BLEACH reencarnacion medusa   作:ガブリエール

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告知005 「鮫姫」

 それは油断だったのかもしれない。違和感を感じて直ぐに行動を起こさなかった怠惰が招いた悲劇だったのか。いや、それは違う……運が、悪かっただけなのだ。

 

 完全に急所を打ち据えた刃の刺突、それは完全に憐れな女破面の魂を貫き命を散らしたかに見えた。不意打ちとは言え予想以上に早く勝利を得たことに油断したのか、襲撃者は満面の笑みで壇上を見上げ自らが座るであろう頂の席を凝視してしまう。

 

そしてそれが、ハリベルに生まれた起死回生の隙でもあった。襲撃者が刀に込めた霊圧を緩めた刹那、ハリベルの姿がまるで幻の様に残像を残しながら消滅する。次の瞬間、襲撃者の背後へとハリベルの背中から刀が思い切り振り下ろされた。

 

特殊な真ん中が空洞になっている段平のような刀に、高密度の霊子が渦を巻くように集中していき、やがてオレンジ色の神々しいオーラを放ち始める。

 

蒼剣砲(プロジェクティル・アズール)!!」

 

力任せに広範囲に霊子の塊を放つ虚閃も似た暴力的な一撃は、轟音を上げながら周囲一帯を巻き込んで、勝利を確信した笑みを隠そうともしない襲撃者へと向かっていき、背後へと迫る寸前で見えない壁に阻まれてしまう。行き場を失った霊力の奔流は殺気石で霊圧を削られながらも、衝撃だけで床や壁を突き破ってしまう。

 

「「反膜(ネガシオン)

 

そう小さくつぶやいた襲撃者、それは独り言だったのかもしれない。だが、ハリベルは理解するその技が虚が誇る唯一絶対の防御の技、何物にも犯されない霊子の壁だということを。そして、膨大な霊圧を消費するそれを逃走時ではなく、戦闘において使用するこの襲撃者の余裕をも感じてしまったのだ。

 

十刃の上位であった自身と相対してもなお、霊圧消費の激しい技を惜しみなく使って余裕を持つことが出来るのは二種類しかいない。自分と相手の実力を正確に推し量れていない愚か者か、自身の実力が相手より勝っていると確信している者かだ。

 

「ぐっ……おま…え…はっ!!」

「あれ…おかしいな、死んだと思ったんだけどな。とっさに響転で急所を避けたみたいだね、流石十刃だっただけはある。精密な探査神経に、硬い鋼皮、この程度の力じゃビクともしないか」

 

破面の周囲を振るわせるような霊圧を叩きつけ、一瞬の隙をも見逃さまいと警戒するハリベルの前で、予想外にも襲撃者は動きを止め意外そうに小首をかしげて見せたのだ。明らかな隙、そしてあからさまな挑発にハリベルはつい乗ってしまいそうになる自身の感情の激流を押さえつけた。

 

戦いの最中、激高し冷静さを見失った者がたどる末路は決まっている。特に自分はそういった腹芸は不得意なのだからと必死に怒りに身を任せようとする本能を、流水で洗い流すように静かに押さえつけていったのだ。その間わずか数秒、相手に与える隙は無いに等しい。

 

だが、その出来た数瞬に霊子の塊である蒼剣砲をもう一度叩きつける。これで決められるとはもちろんハリベルは思っていない、案の定崩壊した虚夜宮の壁が膨大な霊子の波動によって飛び散り、舞い上がった煙を突き破るように襲撃者が獰猛な笑みを浮かべてこちらに肉薄する。

 

「なかなかやるじゃん」

「…くっ…なぜ、私を襲う!?」

「なぜ?なぜってそりゃぁ、僕が君より強い事を証明するためさ」

 

迫りくる襲撃者の凶刃を刃の一線で防ぐハリベル、つばぜり合いの体制へと移行したハリベルはそこで初めて襲撃者の姿を見ることが出来た。何度も響転繰り返し自身の背後を取ろうと動く襲撃者の速さは、上位十刃といえどハリベルの眼でその姿を正確に捉えることは出来なかったのだ。

 

ここに来て初めて襲撃者の姿を見たハリベルは戦慄する。それは自分がかつて見たことのある顔だったからだ。桃色の艶のある頭髪、そして口元に浮かんだ薄笑いは体形こそ違えど第8十刃ザエルアポロ・グランツのそれだった。自分が先ほど感じた違和感の正体が此れだったのかと確信する一方で、ハリベルはこの目の前の破面がそのまま額面通りのザエルアポロではない事を看破する。

 

あの不気味な研究者には、モルモットに対する陰湿なまでの探求心はあれど、戦闘に対する貪欲な闘争心はみじんも感じられなかった。だが、この破面はかつてのザエルアポロからは感じなかった身の危険を感じるほどの鬼気迫る迫力を感じるのだ。

 

襲撃者から放たれる重圧のある霊視の奔流を受け、切っ先を合わせたはずのハリベルの刃が僅かに押し負けてひび割れる。死神動揺、斬魄刀の高度は持ち主の霊圧に依存する。刃同士の切り結びでひび割れるという事はそれはすなわち、両者の間には圧倒的な戦力差が広がっているという事だった。

 

「……っ虚閃!!」

 

自分の虚の力の象徴である刀がひび割れたのを見て取って、この状況が不利だと判断したハリベルはつばぜり合いを瞬時に切り上げ背後に響転を行い、眼前に渾身の虚閃を放った。蒼剣砲の技を放つため込められた刀身のエネルギーをそのまま虚閃に流用した溜め無しの一撃。

 

円錐状に広がる霊子の一撃は、濃縮された蒼剣砲とは打って変わって広範囲に広がり逃げる隙を埋め尽くしていく。反膜は一度放てば霊圧回復までに相当なタイムラグが生じる、襲撃者が余裕をもってハリベルの強さを見誤ったために起きた間違い。襲撃者はこの攻撃から身を護るすべがない。ことこの虚夜宮に限った話になれば、ここまで拡大された虚閃の一撃を交わすことは不可能だった。周囲の崩落した壁に邪魔され襲撃者は光の波から逃れることが出来ない。

 

……かに思われた。

 

「いやぁ、すごいすごい流石3番さんだね、僕もちょっと焦っちゃったよ」

「な……んだと」

 

短くも熾烈な戦いに、勝利をもぎ取ったと確信したハリベルは自分の部下は無事だろうかと背後を振りむこうとしたところで、再び膨れ上がる襲撃者の霊圧に驚愕し冷汗を流す。帰刃していないとはいえ、自身の持つ最大の霊力を込めた一撃を見舞ったはずだった。

 

それは、例え第1十刃であろうともまともに喰らえば五体満足にはいかないという程の破壊力……だった。ハリベルの身体に未知の存在にたいする怖気が走る、それは先ほど霊圧探査中に感じたものと同等のそれだった。弱肉強食の世界に生まれた虚としての生存本能が、この相手と戦ってはいけないとハリベルの中で悲鳴をあげ始める。

 

自分の最大の一撃が、無傷で防がれた。そんな相手を前にまだまともに戦えるだろうか?こたえは否、普通の心を持つ者であったならば、此処で心は完膚なきまでに折られその場に生きる気力もなくはいつくばってしまっただろう。

 

「うふふ、なかなか死なないね、蟲みたいに簡単に死んでくれると思ってたんだけどなぁ。ちょっとはしぶとさも持ってるみたいだね、まあ君臨する王としては程遠い紙切れのように薄い力だけど?」

 

だが、ハリベルは……深く…海の深淵よりも深く意識を研ぎ澄まし、先ほどよりも、今よりも、その先よりも霊圧を研ぎ澄ませていく。荒れ狂う暴力の嵐が、肌にそよぐ冷風へと変わり、やがて完全に凪ぐ。戦う事を放棄して、刃を捨てることを選んだのか?

 

断じて否!!

 

「討て……皇鮫后(ティブロン)!!」

 

静止した霊子がハリベルの解号と共に竜巻のように彼女の身体を取り囲み、その姿をかつての本能のままに魂を喰らう虚その物へと戻していく。刀の形に込められていた本来の霊圧が漏れ出し、増大した霊子は空間を押しつぶすかのように重く重くのしかかる。

 

「へぇ…これは、なかなか」

 

未だに戦う闘志を感じさせるハリベルの帰刃……その力は死神の卍解に匹敵する上昇率でありゆうに5倍から、10倍にも上る。

 

口元を覆う犬歯が並んだかのような仮面が消えさり、代わりに首元から豊満な胸元を覆うように白い鎧の様な仮面が現れる。方にはショルダーガード状の仮面が浮き上がり、下半身の死覇装は取り払われ骨が並んだかのようなミニスカートへと変わっている。

 

全体的に露出面の多い姿はだが、立ち上る霊圧から彼女がもっとも戦闘に適した摩擦率の極めて低い姿だという事に襲撃者は納得する。背に生えたサメのヒレを彷彿とさせる突起は、空気抵抗による摩擦係数をさらに下げるためのものなのだろう。

 

なるほど、容姿を『犠牲』にした実用的なフォルムをしている。だが、その機能美を襲撃者はいとも簡単に切って捨てるのだ。

 

「なんで其処まで削っちゃったのかな、もったいない……せっかく良い身体してるのに、ハリベルちゃん…女の子としての自覚足りてないよ?」

 

欲望が足りないと。全てを飲み込んで、我がままに、自分のしたいように生きる事こそが虚としての在り方だと言わんばかりに襲撃者は嗤う。お前の在り方は間違っているのだと、自分こそが正しいのだと言わんばかりに傲慢を秘め、そしてそれを押し付けられる強さをもったかつての大虚が動き出す。

 

虚夜宮での順位を塗り替える為、最強の称号を得るために……奴は手段を択ばない。

 

 

 

 

 

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