銀さんに憑依した俺は幻想郷で気ままに万事屋を開く   作:肥満猫

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第二話『ひねくれ者が正直になると良い事がない』

 妹紅の案内のお陰で、俺は無事人里へと辿り着くことが出来た。

 その頃になると、空は少し暗くなり、太陽が沈み始めている時間帯になっていた。

 

「妹紅、人里に案内してくれて助かったが、因みに今どこに向かっているんだ?」

「ん? 今向かっているのは私の知り合いがいる所だ。外から来た外来人でも面倒を見てくれる奴だ。安心しろ」

 

 ほう、それはまた人の良さそうな奴だ。

 俺は一人頷いていると、妹紅の足が止まる。

 

「ここに私の知り合いがいる。ついてこい」

 

 妹紅がゆびを指して言ったのは、他の家よりも幾分か大きい建物だった。

 俺は妹紅の言葉に黙って従い、妹紅の後を追う。

 

 建物の中は廊下が長く、障子が幾つも並んでいた。

 妹紅は適当に障子を開けていき、中を覗いていく。傍から見たら怪しいの一言に限るな。

 

「あ、いたいた」

 

 何度目かでやっと見つけたのか、妹紅が嬉しそうな声を上げる。

 俺は開けられた障子を覗き見すると、そこには一人の美しい女性が低い机に書物を並べている姿が見えた。

 腰まで届こうかというまで長い、青のメッシュが入った銀髪の上に、六面体と三角錐の間に板を挟んだような形の青い帽子を被っている。容姿は綺麗だが、なんか変な帽子だな。

 

 俺が内心失礼な事を考えていると、その女性が妹紅の存在に気づき声をかけてくる。

 

「おぉ、妹紅か。頼んだ件は片付いたか?」

「あぁばっちりな。んで、そこで襲われていた外来人も一緒に保護してきた」

 

 妹紅がそう言うと、部屋の中に入れと言うような顔で見てくるため、俺は面倒そうに欠伸をしてから中に入る。

 

「どーも、そこのもんぺガールに保護された外来人だ」

「もんぺガール言うな。妹紅だって言ってるだろ! てか、さっきちゃんと妹紅って言ってただろ!?」

 

 俺がわざと間違えて言うと、妹紅は激しく反応する。だからついからかいたくなる。

 

「え? 俺言ってた?」

「言ってただろ!」

「そうか、もこ、もんぺガール」

「そこは言い直さなくていいだろ……」

 

 ガクンッと地面に崩れ落ち、両手と両膝を地面につけて項垂れる妹紅に、俺はププッと笑いを零すと、先ほど妹紅と話していた女性が呆れた声で言う。

 

「妹紅をからかうのはその辺にしてくれるか? 私に何か話があって来たのだろ?」

「あ、そういやぁそうだったな。ほら妹紅くん、そこでいつまでも落ち込んでいないで説明してくれたまえ」

「なんで上から目線なんだよ……まぁいいよ。このままなにか言っても意味なさそうだし」

 

 やれやれと首を振る妹紅は、あぐらをかくと、真剣な顔で聞く女性に話し始めた。

 

 

 

 ――――もんぺガール説明中――――

 

 

 

「ってことなんだけど、慧音、コイツどうする?」

「そうだな。取り敢えず、しばらくは私が面倒を見よう。仕事を見つけて生計を立てられたら、空き家があるからそこに住んでもらう。それでいいか?」

「いやぁ~助かります~。慧音さん」

「え? なにその気持ち悪い喋り方」

 

 俺がへりくだった話し方をすると、妹紅が頬を引き攣らせて俺から距離を開ける。

 失礼な、俺だって一応常識ある大人だぞ? 面倒を見てもらう立場ならそれ相応の接し方をするのは当たり前さ。

 それに、慧音は言った。仕事が見つけられて生計を立てられるまで面倒を見ると。

 つまり、仕事をしなければずっと慧音が俺を養ってくれるということだ!

 

「あ、慧音に甘えていつまでもここに居座るなら私がお前を塵も残さず焼きつくすからそのつもりでいろよ?」

 

 とてもいい笑顔で言う妹紅さん。

 そりゃないぜもんぺガール……。

 

「あ、そう言えば、アンタの名前を聞いていなかったわ。名前はなんて言うの?」

 

 妹紅が思い出した様に俺に名前を聞いてくる。

 そう言えば言ってなかったわ。だがなぁ、俺が使っていた名前よりもやっぱり“天パ侍”の名前の方がしっくりくるしなぁ。つうか、身体はもろその“天パ侍”なんだけどな。

 うし、じゃあ名前の最初の部分だけ取るか。

 

「俺は(ぎん)だ。苗字はない」

 

 坂田銀時の銀時の銀だけを取っただけだ。そこ、安直とか言わない。

 

「銀か。改めて、これからよろしくな」

「あぁ、よろしく頼む。妹紅、それと慧音さん」

「いや、私も呼び捨てで構わないぞ?」

「んじゃ慧音よろしくー」

「軽っ!?」

 

 妹紅が条件反射でツッコンでくる。お前はツッコミ役として輝いてるぜ?

 俺が思わず優しい目で妹紅を見ていると、妹紅が嫌そうな顔をする。

 

「なんだその生暖かい目は、そんな目で見るな」

「だが断る!」

「そこは断るなよ!」

 

 やけくそ気味に叫んでツッコム妹紅さん。あんたぁすごいよ。ここまで俺のボケにツッコんでくれるなんて、ボケ役として嬉しいぜ。

 

「お前達仲いいんだな」

 

 俺達のやりとりに、呆れて物も言えないと、慧音が頭を掻きながら言ってくる。

 

「どこがだ慧音!」

「そうだぞ慧音。俺は妹紅を愛している」

「その口一生聞けなくしてやろうか?」

「調子に乗りましたすいませんだからその手から溢れ出る炎を止めてくださいお願いしますぅ!」

 

 危険な雰囲気を醸し出した妹紅が手から炎を出して俺に脅してきやがった。

 まったく、冗談が通じないとか、まだまだツッコミ役としての道のりは遠いようだな。

 

「んで、冗談はこれまでにして、飯はあったりするのか?」

「……お前はどこまでも図々しい奴なんだな」

「ここまでくると、いっそ清々しいな」

 

 妹紅と慧音が二人して苦笑を零す。

 すまねぇな。俺ってそういうの苦手なんだよね。仕事ではちゃんとしていたけど、ここは仕事場じゃねぇしな。遠慮なんて、俺はしねぇよ?

 

「妹紅、すまないが買い出しに言ってくれないか? 丁度材料が切れてしまっていてな」

「あぁ、いいよ」

「うし、なら俺はここで寝てるから買い出しいってら~」

「お前も来るんだよ! この馬鹿!」

「ぐほっ!」

 

 一瞬にして寝転ぶ俺の腹に蹴りを入れる。少女にしてはあまりにも強い蹴りだぞ。どこのゴリラだよ……。

 

「も、妹紅さん。ツッコムならもう少し優しくしてくれ」

「うるさい。居候の分際で偉そうなアンタが悪い。ほら、さっさと起きろ。荷物持ち」

「へいへーい」

 

 やる気ない声で答えると、妹紅からもう一度めり込むほどの蹴りを腹にくらわされた。

 酷いよ妹紅ちゃん!

 

「ぐっ……どうやら俺はここまでのようだ。妹紅、後のことはたの、んだ、ぜ……?」

「はいはい冗談はそれくらいにして、ほら、行くぞ?」

「……はい」

 

 生まれたての子鹿の様に足を震わせて、唇まで噛んで吐血の演出までしたのに、スルーされた。

 

 泣きたい。

 

 

 

 

 ――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 デカイ籠を背負わされた俺は、妹紅に連れられるままに人里を歩いていた。

 

「銀、あそこの商店で適当に買うぞ」

「へいへい」

 

 妹紅に対して不満を隠そうともしない俺に、妹紅は苦笑いを浮かべる。

 

「料理の献立、お前が食いたいものを慧音に作って貰うよう頼むから機嫌を直せ。な?」

「仕方ねぇ~な~。ま、妹紅がそこまで言うなら聞いてやらんこともないぞ? うん」

「じゃあいいわ」

「嘘ですごめんなさい」

「わかればいい」

 

 クソッ! 完全にペースが妹紅だ。この俺ともあろう者が、遅れをとるとは。

 なんとか形成を立て直せないか考えていると、商店に着いた妹紅から次々と籠に野菜や果物を入れられてそれどころじゃなくなる。

 

「コレと、後コレもだな」

「うおっ、以外に量が多いな」

「まぁ、三人分だしな。我慢してくれ」

 

 妹紅はそれだけ言うと、俺から籠を受け取ると会計を済ませに店主の近くに向かった。

 俺はその間疲れた身体を休めるために、汚いが、その場に座ることにした。

 

「あぁ~……疲れた」

「お? 見ない顔だな。お兄さん」

「んあ?」

 

 疲れから顔を下に向けていた俺の頭上から若い女の声が聞こえ、反射的に顔を上げると、そこには魔法使いの格好のお手本みたいな女の子がいた。

 リボンがついた黒い三角帽に、白いエプロンの上から黒い服を身につけた奇妙な少女。

 片側だけおさげにして前に垂らした金髪が特徴的な美少女だ。

 魔法使いと言えば、俺からしたら陰鬱な印象しかないが、この少女の印象は魔法使いとは思えないほど快活だがな。

 

「どちらさまで?」

「私は霧雨魔理沙って言うんだ。お兄さんはなんて言うんだ?」

「俺は愛と正義を守る裏の顔を持つ「なに馬鹿なことを言ってるんだ銀」セリフの途中に言葉を被せるのは酷いと俺は思うぞ。妹紅」

 

 せっかくかっこよく決めようと思ったのに……。

 

「って、妹紅じゃないか。このお兄さんとは知り合いなのか?」

「あ~ん~まぁ、そうだな」

「そこですぐ答えない辺りお前は正直な奴だな。妹紅」

「私は自分に正直だからな」

 

 ドヤ顔で言いやがって、腹立つわ~。

 

「ふ~ん。銀って、もしかして外来人か?」

「まぁそう言われてるな」

「へぇ~外来人が生きて人里に来れるなんて運がいいな」

 

 関心したように言う魔理沙に、俺はげんなりしがらあの時のことを話す。

 

「体長四メートルを超えるクマに追い掛け回されて死ぬかと思ったがな」

「……よく無事だったな。銀」

「私が助けたんだよ。妖術で操った炎で一撃さ」

 

 得意げな表情で話す妹紅に、魔理沙はへぇ~と聞いている。

 俺はあの時の事を思い出していた。死ぬかもしれない。絶望していたあの時のことを。

 今でこそこんなふざけた事をしているが、妹紅には本当に感謝している。そりゃあそうだ。

 命の恩人なんだから。

 

 だけど、なんていうかな~それを素直に言葉にするのがこっ恥ずかしくて、言えねぇんだよな。

 一言、ありがとうって言えればいいんだが、ダメだ。言えない。

 

 魔理沙と妹紅が二人で話が盛り上がる中、俺は一人、考えていた。

 

 でもやっぱり、感謝の言葉は伝えないと人としてダメだよな。いくら俺がダメ人間だとしても、それは言い訳にはならねぇよな。

 うん、うん、と、何度も頷く俺に二人は気づいたのか、顔をこちらに向ける。

 

 俺はそれをチャンスと思い、妹紅の顔を見て口を開く。

 

「なぁ妹紅」

「な、なんだよ銀」

「クマから助けてくれた時はぞんざいな言葉だったが、ここで言い直したいと思う。俺を助けてくれて、ありがとう」

 

 俺は恥ずかしい気持ちを我慢し、助けてくれた恩を言うと、妹紅は目を見開く。

 

「お前……銀に化けた妖怪だな!?」

「……は?」

 

 妹紅が手から炎を生み出し、焦った顔で周りを確認しながら言葉を吐く。

 

「くそっ! 本物の銀をどこにやった! 言わなければ少し痛い目に合わせるぞ」

「ちょ、ちょい待ち。妹紅さんや。何を言っているんだ。俺だ。皆が大好きな銀さんだよ?」

「嘘つけ! 銀はそんな感謝を言えるような殊勝な奴じゃない。よってアンタは銀じゃない!」

「なんでだよ!?」

 

 人里に俺の叫び声が響く。

 そんな俺に魔理沙は哀れむような眼差しを向けていた。

 

 

 

 いやそこは助けろよ!?

 

 

 

 

 

 

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