機動戦士ガンダムSEED A.I.W.   作:ゆなつー

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2-e

 

「よかった! 目を覚ましたんですね!」

 

1号機のコクピットを一時的に離れ、キラはマリューの元へと向かっていた。その後ろにはトラックを指定の位置へと移動させたサイとカズイの姿もある。

 

「ええ。君、怪我は?」

「僕ですか? いえ、特に。それより、あの……」

「何かしら?」

 

何と無くぎこちないキラの切り出しにマリューは首をかしげる。

 

「あの機体……ストライクの2号機のこと、すみませんでした。勝手に弄っちゃって」

「……ああ、その事ね。過ぎたことよ、今は気にしないで」

「……すみません」

「そんなに謝らなくてもいいわ。君がああしてくれなければ、今頃は炭かZ.A.F.T.の捕虜だったかも知れないし。結果を見れば私達は君に助けられたも同然なのよ。……だから、お礼を言うわ。ありがとう」

「あ……」

 

マリューの言葉に、キラは驚いた顔をする。照れているのか少しだけ頬が赤かった。

そんな彼の様子にマリューも少しだけ安堵する。

 

(年相応の反応ね。……コーディネーターだからって何も変わらないわ)

 

そう、彼は少なくともナチュラルが言う化け物ではない。女性にお礼を言われるだけで照れてしまうようなどこにでもいる少年なのだ。

悪い子じゃない。そう思ってマリューは微かに微笑む。

 

「さ、ストライクのバッテリーパックを交換するわ。手伝ってくれる? ええと……キラ君だったかしら?」

「あ、はい。キラです。キラ・ヤマト」

「挨拶が遅れたわね、私はマリュー・ラミアスよ。……じゃあ、着いてきて」

「わかりました」

 

キラの返事を聞いて、マリューはストライク両機の方へと歩き出す。そして、それにトールやミリアリアなど、マリューのそばに居た全員が着いて行く。

 

「でも、バッテリーパックの交換ってどうやるんですか? 見た感じ即座に交換できるような箇所にそれらしいのはなかったんですけど」

「ストライクのバッテリーパックは武装とセットになってるのよ。さっきは武装する暇もなかったから緊急用の内蔵バッテリーを使用したけど、本来は外付けの武装とセットで運用することが想定されているの」

「あ、それがオリノさんの言っていた……」

「そう、ストライカーパックよ」

 

キラの質問に、マリューは出来る範囲で答えていく。通常であれば軍の機密に関連することなので返答できないが、今は非常時である。最大戦力であるキラには仕組みをある程度教えておく必要があった。

 

「じゃあ、あのトラックは……」

「ストライクの追加武装が入っているわ。機体の背面にコネクターがあるから、そこに中の武装を繋いで頂戴」

「わかりました」

 

説明している間に2号機の元へ到着する。キラはマリューに言われたとおり2号機を操作するためコクピットへと向かった。

 

「オリノは2号機のトラック側に。操作はわかるわね?」

「大丈夫です。……アーガイル君、手伝ってくれ」

「あ、はい」

 

オリノは指示を受けて、サイに肩を借りてトラックへと向かう。

 

「さて、じゃあ1号機の方だけど……こっちも、機体側とトラック側で最低限2名必要になるわ。手順は教えるから、トラック側に誰か……」

「いえ、機体側は私がやります」

「メル!?」

「なんでお前が!?」

「そ、そうだよ。なんだってメレアリスが……」

 

ミリアリアが驚き、残っていたカレッジのメンバーも一斉にメレアリスに詰め寄る。

マリューも真剣な表情でメレアリスに問いかける。

 

「メレアリスさん……だったかしら。貴女、自分の言っていることの意味はわかってる?」

「はい」

「本来であれば機密であるあの機体の操作をするということも、操作中に敵が来たら戦闘しなければならないことも?」

「既に一度あの機体のコクピットに入りました。だから機密に触れたことに関してはもう手遅れだと思ってます。そして、戦闘も……覚悟の上です」

 

そう話すメレアリスの眼は真剣そのものだった。元から顔が整っている事もあって、その場にいる全員が少しばかり気圧される。

そんな中、なおもマリューは質問を続ける。

 

「……理由を聞いてもいいかしら」

「ラミアスさんは、その腕の怪我……いいえ。怪我がなくても、あの機体を動かせますか?」

「動かすくらいなら何とでもなるわ。私はG……あの機体専属の技術士官よ」

 

マリューは自身の腕に巻かれた包帯を一瞥してから答える。

 

「……質問が悪かったですね。言い換えましょう。あの機体を使ってキラのように敵を倒せますか? 」

「……それは」

 

出来る。そう言いたいマリューであったが、そう言えないことを一番理解しているのもまた彼女自身だった。

実際に前の戦闘でもジンからの攻撃に対して歩行による回避運動しか取れなかったし、あの調子では例えPS装甲があってもいずれ撃破されるのがオチに違いなかった。攻撃にしても、止まっている的なら未だしも敵の駆るMS相手に当てられるかと問われれば自信はない。そもそもが技術屋のマリューにMS乗りのスキルを求められても応えられるわけがないのだ。

なまじナチュラルの中でも優秀な部類にいる分、彼女は自己分析も冷静だった。

 

「言えませんよね、出来るなんて。出来るならわざわざキラがOSを書き換えてまで戦う必要なんて無いんですから」

「……だからと言って貴女がアレで戦えるということにはならないでしょう?」

「そうですね。まだ一度もやったことのない事ですから自分ですらわかりません。……でも、"同じコーディネーター"のキラは初めての操縦でやれましたよ」

「それは……そうだけど。でも、だからって」

「ええ、もしかしたらキラだけで私じゃ戦闘なんて出来ないかもしれない。でも、ラミアスさんと違って可能性はあります」

「可能性があるからってそんな……貴女の命に関わるかもしれない事なのよ!?」

「あれに乗っていてもそうでなくても、戦闘があったら命の保証なんて何処にもありません。だから、死ぬかもしれないことは承知です。……それでも」

 

メレアリスはそこで言葉を切ってキラやオリノが向かった2号機を見上げる。

コクピットの装甲は開いたままで、中ではキラが難しい顔をしながらコンソールを弄っていた。

 

「……それでも?」

「自分にできることをやりたいんです。私はキラと同じコーディネーターなのに、友達の助けになれるかも知れないのに……全部彼一人に任せて後ろで見ているなんてこと、私にはできません」

「……」

「メル……」

 

沈黙で返すマリューと、心配そうな声を上げるミリアリア。声こそ出さないものの、一緒にいるトールとカズイも同じようにメレアリスの身を案じていることが窺えた。

メレアリスはそんなカレッジのメンバーの様子に、困ったような微笑みを浮かべる。

 

「こんな理由じゃ駄目でしょうか?」

 

メレアリスはマリューに問いかける。マリューは数秒の間黙ってメレアリスを見つめていたが、やがてため息まじりに

 

「……わかりました、いいでしょう」

 

とだけ答えた。

 

「っ、ありがとうございます!」

「ただし、条件があります。戦闘の際は、貴女はキラ君の後方で援護射撃をするだけに留めること。OSは書き換えないこと。いいわね?」

「はい! 約束します」

「ならいいわ。……時間が惜しいから、さっそく取り掛かりましょう。コクピットに入ったら、まずはストライクを座らせて頂戴。動作メニューの『換装シークエンス』を選択すれば、あとは機械がオートでやってくれるわ」

「え? じゃあ、なんでキラはあんなに難しい顔を?」

「彼はきっと機体動作をマニュアルに切り替えているのね。操作はかなり複雑になるけど、その分挙動の自由度が上がるわ」

「成程……」

「さ、やるわよ。機体の足元まで降りてるワイヤーに足をかければコクピットまで運んでくれるわ」

 

マリューの言葉に小さく頷き、メレアリスは1号機の足元に降りてきている昇降用のワイヤーへと小走りで近づき足をかける。1分もしないうちにメレアリスはコクピットへと入り込み、ハッチを閉じる。

 

「えっと、確かこの辺りに……ああ、あった」

 

メレアリスがとあるスイッチを押すと、ストライクは片膝立ちの体勢になる。オリノと共に地上に降りた際に使用したスイッチだった。

本来は今回のように、バッテリーパックの交換の際に使う機能だったらしい。

マリューの言う通りにシークエンスを起動させると、1号機はオートで体勢を適切なものに正していく。ここまでくればメレアリスがやることは無いので、その間に機体の情報をチェックしていく。

 

「何、回避動作まで選択式なの……? はあ、よくもこんなOSでこれだけの代物を……」

 

だが、見れば見るほど不釣り合いなOSの出来の悪さに呆れていく。移動以外のほぼ全ての動作が予め記録されている物を選択する方式で出来ているため、さながら出来の悪いシミュレーションゲームの様であった。

確かにこれでは純粋な戦闘は難しいだろう。どうやら向きが違ったらしいトラックの方向転換作業を尻目に、援護射撃ですら難しいのではないかとメレアリスは不安になる。

……と、その時。けたたましいアラート音と共にレーダーに赤い点と緑の点が一つずつ表示される。

 

「敵!?」

 

ジンがレーダー上で赤い点だった事に思い至ったメレアリスが座標と高度が示す位置へと視線を向けるのと、上空のシャフトで爆発が起きたのがほぼ同時。

爆炎の中から白い機体――ジンとは少し異なる――と、それに遅れてオレンジ色の戦闘機が現れる。

 

「名前は……"ZGMF-515 Cgue"に"TS-MA2.mod00 Möbius Zero"? シグーとメビウス・ゼロ、ね……!」

 

どうやら敵のシグーはこちらに気づいているようで、メビウス・ゼロを適当にあしらいつつ接近してくる。

メレアリスは急いで外部集音機能をオンにしてマリューの指示を仰ぐ。

 

「ラ、ラミアスさん!?」

『待って、今コンテナを……』

 

しかし、まだトラックの向き転換は終わらない。メレアリスは焦りと恐怖で混乱しかけるが、シグーは彼女ではなくキラの駆る2号機へと向かっていく。

 

「キラ!?」

 

見れば、2号機は既に武装の取り付けが終了して立ち上がっていた。向かってくるシグーに対し、巨大な銃口を向けたその瞬間。

爆音とともに、ヘリオポリス宇宙港が炎を上げる。そして。

 

「……何、あれ」

 

巨大な戦艦が、コロニー内へと姿を現した。




子どものわがままに甘々な魔乳さん、そしてガバガバOS。
例のごとく、OSの事については独自解釈です。詳しい説明が必要でしたら感想にてご質問お願いいたします。

あと、とりあえずここまででストックが切れます。正確にはあと1話分くらいはあるのですが、作者の執筆スピードはカメなんて比較にならないくらい遅いので温存させてください……。
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