青年を医務室の雷に預け、暁は再び浜辺を捜索しに来ていた。
雷の所見では、この青年はざっと見て素性が読めず、危険人物かどうかわからないそうだ。
とはいえ、青年の体に蓄積したダメージと暁の胸骨圧迫で骨が少々やられているということなので、跳び起きて襲われることはないだろうと、あっけらかんと語っていた。
ならば、青年の身分証や、身に着けていただろう装飾品から彼の正体を割り出そうと暁は考えたのだが、これが難航した。
今回浜辺に漂着しているのは大物ばかりで、ポケットに入りそうなものや体に身に着けていそうなものが一向に見当たらなかったのだ。
そもそも、青年がこの孤島に流れ着くまでの経緯が不明だ。
漂着した複数のコンテナ類は、外界の食品メーカーのもので、別段怪しげなものではない。
船舶による輸送中だったと考えるのが妥当だろうが、そうするとこの青年は船員の衣装を身に着けていないとおかしいのだ。
暁が見つけた時の青年の服装は、これから散歩にでも出かけるかのようなラフなものだった。
この時代、海に出るのならそれなりの装備が必要になる。
兵士が身に着けるドッグタグのようなものがそうだろう。
海上での仕事に付くものは刺青を掘ることもあるという。
遺体の損壊が激しい場合等も想定して、どんな状態になっても本人だとわかる何かを、必ずと言っていいほど身に着けているものなのだ。
だが、青年にはそれがなかった。
無くしたのか。
取られたのか。
それとも、元々無かったのか。
推測の領域では何とでも言えるので、暁はそこで考えを止めた。
いらぬ考えを巡らせて、いざ青年が目を覚ました時に変な先入観を持ってしまってはいけないと考えたのだ。
「……でも、良い人だと、いいな……」
顔をにやけさせて暁は呟く。
久しぶりの漂着者が生きていたことが嬉しくて仕方ないのだ。
青年が起きるまで看病しているのもありだったなと今さら思うが、こうして先走って飛び出して来てしまった。
彼が起きた時に、身の回りのものが無かったら不安がるかもしれないからと……。
暁は、この時とった行動を後悔することになる。
青年が目を覚ますまで、彼の傍で看病していれば良かったと。
そうすれば、“こんなもの”を見つけずに済んだのにと……。
「これ、は……」
半ば砂に埋もれてしまっていた“それ”を、暁は見付けてしまった。
手に取った“それ”をしばらく訝しげに見つめていた暁だったが、それが青年の所持品であると合点がいった瞬間、呼吸が止まりそうになった。
「……どうしよう。これ……」
声が震えて、足に力が入らない。
動揺して砂浜に膝を付いた暁は、長い時間をかけて問答を繰り返し、拾ったものを青年に渡さず隠しておくことに決めた。
捨ててしまうという選択は出来なかった。
捨てたつもりが、何かの拍子で青年の目に着いてしまうかもしれないと、そう思ったからだ。
妹艦たちにも取得物の存在を内緒にしようとこの時に決めた。
そうして拾った“それ”をポケットに隠して、暁は鎮守府跡に戻った。
先ほどまでの浮かれたような笑顔を一緒に隠して……。