煮立つ油に菜箸を差し入れるようにしてすくい上げたかき揚は、いつもよりも気持ち良い色をしているのではないだろうかと、給糧艦・間宮は笑み、頷いた。
水無月島に来た当初は、こうも簡単にいかなかった。
敵の支配海域では物理現象がねじ曲がる。
その効果が及ぶところは兵器や電子機器だけではなく、厨房にある設備等も含まれ、それどころか発酵等の食材に関係する部分にまで及ぶのだ。
陸地ではそれなりに影響が緩和されるものの、生鮮食品や発酵が工程に含まれる食品等は、やはり扱いが難しくなってくる。
糠漬けが全く浸からないことに驚き、パン生地が膨らまないことにがっかりして、油の温度が上がらないことにやきもきして、建造されて初めて調理を失敗したことに、自信を無くし存在意義を疑って涙したものだ。
挙句の果てには本領が海上であるはずの艤装状態で調理に挑もうとして、鎮守府の皆に全力で止められたこともあった。しかしまあ、その艤装の運用自体は、決して間違っているとは言い難い。
給糧艦・間宮の艤装は敵支配海域においても通常海域同様の食品の管理と調理を可能とするものだ。
それが、水無月島の艦娘たちに救助される際には破損していて、同じく救助された夕張や天津風が調子を取り戻して修理に取り掛かるまで、使用不能だったのだ。
艤装の恩恵が無いからと調理場を遠退いては、自らの存在意義に関わると、当時の間宮は相当思いつめていたし、気が狂う程の思考錯誤を繰り返し、見ている側が心配する程の有り様だったのだ。
そんなこともあったが、今では敵支配海域での調理にもだいぶ慣れてきたもので、温度の調節や味の管理なども、艤装の助けなしに通常海域と同じように熟せている。
こんな環境下で毎食拵えていた電はいったい何者だと驚嘆する思いだが、自分のドジまで計算して成功率9割をキープできたのだと言われて唖然としたものだ。実践して見せてもらって二度唖然としたが。
そんな電だが、今は台所を遠退き司令官の専属秘書官としての仕事に従事しているので、自分が“認められた”と考えてよいものだろうかと、そこが間宮の悩みどころだった。
艦娘の数が増え、毎食分の調理量も格段に増えて、それまでにこの海域の調理法に慣れることが出来て本当に良かったと考えている。
調理に不慣れなままであったのならば、鎮守府の皆の胃袋を満足させることは難しかっただろう。
しかしまあ、そんな間宮の考えも杞憂の内ではあるのだ。
厨房に出入りするのは、何も間宮一隻だけではないのだから。
「お疲れさまです間宮さん。私たちもお手伝い入りますね?」
小走りな足音が聞こえ、調理場の暖簾を上げて入ってきたのは空母・千歳だ。
風呂上りの髪を緩くまとめて三角巾を着け割烹着を纏った姿で、間宮が下拵えを中断していた揚げ物の残りに取り掛かってくれる。
千歳の後に続くように龍鳳、祥鳳と暖簾をくぐり、間宮が準備だけはしておいた諸々の調理に取り掛かって行く。
これでも先ほどまでは海上で任務をこなしていた第四艦隊、水無月島の機動部隊3人娘だ。
任務後の入渠も早めに切り上げこうして食事の用意を手伝ってくれるのはありがたいが、ちゃんと疲れが取れているのかと、以前の間宮なら不安になったものだ。
まあ、夕食後に改めて晩酌込みで入り直すのだから、その心配については杞憂だ。
ただし、入渠状態での飲酒は飲んだ先からアルコールが分解されて永久に飲んでいられる状態になってしまうため、持ち込みはひとり一合までと固く取り決めている。
入渠酒の件に関しては、高雄が取り締まっているはずなので大丈夫だろうと、間宮は安心する心地だ。
そんななか間宮にとって困ったことと言えば、空母娘たちがその湯の中の酒盛りに提督を連れ込もうとしていることと、共犯として間宮当人をも抱き込もうとしていることだろうか。主犯は千歳だ。
間宮としては、他の娘たちが提督に対してお盛んなのは構わないのだが、そこに自分を巻き込むのは遠慮してほしい考えている。
その艦種の特性上、間宮は滅多に提督という人間と接触することはない。せいぜいが食事を取りに来たところに挨拶や世間話をする程度だ。
加えて“この間宮”は建造されてすぐに極地突入作戦の補助員として編成されたため、提督どころか同じ艦娘に対してもまだまだ緊張してしまう部分がある。
それでも、搭乗した装甲空母の乗員たちとは仲良くやれていたつもりだ。
本当に短い間、1ヵ月にも満たない期間だったかもしれないが、間宮は確かに、あの艦の一員だったのだ。
それが――、
「間宮さん? 大丈夫ですか?」
龍鳳の声ではっと我に返る。
間宮の意識が過去に呑まれている間に、龍鳳が茹った油から良い色になった揚げ物をすくってゆく。
完全にやってはいけない失念をしていた。
鼻筋を伝う汗をぬぐい、自己嫌悪で泣き出しそうになるのを、龍鳳たちが大丈夫だと慰めてくれる。
彼女たちがこうして厨房に詰めてくれるのは、まだまだ不安定の域を抜けられない間宮をサポートする意味もあるのだろうなと、慰められる間宮当人は頷き、ただただありがたいと感涙する思いだ。
「……龍鳳、お酒の持ち出しはひとり一合までですからね」
「あ、ばれちゃいました?」
まあ、慰めたりサポートしてもらえるのはありがたいが、それとこれとは別だ。
それとこれとは別だが、予め用意していた徳利ひとつ、こっそりと手渡す。
◯
今晩の分が一段落したところで、厨房の奥から食堂の方を見やる。
そろそろ風呂上りの誰かがやってくる頃かなと思えば、ちょうど飛行場から戻って来た提督が、資料の束を手に入って来たところだった。
厨房にいる間宮たちにカウンター越しに軽く挨拶して、もはや定位置となった席に静かに座る。
食堂を訪れる時は何かしら読み物をしているなと言うのが、間宮が提督に対して抱く印象で、その横顔を遠くから見るのは嫌いではない。
そんなことを考えていると、背後から忍び寄って来た千歳が優しい手つきで肩を掴み、「例の件、考えて頂けましたか?」と、にんまり笑んで聞いてくる。
間宮としては幾度目かのお断りをいれるのだが、それで千歳が納得した様子はない。
左右の肩口から交互に顔を覗かせて「まあまあ、そう言わずにー」「私たちと、提督と、一緒にー」「お風呂で晩酌しましょうよー」「ね、間宮さん?」と、にじりにじりと押してくる。
こうしてべったりと纏わり着かれるのは、間宮としては別段嫌いではないし、風呂場での晩酌もむしろ望むところだ。望むところだが、しかし艦娘だけならまだしも“提督も一緒に”と言う部分が曲者だ。
その部分があるからこそこうして頑なに拒否しているわけだが、千歳の余裕の表情を見ていると、いつまで意固地になっていられるものかと、冷や汗が流れん思いだ。
建造組の中では阿武隈に次いでこの鎮守府が長いせいだろうか、器用で気が利く切れ者なのが、この千歳だ。
頑なに拒否の姿勢を貫く間宮をこうして誘うのも、恐らく何らかの意図があるのだと確信はある。それも間宮自身にとってプラスとなる形の利だ。
千歳に任せておけばきっとうまく行くのだろうという確信は、この鎮守府ではほとんど誰もが持っている共通の認識だ。
しかし、だからと言って素直に頷けないのは、まだまだ慣れが足りないからだろうかと、間宮はそう考える。
今日のところはもうあきらめて晩酌組のつまみを拵えに掛かっているが、その背中を盗み見てどこか寂しさを覚えてしまう。
素直に誘いに乗れば良かっただろうか。いやいやしかし、提督と裸の付き合いとなると、さすがに……。
そう、ひとりで問答しているものだから、間宮は提督の接近にまったく気が付かなかった。
「間宮、手伝うことはあるかい? 配膳とか」
急に声が掛かったせいもあり、びっくりして過呼吸気味になる間宮に、カウンターの向こうの提督と妖精たちが大慌てだ。
こんな時、真っ先にフォローを入れてくれるのが千歳だ。
間宮の肩に手を置いて耳元で「落ち着いて」と囁き、提督や妖精たちには「気を付けてくださいね」のジェスチャー。
「用意はこちらでやりますから、提督は妖精さんたちのお相手でもしていてくださいね」
「あ、やんわりといらないって言われたね僕等」
気持ちしょんぼり気味の提督が両手に腹ペコ妖精たちを満載して元の席に戻って行く。
「ああ、提督? ちょっとお待ちを」
しょんぼりさんと腹ペコさんたちを呼び止めた千歳が、盆につまみの小鉢をいくつか載せて渡す。
「お通しです」と笑んで渡すそれらは、千歳たちを含む晩酌組用にとつくっていたものだろう。
酒のつまみに関しては千歳の得意とする部分であり、暇さえあればつくって試してを繰り返しているもので、レパートリーも豊富だ。
つまみ系は千歳の領分と言うことで、間宮は勝手に自分の中で住み分けしているのだが、提督が濃い味好きで、しかも千歳のおつまみが概ね好評という事実に、どうにも複雑な心境になってしまう。
千歳が全てを見透かしたように「間宮さんも何か、提督につくって差し上げればいいと思いますよ」などと言うものだから、余計に意固地になってしまう。
入渠酒のお誘いと相まって、何かあるのではないかと、余計な警戒心が働いてしまうのだ。
そんな内心を見透かしたかのように「慣れて行きましょうね」と囁き次の作業に移ってゆく千歳に、どう答えたものかと唸ることしかできないのが悔しいところだ。
お盆を持って席に戻る提督の背中を見送る。
その途中、Tシャツとパンツ姿で食堂に入ってきた高雄と鉢合わせて、下を履き忘れていることに気付いた高雄が慌てて逃げ出す場面があったが、提督の方は慣れたものだと苦笑い。
あれを見てしまえば、一緒に入渠しても変に意識はされないのだろうなと確信するのだが、それはそれでちょっと悔しいなと思うこの感情はなんだろうと、間宮は眉根を寄せて小さく唸る。
千歳が「恋ですよ、間宮さん。こーい」と言うのを「濃いですかあ、お味噌汁濃かったですかあ」と聞き流し、風呂上りの艦娘たちに配膳の指示を振り分けてゆく。
先の高雄を始め、風呂上りの艦娘たちが続々と食堂に集まり出す時間帯だ。
風呂上りの艦娘たちは普段の制服姿ではなく、各々の部屋着や寝間着に近い格好の者がほとんどだ。
さすがに下着一枚のみと言った不埒者は数える程しかいないが、それでも体つきのたいへんよろしい艦娘たちの部屋着姿は、健康的な男子にとっては目の毒だ。
そう、間宮は思っていたのだが、提督は表情を、態度を崩さず、いつもの調子でそれら悉くに気さくな反応をしてみせる。
黒いスポーツブラとパンツ姿の時雨が挨拶しても気さくに挨拶を返すし(その直後、龍鳳が全力で時雨を連れて食堂を後にするし)、薄ピンク色のネグリジェ姿でくねくねしながら登場した漣には「大丈夫? 風邪を引いてしまうよ?」と心配そうに諭すしで(その直後、祥鳳が漣に当て身して気絶させて抱えて真っ赤な顔で食堂から逃亡するしで)、もう慣れっこになってしまい、大概のことでは動じなくなってしまったのだ。
以前は初心な男子全開な有り様だったと幸せそうな顔で語る暁型姉妹の言に、その頃の提督にもお目に掛かりたかったものだと、残念な気持ちを抱く自らを、間宮は軽く握った拳で小突く。
酒飲み勢の響や朝霜たちが提督たちのところからつまみを浚っていこうとするのを、阿武隈や熊野たちが窘めて高雄に引き渡してといういつもの光景に、間宮は安堵を覚えるものだ。
彼女たちは無事に任務を終えて帰投したのだ。
言ってしまえばそれだけの事実に、間宮は肩の荷をすべて降ろしたかのような、重い安堵を得る。
自らの艤装が戦闘用の改装を受けられない仕様となっている以上、間宮が他の艦娘たちと肩を並べて戦うということは、まずありえない。
今立っている場所こそが自分の領域、戦いの場だという思いも自覚もありはするものの、それでも悔しさのような感情を抱かずにはいられないのだ。
自分以外の、“他の”間宮はそういった感情をどう処理しているのか、非常に気になるところではあるが、救援が辿り着けないこの孤島に有れば、この感情にはしばらくひとりで向き合うしかない。
それとも、戦闘艦として活躍しながらもその性能を失った電に相談すべきだろうかと考えて、それは出来ないなと思い留まる。
戦う力を最初から持たされなかった間宮と、元々持っていた力を失った電たちとでは、あまりに考えに差がありすぎる。
自分の悩みが匙にも残らないほどにちっぽけなものだと、そう自覚することは、間宮にはまだまだ怖かったのだ。
もの想いに耽っていると、エプロンの裾がちょいと引かれる感触を覚える。
伏した目線を少し上げれば、提督のおさがりの大きなTシャツを来た卯月が心配そうに間宮の瞳を覗き込んでいた。
「間宮さんも一緒にご飯食べるぴょん。今日はエビフライがあるから、うーちゃんとっても嬉しいです」
笑みそう告げる卯月に、咄嗟に言葉が出ずに、はにかみ笑いで「ええ」と頷けば、巻雲や酒匂や続々とやって来た面々手を引かれて厨房から連れ出される。
間宮自身はまだ慣れないものだが、この鎮守府の食事はなるべく皆で取るようにとのご達しが出ているのだ。
さすがに任務中で人が出払っている時はその限りではないが、それ以外の時間は間宮も共に食卓に着く。
以前食堂を担当していた電の起っての願いとのことで、水無月島鎮守府規則の中ではかなり上位に位置している要項なのだ。
席順などは毎度ばらばらだが、今日はどうしたことか、競争率の高い提督の隣りの席が空席だった。
千歳の根回しだなと彼女を見やれば、新しい酒瓶の封を切ってウィンクして見せる。買収したのだろうか。
提督の隣りという位置に緊張するが、提督の膝に得意げな表情で座っている卯月や、反対側の席を占拠して提督の腕にしがみ付いている酒匂の姿を見てしまえば、どうってことないなと思えてしまうのだから不思議なものだ。その光景を見て羨ましそうに指をくわえる祥鳳も。
ただ、さすがに任務の報告があるので、阿武隈や高雄と言った旗艦を任されている艦娘たちは同じテーブルに着いている。それでも、一度食事が始まってしまえば資料は脇に置いたりと、食事に集中してくれるのは、間宮としてはありがたいことであり、気を遣わせて申し訳ないなと思うところでもある。
報告自体は食前までに簡単に済ませてしまい、穴や抜けがあれば食後に捕捉、と言った具合だ。
以前は提督の執務室で定例会議や報告など行なっていたが、今の艦数では手狭もいいところだ。
艦娘全員が集まって話せる場所となれば食堂か入渠ドックかと様々案が出たが、結局は食堂と言う形に落ち着いている。
もしかすると、これも自分への配慮だろうかと、間宮は配膳を手伝おうとするのをやんわりと止められながら思う。
食事の支度に掛かりきりになり、そう言った定例会議などに出席できない場面も以前はあったが、食堂がその場になってからは、手先を勧めながら話の流れを耳にすることが出来た。お茶やお茶菓子も出しやすいということで、一部の艦娘たちが強く推すのも頷けるものだ。
その艦種の特性上、自らはこうした“内”に入るものではないと考えていた間宮にとって、この鎮守府の規則は戸惑いはすれど、嫌いにはなれない。
“慣れ”なのだなと、先の千歳の言葉を思い出す。
水無月島に保護されて数ヵ月、まだまだ慣れないことばかりだが、こうして同じ食卓に着いていると、自分がこの鎮守府の一員なのだと自覚が湧いてくる。
装甲空母での生活を忘れたり、その思い出を蔑ろにすることは決して無いが、ただ、新しい時間を始めるには何か区切りが必要なのかもしれないとは、間宮自身、ずっと考え続けていることだった。
やがて、雷が入渠後半組を連れてきて、保護した戦艦・榛名の安否を報告した後、いよいよ夕食の時間となる。
雑談が花となり箸と食器の音が生ずる中、間宮はじっと千歳の方を見る。
朝霜や響たちと乾杯して杯を傾けていた千歳は、間宮の視線に片目で応え、待ってましたとばかりに口の端で笑む。
入渠酒の件、了承しました。
そう唇で言葉をつくった間宮は、隣りの提督を務めて意識しないようにと、味噌汁の器で口元を隠した。
○
食後の後片付けのあいだ気の抜けた心地だった間宮も、食器を棚にしまい終える頃にはいつもの調子を取り戻していた。
いきなり提督の隣りに座らされて生きた心地がしなかったが、いつもよりも間近で情報のやり取りを見聞きすることが出来たのは良い経験だった。
艦隊運用の話をしながら、ちゃんと食べているものの味もわかっていると言った風で、そんな様子の皆に対して隣でそわそわしているのは自分がまだまだ作り手として未熟な証拠だろうかと、間宮は今さらになって思い悩む。
提督を風呂に連れ込む計画も今晩はお流れになってしまっため、気分転換にプリンを仕込もうかとつくり始めれば、これがまた分量を間違えてつくり過ぎてしまう。
さて、型が足りるかと戸棚探れば、カウンターの方に新たな気配。
見やれば、卯月や巻雲や暁や熊野やプリンツ阿武隈初春清霜利根浜風時雨秋津洲と、お菓子大好き甘い物大好き大食い勢がカウンターの上に手と顔だけ出して整列、輝かしい眼差しでこちらを見ているのだからたまったものではない。テーブルの方で素知らぬふりをしつつ、ちらりちらりとこちらを伺う叢雲と高雄もバレバレだ。
妖精さんたちも各部署の代表たちが詰めかけ、デザートの出現に心躍らせている。
仕込んだばかりですぐに食べられるわけではないなどと告げたら心底落胆するのが目に見えているため、さてどうしたものかと困り顔で思案した間宮は、一計を案じて艦娘たちに油性マジックを差し出す。
「明日のデザート予約権ですね。ラップをかけて冷蔵庫に入れますから、その前に1個だけ、名前を書いていいですよ? ここにいる娘だけ、特別ですからね?」
仕込んだ数は全員が3食分食べられるくらいには量がある。
ここに集った者には優先して1個予約出来るという特典が付いたわけだが、各々それで納得したのか、好みの型を選んで名前をかき込んでいる。
計りまで取り出して内容量を他と比べて精査している意地汚い巻雲には後でお仕置きだ。
やがて集った皆々が名前を書き終え、間宮にお休みを言って引き上げていくのを見送る。
そうしてトレー数枚分に及ぶ未成熟のプリンを冷蔵庫に収めてゆき、いざ扉を閉じる段階になって、間宮は表情を陰らせる。
どうか、ここに収められた甘味が空になりますように。戦場に出ることが出来ない間宮の祈りだった。