吸収するのはもうちょい肉喰ってからにすりゃよかったかな?……さてと」
GSを拾いあげ、綻び始めた結界の中で後ろを振り向く。
「……ッ!」
槍を構えた赤い魔法少女と、マスケットを構えた黄色い魔法少女__巴マミと佐倉杏子__がそこにいた。
「……」ヒュッ
「!?あ、待って!」パシッ
とりあえずGSを投げて戦略的撤退。まだ喰い足りないから呼び止められるのはごめんだ。巴には学校で会った時にでも釈明するとしよう。
* * *
「____げふっ」
魔法少女二人の元から1kmほど離れた地点の廃ビルにて。俺は発見した二つ目の結界を丸ごと平らげて一息ついていた。
『よく食べたものだね。一日に魔女の結界を二つ消滅させるなんて。普通の喰種は一日に使い魔15匹くらいで事足りるんだけど』
「俺は普通の喰種じゃないってお前が言ったんだろうが。まだ腹八分くらいで満腹じゃねえし……それで、何か用か?」
音もなく背後に現れたキュゥべえの方に視線を向ける。いつもと同じ無表情だというのに、どことなく呆れているように見えた。
『いくら何でも食べ過ぎだと思うけれど、この際それは置いておくよ。マミと杏子__さっき君が会った魔法少女二人が君と話をしたいそうなんだ』
「……あー。やっぱりか」
二人とも顔見知りだしそりゃ追及してくるか。でも会ったら面倒なことになりそうなんだよな……はぁ。
「……明日の夕方にでも時間作ってくれれば会うって伝えてくれ__ああ、喰種についての説明とかはお前やっといてくれよ?」
『分かった。伝えておくよ』
さて……話も終わったことだし、魔女狩りを続行しますか__おっといけね。質問があったんだった。
「キュゥべえ」
『なんだい?』
「この『腕時計』の他には何も支給してくれないのか?服とか」
羽赫はともかく他の赫子は皮膚と服を突き破って伸びるから、キュゥべえからの支援がなければ恐らくこれからの小遣いの殆どは服代に消えることになる。学生にとっては一大事だ。
『「腕時計」のスイッチを三回連続で押せば服が出現するよ?』
……はぁ!?
「なんで言わなかったんだてめえ」
『聞かれなかったからね。知らなければ知らないままで何の不都合もないことだし』
「ああそうだよな。お前はそういう奴だよクソッタレ」
『腕時計』の脇に付いたスイッチを三回押すと__白い光と共に、体が別の服に包まれていた。
白いシャツに白いズボン、おまけに足元まである白いロングコート。厨二病が喜びそうな格好だ。
「へえ。中々着心地はいいな__それじゃ、俺は魔女狩りに戻るわ。二人によろしく」
そう言い捨てて鉄柵を乗り越え、路地裏の薄暗がりへと身を踊らせた。
狩りはまだ、始まったばかりだ。
【result】
to葉介
鹿目まどか【兄】
美樹さやか【兄貴分】
巴マミ【友人】
佐倉杏子【知人】
暁美ほむら【無関係】
上条恭介【兄貴分】
志筑仁美【知人】
中沢【無関係】
佐倉モモ【知人】
美国織莉子【無関係】
呉キリカ【無関係】
千歳ゆま【無関係】
from葉介
鹿目まどか【妹】
美樹さやか【妹分】
巴マミ【友人】
佐倉杏子【無関心】
暁美ほむら【無関係】
上条恭介【弟分】
志筑仁美【無関心】
中沢【無関係】
佐倉モモ【無関心】
美国織莉子【無関係】
呉キリカ【無関係】
千歳ゆま【無関係】