BLEACH reencarnacion medusa   作:ガブリエール

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ご意見ご感想、お待ちしています。些細な事でもいいので参考にさせていただきます。


告知002 「托卵」

 『失われた心、それは何処へ行くのか知っているかい』

 

それは百年も昔の記憶、かつて永遠と完璧を手に入れ、老いに敗れた大虚が賢しい若者と話した一部始終。

 

「何をいまさら、答えは決まっているこの…仮面です」

 

骨ばった表皮、最早生きているのかも怪しいミイラのような姿に成り果てた大虚は、何百年ぶりに合う来訪者へ向かって吐き捨て居る様に言い放った。その瞳にもうかつての様な野心は宿っていない。

 

全てをかけて戦った支配者の闘争、その誇りを賭けるべき戦いの敗北者に生きる意味など無い。王座を奪われ、力の大半を失ってもなお、のうのうと生きながらえる事を大虚は良しとはしていなかった。

 

虚とは野獣、その本質は穢れ切った本能の塊。だが欲望の化身になってもなお、大虚は惨めたらしく生きる事よりも潔く死ぬこと選ぶことが出来た。いや、頂点に立ちたいという戦士染みた本能がそうさせたのかもしれない。

 

だが、大虚は死ねなかった。

 

理性という恐怖が、生きたいと願う動物的な本能が邪魔をしたわけでは無く、根本的に大虚は死ぬことが出来なかったのだ。意思ある生命として、誇りある虚として在りたかった大虚はそこで抜け殻となった。

 

何をする事もなく、ただ白砂の大地の地下にある大虚の森に居座り、石像の如く固まっていた。それは冬眠に近く老いによる身体能力の低下を補うための身体の防衛本能だったが、大虚はそれを利用しより深く眠りにつくことで今後一切目覚めないようにしたのだった。

 

それは、実質的な「死」。何も考えることなく、眠り続け一生目覚めない眠りとはつまり死んでいるに等しかった。大虚は得てして生きながらに死ぬ術を手に入れていたのだ。

 

だが、その眠りを強制的に覚まさせた者がいた。それは数々の大虚が犇く地下洞窟の森にまったく臆す素振りを見せずたった一人で乗り込んできた。焦げ茶色の癖毛をした黒い衣装を身に纏った者は、眠り続けていた大虚を見つけるとまるでお目当てのモノが見つかったとばかりに微笑んだのだ。

 

永遠に眠りたかった虚のつかの間の死は、来訪者によって壊されてしまう。

 

『そう、虚から抜け出した心は形となって仮面としてその身に再び戻る。そして本能に沿った相応しい力を与えるんだ』

 

「何を言ってるです?相応しい力、負けられない戦いで負けて惨めに生き残る力なんて、僕はいらないです」

 

敗北の味を初めて味わった、生きとし生きる生命を、そこに存在する物体を、全て老化し風化させてしまう最恐の力に侵された。しかし、こうして大虚の身体はどれだけ痩せこけようとも生きていたのだ。

 

細胞を老いさせても、霊子を枯渇させても、意思を摩耗させようとも、依然として大虚は大虚として個を保ち続けていた。だからこそ眠るしか無かったと内心で悪態をつき、大虚はその眠りを覚まさせた大罪人を睨み付けた。

 

『そうかい、それは僥倖だ。なら一つ交渉しようじゃあないか』

 

だが、来訪者は大虚の並みの虚なら逃げ出したくなる霊圧の波を受けても動じず、その場を動かなかった。むしろ今まで平静を保っていた大虚の苛立った表情を見て、心底愉快だという風に笑っていた。

 

久しぶりに来た来客は、大虚を笑いに来たのだろか。だとするならそれは大成功だっただろう、牙を捥がれ野心を捨てさせられたひ弱な肉食獣は、今は病床で唸る患者の様に精気の無い顔をしていたのだから。

 

そして来客はそれでも足りないとばかりに、理智的な笑みを一瞬歪ませあざ笑うようにその眼を細めたのだ。

 

「去れ…です」

 

大虚の被った白くのっぺりとした仮面の内側に青筋が浮かぶ、老いに現在も浸食されているにも関わらず徐々に高まっていく霊圧は、大虚と来客の立つ白い砂が降り積もって出来た洞窟の地面を揺らし、壁面に無数の亀裂を作り出す。

 

弱小の虚ならすぐにでも逃げ出したくなるほどの強大な霊圧が支配する空洞の中で、だが来訪者は薄気味悪く笑うだけで大虚の言葉に返さず、傲慢に自分の我を通して話した。

 

『君を、殺してあげよう』

 

「なに…?」

 

『だから君はその力を差し出せ、生物全てが憧れ敬う完璧な力を……』

 

 

大虚はもう我慢できなかった、眠りを妨げられ、大敗した戦の悔しさをを蒸し返され、挙句の果て自分の力を奪おうというのか。殺すなどと出来もしない嘘を並べて、その場限りの体裁を取り繕った偽善者が。

 

こいつも過去数百年の歴史の中、何度も会った事のある所謂自分のことを相手にも押し付けようとする偽善者に違いない。そして言葉巧みに懐柔し戦の道具として祭り上げるのだ。

 

戦うのは好きだった、だが大虚が戦うのは自分の欲望を満たすときのみ。頂点をとる為の傀儡と成り下がるのは御免だった。強きものと、強き力は違う。前者は意思を持って存在しえ、後者に意思は存在しない。

 

「お前も僕の力が欲しいです?」

 

上に立つのは自分一人でいい、敗者となった大虚の瞳に来訪者の挑発によってかつての野望の光が灯りかける。探る様に霊圧をぶつけてみるも、踏みつぶそうと掌をかざしてみても、飄々とまるでそこに居ないかのように悉く避けてしまう狡猾な来訪者。

 

大虚はその佇まいに少し興味が出て来ていた。今でこそ落ちぶれた隠居生活をしている大虚だが、それでも実力は並の虚のそれを大きく上回っている。ほんの少し殺気を込めれば禄に魂の味も知らない小さな虚ははじけ飛んでしまうだろう。

 

にも関わらず、この来訪者は臆することなく、まして信仰する事も無くありのままの大虚を見続けていたのだ。少なくとも大虚の巣にたどり着くにはそれなりの実力を持っているのだろうが、それでもなお異常だった。

 

『ああ、だから君ごとそれを……頂くことにした』

 

「驕るなよ、若造が…です」

 

若きモノは皆粋がるものだ、大言壮語し自慢し嘘八百を並べて自分を良く見せようとする。だが、来訪者の瞳は本当にそう思っていと語っていた。それを感じ取った大虚は腹が立つと同時に、本当に死ぬことが出来るのかと僅かな希望に縋ってしまったのだ。

 

『能力とは虚の存在意義だ、肉体では無く魂に付随するもの……不死なる力を持った虚もまたそれは同じ。なら、能力と一体になっている魂を外部から取り込み、自身の魂と癒着させ取り込んだ魂の意思を摩耗させていけば能力は奪えるとは思えないかい?』

 

「意思の消滅……」

 

『眠りとは違う、完全な死だ』

 

 

大虚は震えた、長年待ち望んで来たものが、何よりも焦がれて来たものが目と鼻の先にある。死という終末を迎えられるという幸福感が皮算用であるにも関わらず、大虚の身体を満足感で漲らせていた。

 

一度負けた大虚に生きる意味など無い、そしてこの能力は、生き残る為に使うものではない。あの力は戦う為に、頂点に立つために、全ての支配者になる為に使うべきもので……

 

だが、この若き来訪者の言葉に少なからず嬉しさも感じていた。彼はきっと本気でそう言っているのだろう、そう思わせる鋭い眼光が大虚の中に燻っていた闘争心を再燃させていく。

 

「お前はどうしてそこまで完璧を目指すです?」

 

『決まっているさ、それが私の存在意義だからね』

 

吸い込まれる様な闇に彩られた恐怖が先に立つ笑みを作る。遥かな未来、数多の駒を引き連れ死神たちを狂気へ誘う来訪者は、1000年間の眠りについていた大虚を深く引き付けそして焚きつけた。

 

常に高みを望み続ける姿勢、最上級大虚となってもなお、この大虚は更なる高みを見続けることが出来るのだろうか。狂気に彩られた来訪者の顔を見ている内に大虚は決心した。ゆだねてみようと。

 

老いに負けた大虚が無しえなかった先を見せてくれるのかもしれない希望に、この若き虚に、自分の渇望を託してみようと。

 

大虚の巣全体に大きく重厚に広がっていく霊圧の本流、それは一回の負けに固執して己の在り方を曲げてしまった大虚が、その力を取り戻した証に過ぎない。洞窟が軋み悲鳴を上げ、周囲の虚を振動の連鎖で爆発させる。

 

何倍も何十倍にも膨れ上がっていく霊圧に、だが来訪者は顔色一つ変えずに嬉々として、野心の戻った大虚の姿を捉えていた。まるで目の前に居るそれが自分の脅威では無いと言う様に、ただの玩具に過ぎないとでも思っているかのように。

 

やがて洞窟は膨れ上がる霊圧の重みに耐え切れなくなり、風船が弾け飛ぶかのように破片を周囲に飛び散らせながら崩壊した。そして、最強に一歩届かなかった力は、受け継がれる。

 

強大な力を纏い内側から風船のように爆散した大虚は、霊子の粒となって来訪者の中へと入って行く。

 

「一度敗北した僕に、過ぎた力だったです……好きに使え…です」

 

意思の奪取、それは何という事の無い大虚同士が行うただの捕食行為。来訪者はそれを取得選択して能力を残すことが出来るという事。大虚がその力の所有権を放棄した今、力は来訪者へと渡る……

 

『ふは、ふははははっ、素晴らしい、これが…これが不死身の力、完璧な肉体…』

 

徐々に瓦礫に飲み込まれ姿が見えなくなっていく来訪者、だがその霊圧は以前のものとは比べ物にならない程膨れ上がっていた。来訪者……後に二つの魂に分け放たれる虚は、この日最強にして完璧な力を手に入れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 1000年の時を経て再び白砂と常闇が支配する心を失った魂の楽園、虚圏(ウェコムンド)の地へと降り立ったかつて大虚(メノス・グランデ)だった者。

 

虚としての最上級に位置し、髑髏の王と互角の力を誇った者は、流麗な艶を出す桃色の長髪を頭の後ろで纏め、かんざしの様な仮面の破片を前髪にのせながら、主の居なくなった寂れた城を見つめていた。

 

そこは1年前、天へ立とうとした支配者が破面を従えて作り出した拠点とも言える場所。だがそこは真っ白な外壁は無残にも崩れ、半分も元の形をしていなかった。力の象徴が崩れた今、恐怖によって成された均衡は崩れ、虚は元々の本能のままにこの世界を血と悲しみで覆いつくしていた。

 

混沌とした「死」しか生み出さない世界、それが本来の世界の在り方であり、心を未練を現世に置いて来てしまった哀れな虚が背負うべき業でもあった。そしてまたいつの日か力の強い大虚がまた髑髏の王のように君臨する、それが弱肉強食の世界の理だった。

 

だが、磨耗して消えていく精神を辛うじて繋ぎ止め、復活のチャンスを100年間も待ち望んでいた大虚だった者は、それを否定したのだ。

 

暴君(バラガン)に成り代わった賢王(藍染)も敗れた今、頂に立つのはか弱き優姫(ハリベル)です」

 

今なら、かつて届かなかった虚圏の王の座に手が届くかもしれない。常に頂点を目指し渇望してきた大虚だった者は、その甘美な誘惑に駆られ血色の良いぷっくりとした唇に愉悦の笑みが浮かぶ。

 

髑髏の王に復讐(リベンジ)出来ないのは辛かったが、かといって弱き姫に統率される世界を許して置けるほど大虚だったものは甘くはない。望むものは頂点、そしてその先にある誰をも超える進化。

 

ありとあらゆる者を追い越して、決して届け得ない高みで更に進化し続ける。

 

それはきっと永遠に渇望し続ける彼の業であり、何物にも変えられない至福なのだろう。呪いであり幸せ、相反する二つが入り混じった歪んだ在り方こそ、彼、彼女が望んで進化した到達点に他ならない。

 

「くふ…ふふ…ふふふ」

 

子供のような純粋な笑い声を響かせながら、大地を割り裂くような重厚な霊圧を身体から発した大虚だった者は、挑発するように城へ眼を向けそこにいるであろう支配者を見据えて思考する。

 

「でもまだ時期じゃない、十刃と事を構えるのは当分先になりそうです。…復活とは程遠いです…まずは力を取り戻さないと…」

 

ひとしきり笑った後、大虚だったものは自分の背後で横たわる、ツインテールの破面に向き直るのだった……

 

「さあコッテリ搾らせてもらいましょうかです」

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