東方二色語   作:霞ヶ原

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第七節 ー閉塞の為の蹂躙ー

 

 幻想郷の各地で始まった管理者の襲撃

その中で襲撃を受けなかった陣営である永遠亭

「…始まったわね」

その永遠亭の責任者ともいえる八意永琳は一人座敷に座り月を眺めていた

「遠いわね、本当に」

一人でそう呟くと茶を少し飲む

「それと優曇華、気配は隠せても煙草の匂いは消えないわよ?」

「…まぁバレますよね、師匠相手にバレないとは思ってませんが」

襖を開けて鈴仙が座敷に入ってくる

「今回、本当に私達は何もしないんですか?」

鈴仙は単刀直入に聞く

遠回しに聞いても意味なんてないことを知っているから

「そうね…何もしないのも選択肢にあるのかもしれない」

永琳は少しだけ目を細める

「優曇華、貴女は管理者を…彼女を許せる?」

「無理です許せません」

永琳の問いには即答する鈴仙

「たとえ師匠にやめろと言われても無理ですあいつだけはこの手で潰す」

「そう…やっぱりそうなるわよね…別に止めはしないわ、好きにしなさい」

「そうさせてもらいます」

鈴仙は襖を開けて何処かへ行ってしまう

「停滞…私達が前に進める日は来るのかしら?」

永琳は月に手を伸ばす

無論その手は届く筈もなく空を切る

「貴女なら一体どうしたのかしらね…―」

言葉の最後に誰にも聞こえない声で誰かの名を呼ぶ

 

 夜の闇を戦火が照らす

管理者の支配下にいる妖精達は何もその瞳に写さずに言葉もなく手に持つ長剣で行進を続ける

自らが潰せと命じられたその陣営を潰すために

「これでどれくらい潰しました?」

その潰すべき陣営の者達は潰されまいと抵抗していた

「三分の一位じゃないですか?」

その陣営の一つの紅魔館に所属する門番の美鈴と妖精メイドのウィンディは館から少し離れた最前線で戦闘しながら会話していた

「本っ当に数が多いですねぇ…ちょっと疲れてきましたよ」

そう言いながらも美鈴は涼しい顔で妖精達を数体殴り飛ばす

「息切れすらしてないくせに…」

ウィンディは苦笑いしながら拳銃に弾を装填する

「いまのところは善戦してますがこの数ではまだ危ないですね…何より弾薬の残りもあまりないですし」

「マジですか、いよいよ分からなくなってきましたね」

「いえ、大丈夫ですよ」

溜め息を吐く美鈴にウィンディは不敵な笑みを見せる

「言ったでしょう、思うようにらちを明けると」

最初は首を傾げる美鈴だったが館から打ち上げられた信号弾を見て理解する

「分かりましたね?さぁ離脱しますよ」

「そうですね、あとはあの人にお任せしましょうか」

美鈴とウィンディ率いる妖精メイド達は残った妖精達を無視して戦線を離脱する

「前衛部隊離脱を確認、始めましょうパチュリー様‼」

離脱した様子を双眼鏡で確認した使い魔の小悪魔は主であるパチュリー=ノーレッジにその事を伝える

「えぇそうね、少し派手にやりましょうか」

パチュリーは魔術書を開く

それに続いて小悪魔と数人の妖精メイドも魔術書を取り出す

「いい感じに密集してるわね…パーフェクトよウィンディ」

パチュリーはくすりと笑い軽く指を弾くと空に巨大な魔方陣が展開される

「お願いねイレーヌ」

「了解、包囲結界展開します」

イレーヌと呼ばれた妖精メイドが指で魔方陣を描きそれに手をかざすと先程ウィンディ達が戦っていた場所が上空の魔方陣と共に白い光の壁に囲まれる

「包囲完了、パチュリー様お願いします」

イレーヌの合図と共にパチュリーは上空の魔方陣に指を向けて魔術を行使する

「木火『ラーゼンピュロマーレ』」

魔方陣から炎の雨が降り注ぐ

さらにその炎は地に落ちると意思を持ち踊るかのように辺りを飛び回る

「いくら死なない妖精相手とはいえこれはえげつないですね…」

結界に包囲された妖精達は炎に触れて次々と焼かれていく

「こうでもしないときりがな―」

パチュリーが言葉を言い切る前に何者かに結界を一部破壊される

「結界がっ!?」

「美鈴、ウィンディ、結界が誰かに壊されたわ…恐らく此方に向かってくるから確認してちょうだい」

パチュリーは結界が壊されたの見てすぐに魔術で美鈴とウィンディに伝達する

「パチュリー様、こっちの声聞こえますよね?もう確認しました…」

館の前まで後退していた美鈴達は結界を壊したであろう者を認識していた

「…ゆっくりマイペースに行こうと思ったら壁に閉じ込められるわ炎は降ってくるわ…これがここの歓迎のやり方なのか?」

そこにいたのは大剣を背負った大柄の青年だった

「この時間帯は関係者立ち入り禁止と看板が分かりやすい場所に立ててあった筈ですが?」

「知らね」

「それに貴方壁に閉じ込められたと言いましたけどその壁はどうしました?」

「叩き割った」

「左様ですか…で、貴方は何をしにここまで?」

ウィンディは質問をしながらもすぐに攻撃できるように袖から投刃を出し構えていた

「ウィンディ、もう彼に質問をする意味はありませんよ」

美鈴は拳に気を纏わせながら言う

その表情はとても険しく今にも青年に襲い掛かろうとする妖怪のそれであった

「貴方…人間…なんですよね?」

「さぁな、当ててみろよ」

美鈴は苦笑いする

青年に質問返しされたことについてではない

「人間以外の何か…じゃないですか?」

美鈴にはこの答えしか思い付かなかったからだ

「まぁ…違いねぇな」

青年は面倒臭そうに頭を掻いた後背負っている大剣を鞘から引き抜き構える

「とにかく…悪いが仕事なんでな、管理者側所属、名は今は騎士と名乗らせて貰ってる…つまりそういう事だ、壊させてもらうぞ紅魔館」

「「御断りします」」

美鈴とウィンディは声を揃えてそう言うと静かに構える

「そりゃ残念だ、なら力付くで行かせてもらおう」

騎士は大剣を地面に引き摺りながら走る

「どうせなら私達の主人風に言いますか」

「あぁ、以前紫さんを追い払ったときのあれですか」

二人は互いを見合いくすりと笑い、その直後走り出す

「てめぇにやるぶぶ漬けはねぇ!」

「お帰り下さいませご主人様ァ!!」

 

 月明かりが照らす夜の人里

その人里にも管理者の軍勢である妖精達は行進をしていた

「本当にしつこいな…だが」

しかし妖精達はその圧倒的な数をもってしても人里の中には誰一人入れないでいた

「わぁお…面白いくらい効果的のようですね」

現在人里は大規模な結界に覆われていた

「結界の護符…あの人が使ってるやつを模倣した粗悪品レベルの物ですが意外に大丈夫のようですね」

防衛戦に参加していた琥珀は共に戦っていた慧音と一緒に前線から退いていた

「いや、どんな形でもあれを模倣出来たのは凄い事だ」

二人は呼吸を整えながら人里の門の方を見る

「しかし奴等の思考が単純で良かった…」

門の所には唯一結界が張られておらず、妖精達はその唯一人里内に侵入出来る門に向かって来ているのだ

「正直あの数で叩かれたらこの結界すぐ割れちゃいますからね…」

「まぁとりあえず私達はあの門に集中している奴等の対処をすれば良いだけだ…どれだけ数が多くても一度に門に入れるのは多くて四人程度、対処は楽だ」

慧音達が休んでいる間は人里人妖連合の武装集団が対処していた

「妖精達程度なら連合の者達でも何とかなるな」

「朝が来るまでこんな感じで交代を繰り返せばいいわけですか…」

「今交代したんですか?お疲れ様です」

二人が話していると見知らぬ少年に横から話し掛けられる

「えっと…君は?」

「あぁすみません、今回の防衛戦に参加を志望した人里の者です」

「そうでしたか、つまり連合の人って事ですか」

「まぁそうなりますね」

少年は小さく微笑むと二人の所に歩いて来る

「来るな」

慧音は鋭い目付きで少年を睨む

「え?いきなりどうしたんです慧音さん?」

「人里に住む者の顔は全員覚えているが君のような少年はいない…それに」

表情は歪み顔には冷や汗が流れていた

「何だ…何なんだ君のその歴史は!?」

「あれ…?貴女は歴史を喰らう能力を自ら封じていたはずでは?」

少年は首を傾げる

「視たのさ、君の歴史をね…私は自身の能力の歴史を喰らう能力の副産物として人や物の歴史を視る事ができるのさ…喰らう能力は封じる事ができたがこればっかりはできなかった」

慧音は自嘲気味に笑う

「うーん、どうしよう想定外だなぁ…」

少年は困った様子で辺りを見る

「僕は他の皆ほど強くないなら正面からやりたくなかったけど…仕方ないか」

少年はナイフを取り出すとそれを右の掌に突き刺す

「え!?な、なんのつもりですかそれ!?」

既に武器を構えていた琥珀は少年の行動に驚く

「すぐに分かります…さて、貴女達には悪いですけどここで果てていただきます」

「…来るか」

慧音は驚きもせずに百託を構える

「そうか、貴女は僕の歴史を視たんでしたっけ?」

「そういう事だ…構えろ琥珀、来るぞ」

困惑している琥珀の背中を叩く慧音

「あ…は、はいっ」

構え直す琥珀の目前には赤い刃が迫っていた

「うわぅっ!?」

間一髪でそれを鉤爪で防御する琥珀

「な、なにこれ…血!?」

少年の方を見るとナイフで刺された掌から流れる血がまるで意思をもつかのように蠢いていた

「どうだい?面白いだろう?」

「デタラメ能力もいい加減にしてください…よっ!!」

琥珀は羽織っているコートの袖から筒のような物を取り出し少年に投げつける

「それはなに?」

「これから見せますよ…起ッ!!」

琥珀が何か合図を送ると投げられた筒が急に加速する

「え?」

加えて筒は不規則な軌道で辺りを飛び回り少年に襲い掛かる

「その程度…」

少年は血の刃を使い飛び回る筒を切り裂く

「おや、わざわざ起爆させる手間を省かせてくれるなんてやさしいですね」

次の瞬間筒は爆発しそれに連鎖して飛び回っている筒も全て爆発する

「琥珀印の七つ道具、追尾爆弾[翔乱鉄火]…味わってくれました?」

「私が知る歴史の中で類まれ見るドヤ顔っぷりだな」

「あの…せっかく人が格好良く決めてるのにそれを台無しにしないでくれます?」

慧音に話の腰を折られて肩を落とす琥珀

「へぇ、ちょっと驚いたよ」

煙の奥から聞こえる声に反応して二人は同時に声が聞こえた方を向く

「嘘でしょ…死ぬような威力にはしてないにしても無傷はあり得ないはず…」

「どうやら彼のあの血の刃は盾にもなるようだな」

「駄目だよ…僕を倒すなら最低でも首を切り落とす気でいかないと」

少年は自身の首を指でなぞる

「もっとも…」

慧音は話をしている最中の少年の首を斬ろうとするがそれは血の盾で防がれてしまう

「簡単にはやらせないけどね?」

「そのようだな…救世主、いや名で呼んだ方がいいか?」

「救世主で構わないよ…貴女は僕の歴史を視たんだろう?ならもう言葉は不用のはずだ」

「…」

慧音は黙ったまま一度距離を取る

「えっと、慧音さん?」

「なんでもない、行くぞ琥珀」

慧音は一瞬悔しさや哀しみがこもった顔をするがすぐに元の表情に戻し斬りかかる

「救世主…君は、いや彼女はこんな事望んでいるのか!?」

「…―!?」

救世主は一瞬驚いた顔をすると今度は怒りの表情を見せる

「あのさ…あの人の事の話は…虫酸が走るからやめてくれないかなぁ!!」

怒声を放ちながら数多の血の刃を駆使して一瞬にして慧音を追い詰める

「うぁっ…」

「慧音さんっ!こいつッ!!」

「邪魔しないでよ」

後ろから不意討ちを試みた琥珀だが既に見抜かれていたのか救世主は琥珀の方を見もせずに脇腹に肘打ちを当てる

「かはっ…!?」

「まずは貴女からだ上白沢慧音、貴女を討てと言われているからね…それに、個人的にムカつくんだよ、貴女は」

救世主は血の刃を慧音の首目掛けて飛ばすがそれは何かに弾かれる

「…………ねぇ、君それなんのつもりだい?」

救世主の血の刃を弾いたのはいつの間にか慧音を守るように生み出されていた氷だった

「いやいや、ちょっとお手伝いをね?」

 

 桜が舞い、氷華が飛び散り、研ぎ澄まされた刃がそこに存在する者達の命を削る

「流石にやりますね」

白玉楼の庭師、妖夢は侵入者である管理者の手駒の武士と戦闘を繰り広げていた

「余裕そうな顔してよく言うよ…」

武士は少々引き気味で言う

事実妖夢は妖精に囲まれ四方八方からの長剣の一撃を全ていなしながら武士と斬り合っているにも関わらず余裕そうな笑みを浮かべていた

「まぁこのぐらいの修羅場はいくつも乗り越えてきたつもりですので」

「あんたとの一騎討ちでは勝ち目がほぼないのがよく分かったよ…でもさ」

武士は氷で造り出した刃を投げながら妖夢から離れる

「…?」

そして武士は再び妖夢に接近する

数多の幻影を生み出しながら

「…ッ!?」

「避けてみなッ!!」

武士は幻影達と共に斬りかかる

「少し驚きましたがそんなものでは私は斬れませんよ」

その連撃を刀と鞘でいなしていく

「(やはりか…この幻影、質量を持っている…厄介な)」

妖夢は小さく舌打ちすると鞘で自分の影を叩く

「来なさい」

妖夢の声に応えるかのように影から人魂のようなものが飛び出てくる

「え?」

突然飛び出してきた半霊を見て武士は一瞬目を奪われる

「そこです」

妖夢は武士のほんの一瞬の隙を逃さずに鋭い一閃を放つ

「うわっ!?」

その一撃を紙一重で躱す武士だが次の瞬間半霊が腹に高速で体当たりを叩き込む

「いっつ…!?」

武士は衝撃に耐えられず吹き飛ばされる

「逃しません」

妖夢は吹き飛ばされている武士を走って追い追撃を行う

「ぅわあしはやっ!!」

武士が驚いている間に追撃として走る勢いを利用した跳び蹴りを御見舞いする

「ぐうぅっ!!」

武士は身に纏う甲冑で防御する

「しぶといですね…それに」

妖夢は気付けば氷付けにされた半霊と跳び蹴りを放った際に氷の刃で貫かれた左肩を見て言う

「私の予想以上に出来る御方のようだ」

「…まぁこういう修羅場はいくつも乗り越えて来たつもりだからね」

少し嬉しそうな様子で言う妖夢に対して武士も不敵に笑いながら言う

「成る程、それは素晴らしい…ところで武士よ、少し話をしたいのですが」

「はぁ?いきなり何を―」

言葉を言い切る前に武士は膝をつく

「な…なにこれ…」

「ようやく効きましたか、本当にしぶといですね貴女」

妖夢は口内に隠していた含み針を見せながら武士に近寄る

「これって…いつから?」

「最初に貴女に斬りかかった時にですよ」

「私が言えた事じゃないけど…それズルくない?」

「ぶっちゃけた話ですが、私刀を武器にしていますがこういう小道具も嫌いではありませんよ…では」

妖夢は半霊を閉じ込めている氷を鞘で叩き割るとそれに手を突っ込み中から短筒を取りだし武士に向ける

「少しお話しましょうよ、そちらにとっても悪い話ではないと思いますよ?」

 





夏が終わる、投稿が遅い、土下座安定

どうもお久しぶりです霞ヶ原です

またしても遅くなりました申し訳ありません

待っていてくれた皆様(多分居ない)お待たせしました

色々な所で戦闘してますね

次の話も大体こんな感じです

そして先に言っておきます

主人公多分この章出番ない

大丈夫なのかなこれで…











復讐[見様見真似の回し蹴り]
あべしっ

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