BLEACH reencarnacion medusa   作:ガブリエール

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告知003 「胎動」

 邪淫妃(フォルニカラス)それは僕の力を取り込んだザエルアポロが独自の研究の末に作り出したもの。僕の能力の一端である特徴に多種多様な能力を付け加え不死身に近い生命機構に昇華させた彼だけの作品。生命として、終わりある生き物としてその更に上を目指し完璧にならんとした欲望の結果生まれた能力はだが、端的に言ってそれだけの力だった。

 

他者の胎内に侵入し、分離した魂魄を成長させ、他人の霊圧を吸収しながら超速再生をする。確かに何度でも命を再構成するクラゲ、不死鳥(フェニックス)と言えば聞こえは良いが悪く言えばそれでは成長が出来ないという明確な欠点が存在している。一度死んでも復活できる、それでは死んでしまえば今まで積み上げて来た筋肉なり霊力なりが一瞬にして水の泡と化してしまう。

 

知識は蓄積されていくとはなるほど研究者であり理性を求めた大虚(メノスグランデ)であるところのザエルアポロらしい台詞だが、虚圏(ウェコムンド)の頂点を巡って強さを求め続けた僕としてはそれは矢張り甘いとしか言いようがない。それは逃げだ。死んでも復活できるから、いくら負けようが死なないから安心と言っているに等しい。リベンジのチャンスを作ることは、心ににどうしようもない油断を生む。

 

そして、ザエルアポロはあろうことかその不完全な不死を完璧と認識してしまったのだ。だから負けた、常に上を目指す科学者らしい科学者に。完璧主義者は不完全論者に敗北したのだ。

 

「まあこんなもの……です」

 

眼の前には山のように積み上がった(ホロウ)の死体、いや霊子分解をさせないために僅かに息をさせているので半死体と言ったところか。どちらにしてももう虫の息には変わりない、この場所から逃げ出す気力も残っていないだろう。勿論苦労して集めた大虚たちだ、例え逃げ出す気力あったとしても僕がそれをさせないが。

 

だが、まだ足りない。僕が完全復活を遂げる為にはこれだけの霊子量ではまるで足りていない。雑魚の虚の魂を魂吸いして集める不毛さに気づいた僕はより多くの濃度の高い魂を求めて、虚圏の地下に存在する通称「大虚の巣」にやってきていた。此処には下級大虚や中級大虚等多種多様な大虚が犇めき合って何種類かのコロニーを形成している。それもこれも上級大虚への進化の為だ。

 

大虚はこうして寄り集まって互いを食い合い、魂を混ぜ合って融和させそして高みへと昇っていく。僕もまた通った道だが今回はただ単に食料提供の場としてこの場所を利用させてもらっていた。特に「個」が無くなっている下級大虚は知能のかけらもないので僕が近づいても逃げることなく襲い掛かって来る為、比較的楽に仕留めることが出来た。

 

中級は無駄に知性があり戦いも煩わしかったが、それでも所詮中級の域を出る事は無い。僕にとってはただの美味しい霊力供給源だ。仮面に口を付け限界まで魂を搾り取りこうして上に積み重ねていく。するとどうだろう今度は強い相手が来たという事で好戦的な少しは骨のある濃厚な霊力を持った相手が集まって来るのだ。

 

さながら入れ食い状態。食べても食べてもあちらから餌がやって来る状況についつい気分も高揚してしまう。味の薄い雑魚を食べていた時に比べれば、さながら今の状況は天国だろう。

 

もっとも虚が考える天国が本来の天国なわけがないのだが……

 

「アンタ…どこまで食べるのさ……」

 

食べた大虚の数が大体1000を超えたあたりでふと背後から呆れの混じった声がかかる。積み上がった大虚の山が5連と連なり始めたのを確認し、僕はこれで十分かと背後を振り向いた。

 

「あれ、見てたのですか。人の食事を見るなんてマナーがなってないです」

「いや、あんたにマナー云々言われたくないよ、私の身体こんなにしちゃった癖に……」

 

心底呆れた様に自分の体を指さすのは、文字通り身長が縮み最早少女と言っても過言では無くなってしまった破面(アランカル)の女だった。名をチルッチ•サンダーウィッチという彼女は虚の山の上に座った僕を見上げる形で苦笑いを浮かべる。

 

僕の復活に当たってザエルアポロの肉体から分離するための器を作る母胎になってくれた彼女。せめてお礼として殺さないでおいたが、体を縮めた事を恨まれこそすれ、僕についてくる理由はないと思っていたので驚きだった。

 

この破面はなにを持って僕について来ているのか。復讐の為なのだろうか?それとも強者に従うという弱者染みた思考の末に行われた生き残る知恵なのだろうか。

 

まあ、僕としても優秀な母胎が精神優良な状態で自分のそばにあるという状況は決して悪いものではない。僕はザエルアポロと違って何度も再生する事を許容するほど肉体的に弱くは無いが、上質な製造機が側にあるのは望ましい。

 

いや、本当にチルッチの肉体は素晴らしかった。破面という死神が混ざった珍しい霊圧に加え、崩玉によって底上げされた肉体構成は当然僕自身の肉体を構築する上で大変参考になった。

 

藍染惣右介が崩玉によって確立させた破面という概念、1000年前からちらほらとそんな奴らは存在していたが、その時はさして気にする事もなかったものだ。大方強く進化する過程で袋小路に迷い込んでしまったのだろうと。

 

だが、それを藍染は死神化の深みへと進行させる事によって始解ならぬ帰刃を作り出した。それにより今まで有象無象の雑魚同然だった破面が大虚の頂点へと至る程の成果を叩き出した。

 

その一点において、強さという一つの可能性を示してくれた藍染を僕は尊敬する。進化ではなく研究による強者への至り方、僕にはできないそのあり方を

 

お陰で僕はザエルアポロに吸収される以前の状態と比べても人間に近い姿形になる事ができている。まあザエルアポロの体内にいた時期が長過ぎたせいで髪の色や虚隈などは若干寄ってしまってはいるが、それ以外は全てチルッチの構造を模倣して作られていると言っても過言では無い。

 

もっともあくまでも破面に近い形で構成したというだけで、別に死神へ近づいたというわけではない。あくまでも外見的な模写であって本質的なものではないのだ。ザエルアポロのクローン生成する力は私のその能力を流用しているのだが、いかんせんそれは外部の変化を真似るだけの偽物だ。

 

能力までコピー出来るのはあの暴食の破面のみ。そう考えるとあの時捕食しておかなかったことが悔やまれるがそれは後の祭りだろう。今更後悔しても何が変わるわけでもなく、仕方ないと割り切ってしまった方が精神的にも楽だった。もちろんその領域にいたる努力を惜しむ気はさらさらないが。

 

まあ別に僕の邪魔をしようとする気配も無いので、久しぶりの話し相手として口を聞いてあげることにする。僕に対して臆す事もなく、ただ普通に話しかけてくる虚と言うだけで貴重だった。

 

「栄養補給は大切です、腹が減っては戦は出来ぬ……です」

「流石、歴戦の大虚様は食べる量も桁違いって奴なのかい?……所詮十刃落ちの私からすれば今の霊圧でも十分羨ましいよ、これが格の違いって奴なんだね。アンタにはひっくり返ったって勝てる気がしないよ…化け物め」

 

化け物、チルッチが言い放った言葉はだが、僕には相応しくない総称だった。あれは理解できない存在に与えられる、つまりは超越者何者にも右に出ない何かを持ったものを、持たざる者が差して言う言葉。

 

圧倒的で無敵で、そしてただそこにいるだけで周囲に諦観と絶望を与える力こそ化け物足り得る。僕はまだそこに至ってすらいない、まだ全盛期の僕より弱いのだから。

 

「僕は強くなりたい…です」

 

それは生き残るためではなく、自らの欲望を満たすために。強者に進化し続けるために、僕は虚を食べ続けた。

 

「は……今のままでも十分に強いのにかい、理解できないね」

 

そう、僕は今のままでも虚圏内では立ちはだかる壁が殆ど無いほどの実力を取り戻してきている。だがそれでは駄目なのだ。目指すべきは頂点ただ一つ、そのためにはまだまだ力が足りない。弱肉強食の生態系の頂点に立ってなお、更に強さを求め続けることが僕の虚としての本能なのだ。たぶん、強欲に貪欲に全ての強者を踏み潰すまで僕の心は死ぬことはないと確信できる。

 

だからこそだろう、チルッチが返した言葉に、大虚として持った理性を揺さぶられるほどの怒りが湧いたのは。

自慢ではないが、他の虚に比べてもその心の寛容さは飛びぬけているはずだ。それは僕の心に頂点を目指していたあの頃の僕には目に見えない心の余裕があったからだろう。

 

バラガンという頂点に最も近かったという自負、それが僕という大虚に圧倒的な余裕を齎していた。端的に言えば、焦っていなかったのかもしれない。最強が目と鼻の先にあると高をくくっていた。それが、その皮算用が敗れてからはどうだろう。

 

最強の名を欲しい侭にしていた暴君が、戸魂界からやってきた賢王に敗れ去った。そしてその王政も長くは続かなかった。賢く理知的に全てを掌握していった王であっても、勝てない強者が現れそれに負けてしまったのだ。一強が1000年間を支配する時代は終わりを告げた、今は激動、泉のように湧き出てくる強者はかつての王を屠りまた屠られていく。

 

このままではいけない。頂点に立つためには、今の……いやバラガンと闘えていたかつての自分ですら生ぬるいのだ。いずれまた1000年前の脅威は再来するだろう、停滞は死を招く。それをこの目の前の破面は分からないのだろうか。

 

「僕は君のほうが理解できない……です!」

 

意図せず流れ出した霊圧が空気を振動させ、大虚の巣全体の壁に亀裂を入れる。人の手が入り整備された虚夜宮とは違い自然に出来た洞穴は、積み重なった鍾乳石や埃を天井から落とし始めまた集まり始めていた大虚達を牽制するように鋭くとがった先端を地面へと突き刺していった。

 

「え・・・?」

「強者に傅き、弱者に甘んじるその姿が理解できない。僕には君のその姿が人型をした死体に見える……です」

 

中級(アジューカス)の状態で破面になった虚が今後の捕食行動によって上級へと進化できるのかは結論から言って難しい。それは何千もの虚を取り込み下級でありながら十刃へとなることが出来た虚が、あの強さをもってしても下級のままだった事に由来する。

 

もちろん破面になる事によって上級だの下級だのといった線引きは至極曖昧なものになる事は否定はしないが、それでも差は存在する。簡単に言えば弱者は何時までも弱者なのだ。

 

至れなかったもの、そこで進化を止めてしまったものを僕は心底軽蔑する。種として、心なき欲望の獣として進化を止める事は自らの生を放棄する事に等しいからだ。心を失った虚が、生への執着を止める時、それはすなわち存在の消滅を意味する。

 

そこで誰かの成長の糧になる事を望む、などとほざいては努力してこなかった自分を棚に上げて、美談にしてしまおうと言い訳する。生物は進化し続けなければならない、他ならぬ僕がそうであるようにありとあらゆる生ける生物は常に上を目指さなければならない。

 

それは生者の義務だ。魂の状態であろうとも、負に身をゆだねた身体であろうとも、意思を持ちこの世界を動いているのならばそれは絶対にしなければならない。そして、僕はまだ至っていない、頂点とも言えるこの世の真理へ・・・・・・

 

「で、でも…わたしは…中級どまりで…」

「僕は知っている……です、かつて下級であろうとも十刃に君臨し続け貪欲にも頂を目指そうとした破面を」

 

能力を貪り喰らい、あのザエルアポロでさえ対策を講じずにはいられないほどの才を持っていた下級大虚。その下劣でありながらありとあらゆるものを飲み込まんとする傲慢な姿勢は、僕の目指す頂と非常に似通っていた。現状で満足しない……それは最も好ましい感情だ。

 

中級だの最上級だのというのは言い訳に過ぎない。大虚であった時にはいざ知らず、破面と化した今に置いてそれを気にすることは愚かな行いだ。下級の破面でも強くなれるという前例がある以上、強くなれるという可能性がある以上……諦めるのはまだ早すぎる。

 

ここで、僕がこうして弁舌を説いてもなお停滞を望むのであればこの立ち並ぶ死骸の山の一部にしてやる。そう思いチルッチの方を見つめると。

 

「ほう…まだ、出来る…です」

 

悔しそうに眉を顰め、握り拳を作る少女の姿があった。まだそんな顔が出来るのか、まだ強さというものを諦めていないのか。だから、少し……興味が湧いた。この僕の従属官となるからには、誰であろうと停滞は許さない。僕はだから、彼女に一つだけ尋ねるのだ。

 

「お前は、今のままで良いです?」

 

 

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