孤島の六駆   作:安楽

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第4章:かえりみち
1話:


 何故こうなったと、航空戦艦・伊勢は冷や汗交じりの表情を俯かせて、火の消えた七輪を覗き込んでいた。

 着火までは良かったのだが、一瞬閻魔のような火柱が上がったかと思えば、次の瞬間には種火すらも掻き消えて、何故か霜が張っていた。

 わけがわからない。種火が消えるだけならまだしも、何故に霜が張る。

 これが、敵支配海域下における物理現象の歪曲と言うことかと、非常に深刻な事態に喉奥から唸りが漏れ、それは叫びに変わった。

 

「スルメ炙れないじゃん……!」

 

 だな、と短く返すのは、傍らで文庫本を片手に釣糸を垂らしている、麦わら帽子を被った日向だ。

 頬を膨らませた伊勢の非難の視線をものともせず、しかし火の消えてしまった七輪を横目に見る表情は残念そうだ。

 

「……みりん干しが」

「ほらあ! ほらああああ!」

 

 指さして声上げて非難してくる伊勢を遮断するように麦わら帽子を目深にする日向は、超過艤装の甲板上で何やってんだかと嘆息する。

 熱田島からこの超過艤装・伊勢型で出撃して、敵支配海域に突入。水無月島まであと数十キロという距離に来たところで、海域に展開中の彼女たちが敵艦の強襲を受けていると彩雲からの知らせを受け取った。

 こちらも応戦の用意を整えて、そうして航空戦力による支援を展開したと思えば、次はこちらが標的だ。回避に専念するも、この海域においては無茶な方法を取ってしまったなと、今さらながらに思うが、あの時はあれが最善だったはずだ。

 超過艤装はスクリューと舵に深刻な損傷が生じ、復旧には早くて1ヵ月強の時間が必要だという。この巨体を半年もかからずに修復してしまうのだというのだから、妖精たちの力は底が知れない。

 

 それまで、自分たちはこの海域に足止めだ。当初の想定では水無月島の艦娘たちを収容して離脱となっていたが、出撃前に色々課題が追加で詰まれたのだと木村提督が頭を抱えていたので、もしかすると1、2ヵ月では足りないくらいの時間が必要になるやもしれない。

 その場合、懸念の数が格段に増える。復旧作業中の超過艤装と水無月島を、新たに敵戦力が強襲すること。そして、木村提督の、この海域における活動リミットだ。

 まあ、その辺は、特に後者は自分たちが考えるべきではないし、余計な口出しは無用かなと、日向はようやく七輪に向き直る。

 

「どうしたものかなこれは。固形燃料に変えてみるか?」

「ええ? 炭で焼くのがいいんじゃん。遠赤外線がなんかいい仕事するんだよ?」

 

 ああ、こいつ絶対に仕組み解ってないなと頷いた日向は、傍らの背嚢からツナ缶を取り出し、同じく背嚢から予備の靴紐を取り出し手早く細工して、アルコールランプに似た仕掛けを拵える。

 満面の笑みで拍手する伊勢に口角を上げた得意げな笑みで日向は返し、火が点けられそうなら何でもいいのだなと、先ほどの遠赤外線はどうしたと相方を心中で小突く。

 後で缶詰も美味しくいただく二段構えの策はしかし、擦ったマッチが着火ではなく爆発するという結末を持って、半ば振り出しに戻る。

 

「……この海域は、どうやら魚介類が嫌いらしいな」

 

 釣り糸を垂らしても小魚1匹掛からなかったのだからそうに違いない。

 共に項垂れる伊勢の背後、新たな人影が甲板上に現れたことを日向は認識する。

 

「朝霜ちゃん、いたよ居た居た! 戦艦2!」

「名前呼べ名前。お前戦艦なら何でもいいのかよ……。ってか、伊勢と日向じゃねえか!? おおい、元気でやってるかあ……!」

 

 現れたのは水無月島鎮守府所属の夕雲型駆逐艦・朝霜と清霜だ。

 先の交戦で負傷した彼女たちは、超過艤装内の入渠ドックにて修復を行っていたのだ。

 甲板に姿を現した2隻は、負傷した両腕を包帯で固めた朝霜が、負傷した両足を包帯で固めた清霜を肩車して手長足長状態だ。この姿でバランス悪く艦内を歩いていたところを鑑みるに、完治には程遠いものの、元気なことは元気な様子だ。

 そもそも、入渠してまだ3日も経っていないにも関わらずここまで回復したのが奇跡的だ。

 

 立ち上がって両手を広げて2隻を迎え入れる伊勢。日向も思わず立ち上がって、かつての戦友との再会に敬礼して見せる。

 

 それからしばらくして火種の問題が解決し、甲板上で七輪囲んで酒盛りとなった訳だが、これまた伊勢が渋い顔で取り出したものに、夕雲型の2隻は揃って顔を渋くする。

 

「いやあ、熱田出るちょーっと前から梅酒仕込んでてさ? 水無月島に到着する頃には飲み頃かなあって計算だったんだけれど……」

「これ、全然浸かってねえじゃん。酒じゃねえよ、アルコールだよコレ。ホワイトなんとかだ」

 

 朝霜の言に、梅酒未満をひと舐めした清霜は、確かにと首を傾ける。

 支配海域に突入する直前まではちゃんと工程通りに使っていたものが、海域に突入した瞬間に“止まった”のだろう。下手をすると毒性に変異すると間宮が言っていたので、これは安全な方だったのだなと、氷砂糖をぽりぽり齧る。

 伊勢と日向の話しを聞くに、彼女たちは超過艤装の操舵を担当している役割上、こうして留守番しているらしい。

 他の艦娘たちはと言えば、超過艤装の医療用ドックで入渠中の艦娘たちと工作艦・明石を残して、皆が水無月島へと移動してしまったのだという。

 顔合わせに打ち合わせに色々あるのだろうが、何か決定したり変化が有ったりすれば航空機を飛ばしてやり取りする手はずになっている。

 諸々の決定次第では、朝霜も清霜もこのまま超過艤装に残り、故障箇所の復旧を終え次第、引き上げてきた皆と共に島を去るかもしれないのだとか。

 

「……まあ、なんにせよ、すぐには動けないだろうな。さっきの定期連絡でうちの木村提督と水無月島の提督が揃ってダウンしたと一報あった」

「なんだなんだあ? なぐり合いでもしたのか?」

「ほら、“艦隊司令部施設”運用の後遺症よ。木村提督もやめとけばいいのに妖精化して先導にし行っちゃうしでさあ?」

 

 双方の提督が不調となれば、確かに脱出計画を進めることも難しいだろう。

 艦娘たちに与えられた範囲で出来得る細事を進めていく流れになるだろうなと話す日向は、朝霜のにんまりとした顔を見る。

 

「んじゃ、木村提督が復帰するまで毎日呑んだくれていられるわけだな」

 

 アタリメをしゃぶってもごもごしゃべる朝霜を小突く伊勢に、それを穏やかに眺めている日向の姿。

 それらを眺める清霜は、先日の遭遇戦が夢であったようだと錯覚する。

 負傷の痕が夢ではないとはっきり告げているが、こうして穏やかな時間を過ごしていると、自分の身に起こった欠落すら微睡の向こうに沈んでいくような気がする。これも入渠の効力のひとつだと、確か響が言っていた。

 その響はまだ、医療ドックから出て来れない状態だ。

 先の戦闘で、肉体と艤装の両方に致命的なダメージを負ってしまったのだ。暁も付き添いで艦内に残っているので心細くはないだろうが、後で酒持って見舞いに行こうと、並べられた酒未満のアルコール類を吟味する。

 

 しかしまあ、生きていれば大丈夫だと、清霜はひとつ頷く。

 他の面々がどうなったかなど、気になることや聞きたいことが山ほどあるが、ひとまず命は繋いだのだ。生きていればどうにかなる。抱えていた苦悩が払拭されるかもしれないし、こうして遠くの味方が助けが来るかもしれない。いつか戦艦になれる日も近い。

 だからまあ今は、あまり難しいことを考えずに薬品といった趣の酒をあおっていると居ると、甲板上に新たな人影が現れた。

 

「ええ……、なんで甲板でスルメ焼いてるの……?」

 

 困惑した声を発するのは、航空母艦・葛城だ。

 長期の入渠がついさっき明けたのだが、そうして見れば超過艤装は座礁しているわ、明石以外は見知らぬ負傷艦ばかりだわで、知っている艦娘を探して艦内を彷徨っていたのだろう。声が震えていたし、伊勢たちの姿を見付けて体の強張りが解けた様を、清霜は確かに見ている。

 

 さて、新たな肴兼呑み面子の登場に伊勢や朝霜が目を光らせている姿に日向の方を見れば頷きひとつ。すなわち、第二ラウンドだ。

 後々、妖精たちが「自分たちの仕事中に宴会やられて、なんかしゃく」と反乱が起き、甲板で酒盛りしていた面々は仲良く海に放り投げられたり、入渠が開けたばかりの響が「私も呼ぼうよ……!」と珍しく声を荒げて、いつも通りに近い大変な有り様だった。

 

 

 ○

 

 

 駆逐艦・若葉は深夜の暗闇の中、全身に汗をかいた身を布団から起こした。

 現在位置が敵の支配海域のど真ん中とは言え、まだまだ寝苦しい季節とは言い難い。悪夢を見たが故の覚醒ではあるが、その内容を覚えていない当たり、いかんともしがたい。

 艦艇時代の追想によるものか、あるいは深海棲艦として活動していた時期の残留メモリが再生されたのか、判別が付かないからだ。

 

 若葉が生まれた場所は超過艤装・伊勢型の建造ドックだ。

 熱田島鎮守府から水無月島へ向けての救援に向かう際、木村提督は超過艤装に搭乗させる艦娘についてかなり悩んだのだとは、以前伊勢たちから聞いた話だ。

 先んじて支配海域に突入した装甲空母部隊のほとんどがここ、水無月島に到達することが適わず、海軍本部は一時突入作戦を中断して、その内容の見直しを行っている。

 その見直しの中のひとつに、搭乗艦娘の制限の項目が、新たに付け加えられることとなったのだ。

 前期突入組は艦種に関わらず計15隻までの搭乗が認められていたが、今回の後期突入においては半数の8隻にまで縮小されている。

 「何故縮小を?」と憤慨する若葉ではあったが、本部の決定に逆らうことが出来ない木村提督のやるせなさも理解はしている。

 伊勢型への搭乗は木村提督の秘書官・霞をはじめとする8隻が選抜されたものの、その内まともに海上戦闘が行えるのは那智と足柄の2隻に限られ、とても戦力とは言えない有り様だった。

 

 それ故に、木村提督はある手段を用いて艦娘の頭数を揃えんとした。水無月島鎮守府で行われたように、敵から奪取した艤装核を用いて艦娘の建造を行ったのだ。

 その結果建造されたのが、若葉をはじめとする駆逐艦たちや、鳥海や筑摩、阿武隈と言った巡洋艦級。そして、熱田島鎮守府より艤装核の状態で持ち込まれた空母・葛城だ。ここに漂流中だった霧島や潮等が加わり、現状の熱田島航空戦艦部隊となった。

 幸運だったことは、実戦経験豊富かつ、他鎮守府や泊地で教官役を任されていた艦娘が多かったことだ。新造艦娘たちの練度の伸びはどの鎮守府の基礎メニューをはるかに凌駕するもので、若葉自身辛くはあったが、それ以上に多大な充実も得ていた。悪夢を意識し始めたのは、そんな矢先だった。

 

 艦艇時代の記憶が夢と言う形でフラッシュバックすることがあるとは聞いていたが、自らが体感した夢は、そう言ったものとは異なった。

 何せ、自らが同じ艦娘に討たれる光景を、鮮明に思い出すに至ったからだ。それらの夢が自分だけではないと発覚し、航空戦艦内は一時騒然としたものだ。那智と曙などは元々あった距離がさらに開いてしまったように思えるし、海上での訓練や作戦行動中にパニックに陥ってしまう艦娘もあった。

 それでも、入渠や同期作業の度にそういった悪夢が遠退いてゆくことが救いだっただろうか。思い出す限りにおいて、自分が艦娘を攻撃したことのある個体ではなかったことも。

 今回の夢は内容をよく覚えていなかったので、恐らくは鋼の記憶の残滓だったのだろう。深海棲艦だった頃の記憶も、今ではぼやけたものとなって久しく、判別は難しい。

 そう結論付けて心を落ち着けようとしているが、もはや夢という現象に対して過敏になり過ぎていた。

 

 そのあたり、同じ境遇であるはずの水無月島の面々はどうなのだと姉艦に問うてみたところ、どういうわけか、それほど苦にしていないらしい。

 初春たち曰く、この島の艦娘たちは時折提督の寝室に侵入して夜を明かすことがあらるらしいのだが、そうするとどういうわけか、夢見がよくなるのだとか。

 なんだそれはと鼻白んだ若葉ではあったが、熱田側の阿武隈も同様のことを言い出したものだから、途端に信憑性が湧いてしまった。

 そんな馬鹿な話があるものかと、怒り心頭となった磯風が浜風を巻き込んで提督のところへ突撃。翌朝別人のようにしおらしくなってしまったので、もはや確証と言って過言はないだろう。

 そういうわけで、初春がしきりに提督のところへ行こう行こうと誘ってくるが、そんな気恥ずかしい真似が出来るわけがない。思わず寝なくても大丈夫だと言って断ったら本当に眠らないのか横で確かめておるぞと布団を並べられたので、これがまた困りごとだ。

 困りごとで、そして幸いなことだ。

 

 今や若葉の布団にもぐりこんで寝言を呟いている初春だが、初対面では艤装は大破、体は大やけどと言う酷い有り様だった。

 それが、超過艤装に収容されて3日足らずで全快して立って歩けるまでに回復し、入渠ドックを管理していた明石も驚いていた。損傷を負った他の艦娘たちも予定入渠時間よりも格段に早く上がったもので、「若さかしら……」と、何故か足柄が暗い顔をしていた。

 さて、そうして復帰した初春だが、それからはまあ若葉にべったりなのだ。入渠明けの顔合わせで「若葉じゃ! 若葉がおるぞ! のう提督、若葉じゃぞ! 若葉ああああ!」と介添えしていた提督の背中をばしばし叩いた後に諸手を上げて駆け寄って来た時は、正直かなり引いたものだ。同時期に入渠明けとなった叢雲も、あんな初春は初めて見たと、若葉以上に引いていた。

 しかしまあ、同じく妹艦と対面した利根がまったく同じような反応をしていたのだとも聞き及んでいるので、のじゃの一族の間ではかなり一般的な部類なのかもしれない。

 

 その姉が、こちらの胴体を探して手を伸ばしてくる。

 抱き癖があるとかでいつもは抱き枕を抱えているそうなのだが、最近の抱き枕はもっぱら若葉だ。

 困りものだ。困りものだが、これがまた安心を誘うものだからどうかしている。

 寝言や寝息ひとつで、暗闇の中でも彼女たちが確実にそこにいるとわかって一安心だと考えるのは、夜という時間に敏感な艦娘たちにはよくあることらしい。

 それ故にか、艦娘はひとり部屋よりも複数人で部屋を分け合って居住することを好む傾向にある。特に、夜に沈んだ娘は尚更だ。

 まあ、艦艇の若葉が沈んだのは夜ではなかったのだが。

 

 頬に張り付く髪を後頭部の方に流して周囲を見渡せば、なんというか、駆逐艦をはじめとする艦娘たちが死屍累々といった風で雑魚寝している。

 宴会の時などに使っている大部屋に布団を敷きつめて大人数での雑魚寝は、午前中に勃発した熱田島VS水無月島のビーチバレーが発端だ。各鎮守府の精鋭が本気も本気の全力でぶつかって熱くなって面子を変え途中から競技まで変えて、夜遅くまで体を動かしていたのだ。

 ふたつの鎮守府が合流してはやひと月、微妙に考え方が合わなかったり気が合わなかったりした連中が躍起になってしまったということもあるが、そもそもこの環境は運動しないと体に悪い。極地活動適正の高い艦娘でも気が滅入ってしまうのだからどうしようもない。

 わだかまりが解消されたかどうかはさて置き、こうして枕を並べて眠ることが出来るまでになったのは僥倖と言うべきかと、若葉はそう思う。

 最初の頃、本当に仲が悪いように見えた鳥海と秋津洲が重なって眠っているなど、ひと月前には想像もしなかった光景だ。

 変な強がり方をしていた磯風がいびきかいて緩んだ顔で寝ているところなども初めて見たし、秋雲の姿が見えないのは今も気の合う面々と語り合っているからだろう。

 巻雲と飛龍に隅っこの方に追い詰められている風雲はご愁傷様だし、漣にコブラツイスト掛けながら寝ている曙は、なんだあれ。寝言で会話している利根型姉妹も。

 これから脱出期間含め長い付き合いになるのだから、まあいいかと、若葉はいそいそと立ち上がった。

 

 昼のあいだ動き過ぎたというのもあるが、何分飲み過ぎもした。

 夜中に起きてしまうのも致し方なしかと伸びをすれば、下半身に衝撃が加わり内臓が不穏な動きをする。姉が寝ぼけて若葉の下半身に纏わりついてきたのだ。

 目が慣れてきたとはいえ、こんな暗闇の中で止めてほしいものだと、若葉は姉を引きはがしにかかる。

 尿意を我慢して乱暴になってはいけないぞと、深呼吸して努めて落ち着き払い、寝間着が肌蹴てほぼ半裸な初春をやんわりと引きはがすことに成功する。一緒に履いていた下着まで脱げ落ちたのは完全に計算外だった。

 お揃いだからと言って姉がCストを進めてくるのを、なんとか紐で妥協してもらったのがまずかったか。勝手がわからず気持ち緩めに結んだものが、この局面でほどけ落ちてしまっていた。

 上に着ているシャツは裾がぎりぎりで心許無い。このまま堂々と出歩くなどもっての外。提督たちに見つかってしまった日には、恥ずかしくてどうにかなってしまう。若葉とてメンタルは年頃の乙女なのだ。

 足踏みするまでに堪えた尿意に、さてどうするかと逡巡する間もなく、大部屋の襖が勢いよく開いた。

 心臓が止まるかと思った若葉は、大口開けて欠伸した秋雲が、襖を開け口に手を当てた姿勢で固まっている様に、安堵とも焦燥とも付かない感情を得る。

 まずは提督たちではなかったことに感謝するべきかと頷き、次いで秋雲ならばまあ良しかと胸を撫で降ろす。

 自らの感情を順に整理していった若葉は、秋雲が大仰な手振りでサムズアップをつくり「えんじょーい」と言い残して襖をしめて足早に去ってゆく様に疑問を覚える。

 こんな姿故に誤解したものかとも思ったが、普段から不規則言動の多い彼女のことだ。例えあることないことねつ造し、誰に彼にと吹聴したところで、概ね誰も信用するはずがない。

 

 そんなことよりバラスト排出だ。若葉はやはり下を履いてから向かうべきだと、落ちた布地を探す。

 初春がそれを抱きしめるようにして丸まっている姿を目の当たりにして、思わず頭の中が真っ白になってしまった。

 

「くそ、第二ラウンドか……!」

 

 

 ○

 

 

「しかし、なんだ。この鎮守府は揚げ物が出される頻度が異常じゃないか?」

 

 配膳コーナーに肘付いて立ち飲み状態の那智の言い草に、明日の下拵えを手伝っていた潮は、確かにと頷いた。鱈の切り身に小麦粉、卵液とパン粉を塗してトレーに並べる流れ作業が楽しくて鼻歌でも歌い出したい心地だったが、湧いた疑問にふと素に戻ってしまう。

 揚げ物が多い理由として潮が考えたのは、少し悪くなった素材でも安全に食べられるようにするためだ。ソースなどを加えて濃いめの味にすれば、多少は味も誤魔化せるかなとも思ったもので、それを電に問うて答え合わせすれば「それも理由のひとつ」と微笑みが返る。気持ちジンクスのようなものなのだと、そう告げるのはカツ系の衣を担当している足柄だ。

 

「水無月島の伝統というかねえ。ほら、油って水よりも軽いし。それで、揚げるって行為とかけて、沈むのを防ぐような願掛けなのよね。揚げ物食べたら沈まないぞ、って」

 

 なるほどそんなジンクスがと、感心したように頷く那智と、それに倣うのはグラスを傾ける響だ。というか、2隻とも現と元で水無月島の所属であるはずなのに知らなかったのだろうかと首傾げて視線を向ければ、感心したような頷きのまま顔を逸らされた。

 

「姉さんはあんまり顔に出ないからあれだけれど、酔ってると話聞いてないし覚えてないしでたいへんなんだから……」

 

 足柄の呆れたような物言いに、それはここ最近でしっかり認識したなと、潮はこの海域での日々を振り返る。

 前期突入計画にて装甲空母に搭乗した潮は、支配海域突入直後の敵襲で艦隊からはぐれ、単艦で敵地を彷徨うこととなった。

 艦隊とはぐれ、僚艦ともはぐれた潮が浮島のひとつに辿り着いたのは幸運だった。

 そこから熱田島に拾われるまでは気の狂うような何もない日々が半年以上続くのだが、出撃前に間宮から渡された羊羹がなかったら遭難した最初期の時点で心が折れていたと確信する。

 

 その間宮とも、ここ水無月島で再会することが叶った。

 こちらは彼女のことを一目で判別できたが、間宮の方はそうはいかなかった。何せ、半年の漂流を経た潮の肉体は急成長を遂げ、身長は頭ひとつ分も伸びて、間宮と目線の高さがほぼ一緒になってしまっていたのだ。

 困惑する間宮が頬に手を当てつつ「潮ちゃん……、のお姉さんですか?」などと頓狂なことを問うて、その場に居合わせた漣と曙に「それは私です」と真顔で突っ込まれていたのが印象深い。

 

 その間宮は今、鎮守府地下の工廠に呼ばれ出向いている。

 ここ最近は中々厨房への出入りは少なく、なんでも彼女のような給料艦や大型艦などに実装される艤装を、後付けで増設準備をしているのだとか。

 それに付いて問えば、厨房の奥から出てきた鳳翔が解説を入れてくれた。

 

「格納領域の増設を行うのですよ。木村提督からの指示で」

 

 格納領域とは名の通り、その艦娘の元となった艦艇とほぼ同等の収容スペースを亜空間に設けること。

 潮としては、漣が言っていた「ああ、RPGゲームのアイテムボックスみたいなもんね」という例えが一番理解しやすかっただろうか。

 艤装や弾薬を始め、食料品や衣料品などをも固有の空間に収納できる優れものではあったのだが、艤装開発の最初期に制限がかけられた部門でもあるのだとか。

 

「色々と問題の多い技術だったからなあ。足柄、覚えているか? うちの大和の……」

「あー。艤装や弾薬と一緒におっきなケーキいくつか収納したら、戦闘時に取り出した46砲の上に載ってて焦ったってやつね?」

 

 その光景を想像して思わず噴き出した潮は、同じように噴き出し腹を抱えた響が、配膳コーナーの窓から姿を消す様を見る。

 ちなみに件の惨事が起こった時は海上で敵艦隊と交戦中であり、大和は46砲の上にケーキ載せたまま戦って勝って帰って来た。

 当然、主砲を放った衝撃でケーキは無残に吹き飛んでしまい、クリームまみれの憮然とした顔で帰投した大和の姿に、誰もがぎょっとしたという。

 当時の老提督も「じいちゃん悲しいわ。そんなプレイ教えたつもりないよ?」と頭を抱え、大和も「大和も食べ物を粗末にするつもりは……」と涙ぐんでいて。

 その場に同行して一部始終を見ていた響がやはり、腹筋が破壊されて蹲って動けないくなってしまっていたのだとか。

 

「そんなことがありまして、格納領域の運用は慎重を規すようになりましたね。補完艤装や燃料・弾薬を収納する際は、あらかじめ専用のコンテナに各々の収納物を振り分けてから、固有空間へ収納する、という方針になっているんですよ?」

 

 寸動鍋で湯気を立て始めた琥珀色のスープをお玉で救い、小皿に取って口元に運ぶ鳳翔が、格納領域のその後の運用秘話を笑いながら話す。

 小皿に唇をつけて「あち」と舌を出す姿にいつも通りだな笑む潮は、水無月島の暁型たちも同じように微笑ましげな視線を向けていることに気付く。

 彼女たちにとっては旧知の仲である鳳翔だ。特に、鎮守府活動停止直前の出撃で帰らぬ人となってしまったと思われていた彼女が、こうして元気な姿を見せているのだ。嬉しくないはずがない。

 伊勢型の上で暁や電と再会した時も、間宮の時と同じような天どんをやらかしていたが、そうして成長した彼女たちの姿にこそ、元水無月島の面々は感極まっていた。

 

 こうして調理場に集った那智や足柄も普段と違ったような顔を見せるもので、しかし那智の方は響と一緒になってつまみが出てくるまで配膳コーナーで粘るのはどうかと、潮は思うのだ。何だかんだでカツの切れ端揚げ始める足柄も。

 食べ盛りが多いのも(もちろん潮も含む)、呑める口が多いのも伊勢型の中と変わらないが、やはり旧知の仲であるからか、自分たちへの時とはまた違った接し方に思える。ここでの彼女たちの方が、伊勢型の中に居た時よりも、少しだけ振る舞いに余裕がある気がするのだ。

 足柄はこうして調理場に出入りするのは伊勢型の中でも同様だったが、雷が詰めている医務室に良く顔を出すのは意外に感じた。かつては雷と共に医務室の手伝いなどしていたそうで、白衣姿が驚くほど似合っていた。

 那智の方もこの響とは旧知の仲であり、酒瓶持って連れ立っている姿をよく目にしている。そして、そう言う時は千歳や朝霜が必ずと言っていいほど追加の酒瓶持ってやってくるのだ。ほら来た。高雄と叢雲も一緒だ。伊勢や日向が未だ留守番なのが悔やまれる。

 

「でも、このタイミングで格納領域を増設するってことは……」

「やはり、木村提督はこの島に留まる気なのだろうな」

 

 何気なく呟かれた言葉に、潮は身が固くなるのを自覚する。

 何か重要なことをさらりと言葉に乗せられた気がするのだが、はっきりどういうことだと疑問を述べるだけの域に考えが達していない。

 そして幸か不幸か、この場に居合わせた潮以外の艦娘たちは、大よそそれがどういうことなのかを理解している様子で、どうにも聞くに聞けない心持になってしまう。

 しかも皆して、潮もなんとなくわかっているものだと思って、正式なお達しが出るまでは他の者には口止めをと、人差し指を唇に当てて見せる。

 

 皆いちいち仕草がセクシーだなあと苦笑いした潮は、このまま流れに身を任せようと思い至った。考えるのを放棄したとも言う。

 ここで聞かずともいずれ明らかになるであろうことは確定している様子だし、心の準備などはいつも間に合わないので、ここは開き直ろう。

 流れに身を任せるのは悪いことではない。漂流中は幾度か彼方から食料品の入ったコンテナが流れてきたこともあったし、遠くに白い影が海面から顔出して手を振っていた気もする。

 今にして思えばこちらに味方した彼女だったのかと納得するが、その当時はもっと焦っても良かったのではないかと、今さらながらに鈍さは大事だと思い知った。

 

 さて、そうして酒につられて集まった呑み人たちにと、足柄が揚げたカツの切れ端を卵でとじて皿で出す。

 何故か厨房で調理している面々の分まで用意されたそれを潮はありがたくいただくことにしたのだが、これが滅法辛かった。

 足柄の味付けが基本辛目であることは伊勢型で寝起きしていた時から意識してはいたが、ここ最近は特に気合が入り過ぎている様子だ。

 鳳翔と電が口を半開きにして渋面をつくっている様を困惑気に見る足柄は、そんなに辛くしたつもりはないのだと必死に弁明していた。

 

 

 ○

 

 

 2隻の阿武隈はここ最近、よく共に行動する姿が見られるようになった。

 お互い出自に関してはほぼ同様ではあるが、その後の環境や経験の差から、明らかに異なる個体であるなという印象を、互いも他の面々も抱いている。

 片や第二改装の衣装であり、片や第一改装の衣装である、ということもある。所属を示す腕章も然りだ。片や勇ましく、片や臆病な気質の持ち主であることもそうだ。

 しかし、それだけではどうにも落ち着かないという思いは互いに抱いていた様子で、ならばと頭髪の色彩を微妙に弄ることでようやく納得という形を得ている。

 水無月島の阿武隈は髪の内側に青のグラデーションを、熱田島の阿武隈は赤を。

 衣装が違うのだからそれでいいのではと野暮なことを言う者もいたが、いずれは熱田の阿武隈も第二改装を受けるであろうと考えていた水無月島の阿武隈は、その意見を真っ向から突っぱねた。

 

 そして、その2隻は夜も更けた時刻に連れ立って鎮守府の外へと歩み出していた。目的地は水無月島の提督の部屋、その縁側だ。

 物陰からこっそりと、縁側に腰を落ち着けて手にした書に目を落としている提督の姿に見入っているのは双方同じだが、熱田の阿武隈の方が、やや顔に熱を帯びた風であるのが見て取れる。

 実際にお熱なのだと、打ち明けられた水無月島の阿武隈は、ショックのような、または非常に嬉しいような複雑な心境でここ最近を過ごしていた。

 

 熱田から救援にやって来た艦娘たちの中で(主に船内で建造された面々だ)、水無月島の提督に一目惚れ、という症状を得ている艦娘が何隻か存在している。

 熱田勢の中では特に鳥海が重症だった様子で、提督と食事時や廊下などでばったり出会うと、顔合わせ当初は険悪だったはずの秋津洲の後ろに隠れてしまう姿がよく見られる。

 刷り込みとしては木村提督に対する好意が大半を占めているのは言うまでもないのだろうが、年齢が離れているせいか、それは父親に向けるような感情であることが大半なのだとか。

 磯風など木村提督のことを「親父」と呼んでしまい、焦って提督と訂正する姿が見られるように、熱田勢の木村提督に対する感情は概ね父親のようなものらしい。

 

 では、水無月島の提督に対してはと問うたところ、熱田の阿武隈からは「小さい時からご近所さんだった憧れのお兄さん」との返答があり、一緒に居た漣や秋津洲たちと共に「なるほど!」と叫んで膝を打つ場面があった。

 そして、その憧れのお兄さんの動向を陰から覗き見ているのかと言えば、なんとなくそれが楽しい行為に思えてしまった、というのが水無月島の阿武隈の内心だ。所属の違う同名艦と連れ立って、という部分が特にそうなのだと、互いに思っている節があるのだ。

 普段ならば愛しの彼の姿をしばらく見つめた後に満足して引き上げる流れとなっていたのだが、今宵に限っては見逃せない場面が生じたため、2隻は音を立てないように姿勢を直して観察を続行する。隠密行動は十八番なのだ。

 

「こんな暗がりで読書か。勉強熱心なのは良いが、目を悪くするぞ」

 

 腹の下に響いてくるような低い声。療養を終え、霞の介添えを受けた木村提督の声だ。

 “艦隊司令部施設”の運用によって消耗したものか、双方の提督は敵襲を切り抜け顔合わせをした後、死んだように寝込んでしまっていたのだ。

 復帰は水無月島の提督の方が早く、木村提督は中々後遺症が抜けずに寝て起きてを繰り返すひと月だった。こうして歩けるまでになったのはつい先日のことで、それまでは提督が霞のお小言にちくちくやられながら、両艦隊の指示に奔走していた。

 その霞はと言えば、木村提督を提督の隣りに座らせると、自らはその横にくっつくようにして澄ました顔で腰を下ろす。彼女本来の衣装の上から“海軍”所属に支給されるネイビーのコートとベレー帽を纏った姿は、漣や卯月や夕張などから「隊長機だ! 特別強いヤツだ!」と好評らしい。清霜も目を輝かせていた。

 阿武隈たちは「あれ夫婦?」「だいたい夫婦」と認識を共有して頷き合う。

 

「……葉隠か?」

「磯風に勧められまして」

 

 文庫本を閉じて表紙を見せる提督に、木村提督は「俺の本棚にあったヤツだな」と、少し口角を上げて嬉しそうな声色になる。

 

「年頃の娘なんだからもっとこう、ここの娘らの様に漫画でも読めばと言っては見たが、なかなか硬さが抜けないやつでな」

「頼もしい娘ですよ。この前も夜通し説教されました」

「……すまんな。ところで貴様、本は?」

「読みます。皆が勧めてくれるので。以前は漫画がほとんどでしたが、熱田の娘さんたちが来てからはかなり幅が広がりました」

 

 そう告げる提督の傍らに積んであるのは、SFやら児童文学やら。

 時折、カラオケマスターやら格闘技の教本などが混じっているが、木村提督の表情は誰の趣味か一目でわかるぞと嬉しげなものだ。

 しかしその表情は、積み本の背表紙を下に辿ってゆくにつれて曇ってゆく。

 

「おい貴様、何故にポルノ誌まで積まれている。まさかうちの誰かが……」

「いえ。これはうちの艦娘たちが。以前から、何冊か廊下に並べ置かれていることがありまして。おそらく何らかのメッセージだとは思うのですが、なかなか理解が及ばず……」

 

 木村提督は渋い顔で「貴様。それはな、貴様……」と言い掛けたが、勢いを失って言葉を途切れさせる。傍らの霞も呆れた顔で、何も言うまいと憮然としている。

 物陰から盗み聞いている阿武隈たちはといえば、片方は動揺で顔を真っ赤に、口元を両手で覆って疑問符を浮かべているが、もう片方は「あー、あれ私やったことあるぞ」と顔を覆って俯いている。

 

「……あの、どういうこと」

「市場調査です。提督の好みの特定と偏向のために、漂着物を廊下に撒いて観察するの」

 

 なんと言うことをと慄く熱田阿武隈だが、興味の矛先は彼の好みに及ぶ。

 しかし、興味と期待の眼差しを受けた水無月阿武隈の、その表情は渋い。

 

「提督、律儀に全部拾っていくし、全部吟味するしで、あんまり効果がなかったり……。最初は初心な反応だったって暁たちは言ってたけれど、なんかだんだん慣れちゃったみたいで……」

「そんなあ……」

 

 最新情報獲得ならずかと項垂れる阿武隈たちは、気を緩めたわずかな間に、提督たちの話が方向を変えたことに気付く。

 

「明日、皆を集めてくれ。ひと月近くも時間を食ってしまったが、俺もようやく本調子だ。そろそろ今後の方針を正式に告げねばならんからな」

 

 木村提督の言に、提督はもちろん、盗み見していた阿武隈たちも身を固くした。

 脱出のための算段は熱田勢の側で打ち合わせられてはいたのだろうが、超過艤装の損傷と提督たちの不調によって、計画自体が延期されていた。

 いよいよ、それが再開されるのだ。

 

「今すぐとは言わんが、荷物はまとめて置いた方がいい。妖精たちの頑張りで、超過艤装の修復は予定よりも早く片が付きそうだからな」

「ではやはり、この島を……」

「脱出することになる。安心しろ、貴様らは熱田経由で無事本土まで送り届ける手筈になっている」

「その先は――」

 

 提督は語調を強めて木村提督に問う。その先、本土まで渡ったその先はどうなるのか。

 

「貴様の身柄は海軍預かりになるな。一応の戸籍も用意してある。その後どうするかどうかは貴様次第……」

「いいえ、木村提督。僕ではなく、彼女たちがです」

 

 語気を更に強めた提督に、歴戦の司令官はわかっているとばかりに苦笑する。

 

「水無月島艦隊としては、解体されることにはなるだろうな。まずは全艦オーバーホールだ。その後、戦線に復帰可能だと判断された娘たちは、各地の鎮守府に割り振られることになるだろう。一応希望する先は申請できるが、まあそれが通る可能性は高い」

 

 提督はその言葉に疑問を覚える。そういった希望先は通らないものではないかと思ったのだが、どうやら違うらしい。

 

「ここ1年足らずで、敵支配海域の縮小が確認された。縮小と言うよりは、敵の統率者が戦力を一箇所に集中しているために、環境を変異させている敵の姫級や鬼級がそれに呼応して、本来存在していた地点よりも遠ざかった、ということなのだがな」

 

 それは、水無月島が活動を再開しなければ起こり得なかったことだと、木村提督は語る。

 補給のための海路が回復し、各地では守りの地盤固めが始まった。

 万年戦力不足だった最前線基地に補給と戦力増強が行われ、ようやく余裕が生まれてきたのだ。

 

「統率者の目的を断定することは出来んが、貴様らがこうして狼煙を上げたことで、息を吹き返したものがある。貴様らの功績だ」

 

 水無月島の阿武隈は、自分の提督が顔を俯かせる姿を目の当たりにして、隣りの同胞にここを去ろうと提案する。

 木村提督の言葉に感極まる彼の姿を、これ以上見ているわけにはいかないと、そう思ったのだ。

 

 

 


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