ディオの奇妙な冒険 ManicStreet (ジョジョ1部+7部)   作:ヨマザル

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道標とPhantom

「おっ、奴らが無事、現れましたよ、『父上』」

 ジャイロ・ツェペシュが双眼鏡から目をはなし、言った。

 

 隣で馬をすすめていたグレゴリオが、うなずいた。

「うむ……どうやら彼らは目的を果たせたようだな」

 

 グレゴリオとジャイロ、二人のツェペシュは、馬に乗って遺跡の近くまでやってきていた。

 馬を進めていくと、ジョージ、ジョナサン、そしてディオの三人が、遺跡の出口でしゃがみこんでいるのが見えてきた。

 

「おう、無事だったか。親父さんも助け出せたんだな……」

 近付いてきた3人に、ジャイロは陽気に声をかけた。

 

「……ジャイロ……良くも無事で……あの『怪物』が再び現れた時に、てっきり君もやられてしまったのかと思っていたよ」

 ジョジョが言った。その笑みはなぜか少しさびしげだ。

 

「……何とかな……親父のおかげで、なんとか切り抜けられたのさ」

 そう言ったジャイロが、ん? と目を丸くした。

 もう一人、ミナがいない事に気が付いたからだ。

「一人、足りないな……」

 

 ジャイロがそう言うと、ジョジョが黙って首を振ってみせた。

 何かを察したジャイロは、けッと悪態をついた。

 

「……あなたがジョージ・ジョースター卿ですかな? 」

 グレゴリオは馬をおり、ジョージに話しかけた。

 

「ええ……あなたはグレゴリオ・ツェペシュ卿ですな。息子たちが世話になったと、聞きました」

 ジョージはグレゴリオに向かって、頭を下げた。

「ありがとうございました」

 

「とんでもない……ところで、皆さんの傷を見させてください。実は、私たちは医者でもあるのですよ。ぜひ手当てをさせてください」

 グレゴリオはそう言いながら、三人の傷口をあらためた。三人の傷を消毒し、ゾンビ・ホースの『紐』をつかって、再び傷口を縫い合わせていく。

 

 ゾンビ・ホースによる治療の欠点は、痛みがなくならない事だ。治療の間、三人は必死に歯を食いしばり、紐が通される容赦のない痛みに、耐えた。

 幸いなことに、激しい痛みにもかかわらず、グレゴリオの治療は適切だったようだ。

 治療の後、三人の顔色がミルミル良くなっていく。

 

 だが顔色が良くなったとしても、変わらず、三人の顔は浮かない表情のままだ。

 

「ディオ……何が起こった? 」

 

「ああ、説明しよう……」

 ジャイロが訊ね、ディオが落ち着き払った声で答えた。

 不思議なことに、その『落ち着いた声』をきいて、ジョジョとジョージがますます痛々しそうな表情を浮かべる。

 

 ディオはジョジョとジョージの表情に気がつかないふりをして、説明を続けた。

「……説明する…………と言っても、僕も『自分が見たところ』しか知らないんだ。ジョースター卿……申し訳ありませんが、僕の知らない所を補足していただけませんか……ジョジョも頼むよ……」

 そういうと、ディオは『これまでに起こったこと』をジャイロに話して聞かせた。

 

 …………

 

「そうか、そんなことがあったのかよ」

 話を聞いたジャイロは、すっかり顔を青ざめさせていた。

「お前たち、良く助かったな」

 

「ジャイロ、君のおかげさ……」

 ジョジョは言った。

「キミがあの化け物を引き付けて、そしてダメージを与えてくれていなかったら、ぼくたちはやられていたよ……それに、グレゴリオさんの、その『不思議な紐』のおかげで、ぼくたちは戦う事が出来たんです」

 

 ありがとうございます。

 そういって頭を下げようとするジョジョを、グレゴリオがおさえた。

 

「いや、私はあくまで『きっかけ』を与えただけさ。ジョナサン君……ディオ君、この危機を乗り越えたのは君たちの力だ……感服したよ」

 グレゴリオは肩をすくめた。そして今度はディオの顔を正面から見つめた。

 

 グレゴリオとディオの視線がぶつかる。

 

「だがディオ君……残念だがウィルヘルミナ・ラボーナの確保には失敗したね……もちろん、仕方がないことだという事は、理解しているが……」

 グレゴリオは、ため息をついた。

 

「ウィルヘルミナ……それはもしや、あの、赤毛の女性の事かね……」

 ジョースター卿が沈痛な声で言った。

「彼女は助けられなかった……ディオが必死に頑張ったのだが……」

 

「……ぃぇ……」

 ディオは低い声で首を振った。

 そして顔をこわばらせる。

 

 グレゴリオがディオの馬の背中に乗せていた刀:『アヌビス神』を無造作につかんだからだ。

 

「約束通り、これは私が預かろう……危険すぎる物だからね」

 グレゴリオは鋼鉄のような固い表情でそう言った。

 ディオの馬から『アヌビス神』を鞘ごと引き抜く。

 

『ディ……ディオ様~~~~っ、待ってッ、た、助けてッ…………』

『アヌビス神』が必死で助けを求める。

 

(今は控えろッ! ! ! )

『アヌビス神』の泣き声を脳裏から押し殺し、ディオはグレゴリオをにらみつけた。

 

「……ディオ君……我が力を『貸した』時の条件を、覚えているね……」

 グレゴリオはディオの視線などどこ吹く風だ。

 懐から新たな『ゾンビ・スネーク』の紐を取り出し、がんじがらめに『アヌビス神』を縛り上げていく。

 

『ディディ……ディオさまッ、たす……』

 

「ああ、覚えている……持って行け」

 ディオの答えを聞いて『アヌビス神』が再び脳内で悲鳴を上げた。

 

(うろたえるんじゃあないっ! 『アヌビス神』よ……いつか迎えに行く。だからしばらく待っていろッ)

 ディオは脳裏に響く声に向かって、そう思考を飛ばした。

 

『……きっ……きっとですよッ~~。あぁ~~~~、ここは、くっ……くらぃぃ……ぁ……ぁ』

『アヌビス神』の声がすすり泣きに代わり、それさえも小さくなり……やがて、消えた。

 

「気を付けてください。その刀は……」

 

 懸念の色を浮かべるジョジョに、グレゴリオは優しくうなずいた。

「安心しなさい……これの危険性は、良くわかっているよ。バチカンの宝物庫で厳重に保管しておく」

 そしてグレゴリオは、ジョージとあれこれ会話を始めた。

 

◆◆

 

 1時間後:

 

「ムッ……」

 遠くから近づいてくる気配を感じ、グレゴリオが頭を上げた。

 地平線ギリギリに見える馬影をみて、顔色を変える。

 

 グレゴリオはジョージとの話を中断して、ジャイロに話しかけた。

「オスマン帝国の救援隊が近づいてくるぞ。思っていたより早かったな……」

 

「……父上…………では撤収ですか? 」

 ジャイロの質問に、グレゴリオはうなずいた。

「ああ……もう出るぞ。バチカンに関連している我らがイスラム国家のオスマン朝と接触するのはマズイからな……」

 

「わかりました」

 ジャイロはそう答えると、ジョジョとディオの肩をたたいた。

「それじゃあ、またなジョジョ……ディオ。縁があったら、また会おうぜ」

 ジャイロは二人に向かってウィンクをして見せた。そして、すでに先を進み始めた父親の後を追って馬を走らせた。

 

 二人のツェペシュの姿は、あっという間に砂漠の陰に隠れ、見えなくなった。

 

◆◆

 

「ォお───ぃッ! 」

 ジョニィは大声を上げた。

 

「いたのか?  ジョージ兄さんは、無事かッ! 」

 ジェフェリーがジョニィに尋ねた。

 

「ええ……はっきりとは見えませんが、黒い影が見えます。あの体格を見ると、ジョージ・ジョースター卿たち三人に間違いないと思います……でも、はっきりとはわかりません」

 ジョニィがそう答えると、後ろに乗せていたジェフェリーがムッとするのがわかった。

 ジェフェリーは、待っていろと言ったのに無理やりついてきたのだ。

 

「……あと少しで姿が見えるはずですよ。父さん」

 

「早く行きなさい、まったく……愚図愚図するんじゃあないぞ、ジョニィよ。……少しは急いで、あの大一番のレースでディエゴに負けたことと、足をひねってしばらく休養しなければならない失態を、チョッピリでも挽回したらどうだ」

 

「……」

 ジョニィはブツブツと小言を言う父には返事をせず、馬を止めた。

 父の魂胆はわかっている。

 ジョージ・ジョースター卿は上等の馬を格安であっせんしてくれる。最高のパトロンなのだ。そのパトロンの無事を確かめなくては、いてもいられないのであろう。

 

 ジョニィも少しいらだっていた。もし自分たちだけなら、ペースを上げることは簡単だ。だが今はジョニィの後ろに、ディオたちのための馬を連れたオスマン・トルコの救護隊が付いてきてくれていた。

 ジョニィは、彼らが迷わないように目印とならなければならないのだ。勢い、馬を駆る速度はゆっくりにならざるを得ない。

 

 目印の旗をゆっくり、ゆっくりと立てると、ジョニィは再び馬を走らせてついに目的地に到達した。

 

 崩れ落ちた遺跡の入口には、ジョージ、ジョナサン、そしてディオが待っていた。

 

「…………兄さんッ! 」

 ジェフェリーが馬から飛び降り、ジョージに向かって駆け出した。

「兄さんッ、大丈夫ですかッ? 」

 

 そのあわてたジェフェリーの様子を見て、ジョニィは目を丸くした。

 どうやら演技ではないようだ。あれは本気で『身内』の心配をしている時の声だ。

 ジェフェリーは心配そうにジョージの傷を改め、大騒ぎをしていた。

 

 あんなに『誰かを心配している』父親を見たのは、いつ以来だ?

 ……答えは考えるまでもなかった。今は亡き兄、ニコラスが落馬した時以来だ。

 

「……へぇ……」

 面白くない気分を噛み殺し、ジョニィはその様子を覚めた目で見ていた。

 

 ジョニィの様子に気が付いたジョージ・ジョースター卿が、目配せを送った。

 

「ジョニィ……君がディオを助けてくれたって聞いたよ。ありがとう」

 ジョジョがジョニィへ礼を言った。

 

「ああ……お前も無事だったのか、ジョナサン……そりゃあ良かったな」

 ジョニィは半分上の空で答えた。

 

 ジョジョは気もそぞろなジョニィを気遣わしげに眺めたが、何も言わなかった。

 

 と、ジョニィの肩が乱暴に小突かれた。

「何しやがるッ」

 ジョニィが振り向くと、そこにはディオがいた。

 

「フン……」

 ディオは皮肉たっぷりに唇をゆがめていた。

「愚図め……遅いぞ」

 

「言ってくれるね……こっちは膝の負傷を押して必死に馬を走らせて来たんだぞ……」

 反論しかけたジョニィは、驚いて口を閉じた。

 

 ディオが、あのディオが『手を差し出して』きたのだ。

 

「だが良く戻ってきた……礼を言う」

 

「キミの為じゃあない。ジョージ・ジョースター卿の為さ」

 そういいながら、ジョニィは差し出された手を握り返した。

 

 ジョニィは知らない。

 二人の男、グレゴリオ・ツェペシュとジャイロ・ツェペシュがほんの30分前まで、ここにいたことを。

 二人はオスマン帝国の救護隊に見つかることを嫌って、30分も前に反対方向へ馬を走らせていたのだ。

 

 ジャイロ・ツェペシュとジョニィ・ジョーキッド・ジョースター……

 二人はまだ、出会わない。

 

 遠く離れたアメリカ大陸で、彼らの『立ち上がる物語』が始まるのは、もう少し後のことであった。

 

◆◆

 

 その頃……

 

 シュルルルル……

 

 地上への出口をふさがれ、漆黒の闇に閉ざされた遺跡の中には、『ほんのチョッピリ』の空間が残されていた。

 そこには『本』が転がっていた。

 そのパピルスで出来た本に、どこからか這い出てきた銀色の触手が、入り込んでいく。

 やがて生き残った触手がすっかり本に入り込むと、遺跡の中には、完璧な静寂が戻った。

 

 そして25年後、1908年にE・スティーブンソンに再発見されるまで、その『本』は、漆黒の闇、完全な静寂の中で、故郷の夢を見ながら眠り続けていた。

 その夢を打ち砕くのもまた、ジョナサンの血を引く未来の『ジョジョ』であることも、まだ誰も知らない。

 

◆◆

 

 その後ディオ、ジョジョ、そしてジョージはエジプトから立ち去り、無事にイギリスに帰り通常の生活に戻っていった。

 

 そしてディオ・ブランド―が正式にジョージ・ジョ―スター卿の養子となったのは、それから約1月後のことであった。

 

 その直後、ディオは寄宿舎学校から休みをもらい、1人ロンドンのハイゲイト墓地にいた。

 忌まわしき父親の墓標には目もくれず通り過ぎる。そして父親の墓からかなり離れた、墓地の端に立つ、小さな墓石の前で足を止めた。

 

 しばらく、黙ってその墓をにらみつける。

 それは埃だらけで、小さく、へたくそに十字が彫られた粗末な墓であった。

 

 それはディオの母の墓石であった。

 

 昔、少年ディオが誰の助けも得ずに独りで作ったものだ。

 

 ディオはひざまずき、墓石の周囲に生えた雑草を引き抜いていった。手にしたハンカチで、そっと墓石の泥を払っていく。

 いつの間にか、ディオの膝も、頬も、泥だらけになっていた。太陽の日差しに照らされ、ディオの頬には汗が染み出ている。

 

「母さん……」

 母との思い出をかみしめながら、ディオは時間をかけて、その粗末な墓石を出来る限り綺麗にしていった。

 ようやく満足がいくまできれいにすると、ディオは少し離れたところに立ち、その墓を眺めた。

 

 ただ、じっと墓を見ていた。

 身じろぎもせず……

 

 貧乏で、悲惨な暮らしでも、母親は確かに神を、善を、そして天国に行く事を信じていた。

『彼女』は、幸せを感じていたのだろうか。

 安心を得たことは、満足したことは、あったのだろうか……

 

 気が付くと、太陽がいつの間にか沈みかけていた。

 太陽は、ついさっきまでディオの頭上でギラギラとうるさく照りつけていたと思っていたのに。今では周囲の空気が、風が、すっかり肌寒くなっていた。

 

 そろそろ立ち去る頃か……

 

 ふと、ミナの顔が思い浮かんだ。

 あのとき、なぜミナの手ではなく、ジョジョの足をつかんだのか。その理由は、自分でもわからなかった。

 あの時ミナは、助けを求めて自分に向けて必死に手を伸ばしてていた。ジョジョは無理に微笑んで、ただ腕を組んでディオと父親を見ていただけだ。

 

 目をつぶると、あの時のミナの顔が思い浮かぶ。

────────────────

────────

────

「ねぇ……アナタ、我がラボーナ家の養子に入らない? 」

 

「なんだって? 」

 

「我が一族は優秀な血を探しているのよ。アンタなら申し分ないわ」

 

「……」

 

「どうかしら? 『いいこと』いっぱいよ♡」

「これからも、パートナーとして手を組んで、やっていかない? 」

────

────────

────────────────

 

 ジョースター家を出て、ミナと行く。それも『あり』だったのかもしれない。

 ミナと共に行く……

 ディオはクスリと笑った。

 

 やはり……ありえない話だ。

 

 いや……

 もしかしたら、それは『幸せな』道だったのかもしれない。

『母』が、自分とディオの上に起こることを望んでいたようなヤツ(幸せ)だ。

 

 信頼できる家族と温かく穏やかな日々を過ごす。

 それが『彼女』にとっての『天国』へ至る道だったハズだ……

『彼女』が手に入れることの出来なかった、道だ。

 

 だが、それはディオの選択肢にはなかった。

 自分の『天国』は他のところにある。

 

 ディオは胸ポケットから小瓶をそっと取り出した。

 その子瓶のふたを開け、品のいい、心地よい刺激がある香水を、母の墓に振りかけた。

 

 その香水が空になると、ディオはその小瓶をぎゅっと握りしめた。

 

『幸せ』はディオが追い求めるべき生きる目的とはなりえない。

 だがディオにとっての『天国へ至る道』ならば、すでにヒントはエジプトの地で見つけていた。

 それは、絶対に母が目指していたものとは違うハズだ。

 

 だが構うものか。

 もう躊躇はない。

 

 ディオは瓶を握りしめた手を振り上げ、母の墓に投げつけた。

 

 パリン

 

 青い瓶が墓石にぶつかった。

 乾いた音が響き、小瓶は割れた。

 青い硝子が、まるで星や涙のように周囲に散乱した。

 

 その様子は見ずに、ディオは墓に背を向けた。

 

 そして、二度とここには戻らなかった。

 

 彼は自分の意志で、一つの『道』をしっかりと選んだ。野望の果てを目指す道を。

 

 

◆◆

 

『あ~~~暇だ……』

『アヌビス神』は幾度目かの独り言を言っていた。

 この薄暗い博物館の保管庫におかれてから、もう何年、何十年が経ったのだろうか……

 

『アヌビス神』は、すっかり時間の概念を喪失していた。

 

 無理もない、完璧な状態のこの保管庫には、ゴキブリ一匹も入り込まないのだ。

 人間もほとんど来ない。

 ここに置かれてから、人間の気配を感じたのは、たったの二度だ。しかも、どちらの時も、人間は、この部屋に入ったかと思うと、すぐに出ていってしまった。

 

 あまりに短時間の滞在だったため、入ってきた人間の精神に働きかけ、鞘を抜かせる機会さえなかった。

 

 ただ空気だけが、ノロノロと動いている。

『アヌビス神』の周りにあるのは、魂のない、古ぼけた絵、茶碗のかけら、小汚い土の人形など、どれもピクリとも動かないため、その部屋からは何の物音も聞こえなかった。

 

 だが、変化がなかったこの暮らしも、ようやく終わりそうであった。

 

 ドアが開いたのだ。

 

 そして驚くべきことに、ドアを開けて保管庫に入ってきた人物は、いま、この『アヌビス神』の鞘をつかんでいるのだ。

 すでに『ゾンビ・スネーク』の紐は朽ち果て、『アヌビス神』を封じているものは誰もいない。

 自由になれるチャンスだ……

『アヌビス神』は興奮のあまりカタカタ震えだした。

 

『さぁ……この鞘を抜くのだ……お前に、力をくれてやろう……』

 慎重に、慎重に、鞘をつかんでいる者の精神に、語りかける。

 

 カチャリ

 

 鞘が抜かれた。

 

 ヨシッ! 

 アヌビス神は興奮のあまりカチカチと刀身を揺らしながら、持ち手の脳内に一気に飛びこんだ。恍惚としながら持ち主の『精神が柔らかい』場所を探る。

 

 アレッ……

 

 だが鞘の持ち手の『精神』は、いともたやすく『アヌビス神』を脳内からあっさりとはじき飛ばした。

 

『なっなんだってぇ~~~』

 動揺のあまりむせび泣く『アヌビス神』を、その持ち手があざけった。

 

(フン……『アヌビス神』よ、久しぶりだな……しかしキサマ相変わらず成長が無い奴だな……)

 自分に向かって語りかける心の声が聞こえる。

 まさか……

 

 その懐かしい声を聴き、『アヌビス神』は狂喜した。

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