とある無力の常識殺し《ルールブレイカー》【完結】   作:ちひろん

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誤字脱字や表現がおかしいところがあったらごめんなさい。
少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。


上条当麻

 「私としたことが、メルヘンチックすぎたかなあ」

 

 佐天涙子は、高台の公園にあるゾウ型の滑り台に窮屈に座り込んで、ひとりごちた。

 時刻は22時を回っており、人気は全く無い。その広くない公園で、佐天は靜かに星空を見上げていた。

 

 「願い事ねえ…、懲りたはずなんだけどな」

 

 《学園都市で一番奥高い公園で、満月に願い事をすると叶う》と、噂の片隅の片隅に聞いたおまじないだった。どこかで聞いたような、だれでも思いつきそうな話であったので、最初は一笑に伏していた彼女だったが、何となく足が向いてしまっていた。

 佐天には願い事があった。けれどその願い事を叶えるために行ったある不正のせいで、友達に迷惑をかけたことがあった。だから、二度とそのようなことはしないと誓っていた。

 

 ちなみに、学園都市とは佐天が住んでいる街のことである。能力開発専門学校が都市レベルに拡張されたものと考えていただければ、ほぼ間違いない。

 違うとすれば、その開発する能力が、記憶能力ではなく、速読能力でもなく、念動力や瞬間移動といった超能力といったものであることである。

 この都市はその能力開発を行い、かつ成功していた。

 ただし、その都市に住む全ての人間が超能力を身につけているわけではない。そうなれば、一般的に想像できる通りに、強者と弱者が生まれ、自然と差別が行われる。しかもそれを助長するかのように、能力の有無、その能力の強さによって、給付金が支給される。

 その差別は、学生たちの意思向上のために、意図的に行われていると考えて間違いないだろう。

 

 「なんか、へこんでるのかな」

 

 佐天は、定期的に行われる身体計測という名の能力計測で、いつも無能力者《レベル0》だった。つい先日行われた身体計測でも変わりはなかかった。

 彼女は俯いて、微かな溜息をつき、満天の空を見上げて、満月を見つめた。

 

 「彼氏くらいは欲しいかな」

 

 そう言って、口の端を吊り上げた。

 《能力者》という手の届かない願いが、おまじないでどうこう出来るとは思っていなかった。神社で神様にお願いするような気持ちだったが、それでも過去の後悔から、能力については願えなかった。

 

 「帰ろっかな」

 

 そう言って彼女が立ち上がった時、遠くで爆発音のようなものが聞こえたような気がした。

 彼女はあたりを見渡すが、特に変化は見られない。でも、少し気になって、耳を澄ました。

 さらに、数回の爆発音が響いた。遠くで花火をあげているような音だった。

 

 彼女が気になったのは、その音の原因が全く無いことだった。花火が上がっていれば、安心して帰るのだが、《結果》に対する《原因》がないことが、彼女の好奇心をくすぐった。

 音は公園の奥の、木々に隠れた広い駐車場のまだ遠くから聞こえていた。駐車場の先には小さな展望台があった。

 

 「展望台から、何か見えるかも」

 

 彼女が駐車場に向けて歩みを進めている間も、彼女はあたりを注意深く観察していた。

 そう、いつにもまして、あたりを観察していた筈だった。

 

 そして、駐車場に踏み込んだ瞬間、世界が豹変した。

 

 「」

 

 佐天はその異常を理解出来ず、絶句した。

 あたり一面に広がる炎と火柱。そして、肌を焦がすほどの熱気。

 何故、これほどの異常に気づかなかったのか。その事実が恐ろしかった。

 

 「とうま! 後ろ!」

 

 その声と同時に爆発音が響く。

 

 佐天は辺りを見渡すが、炎のせいで視界悪く、加えて熱気のせいで目をまともに開けていられないため、うっすらとした人影程度しか判別できない。だが、少なくとも、人が何人かいることは間違いなかった。

 

 自分が場違いであることを佐天は瞬時に悟った。無能力者《レベル0》であるが故の、悲しい逃走本能。決して敵うことがない、絶対的弱者。

 だが、見向きもされないということは、弱者にとってむしろ都合が良いことだ。相手にされなければ、逃げ出すことはたやすい。

 だが、膝が震えてうまく動かせない。膝だけでなく、身体中が震えていた。うまく動かせない足を、どうにか、むりやり一歩引いて、後ずさった。その砂を引き摺る音が、熱気の一瞬の空白に、響いた。

 

 何人かの息を飲む音が、決定的なミスであることを告げていた。

 その瞬間、彼女の左手首を、何者かが掴み、ひねり上げた。苦痛の声が響き、彼女の真横で声がした。

 

 「お前もついでだ!」

 

 全身刺青の男が立っていた。薄く少ない生地で身体の局部のみをどうにか隠しており、なにかの呪師のようである。

 またもや、苦痛の声を上げた。手首から先を焚き火の中に突っ込んだような痛みが、佐天を襲った。

 同時に怒号のような声と共に、彼女の隣の男が後ろに吹っ飛ばされ、代わりに目の前に髪がとっちらかった、学生服をきた男が立っていた。

 

 「いいぜ、何を仕掛けようが、学園都市は壊れはしねえ。壊せはさせねえ。その幻想、俺がぶち殺す!」

 

 倒れた刺青の男は、どうにか上半身を起こして叫んだ。

 

 「はっ、俺はこういう生き方しか出来ねえのさ。こういうな!」

 「とうま! 下!」

 

 学生服の男は下を向くと、足元が光り輝いた。男はそのまま右手をその光に突き出した。すると、そのひかりが瞬時に消えた。

 刺青の男が口の端を曲げて言った。

 

 「聞いてはいたが、全くデタラメな力だな。やはり、貴様を真っ先に消さねばならない!」

 

 そう言い終わる言葉に食い込み気味に、刺青の男は手を差し出し、何かを唱えると、その手の周りから炎が吹き出し、学生服の男に襲いかかった。

 

 『発火能力《パイロキネシス》?』彼女は、学園内の火を扱う能力者を連想した。

 

 学生服の男は、狼狽える様子もなく、静かに右手を差し出した。すると、その手に炎が触れたかと思うと、何もなかったかのように炎は消えてしまった。だが、刺青の男は消えた瞬間に学生服の男の左手を掴んで捻り上げた。

 

 「左手じゃあ消せねえんだよな!」

 

 学生服の男は苦痛の声を上げたが、その痛みをこらえて、硬く握りしめた右手を刺青の男の顔面に叩き込んだ。

 刺青の男は顔面の鼻や口から血を出して倒れた。よく見れば、体のあちこちに火傷や切り傷があり、そもそも満身創痍な状態だったようで、最後の一撃が後押しとなったのか、もう反撃するような様子はなかった。

 

 学生服の男は佐天に近づいて、左手を差し出して言った。

 

 「大丈夫か?」

 

佐天は恐る恐る、その手を掴んだ。

彼の右手に触れた瞬間に、炎は何もなかったかのように消えた。

 

佐天は、ある噂を思い出していた

学園都市ならではの、都市伝説。

そう、あの学園都市の超能力者《レベル5》、常盤台の超電磁砲《レールガン》が一笑に伏した都市伝説。

 

《どんな能力も効かない能力を持つ男》

 

まさに今、その証拠を目にしたかもしれないと、佐天は鼓動高鳴りを止められなかった。




だいたい10話くらいで終わる予定です。
次回もよろしくお願いします。
(今週末にもう1話アップできるやも)
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