魔女を喰らう転生者   作:金木

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毎回投稿が遅く、大変申し訳ありません……今回杏子ちゃんがかなり酷い目に遭います。ご覧になる場合はご注意を。


月光__ゲッコウ__激昂 其弍

「ッ……!」

 

 

突撃の勢いを乗せた渾身の拳は__幾重にも編まれた触手に阻まれ、魔女本体にダメージを与えることはなかった。

 

 

「■■■■■■■■■!!!!」

 

 

「ちっ!」

 

 

メキメキという音と共に触手が固まり、木のように成長し始めた。体が取り込まれ、あちこちに枝が突き刺さる。本編で影の魔女が使っていたのと同じ攻撃だ。既に上半身を封じられ、体をまるごと飲み込まれそうになっている。

 

 

「この____!!」

 

 

鱗赫を最大限に伸ばし、内側から押しのけるようにして無理矢理突き破り、脱出した。そのまま着地して横薙ぎに振るい、もう一度魔女を吹き飛ばす。

 

 

「……さて、と」

 

 

「■■■■■■■■■!!!!」

 

 

手を封じたままの木をガリガリと齧りながら(夜店で売っている飴細工のような味だ。不味くて仕方ない)魔女を眺める。髪か触手か分からない何物かを散々蹂躙したせいか、ブチ切れているようだ。

 

 

「■■■■■■「煩い。黙れ」■■__ッ__◆◆◆◆◆◆!!??」

 

 

再び触手を振りかざした魔女に突進し、鉤爪の要領で引き裂く。もっと八つ当たりしたかったのにあっさり死んでしまった。拍子抜けだ。

 

 

まあ、この魔女のことはどうでもいい。それより巴の方が余程大事だ。

 

 

* * *

 

 

「よい、しょっと」

 

 

ドサリ、と俺のコートを敷いた床にに巴の体を下ろす。

 

 

現在、モモちゃんのいる廃ビルの別フロアにいる。人目につかないよう巴を背負ってビルの屋上から屋上へ飛び移りながら戻ってきた。正直役得だったがそんなことを言っている場合ではない。

 

 

ポケットから彼女のソウルジェムを取り出して見ると__真っ黒だった。魔女になる寸前だ。先程喰った魔女のグリーフシードだけでは追いつかず、ストックしているものを一つ消費することになった。

 

 

だが、起きない。ソウルジェムは完全に浄化されているにも関わらず、だ。ちょうど使い切ったグリーフシードもあることだし、奴を呼ぶしかないだろう。

 

 

「キュゥべえ!」

 

 

『呼んだかい?』

 

 

自分で呼んでおいて何だがこいつは俺に張り付いているのだろうか。呼んで来なかったためしがない。

 

 

「ほらよ。食え」

 

 

『きゅっぷい……』

 

 

二つのグリーフシードを放り投げる。どうせまた適当な場所に放置されて孵ることになるのだろうが、そこまでは俺の知ったことではない。もう一度遭遇したら鴨にしてやるまでだ。

 

 

「で、ソウルジェム浄化してもこいつ起きないんだがどういうことだ?」

 

 

『傷と疲労によるものだね。マミは痛覚遮断をしていなかったんだ。放っておいてもそのうち起きるだろうけど、傷の治療をすればその刺激で起きるんじゃないかな』

 

 

……治療、と言われても。

 

 

「どうしろってんだ。普通なら植皮だけじゃ済まないレベルだぞこれ」

 

 

背中は(因みに服の背中部分は切った。魔法を使えば後で直せるだろう)広範囲に渡って正視に耐えない傷が広がっている。筋細胞作って移植しろってか。

 

 

『君の体液を使えばいいじゃないか』

 

 

……は?

 

 

「体液ってどういうことだおい」

 

 

『そのままの意味さ。君たち喰種(グール)の体液に含まれている、「RC細胞」と呼ばれる魔力によって変性した細胞には、強力な再生能力が備わっているんだ。普段は自己再生に使われるけれど、他の生物を治療することも十分に可能なはずだよ』

 

 

「何で教えなかった……って聞いても無駄か」

 

 

確か能力の出典からすると、赫子や赫眼もRC細胞によるものだったはずだ。他人の傷を治す効果まではなかったと思うが。

 

 

「ま、細かいことはいいか。教えてくれてありがとよ」

 

 

左腕の袖を千切り、少し赫子を発現させ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまま左手首をざくりと切り落とした。

 

 

ぺしゃっと間の抜けた音を立ててコンクリートに手首が落ち、その上に大量の血が滴った。

 

 

「あ、グッ…………!くそ、やっぱ痛いな……」

 

 

腹を貫かれたりしたことはあるが、完全に体の一部を切り離したのは今回が初めてだ。

 

 

「……うわ、やべえ。寒気してきたのに汗がだらだら出てるわ」

 

 

戦ってる時は平気なのになぜだろう。アドレナリンとか脳内麻薬的なアレが分泌されてるからか。とにかくさっさと治療を済ませて手をくっつけないとやばい。

 

 

鼓動に合わせてどくどくと血を噴き出す手首の切り口を巴の傷口の上に持って行き、血を直接振りかける。

 

 

「ん、ぅ……?」

 

 

ピクリと巴が身じろぎをし、ゆっくりとその金色の瞳が開く。

 

 

「あー、起きたか。まだ動くなよ?」

 

 

「……鹿目、くん?__どうしたのその左手っ!?痛っ!?」

 

 

「あ、バカ動くなって言ったろ!まだ傷完治してないんだから!」

 

 

このお人好しはどうにかならないものか。ならないんだろうなぁ。

 

 

「俺の傷より自分の心配しろ。お前の方が重傷だったんだから……ちゃんと治癒使って完治させとけよ?」

 

 

手首を拾い、先程千切った袖を使って固定する。どこぞの魔人探偵ではないが、一晩もあればくっつくことだろう。

 

 

「でも、どうしてそんなケガ」

 

 

「お前の傷を治すのに大量に血が必要だったから。喰種(グール)の血や唾液にはそういう成分が含まれてるらしいからな」

 

 

 

何気なく言った後でしまったと思い隣を見ると__案の定というか、ポロポロと涙を零していた。

 

 

「ちょ、待て!」

 

 

本当やめて。やめてください女子の涙への対処法とか分からないから。

 

 

「あ……うぇ、ごめ、なさ……ひぐっ……わたしの、せいで……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故そんなことをとしたのか、後になって思い返してもはっきりとは分からないが__

 

 

「……」ギュッ

 

 

__気づいた時には巴を胸元に抱き寄せて頭を撫でていた。

 

 

「ふぇ……?」

 

 

(うわああああああああ何してんだ俺ええええええええええええええ!!???)

 

 

素数を数えてみたが全く落ち着けない。本当にこの行動は謎だった。

 

 

「わ、悪い!」

 

 

「あっ……」

 

 

解放する。ショック療法的な効果はあったのか、とりあえず涙は止まったようだ。

 

 

「あー、その、巴?本当気にするな。どうしても気になるなら今度ケーキ奢れ。俺が勝手にやっただけだしそれでチャラにしてくれ。逆にこの程度のことをいつまでも引きずられてぎくしゃくする方がよっぽどキツイ」

 

 

巴の顔をまともに見ることができず、目を逸らしながらまくしたてる。女子を抱きしめた経験なんて前世でも今世でもない。今おそらく顔は赤いを通り越してどす黒い色になっていることだろう。

 

 

「……くすっ。分かったわ、とびっきりのをご馳走させてもらうから楽しみにしてて。取り乱しちゃってごめんなさいね」

 

 

どうやら抱きしめたおかげで落ち着いたらしい。結果オーライだった。

 

 

「でも、治療はさせてもらうわ。私が勝手にやるんだからいいわよね?」

 

 

「……じゃあ、頼む」

 

 

真っ赤に染まった袖が巻きついている左手を差し出す。巴が翳したソウルジェムが穏やかに輝き、千切れていた手首がくっついていく。

 

 

「どう?」

 

 

「ん、バッチリ」

 

 

握ってみても振ってみても違和感は感じない。ちゃんとくっつくか不安だったので正直助かった。

 

 

「じゃ、俺は魔女喰いに行くけど……どうするよ?」

 

 

「私も一緒に「俺が送るか一人で帰るか選べってことに決まってんだろアホウ」

 

 

これだけのケガしといて戦闘は論外だ。今度は死ぬぞ。

 

 

「まっすぐ家帰って課題やって寝ろ。明日キュゥべえに確認取るからな」

 

 

「えっ、課題なんてあったの!?」

 

 

さっと元々青白かった顔が更に青くなる。これは忘れてたパターンだな。

 

 

「終わってないのかよ……英語のワーク20ページくらいあるぞ。今から帰っても間に合うかどうか」

 

 

「何としても間に合わせないと……!ごめんなさい、帰らせてもらうわ!」

 

 

「おーさっさと帰った帰った__ああ、それと」

 

 

「何かしら?」

 

 

出口の方へ歩き出していた巴が、こちらを振り向かずに足を止める。

 

 

「____あんまり一人で色々抱え込まないで、泣きたい時は泣けよ。胸貸したり傷舐めるくらいはできるからさ」

 

 

 

 

 

「……ありがとう」

 

 

声が少し震えていたのは、気のせいだと思うことにした。

 

 

* * *

 

 

__風見野、とある魔女結界__

 

 

「■■■■■__ッ__◆◆◆◆◆◆!!??」

 

 

「他愛なし、と……」

 

 

ワイングラスを持った青いカエルのような魔女を吸収し、グリーフシードを回収する。結界が崩壊し、周囲が元の廃工場に戻った。

 

 

「んー……唯一の遠距離攻撃だし、使いやすいけどやっぱり燃費が悪すぎるな」

 

 

今回の魔女は皮膚から酸を分泌しており直接殴れなかったため、羽赫によるRC細胞の射出を使った。以前から消耗を抑えようと努力してはいるのだが、殆ど改善されない。やはり封印すべきだろうか__

 

 

 

 

 

 

 

カツン、と背後から足音が聞こえた。

 

 

ゆっくりと振り向く。赤い髪をポニーテールにした女子が、槍を片手に持って立っていた。

 

 

「アンタ、あたしの縄張りで何勝手なことしてやがるんだ?」

 

 

__佐倉、杏子。つい先程巴と決別した魔法少女がそこにいた。

 

 

「見りゃ分かるだろ。食事だよ」

 

 

「はん、マナーのなってない奴。まあいいや。その手に持ってるグリーフシード寄こしな。それで今回はチャラにしてやるよ。次は無いから二度と風見野に来るんじゃねえぞ」

 

 

……常識的に考えればおとなしく渡すべきだろう。ただでさえモモの捜索と巴の治療で食事の時間があまり取れていないのだ。無駄な諍いを起こしている暇などない。

 

 

 

 

 

 

 

 

__だが

 

 

「おい、さっさと「嫌に決まってんだろ」……はあ?」

 

 

正面に立ち、目の前にいる佐倉を睨む。胸の奥から湧き出すドス黒い感情がそのまま口をついて出た。

 

 

「何で俺がテメエごとき(・・・)に従わなきゃいけないんだ?__グリーフシードが欲しけりゃ力ずくで奪ってみろクソガキ」

 

 

きっと俺は馬鹿なのだろう。今こいつを叩きのめしたところで、巴が喜ぶわけでもこいつらの関係が元通りになるわけでもないのに。

 

 

それでも、理屈では止まらない。止まれない。巴をあそこまで情緒不安定な状態に追い込んだコイツを地面に這いつくばらせるまでは。

 

 

「はっ、そんな風に喧嘩売って__まさかタダで帰れると思っちゃいねえよなぁ!」

 

 

瞬時に変身し、槍を構えて一直線に突っ込んできた杏子を

 

 

「勿論」

 

 

「がっ……!?」

 

 

紙一重でかわし、背中に蹴りを入れる。

 

 

「タダで帰る気は毛頭ない__手足バキバキにされたくらいじゃ恨むなよ?さーくらぁ」

 

 

「……舐めてんじゃねえぞ、このトーシローがああぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

再び振るわれた長槍を、俺はどこか冷めた目で見ていた。

 

 

* 三人称視点 *

 

 

剣道三倍段、薙刀九倍段という言葉がある。

 

 

素手で剣に勝つには三倍、剣で長物に勝つにも三倍の技量が必要とされ、従って素手で長物を持った敵に勝利するには九倍の技量が必要であるという単純な掛け算である。それほどまでにリーチの差というものは大きい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__しかし、この戦闘においては信憑性が怪しく思えてくる。

 

 

「この、ちょこまかと__があっ!?」

 

 

「チンタラやってんじゃねえよ。欠伸が出る」

 

 

佐倉杏子の突き出した槍が空を切り、次いで鹿目葉介の拳が佐倉杏子の体にめり込む。戦闘が始まって以来、既に何度も繰り返されてきたパターンだった。

 

 

無論、躱したら打つというアウトボクシングもどきの戦術は、鹿目葉介の本来の戦闘スタイルではない。赫子を使うにしろ使わないにしろ、桁外れの怪力と回復力に任せ、反撃の暇も与えず相手を一方的に叩き潰すインファイトこそが彼の真骨頂である。

 

 

だというのに、瞳が赫眼になってすらいないお遊びモードでこの圧倒ぶり__この一年で元々あった才能が伸びに伸びたようだ。

 

 

「くそっ!」

 

 

ワンパターンだった戦況が動く。佐倉杏子が後退して槍を分解し、多節棍ならぬ多節槍に変化させることで不利すぎる状況の打開を試みたのである。

 

 

__それが、敗北に繋がる致命的な一手だとも知らず。

 

 

一瞬杏子が止まったのを見逃さず、葉介は滑らかな動きで彼女の懐に潜り込んでその右腕を取る。

 

 

 

 

 

そして

 

 

「確か、こう(・・)だっけ?」

 

 

何の躊躇もなくヒジを蹴り上げた。

 

 

「が________ああああァァァッ!!??」

 

 

ゴキン、という鈍い音が響く。関節が完全に破壊されたとなれば、単純骨折よりも遥かに治癒は困難だ。おまけに杏子はそちら系統の魔法はからきしである。

 

 

つまり、この戦闘において彼女の右腕はもう使えない。勝敗は決まったも同然である__事実それから僅か一秒で決着はついたのだが。

 

 

* * *

 

 

「あ……え……?ごぼっ!」

 

 

佐倉は暫く惚けた表情で、腹に突き刺さった(・・・・・・)俺の足を眺めていたが、思い出したようにから血を吐いて崩れ落ちた。

 

 

足全体ではなく、爪先を使った蹴り。当然与えるダメージと貫通力は増す。実戦で使ったのは始めてだが、上手くいってよかった。

 

 

「ったく、でかい口叩いてこの程度かよ。全然歯ごたえねえな」

 

 

「ぐっ!?」

 

 

顔の前にしゃがむ。そのままポニーテールを摑んで引きずり起こし、強制的に目線を合わせた。

 

 

「さっき勝手なマネがどうこうって言ってたよな?__人生の先輩がいいことを教えてやろう。勝手を振る舞えるのは強者の権利(・・・・・)なんだよ」

 

 

弱者にそんなことは許されない。こいつの父親などはその際たるものだ。確かな基盤もないくせに新興宗教のような説法を行った結果、自分と家族を窮地に追い込むことになった。杏子の願いがなければ一家揃って餓死していたはずだ。上司の指示に従わず、クビにされる若手平社員と何ら変わらない__いや、養うべき家族がいるにも関わらずそんなことをやらかす分なお悪い。宗教家としてはともかく、父親や伴侶には絶対に選びたくない人種である。

 

 

閑話休題。

 

 

「これに懲りたら二度と突っかかってくるんじゃねえぞ。実力の差は分かったろ?__ああそうそう。余りに可哀想だしこれは恵んでやるよ。有難く思え」

 

 

先程狩ったカエル魔女のグリーフシードを目の前に置き、ポニーテールを掴んでいた手を離して立ち上がる。

 

 

「テメ、エ。絶対に許さねえぞ……!いつか、殺してやる……!」

 

 

暗がりの中から響く怨嗟の声を完全に黙殺して__俺はさっさと家路についた。




【好感度変動】

巴マミ→鹿目葉介【??】

鹿目葉介→巴マミ【??】

佐倉杏子→鹿目葉介【殺意】

* * *

さて、今回再びアンケート募集です。テーマは「かずみ☆マギカのキャラをどの程度登場させるか」

選択肢は以下の三つから選択してください

①ミチルとユウリのみ登場。原作に入る前に両名死亡

②ミチルとユウリのみ登場。原作にも関わる

③プレイアデス聖団も登場。この場合自動的にミチルとユウリは……

……はい。とりあえず和紗ミチルと飛鳥ユウリ、後ジェム狩り双子の双樹姉妹は出演が決定しているんですアンケートとか言いながらホントすみません。更にネタバレすると双樹姉妹の生存ルートはありません(ぶっちゃけ咬ませ犬としての起用です)し、③を選択した場合プレイアデス聖団が生き残る確率も低いです。

感想も添えてくれたら嬉しいなって
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