勝者が決定し弾幕空間から元の空間へと戻っていく
「初陣にしては上出来だ」
いつの間にか隣にいたこころに背中を叩かれる
「めっちゃ疲れた・・・」
私は疲れて座り込んでいたが、すぐに立ち上がりガッツポーズを取る
「クソ・・・何かの間違いだろ畜生・・・」
鈴仙は負けたのが認められないのか壁にもたれ掛かりながらゴミ箱を蹴飛ばしている
「鈴仙・・・」
「あ?んだよ負け犬の吠え面拝もうってか?」
「負け犬ならぬ負け兎だがなお前は」
「こころ変なこと言わないでよ!?」
こころを取り敢えず黙らせてからもう一度鈴仙に話し掛ける
こころ本当に他人煽るの好きだなぁ・・・
「私・・・貴女の事を知りたいって思ってるんだ」
「はぁ?」
「そんな荒々しい所じゃなくてさ、もっと他の所を見てみたいんだ…駄目かな?」
鈴仙は戸惑っている様子で、暫く黙り込んだ後に私に聞いてくる
「・・・何でだ?」
「私は今色々な物を忘れているんだ・・・記憶喪失ってやつかな?だから色々物をもう一度知りたいんだ」
「・・・その記憶を取り戻す気はねぇのかよ?」
「それは・・・」
それを聞かれると答えに詰まる
確かに以前の記憶があるなら取り戻したいけれど、その手掛かりはないし、少なくともすぐに戻るようなものではないと思う
「そんなことするよりもう一回知るほうが楽かと思ってかな?」
「なんだそりゃ」
鈴仙は呆れた様子で溜め息を吐く
「・・・ダメ?」
「・・・・・・・・・・・・」
鈴仙はかなり長い沈黙の後、小さく口を開く
「知ってもらうためにゃ何をすりゃいいんだ?」
とてもぶっきらぼうな言葉だが最初の時のような殺気は感じられなかった
「え、改めて聞かれると…」
その直後、私の腹の虫が鳴る
「・・・聞こえた?」
「・・・・・・聞こえねぇなら耳鼻科行きだな」
顔が熱くなる
多分他人から見た私の顔は真っ赤になっていることだろう
「―ッ‼」
恥ずかしい
帰りたい(帰る場所ないけど)
土に埋まって人生やり直したい
「そういえばお前が食ってたの団子だけか」
黙っていたこころが口を開く
「美味しかったんだけど正直お腹一杯には・・・」
「・・・んだよ、私は腹空かした奴に負けたのかよ・・・なんか納得いかねぇ・・・」
「格下と見くびったせいだ阿呆め・・・そうだ翡翠、こいつに飯でも奢って貰うのはどうだ?」
「ご飯を?」
「私が奢るだぁ?」
鈴仙は一瞬こころを睨む
「一緒に飯でも食えば相手の事はある程度分かるさらに弾幕戦に負けたペナルティとしては大分軽い…双方悪い条件ではあるまい」
「・・・待て、こいつ弾幕戦のペナルティ設定してたか?それ以前に秦てめえこいつにろくな説明してねぇだろ」
基礎しか教えて貰っていない件
「ペナルティってなに?どういうこと?あとそういえばこころは何で私に弾幕戦なんて薦めたのさ?」
「ペナルティってのはつまり勝った奴は負けた相手から金だの物だのをぶんどれるめんどくせぇオプションルールだ・・・このオプションのせいで賞金稼ぎみたいな行為をしてる奴も少なくねぇ・・・秦、お前さては賞金稼ぎ仲間作る気だっただろ?」
「弾幕戦の素晴らしさを教えてやりたくてつい」
「やっぱりかてめぇ‼」
鈴仙はこころの胸ぐらを掴み怒鳴るが、こころは耳を塞いで話を聞こうとしない
「そ、そこまでに・・・」
「・・・仕方ねぇ、適当にそこの蕎麦屋で構わねぇな?」
鈴仙は掴んでいる手を離すと私の後ろを指差す
指差した方向には確かに蕎麦屋がやっていた
「あ、おいしそう」
「蕎麦程度ならんな高くねぇだろう・・・好きな物食わせてやる」
「そうか、なら私は謙虚にあの鰻重付き特大天ぷら蕎麦を・・・」
「てめえじゃねえ引っ込んでろ」
こころの提案で鈴仙に蕎麦を奢ってもらう事になり、現在私は蕎麦屋の目の前にいた
「よぅ蕎麦屋のにーちゃん」
「お、久しぶりだな・・・三人かい?」
「いや、二人と一人だ」
「何故私を省く、いじめ、カッコ悪い」
こころは鈴仙の肩を掴み猛抗議する
「・・・分かった、わーかったから離せ、離せ馬鹿」
こころはさらにうねうねと気味の悪い動きで鈴仙にまとわりつく
その結果鈴仙は根負けして三人で蕎麦を食べる事になった
「・・・で、結局三人でいいんだよな?注文は?」
席に座ると店主の若い男の人が注文を聞いてくる
「私は盛り蕎麦な、お前は?」
「えーっと・・・じゃあこの鴨南蛮っていうのを」
「私は特大天ぷら蕎麦鰻重付きで」
こころの注文を聞いて一瞬嫌そうな顔になる鈴仙
「一応聞くがそれ自腹だよな?」
「え?これもお前持ちじゃないのか?」
「ふざけんな埋めるぞ」
腰のホルダーに入れている拳銃に手をかける鈴仙を必死に止めながら蕎麦が来るのを待つ
お願い蕎麦屋のお兄さん早く作って
二人の喧嘩を止めつつしばらく待つと店主が出てくる
「お、お待ちどう・・・」
店主が若干引きつった顔で蕎麦を私達の元に置く
「「「頂きます」」」
三人揃ってそう言うと二人とも早速蕎麦を食べ始める
「何でてめぇなんかと飯を・・・ずずず」
「それはこちらの台詞なのだが・・・むしゃむしゃ」
二人とも文句を言いながらも大人しく蕎麦を食べている
仮にでもさっきまで殺すとかなんとか言ってた仲にはあんまり見えない
「ねぇ二人とも、何でさっきはあんな殺伐としてたのさ?」
「ん?あぁそれは―」
「私もこいつもお互いが気に入らねぇからだ」
こころが言う前に鈴仙が言う
「気に入らないって・・・」
「そのまんまだよ私はこの兎が気に入らん」
「んでもって私もこの下衆が気に入らねぇ」
言い終わると二人ともお互いを睨み付ける
そこにはさっきまでの腐れ縁みたいな雰囲気はなく、本当に相手を心底嫌っていることが分かった
「まぁでも端から見たら新手の漫才にも見えますよねーずぞぞ」
ふと隣の席から声が聞こえる
私達はほぼ同時にその方向を向く
そこには青い眼と銀色の髪が特徴的な女の人が蕎麦と天丼を食べていた
「・・・十六夜」
「むぐむぐむぐ・・・あぁ私の事はお構い無くはふはふ」
「お構い無く、じゃねえよ何でお前が居るんだよ」
睨み付けながら鈴仙は十六夜と呼ばれた女の人に問いかける
「何でってもぐもぐ・・・今日私ぽりぽり・・・休暇ですもの・・・もきもき」
「喋るか食べるかどっちかにしろよ」
「ハフッ、がつがつむしゃむしゃずずずずずもきもき」
「いやそこは喋れよッ‼」
鈴仙の無駄にキレのあるツッコミすらも華麗にスルーして蕎麦を食べ続ける女性
「お前なぁ・・・」
「ずずずずず・・・んん?そちらのお方は?」
女性は私に気付いたのか食事を一旦中断してこちらを向く
「こいつか?こいつは翡翠、迷い人だ」
一瞬こころの言い方にムッとしたけど確かに今の私は間違いなく迷子だ・・・右も左も分からないへっぽこ記憶喪失だからなぁ今の私・・・泣きそう
「翡翠ですか、良い名ですね」
「初めまして・・・えっと、貴女の名前は?」
「あぁ申し遅れましたすみませんね・・・私の名は咲夜、十六夜咲夜と申します」
咲夜と名乗った女性はにっこりと笑うと立ち上がり蕎麦と天丼が乗ったおぼんを持ってこちらにやってくる
「貴女美味しそうですね」
「うぇ?」
咲夜から突然の捕食宣言に思わず身構える
「あぁそういう意味ではなくてですね・・・貴女の食べてる蕎麦美味しそうだなぁって」
私は自分の食べてる鴨南蛮と咲夜の食べてる蕎麦と天丼を凝視する
「えーっと、今貴女って蕎麦と天丼食べてますよね?」
「えぇ食べてますよ?」
「それでこれも食べたいんですか」
「食べたいです」
「mgsk」
「mgds」
私はしばらく考えた後、少しならいいやと思い少しあげることにした
「まぁ、少しなら・・・」
「本当ですか!ありがとうございます‼」
そう言うと早速私の鴨南蛮の丼を持つと一気に蕎麦をすすり始める
ちょ、少しだけて言うたやん!
すると突如咲夜は鈴仙に拳骨されて頭を抱える
「いったあぁ!?何するんですか鈴仙!」
「少しって言ってただろダァホ」
「だって美味しいんですもの!だって美味しいんですもの‼」
「知るかこのポンコツメイド」
鈴仙は呆れ顔で咲夜の主張を一蹴する
何とも言えない茶番劇のようなものも終わり四人で蕎麦を食べる
「ご馳走様です」
「ご馳走さん・・・で、お前結局何でここに居るんだよ」
鈴仙と咲夜が食べ終わり最初の話の続きをする
「さっきも言ったじゃないですか、休暇ですよ休暇」
「こんなクソ騒がしい時期によく休暇なんて貰えたな?」
「お嬢様が体を休ませるのも仕事の内だと」
何だか二人の会話がよく分からない・・・騒がしい?
会話を聞いてるこころも何だか事情を知っていそうだったのでこっそりこころに聞いてみる事にした
「ねぇこころ、今何か起こってるの?」
「・・・む、最近ある者達が面倒な事をしているらしくてな」
「ある者達?」
「あぁそうだ、そいつらの名は―」
「"管理者"私達はそう呼んでいます」
こころが言い切る前に咲夜が話の続きをする
「おいお前ら、そいつにんなこと話したって・・・」
「ですがこの事は知ってもらう必要があるでしょう、この幻想郷に来たからには」
「だがなぁ・・・」
「私それ知りたい」
勝手に口が動き私が思っていたことを全て吐き出す
「・・・んだと?」
「本気か翡翠、先に言っておくが危険な内容だぞ」
「本気だよ、何でかは分からないけど知らなきゃいけない気がしてさ」
三人共私の目を見て何かを察したのか最初に鈴仙が溜め息を吐く
「一度決めたからには曲げねぇ・・・か?」
「勿論」
「全くお前という奴は・・・」
こころは若干呆れ気味だったけど何だか笑ってるようにも見えた
「分かりました、では説明しますね・・・ではその管理者が何をしているのかから話しましょうか」
咲夜は最初の雰囲気とは違って真面目な顔付きで言う
「管理者は現在、妖精を使って幻想郷を制圧しているのです」
色々と目立つ物が多い幻想郷の中でも一際目立つ紅い館"紅魔館"
その紅魔館の主、吸血鬼レミリア=スカーレットは苛ついた様子でチーズをかじっていた
「・・・そんなに苛ついてどうしたの?」
「あいつが・・・泣いてる」
レミリアの隣で本を読んでいた魔女パチュリー=ノーレッジは一旦本を読むのをやめてレミリアを心配そうに見る
「そうね・・・今日はいつも以上に泣いているわね」
「だが私は何にも出来ない・・・本当に自分の無力さに腹が立つ」
レミリアは悔しさで顔を歪ませるが、そんなレミリアの頭をパチュリーは軽くチョップする
「いだっ」
「貴女がそんなのでどうするのよ・・・彼女を救えるのは貴女だけなのよ?」
「・・・すまない」
パチュリーに叱咤されるレミリア、そこに
「御話の途中に失礼」
「「ッ‼」」
突然何者かの声が聞こえ身構える二人
「あぁそんな身構える事はありません・・・」
レミリアの影から装飾が施された黒いボロ布を纏った亡霊が現れた
「・・・レーツェル、何の用だ?」
レーツェルと呼ばれた亡霊は牛の頭骨で作られた仮面を少し動かしながら喋る
「我が主が泣いている・・・それは貴女方もご存知だろう」
二人は頷きそれを肯定する
「では何故主が泣いているのか・・・それが貴女方は分かりますか?」
それも頷き肯定する
「当然だ、奴らが・・・管理者共が本格的に動き始めたからだらう」
「御明察・・・流石ですなレミリア=スカーレット殿」
レーツェルはけたけたと笑いながら小さく拍手する
「そんな話の為だけにお前が出てくるとは思えんな」
「主が泣いているのが我慢ならないのは本当ですが・・・そうですね・・・咲夜殿が変わった少女と接触しておりますね」
「はぁ?咲夜が?」
予想外の話題にレミリアは少々間抜けな声を出してしまう
「えぇそうです・・・本当に、本当に変わった雰囲気をした少女です」
「折角休みをやったのになにしとんじゃあいつは」
「けど気になるわねその少女、名は分からないのかしら?」
「確か翡翠と・・・」
その名前を聞いた瞬間レミリアは勢いよく立ち上がる
「・・・レミィ?」
「・・・あ、いや、何でもない・・・」
レミリアは椅子に座り直して再びチーズをかじる
「・・・それはいいけどレミィ」
「分かってる、今夜奴らが来るぞ・・・伝えろ、各員戦闘配備」
「・・・分かったわ」
パチュリーが部屋から去った後、飲みかけのワインを一気に飲み干し椅子から降りて窓を見る
「ハッ―今日は長い夜になりそうだ」
幻想郷とは別の空間
会議に使われるようなテーブルと椅子しかない殺風景な白い部屋に四人の人が椅子に座っていた
「今日の夜から・・・だったよな?」
一人目は気怠げにチェスの駒を弄っている目付きの悪い男
「らしいな・・・このために俺らが呼ばれたのか」
二人目はテーブルに足を乗っけて寛いでいる剣を背負った大柄の青年
「世界を閉ざす・・・だったよね?中々大それた事言うよね彼女」
三人目は手に持った銀時計を見つめる右眼の部分に大きな傷がある少年
「ま、いいんじゃない?私達がやることは何も変わらないんだしさ」
最後は椅子にもたれ掛かっている月の髪飾りを付けた少女がそれぞれ好き勝手に話をしていた
「皆集まったな」
席に座っていた四人全員は声がした方向を向く
先程まで誰も座っていなかったその席には髪先をリボンで結んだ少女が静かに座っていた
「よぅ、いよいよか」
「あぁそうだ、今夜から計画の準備段階だ」
少女は少し歪な笑みを浮かべる
「僕達四人による各勢力への同時襲撃・・・これがただの準備って言うんだから末恐ろしいね」
「折角の好機なのだ・・・これぐらいしなくてはな」
「ま、何か考えがあっての事何だろうのよ」
「想像するのは勝手だ、だがこれからはやることはやって貰うぞ」
少女は立ち上がり四人に命じる
「"悪魔"は総合戦力が最も高い守谷神社と妖怪の山を」
「いいぜ・・・どうせなら楽しませて貰おうか」
悪魔と呼ばれた男はチェスの駒を弄るのをやめて不気味に笑う
「面倒な不死者の巣窟の紅魔館は"騎士"・・・破壊者とも呼ばれた貴様の力で捻り潰せ」
「・・・了解だ」
騎士と呼ばれた青年は髪を掻き分けて命に応じる
「"救世主"は人里に行ってもらう、あそこも厄介な奴らが多い・・・潰してこい」
「あぁ・・・やらせてもらうよ」
救世主と呼ばれた少年は手に持っていた銀時計をしまいそれに応じる
「不明な所が多い白玉楼は"武士"・・・行ってくれるな?」
「勿論、任せちゃってよ!」
武士と呼ばれた少女は刀を手にし笑顔で応える
「永遠亭はどうするのさ?」
武士は少女に聞く
「・・・あの陣営は未だに動きを見せていない、下手に動いて月の頭脳に謀られては面倒だ・・・様子見とする」
「ふーん、了解」
「それと八雲陣営は私自身が叩く、気にする必要はない」
「君一人でかい?流石に侮り過ぎじゃないか?」
「気にする必要はないと言っただろ?奴らの事は私は良く知っている」
「そうか、ならいいか」
「さて、計画はこれで最初の段階になった・・・いいな貴様達、加減などしなくていい、奴らを徹底的に叩き潰せ」
少女の言葉と共に四人は立ち上がり各々の持つ武器を掲げる
「宜しい・・・それでは今夜から計画〔クローズワールド〕を開始する・・・諸君、派手に行こう」
今回はわりと早めに投稿できました霞ヶ原です
鬼畜兎に勝利した褒美に蕎麦をおごってもらっている翡翠ちゃん
普通の人ならスルー安定の面倒そうな案件に自ら首を突っ込むスタイル
その間に紅魔館の面子に少し登場してもらいました
パチュリーはまだしもレミリアは完全に誰だお前枠のお方です
そしてレーツェルというキャラが出ましたがオリキャラです
本文では亡霊と説明されてますが正確にはリッチというアンデットの類です
あるお方の使い魔と言っていますがさてだれでしょうね・・・すぐバレるだろうなー
最後の密会みたいなのに出てくる方々も全員オリキャラです
・・・オリキャラ多数のタグも追加ですね、ハイ
先に言っておきますがこっから話は全然進みません(色々な意味で
それでも見てくれるひとはどうか見捨てないで待っててください
それではまたお会いしましょう