翌日、俺は巴の住むマンションの部屋の前にに立っていた。
「よう。待ったか?」
「いえ、今ちょうど佐倉さんが来たところよ……ごめんなさいね、休みの日にわざわざ呼び出して」
「何かすることあったわけでもないし、気にすんな。お邪魔します」
出迎えてくれた巴の後に続いて部屋に上がりこむ。アニメで見た通りの綺麗に片付いた部屋で、赤毛のポニテ少女がケーキを頬張っていた。
「むぐ、ごくん……こんにちは」
「佐倉さんとは会ったことあるのよね?」
「ああ。俺が一方的に知ってるだけで、向こうが俺のことを知ってるかどうかは分からないけどな」
「いくらあたしでも熱心に来てくれてる人のことなんて忘れないよ!?」
心外だとばかりに佐倉が声を上げる。まあ少額ながら何度か寄付をしているらしいので覚えていないわけがないか。
「じゃあ、早速本題に____」
「いや巴、ちょっと待って」
現在、例の三角ガラステーブルを挟んで向かいあう形で座っているわけだが……
「部屋に招いて貰っておいてこんなこと言うのも図々しいけどさ、俺だけケーキと紅茶ないのはイジメか?」
今だから告白するが俺は甘い物が結構好きである。今回巴の家に招かれるとキュゥべえから聞き、原作でも様々な人々に大人気だったあのケーキが食えると密かに楽しみにしていたのだ。
それなのに来てみれば一人だけハブられている。酷い。こんなことがあっていいのか。あんまりではないだろうか。
「え!?ち、違うわ!キュゥべえから貴方は普通の物を食べると体を壊しちゃうって聞いたから……」
……ああ、そういうことか。体調を気遣ってくれてたわけね。
「俺の味覚は人間と同じ部分も含んでるから、普通の食事は人間にとっての煙草みたいなもんだよ。他の喰種は味覚も変わってるらしいから毒物以外の何物でもないけどな」
そもそも家で三食摂ってるんだから今更ケーキの一個や二個食べたところで大して影響はない。
「尚更いけません!成長期なんだから体は大事に!」
「くそっ、なんて時代だ! 」
とりあえず帰りにケーキ屋に寄ることを心に誓った。
* * *
「__おふざけはここまでにして、真剣な話に入らせてもらっていいかしら?」
巴の表情がきりっとしたものに変わる。和やかだった座の雰囲気が若干緊張した。
「ん。分かった……喰種についてはキュゥべえに聞いてるんだよな?」
「ええ……その、何て言ったらいいのか……」
「別に俺の境遇なんて気ににしなくていいっての。それでお前らは俺に何をしてほしいんだ?」
すっ、と目を細くして真っ向から見据える。大体の予測はついているが、それでも一応は本人の口から聞かないことにはこちらもアクションを起こせない。
「じゃあ、単刀直入に言わせてもらうわ__私たちと協力して、一緒に魔女を退治してくれない?」
「無理」
即答した。
「!?な、なんでさ!」
「……理由を聞いてもいい?」
こちらに身を乗り出す佐倉と、座ったままこちらを見る巴。両者ともに困惑の表情を浮かべている。
「いや、そもそも噛み合ってるコンビにわざわざ割り込む必要ないだろ」
もちろんこれだけが理由というわけではないが、紛れもない本音である。勧誘自体は予測していたもののされた理由は全く理解できない。
「大丈夫なの?魔女と戦うようになって日が浅いんでしょ?」
って俺の心配かよ。
「大丈夫だっての。なんなら実際に試してみるか?」
バキリ、と指を鳴らす。正直魔法少女相手にどこまでやれるかは分からないが、束縛されるのはできるだけ避けたい。自由に動けないと困るし。
「……そう。ならいいのだけれど」
少しだけ残念そうにする巴。仲間がまだ欲しいのだろうか。佐倉がいれば十分だろうに。
「さてと__それじゃ、俺もう行くわ。ああ、送ってくれなくていいよ」
立ち上がろうとした巴を制し、俺はその場を後にした。
その後、魔女狩りの時に彼女らに遭遇したことは、ない。
* * *
「うー……寒っ」
月日が経つのは速い。転生してから既に半年、12月ももう終わりである。
戦闘経験はかなり積んだ。巴と佐倉のいる見滝原は避けて、空いた風見野やまだ殆ど魔法少女がいないあすなろに出張して魔女を喰っていた。
しつこく絡んできた魔法少女を半殺しにしたり、魔女に襲われていた女の子を助けて憧れの眼差しで見られたり、その子がグランマとやらの為に契約しようとするのを魔法少女の真実を教えて止めようとしたがそれでも契約されたり、食べても減らないクラゲの群れみたいな魔女で食べ放題をやってヒャッハーしたり、その時口づけを受けていた女の子六人に恋愛フラグと魔法少女化フラグを建築したり、すぐさま魔法少女の真実で両方のフラグをへし折ったりと単行本にしておよそ二〜三巻分くらいの活躍をしていたが、そのあたりは割愛することにしよう。
さて、俺が何故このクソ寒い日に魔女も探さず出歩いているのかというのは__ある人物の捜索の為である。
今朝、佐倉の教会で火事が起こったことが報道されていた。最近教会から足が遠のいていたので分からなかったが、もう一家心中が起こる時期だったらしい。ニュースを見て飛び出してきたので今更何ができるというわけでもないのだが、気になることがあったのだ。
(……遺体が父母の分しか見つかってない、ってのはどういうことだ?)
__そう、ニュースでは夫婦の遺体が見つかったとしか言われていなかった。本来ならば妹の遺体も見つかるはずなのに。
この時間軸では助かったのか、あるいは魔女か誘拐犯にでも攫われたのか__分かっているのは佐倉とは一緒におらず(先程キュゥべえに聞いた)、行方不明であるということだけ。いずれにしても見つけ出して佐倉に引き渡さねばならない。
見知らぬ他人ならともかく知っている小さい子供を放置するのも目覚めが悪いし、妹だけでも取り戻してやれば巴と佐倉の不和も解消され、更に幻惑魔法を復活させられるかもしれないからだ。一年後に訪れるワルプルギスの夜に対抗するための戦力は、いくら強化してもしすぎることはない。
「……しっかしなぁ。こうも見つからないとなると、本格的に誘拐か?」
子供の足だ。一晩でそこまで遠くに行けるとは思えない。かといって近くに魔女結界の気配もない。人間によって誘拐されたとしたら、かなり面倒なことに__待てよ?
「まさか『あの魔女』の仕業か?」
銀の魔女__『
奴か、奴と同系統の結界に誘い込まれたのなら既にこの周辺にいないのも納得がいく。
「……状況多少は良くなったけど殆ど変わってねえな」
銀の魔女__正確にはその使い魔__の匂いは特徴的だったので覚えているが、移動し続ける結界を補足することはかなり困難だ。おまけに補足したからといって本当に銀の魔女に捕まっているのかどうかも分からないし、正直死んでいる確率がめちゃくちゃ高い。分の悪い賭けだ。
「ま、0じゃないだけマシか。魔女だって人喰わなきゃならんのだし、ずっと移動しっぱなしってことはないだろ__よっと」
先程まで立っていたビルの屋上から路地裏に飛び降りる。
「とりあえず__
* * *
見滝原のとある公園にて。
「ダメもとだったのにまさかにここにいるとは……」
目の前には見たことのある結界の入口があった。PSPのゲーム情報さまさまだ。転生前にまどか☆マギカの関連作品を全部揃えてたかいがあった。
「しかし……入口が歪みまくってるが、中で誰か戦ってるのか?」
だとしたら妙だ。魔法少女の匂いが周辺に残っていない。もしかして魔女どうしの共喰いとかか?
「まあ入ってみれば分か__って、え?」
足を踏み出そうとしたその瞬間、結界が消え失せた。主である魔女が倒されたらしい。
「____ぁ____ぅ____」
後に残されたのは、虚ろな目で宙を見つめながら地面に座り込む、ボロボロの服を着た桃色髪の小さい女の子。
「……おい、待てよ。マジで冗談じゃねえぞ」
そして
「どんな天文学的確率を突破したらそうなるんだよ____!?」
その子の目は血のように紅く
【result】
to葉介
鹿目まどか【兄】
美樹さやか【兄貴分】
巴マミ【友人】
佐倉杏子【知人】
暁美ほむら【無関係】
上条恭介【兄貴分】
志筑仁美【知人】
中沢【無関係】
佐倉モモ【??】
美国織莉子【無関係】
呉キリカ【無関係】
千歳ゆま【無関係】
from葉介
鹿目まどか【妹】
美樹さやか【妹分】
巴マミ【友人】
佐倉杏子【無関心】
暁美ほむら【無関係】
上条恭介【弟分】
志筑仁美【無関心】
中沢【無関係】
佐倉モモ【困惑】
美国織莉子【無関係】
呉キリカ【無関係】
千歳ゆま【無関係】