初出勤から数日が経ち、オープンへの準備が着々と進む中最初の休日を迎えたアサギはサンマルコ広場にあるカフェフロリアンにいた。朝の早いうちから目が覚めたためホテル周辺の地理と街の雰囲気を確かめるため散歩の出ていた。そして休憩を兼ねてこのカフェに立ち寄ったのである。天気は良好。屋外にあるテーブルの一つに座り、歩く人を見たり、空を見上げたりとくつろいでいた。するとそこに白い物体が現れた。椅子によじ登りアサギを見つめていた。
「ぷいにゅ」
「ん?お前は・・・もしかしなくてもアリア社長か?」
「ぷいにゅぷい!!」
こちらの言葉がわかったのかその物体はアサギの顔へと飛びついた。アサギはアリア社長を引っペがそうともごもごしていると、声が近づいてきた。
「社長~。アリアしゃ・・・・って社長何してるんですか!!」
「ふが~ ふが~」
「ぷいちゅ ぷいちゅ」
いい加減酸欠になってきたアサギは渾身の力を込めてアリア社長を引っペがした。
「っが。はぁ はぁ はぁ・・・死ぬかと思った・・・」
「っす、すみません。大丈夫ですか?」
「ああ。大丈夫だ・・・って君は?」
「はひ・・・あっすみません。私、水無 灯里といいます。アリア社長を探してたら貴方の顔にしがみついてるのを見つけて・・・」
ピンクの髪の毛にサイドからモミアゲ?が垂れた少女。髪の毛も気になるが一番目を引いたのがその服装だ。
「その制服・・・ウンディーネのアリアカンパニーの制服だね。」
「はひ。よくわかりましたね。私アリアカンパニーのウンディーネなんです。まだまだ見習いですけど・・・」
灯里は右手を見せた。そこには手袋がはめられていた。
「ウンディーネには階級あって両手袋 片手袋 手袋なしなんですけど私はそのうち真ん中の片手袋 シングルという半人前なんですよ~」
アサギは灯里の手をまじまじと見つめる。ほわほわとした話し方でついつい和んでしまったのだ。その隣でアリア社長がアサギへよじ登ろうとしていた。アサギはアリア社長へ目線を変え
「はあ。アリア社長よ。もちっと痩せてくれよ。マジで首がもげるとこだったぞ。」
それを言った途端アリア社長はガーーンと青ざめその場でいじけてしまった。それを見てアサギと灯里はふふっと笑った。
「おっと。俺の自己紹介がまだだったね。俺は神無 アサギだ。この辺に近々できるホテルのスタッフだ。」
「わわっ。あのアクア・ネレウスですか?いいねすねー。私すっごい楽しみなんです。あのホテルができるのが。」
灯里は目を爛々と輝かせていた。オープン前から期待してる人もいるもんだなとアサギは思った。
「ネレウスって海の神様ってことですよね。このネオ・ヴェネチアにはぴったりの名前だなと思いまして。妖精に神様か~ なんか物語みたいですね~。ネオ・ヴェネチアって。」
灯里は嬉しそうに背中が痒くなる事を言ってきた。
「まあ。オープンはまだ先だからね。多分オープンすればウンディーネさんたちにも何かと縁ができるだろうしもしかしたら仕事もお願いっするかもしれないね。」
「え? 本当なんですか? 私たちと仕事できるんですか?」
「ああ。実は一つホテルのプランに企画を考えていてね。まだ提案してないんだけど・・・ね」
「はひ。私ぜひぜひ一緒にしたいです~。」
・・・・・・すっかり馴染んでしまったアサギと灯里は話に華を咲かせるのであった。その間影追いという日陰が移動するのに合わせてテーブルも移動するとういうイベントにも参加し二人と一匹はまったりとしたひと時を過ごした。
「では。アサギさん私たちはこれでそろそろアリシアさんも戻ってくるので帰りますね~」
「アリシアか・・・そいや 今は水の三大妖精って言われてるんだよな・・・・すっかり有名人になっちまって~」
「あれ?アサギさんアリシアさんと知り合いなんですか?」
「ん?ああ。そういや言ってなかったね。俺生まれはここAQUAの浮島なんだ。アリシアとはミドルスクールの時知り合ってね。丁度アリシアがプリマ・・・手袋なしになるかってときに地球へ移住したもんでな~それ以来ろくに連絡とかしてなかったからな。」
アサギはポリポリと頭をかいて苦笑いをした。
「ほへ~。でもでもアリシアさんきっとアサギさんのこと聞いたら喜びますよ。きっとです。」
灯里は満面の笑顔でいった。
「そうか。灯里ちゃんが言うならそうかもな。まあ アリシアには今度挨拶に行くって言っといてくれ。」
「はひ。分かりました。でわ。アサギさんまたです~」
「ぷいにゅーい」
「おう。また~」
こうしてアサギと灯里は別れた。最初の休日にとてもいい出会いをし幼馴染のことで懐かしんだアサギは帰路に着くのであった。