第一節 -全てを知る記憶喪失-
私は一人草原の上に立ち空を見上げる
知っているのに記憶にない場所、此処は何処だろう?私は誰だったっけ?
そんな事を考えていると気付けば私と同じくらいの身長の女の子が目の前にいた
私はびっくりして数歩後ろに下がってしまう
「翡翠・・・」
その女の子はどうやら誰かの名前を呼んでいるようだった
「 」
何か質問してみようとしたのだが何故か声が出ない、まるで言葉が見えない何かに掻き消されるようだった
「・・・どうしたの?」
「 」
仕方ないから私は手の合図で意思疎通を試みる
手話なんて知らないからただのジェスチャーだったけど、何もしないよりはマシと思いやってみることにした
まずはさっき呼んだ名前は私の事をいっているのかを聞いてみる
「 」
「・・・そうだよ」
正直自信がなかったがどうやら通じたようだ、そして私の名前は翡翠らしい
そしてもう一つ貴女は何者なのかと聞いてみようとするが、その前に女の子の方が喋りだす
「知ってるはずだよ、私のことも、此処のことも、何もかも」
聞こうとしたことを先に言われて私は戸惑う
「 」
「そう、貴女は全てを知っている。」
何もジェスチャーしてないのにその声なき言葉に答える女の子
・・・もしかしてこのジェスチャーの意味ない?
「 」
「それは貴女が てを てしまった・・・ が から・・・」
女の子の声の一部が私と同じように聞こえなくなり、何を言っているのか解らなくなってしまう
「 」
「貴女 くのよ、この れた を」
次の瞬間強い風が吹き私は思わず目を瞑る
「・・・あれ?」
風が止み目を開けると女の子はそこにはおらず、さっきまで出なかった声も出るようになっていた
「私が全てを知っている・・・?」
女の子がついさっき言っていた事を思い出す
はっきり言って、私はあの女の子の事なんて全く記憶にない
・・・なのに初めて会った気がしない、知っているのに憶えていない
首を傾げていると今度は傘を差した緑髪の女の人がやってくる
「御機嫌よう、お嬢さん」
常に笑みを絶やさないその人は私に話しかける
「あ・・・こ、こんにちわ」
「そこまで緊張しなくてもいいわ・・・貴女迷子かしら?道がわからないなら今回だけ特別に道案内してあげるわ」
初対面である私を何の疑いもせずに道案内までしてくれる、正直とってもありがたい話だったのだが・・・それは断ることにした
「えっと・・・道はわかりませんけど、大丈夫です」
「あらそう?行き先はもう決まってるの?」
ぶっちゃけると道は知らないし憶えてもいないが、行き先だけははっきりとしていた
「此処じゃない何処かです」
「・・・へぇ」
女の人は一瞬驚いた顔になるが、すぐに先程の笑みに戻る
「ならこれは余計だろうけど、あっち方に行ってみなさい、行くかどうかは貴女次第だけどね」
「・・・あ、はい」
意味深な言葉に疑問を持つがとりあえず女の人が指差した方向に行くことにした
「親切にありがとうございます!それでは!」
私は女の人にお礼を言うと走り出した
女の人は変わらず顔には笑みを浮かべたまま小さく手を振り私を見送ってくれた
「・・・恐れてはダメよ」
「・・・?」
女の人が何か言っていたような気がしたが私には聞こえなかった
「あ、さっきの人の名前聞くの忘れちゃったな・・・今度会ったら聞こうそうしよう」
女の人の名前を聞きそびれてしまったのは残念だったが、今の私は気持ちが高ぶってそれどころではなかった
行こう、知っているはずの何かをもう一度知るために
記憶にないものを思い出すために
この世界の全てを知り尽くしてやろう
そして私はついさっき思い出したこの世界の名を呼ぶ
「行くよ、幻想郷!」
私の幻想卿の旅が始まる
色んな所に行って
色んな奴に出会って
色んな事をたくさんしてやる
幻想卿・・・私を歓迎してよね、それも盛大にね!
女の人に行ってみろと言われた方に歩き続けて数時間、私は人里について団子屋がやっていたのでそこて一息つこうとしていたのだが、ある事実に気付いてしまい、お店の前で石化していた
「そういえば私お金ない・・・」
それどころか私はここの通貨がわからない
「団子一本すら食えないなんて・・・」
なるほどこれが幻想郷の洗礼ってやつね・・・やめて、それは私に効く
歓迎してとは言ったけどこんな歓迎は堪忍してつかぁさい
「うぅ・・・お腹空いたなぁ」
そう呟きながら立ち尽くしていると後ろから声を掛けられる
「邪魔だ、退け」
「うぇ?」
振り向くと桜色の髪と周りに漂う霊気を帯びた面が特徴的な女の子の妖怪(?)がいた
「退けと言っているのだが?」
「あ、ごめんなさい」
「・・・フンッ」
お面の子に言われるがままに道を譲るとその子は不機嫌そうな様子でその道を通る
「店主、いつものやつと茶だ」
「毎度」
注文を聞いた団子屋の店主は慣れた手つきで三本の団子を軽く炙りその内の一本目には醤油を塗って海苔を巻き、二本目にはみたらしのたれを塗りたくり、三本目にはあんこを乗せる
それらを皿にの上に置き、そしていつの間にか淹れられていたお茶と一緒におぼんに載せそれををお面の子の前に出す
「はいよここちゃん」
「その呼び方はなんかむず痒いからやめてくれ」
こころと呼ばれたその子はおぼんを持つと椅子に座りさっきと打って変わってとても嬉しそうに団子を頬張る
「・・・あっ」
あまりにもおいしそうに食べるので思わずお腹が鳴る
「・・・?」
こころはしばらく私を凝視すると団子屋の店主に話しかける
「店主、こいつは何だ?新しい売り子か?」
「いや、その子お金がないらしくてね」
こころは店主の話を聞いて納得したのか食べ終わっていないのに立ち上がり、店主の所まで行って頭を掻きながら言う
「・・・店主、こいつの分も作ってやってくれ」
「え、いいんですか!?」
正直お腹が空いて目が回っていたのですごくありがたかった
「今日はみたらし団子が特別おいしかったから気分がいい、みたらし団子に感謝しろ」
「え、あ・・・はい」
今の話でこころがすごい団子好きだというのが分かった
大喜びで団子に食いついているとこころが話しかけてきた
「旅の人間にしては軽装だし、荷物もないな・・・外の人間か?」
「え?外?」
外と言われても私にはピンとこなかった
「外の人間でもないなら―」
途中でこころの言葉が途絶える
「ど、どうしたの?」
「いや、なんでもない・・・忘れろ」
「なにそれ」
こころは何か考えている様子だったが、聞くのはやめておくことにした
(・・・自覚はなし、か)
「あぁそうそう、どうでもいいがそれタダじゃないからな」
こころは突然まだ私が食べてる団子を指差し言う
「うぇ!?」
「タダでいけると思ってたのか?アホか?」
正直思ってた
「で、でも私無一文・・・」
「・・・お前弾幕戦は知っているか?」
弾幕戦、名前だけなら知っているがルールやらなんやらはからっきしだった
「名前だけしか知らないです」
「初心者どころか初見か・・・仕方ない、基礎は教えてやる・・・お前、名は?」
こころは座っていた長椅子から降りて私の名前を聞く
私も長椅子から降りて団子を全部食べてから名乗ることにする
「ムシャムシャモグモグ、ゴクン・・・翡翠です」
「中々いい度胸してるなお前、あと今すぐしゃがんどけ」
こころは溜息を吐きながら私の頭を掴み強引にしゃがませると、扇を取り出し後ろに振り向く
「チッ、面倒な奴が来た・・・」
こころが悪態をついた瞬間銃の発砲音が鳴り響く
「えっ!?何事ッ!?」
「あんまり騒ぐな、この程度なんてこともない・・・しかしいっつも思うがしつこいよなお前・・・他に予定ってないのか?」
しゃがんだままこころの方を見ると撃ち放たれたであろう弾丸は扇で止められていた
「よぅ、秦こころ・・・こんにちわ、んでもって死ね」
「しつこいぞ鈴仙・優曇華院・イナバ物置」
「おいちょっと待て今なんつった」
鈴仙と呼ばれた咥え煙草とうさ耳が特徴的な目付きの悪い女の人は拳銃を片手にこころに歩み寄る(物置?)
「失せろ、今お前に用はない」
「てめぇの都合なんか聞いちゃいねぇよ」
「お前の都合で生きてもいないが―」
こころが言い切る前に腹に蹴りを入れようとする鈴仙だが、それも扇で遮られていた
「相変わらず短気な兎だ・・・ここは人里だぞ、殺り合うのは今度だ」
「お前がまともなことを言うだけで寒気がする・・・」
「放っとけ・・・そうだな丁度いい、弾幕戦なら付き合ってやってもいいぞ」
「はぁ?」
予想してなかった提案に眉をひそめる鈴仙
「あの、こころ?」
「翡翠、お前に弾幕戦というのを見せてやる」
「つかずっと思ってたが誰だよそいつ・・・」
「こいつか?なに、今日は気分がいいからちょっとだけ面倒を見てやっている」
みたらし団子がおいしかっただけでここまで世話を焼いてくれる人は多分そういない
最初の態度の悪さのせいで誤解してたけどこころって思ったよりいい人だったんだなと思った
「なんかごめん」
「え?な、なにが?」
いきなり私に謝られて戸惑うこころ、それを見てありえないと言いたげな顔をしている鈴仙
「てめぇ・・・頭でも打ったか?」
「いくらなんでも失礼にも程あるだろお前」
「日頃の行いが原因だろ?小悪党が」
苛ついた様子で言うこころの顔に鈴仙は煙草の煙を吹きかける
私はこころが表情こそ変わらないが怒りでこめかみが一瞬ピクリと脈打ったのを見て苦笑いする
「まぁ、んなことは今は置いといてだ・・・私からしたらどういう形だろうとてめぇを穴あきチーズにできればそれでいい・・・」
「随分と粋がるものだな兎、吠えるのはお勧めしないと昔言ったはずだが?」
「減らず口は変わらねぇらしいなド畜生が」
こころと鈴仙はお互いを睨み合い得物を構える
「弾幕だと殺れないから九割九分殺しで許してやるよ!!」
「はっ―吠えてろ獲物風情が・・・店主、今日はもう店を閉めておけ」
「ちょ、ちょっとまったぁ!!!」
二人(特に鈴仙)から滲み出ていた殺意に耐えられず私は思わず止めに入ってしまう
「あぁ?邪魔だどいてろ」
「すぐに終わらせる、そこで大人しく見ていろ翡翠」
二人とも私の方を向くがその顔は明らかに邪魔するなと言いたげだった
「あ・・・えーっと・・・」
その気迫に一瞬気圧されるが、それには屈せずにこころと鈴仙の間に立つ
「鈴仙・・・だったよね?その弾幕戦、私が相手になる!」
私の言葉が耳に入った瞬間二人の思考は一瞬停止する
「待て翡翠、お前ルールもろくに知らないだろ」
「体で覚えるから大丈夫!」
「どっから来るんだその自信・・・少し待ってろ兎、こいつは―」
「成る程・・・察しろよ秦こころ、こいつは止めても止まりそうもない人種だぜ?」
鈴仙は若干何かを諦めたような様子でこころを諭す
「こいつの目は一度やると決めたらとことんやる奴の目だ、どうもこの手の奴は慣れやない」
「・・・わかったよ翡翠、好きにしろ」
こころは私の背中を軽く叩き、その後溜息を吐きながらさっき座っていた長椅子に座る
「うん、好きにする」
「こういうのを相手するとどうも調子が狂うが仕方ない、始めるとしようか」
鈴仙は煙草を投げ捨て私に拳銃を向けるのに対して、私も拳を握り締め構える
「覚悟はいいな?」
「情け無用ッ!!」
私の初の弾幕戦が始まる
今更だけどルールぐらいはこころに聞いておけばよかったなぁ・・・
始めまして霞ヶ原と申します。
原作にハマってその勢いでやらかしてしまいました。
今も緋想○則を黙々プレイしています。楽しい(恍惚)
というわけでよろしく願いします。